モルタル外壁をキレイに直したいと考えている方の中には、費用面が気になるという方もいますよね。

新築の場合と違い、外壁のリフォームは状況や面積によっても大きく費用が変わる可能性があります。

そのため、どのくらいの費用がかかるのか想像がつきにくいという声も多く上がっているのが現状です。

しかし、外壁の面積や現在の汚れ、ひび割れや欠損などの状態を把握することによって、外壁塗装費用のおよその目安をつけることはできます。

今回は、モルタル外壁塗装にはどのような工程が必要なのか、また状況や費用に応じた費用相場がどれくらいになるのかを詳しく説明していきます。

■モルタル外壁とは

モルタル外壁とは、セメントと砂を水で混ぜ合わせた「モルタル」と呼ばれる材料で作られた外壁のことです。

モルタルは日本では明治時代頃から使われ始め、昭和50年代頃をピークに一般家庭でも外壁として広く普及してきました。

現代の日本の一般家庭では、サイディングボードなどの最新の外壁材が登場していますが、デザイン性の幅広さや独特の質感の良さなどからモルタル外壁はまだまだ根強く人気のある外壁です。

1.モルタル外壁ができるまで

モルタル外壁ができるまでには、いくつかの工程を踏むことになります。

まず材料となるモルタルは、上でも説明した通りセメント・砂・水を攪拌器などで練り合わせて作っていきます。

また、モルタルは滑らかな平面の壁に直接塗りつけることはできず、「ラス」と呼ばれる金属製の金網を張って平面に凹凸を作ることにより、モルタルの接着をよくする下準備が必要です。

