外壁塗装を行う季節によってどのようなメリットやデメリットがあるのかを知識として身に着けておくと、より快適に工事期間を過ごすことができます。

どんな季節が塗装に向いているのか、また、逆にどんな時には塗装工事を避けるべきなのかについて説明します。

■外壁塗装は季節にやや左右される

基本的に外壁塗装工事は一年中いつでも行うことができますが、その作業の大部分は屋外で行われますから、工事はどうしても季節や気候の影響を受けます。

たとえば、同じ塗料でも季節や気候によって塗りやすさはずいぶん異なりますし、職人の作業のしやすさも季節や気候に左右される部分が大きいです。

また、大雪が降る、高頻度で台風が来るなど独特の気候条件のある地域では外壁塗装ができない期間が発生することもあります。

1.季節ごとに気候条件が異なる

  • 気温や湿度
  • 台風や積雪などの自然現象

などの気候条件は季節によって、そして住んでいる地域によっても大きく異なります。

例えば、秋には台風の接近が増えますが、台風がひんぱんに上陸する地域もあれば台風の影響をほとんど受けない地域もあります。

また、冬の積雪についても毎年雪害に悩まされる地域もあれば、数年に1度しか雪が降らない地域もあるといった具合に、同じ季節であっても住んでいる地域によって気候条件は大きく異なります。

こうした気候条件は

  • 塗料の伸びやすさ、塗装のしやすさ
  • 塗料が乾燥するまでにかかる時間

に大きく影響しますので、外壁の塗り替えを予定しているのならまずは自分が住んでいる地域の気候の特徴をよく把握しておきましょう。

 

また、建物の構造や生活習慣なども地域によってそれぞれ特徴がありますので、外壁塗装工事はそうした特徴に合わせて行います。

2.人の生活も季節で異なる

季節や気候が影響を及ぼすのは塗料や塗膜のコンディションだけではありません。

  • 室内での生活のしやすさ(施主サイド)
  • 屋外での作業のしやすさ(業者サイド)

など、塗装工事に関わる人たちの行動にも季節や気候は大きな影響を及ぼします。

 

外壁塗装を行う際には、家の周りは足場に囲まれて飛散防止ネットで家全体を覆われるだけでなく、窓やベランダ、庭木など塗装をしない部分は全て養生を施されてしまいます。

養生をしている間は窓を開けることもできず庭木に水やりをするのも難しいですから、どうしても不自由な生活を強いられがちです。

さらに、養生は窓や庭木だけではなく屋外に設置されているエアコンの室外機にも施されますから、工事期間中はエアコンも使用できません。

春や秋のように過ごしやすい時期であれば、窓を開けられずエアコンを使用できなくてもそれほど不自由を感じずに室内で生活できるかもしれませんが、真夏や真冬の場合には空調対策をしておかないと工事期間を快適に過ごしにくくなってしまいます。

 

また、気候条件は室内での生活のしやすさだけではなく、屋外で施工をする職人の労働環境にも直結します。

外壁塗装の工事はそのほとんどが屋外での作業ですから、気温が高すぎたり低すぎたりすれば作業効率に影響することもあるでしょう。

 

こうしたことから外壁塗装工事はどうしても春や秋に集中しがちなのですが、多くの人の受注が殺到する時期はどうしても工事の予約も取りづらいです。

外壁塗装は一年中行える工事ですが、工事を行うタイミングが施工しやすい時期であるか、また業者に依頼しやすい時期かなどもある程度意識しなければなりません。

■外壁塗装作業はなぜ季節の影響を受けるのか

外壁塗装は天候次第で全く作業が行えなくなることもありますから、作業に支障を与える天候の条件はぜひ覚えておいてください。

そのうえで、どの季節に自宅の塗装工事を行うのが一番適しているかを考えてみるとよいでしょう。

1.塗料の扱いやすさ

塗装工事自体は1年中いつでも行えるのですが、塗料の使用に際しては各塗料メーカーが気温と湿度に関してのルールを発表していて、次のような気候条件の場合には施工ができません。

  • 気温5℃以下の場合
  • 湿度85%以上の場合

塗料は気温が高くなるほどよく伸び、逆に気温が低くなると伸びが悪くなるという特徴があります。

当然、塗料がよく伸びれば塗装もしやすいですから、作業性も高まって施工ミスや塗り忘れが少なくなりますが、気温が低すぎると塗料が充分に伸びないので作業効率も悪くなりますし、何よりまず塗料が硬化するまでに極端に時間がかかってしまい、塗膜が正常に形成されにくくなります。

また、気温が低くなると結露が発生しやすくなりますが、外壁に結露が発生している時には塗装できません。

 

塗料は湿度が低い時には乾燥しやすいのですが、湿度が高くなりすぎると乾燥不良を起こし、つや引けやブラッシング現象が起こる恐れがあります。

  • つや引け…湿度の影響で塗膜が白くぼやけてしまう現象
  • ブラッシング現象… 湿度の影響で塗膜の表面に水分が付着してしまう現象

塗料が乾燥不良を起こしてしまうと外壁に密着できず、本来なら10年以上の耐久性がある塗料でも、耐用年数を待たず施工から3~5年程度のうちに