ラスの上にコテを使ってモルタルを塗り、モルタルの壁を作っていきます。

モルタルが乾いて壁が完成したら、さらにコテやローラー、スプレーなどを利用してモルタル壁の上に仕上げ材を塗布し、外壁の表面を仕上げたら完成となります。

2.モルタル外壁の仕上げ方法

上で説明した通り、モルタル外壁はモルタルを塗りっぱなしで完成ということはなく、仕上げ材を使って最後に表面の仕上げを行います。

この最後の仕上げにもいくつかの種類があり、おもに以下のような仕上げ方法があります。

  • リシン仕上げ
  • スタッコ仕上げ
  • 吹き付けタイル仕上げ
  • 左官仕上げ

それぞれの仕上げが、具体的にどのようなものなのかを見ていきましょう。

●リシン仕上げ

リシンとは、白セメントやアクリル、顔料、破石配合物を混ぜ合わせて作られた表面化粧材のことをいいます。

現代では白セメントが利用されることは少なく、アクリルリシンが多く利用されています。

リシン仕上げとは、アクリルリシンなどをモルタルの上にスプレーやスプレーガンなどで吹き付けて、表面を仕上げる方法です。

昔から日本の一般家庭の外壁などで用いられている仕上げの方法で、ざらざらとした質感が特徴の壁に仕上がります。

破石配合物に含まれる石の大きさを調整したり、吹き付ける方法を変えたりすることで、多少は柄のアレンジも可能な方法です。

●スタッコ仕上げ

砂や石をセメントに混ぜたものや合成樹脂などをスプレーガンを用いて壁に吹き付け、表面が柔らかいうちに表面をローラーで押さえて凸凹の模様をつける仕上げ方です。

リシン仕上げよりも粒が大きく厚みのある仕上げ方をしていきますので、リシン仕上げに比べて重厚感や高級感が出るのが特徴です。

またリシン仕上げよりも厚みがあるため、耐久性に関してもリシン仕上げよりも優れています。

ただし、1つ1つの凹凸がリシン仕上げよりも大きめになるので、汚れが目立ちやすいというデメリットも持ち合わせているのです。

●吹付けタイル仕上げ

タイルベースと呼ばれる樹脂に砂や石を混ぜた下地製材を、タイルガンと呼ばれる機器で壁に吹き付けて模様付けを行う方法です。

模様付けを行なった後には、液体状の仕上げ材を被せて仕上げを行なっていきます。

リシンやスタッコ仕上げに比べると、模様となる凸凹ひとつひとつの面積が大きく、つるんとした質感が特徴です。

●左官仕上げ

漆喰や珪藻土などに似た仕上がりが出せる土壁調の塗り壁材などを用いて、左官職人が模様をつけていく仕上げ方法です。

模様のつけ方にはさまざまな道具が用いられ、コテやハケ、スポンジローラーやゴムローラーなどが使用されます。

他の仕上げ方法よりも自由な模様をあしらうことができますが、仕上がりの質感が職人の技術力にかかっているため、品質は職人の腕次第といえるでしょう。

■モルタル外壁で起きやすい劣化症状

モルタル外壁の塗装費用は、外壁の面積などに加えて劣化の種類によっても大きく変動します。

劣化の状態は、大きく以下の2つに分けることができます。

  • 再塗装が必要な劣化
  • 部分補修が必要な劣化

ここでは、それぞれの劣化状態の詳細について説明していきます。

1. 再塗装が必要な劣化

特に大きなヒビや欠損がなく壁自体の補修は不要だが、外壁一面を再塗装する必要のある劣化状態には、以下のものがあります。

●汚れ、カビ、コケ

モルタル外壁の表面の汚れがひどかったり、カビやコケが発生してしまったりしているパターンです。

モルタル外壁の仕上げ方法でも説明したように、リシン仕上げやスタッコ仕上げなどモルタル外壁の表面は凸凹になることが多くなります。

そのため、一度汚れなどが付くと溝に凹凸の溝に入り込んでしまい、汚れが蓄積されやすくなります。

またカビやコケなどの胞子は空気中に浮遊しているので、モルタル外壁に付着して根を張ってしまうことがあるのです。

コケやカビの胞子はコンクリートやタイルなどの硬い材質にも根を張ることができ、湿気の多い場所であれば繁殖力も強くなります。

 

もしもカビやコケ、汚れなどがひどい場合には塗装前の入念な高圧洗浄で除去しなければならず、その分の費用がかかる場合があります。

外壁は屋外であり、常に汚れやカビやコケの胞子にさらされている状態ですので、ある程度の期間が経てば、劣化してしまう自然現象です。

●色あせ

モルタル外壁は経年劣化を起こすため、外壁塗装を施してから早くて5年〜遅くとも15年で色あせを起こします。

外壁の塗料に含まれる顔料が、紫外線や太陽光の熱で色あせてしまうことが原因です。

そのため、日当りなどによっても色あせの度合いに違いが生じやすくなっています。

色あせが生じてしまっている場合にも、新しい塗料での塗り替えが必要になるのです。

●チョーキング

チョーキングとは、外壁に触れた時に手にチョークのような白い粉が付着するような状態のことを指します。

紫外線や雨、雪、風などによって外壁塗料の成分がダメージを受けて劣化してしまうために起こる現象です。

チョーキングが見られる場合には、その外壁に塗装されている塗料自体が耐久性を失っていますので、塗り直しが必要になります。

2. 部分補修が必要な劣化

外壁の塗装以外に何かしらの問題があり、再塗装前に部分的な補修が必要になる場合もあります。

塗装前に部分補修が必要な劣化の状態には、以下のようなものがあります。

●欠損

外壁のモルタル部分が剥がれ落ちてしまう現象のことを指します。

モルタル外壁が欠損してしまうのには、以下のような原因があります。

  • 壁にモノなどがぶつかって起こる外部からの衝撃によるもの
  • モルタル壁内部の鉄製ラスの腐食などによって内側から起こるもの
  • モルタル壁内部の鉄筋が腐敗膨張によって起こる破裂

このような症状が起きた場合には、塗装前に欠損理由に応じた補修をしてからの再塗装作業になります。

そのため、欠損の状態によっては大掛かりな作業になる場合もあるでしょう。

●ひび割れ

モルタル外壁に良く見られる症状にひび割れがあります。

ひび割れとは、名前の通り劣化などにより壁の表面にひび割れが生じてしまう症状のことです。

ひび割れの症状は、大きく分けて以下の2つの種類に分類されます。

  • ヘアークラック
  • 構造クラック

ヘアークラックとは髪の毛のような細いひびのことで、建物の構造自体に悪影響を及ぼすようなものではなく、外壁表面のみにひび割れが生じている状態のことを指します。

ヘアークラックが起こる原因もいくつかありますが、施行直後に壁に含まれていた水分が乾燥によって蒸発し、壁の収縮が起こることでひび割れが生じる場合が多くなっています。

ヘアークラックの場合には補修が必要ない場合もありますが、ひび割れの本数が多い場合には補修が必要になることもあります。

そして、構造クラックとは、施行の不備や地震などにより土台が不動沈下したり歪んだりすることで起こるひび割れのことです。

外壁内部に何かしらの原因があり起こる現象なので、防水性低下などのおそれもあるため、シーリング材などを利用した補修が必要になります。

■モルタル外壁塗装で発生する工程と費用

モルタル外壁塗装は、施工時の外壁の状態や希望する仕上げ方によっても、行程や費用が異なります。

ここではモルタル外壁の塗装費用のおよその相場と、ひび割れや欠損がある場合の補修費用の相場の目安を見ていきましょう。

1. 塗装費用の相場

約60~100万円

選んだ塗料のグレードや、壁自体の劣化の数、表面の仕上げ方法の違いなどによって費用相場は変動します。

たとえば塗料1つとっても、ウレタンとシリコンの違いだけで10万円以上の差が生じる場合があるのです。

また塗装面によっても価格は大きく変動します。

●塗料のグレードと費用相場

実際の塗料のグレードと費用相場は以下の通りです。

費用に関しては、30坪(99㎡)あたりのおよその費用を紹介しておきますので、目安にしてみてください。

  • アクリル 耐久年数はおよそ5年〜7年程度で価格はおよそ45万円程度
  • ウレタン 耐久年数はおよそ8年〜10年程度で価格はおよそ65万円程度
  • シリコン 耐久年数はおよそ10年〜12年程度で価格はおよそ75万円程度
  • フッ素  耐久年数はおよそ15年〜20年程度で価格はおよそ90万円程度

このように価格が安いものは耐久年数が短く、価格の高いものは耐久年数が高めの傾向になっています。

塗料を選ぶ際には、費用以外にも耐久年数を確認し、費用対効果を考えて選ぶようにするとよいでしょう。

2. 補修費用の相場

モルタル外壁の現状を確認して、補修が必要と判断された場合には補修費用もかかります。

補修は、劣化が進行しているほど費用が高額になりますので、劣化を深刻化させないためにも早めの点検が肝心です。

●ひび割れの補修費用

ヘアークラックと呼ばれるひび割れの場合には、塗り替えで補修が必要ないこともありますが、構造クラックの場合には補修が必要になり基本的に費用がプラスされます。

 

構造クラックのような深いひび割れが起きているモルタル壁には、Vカット(Uカット)工法という補修作業が行われるのです。

まずひび割れの溝の手前を広めに、そしてひび割れの奥を細く、溝の断面がV字(またはU字)になるように削ります。

その溝にプライマーと呼ばれる下地材を塗り、目地埋め作業であるシーリング材での充填を行ない、その上からモルタルを塗って表面を均していくのです。

この作業では平米あたり約2,000円かかります。

●爆裂の補修費用

爆裂とは、クラックのような深いひび割れから雨水などが侵入し、内部の鉄筋にサビが生じた結果膨張し、外壁が内側から押し出されてしまっている状態のことです。

クラックが表面の乾燥などから起こるのに対し、爆裂は内側の鉄筋などの膨張によって起こります。

外壁に爆裂が起きている場合には、爆裂が起きている範囲のモルタルを徹底的に一旦撤去し、穴の空いた部分を新たにモルタルで埋めて補修を行ないます。

モルタルの除去と、新たなモルタルでの補修作業で1箇所につき約1,000円〜1,500円ほどが相場です。

ただし、モルタル部分だけではなく内部のラス金具が錆びていたり、防水シートにまで劣化が及んでいたりする場合には、錆び落としなどの作業が加わることで補修が広範囲になるため費用も高くなります。

■おわりに

今回は、モルタル外壁工事に関する行程や費用などについて詳しく説明していきました。

モルタル外壁塗装の費用は、利用する材料や仕上げ、また壁の面積などによっても違いが生じます。

さらに外壁の現状で補修が必要な場合には、追加で料金がかかるのです。

大きな欠損やひび割れがあれば、それだけで塗装以外にも補修作業が必要になる可能性が高くなります。

また外壁の経年劣化が大きければ大きいほど、洗浄などに時間がかかり費用がかかってしまう傾向があるのです。

費用を少しでもおさえるためにはこまめな点検作業も必要ですが、塗料の素材や耐久年数を考慮することも重要になります。

まずはこの記事を参考に、必要な行程をある程度把握しておくことをおすすめします。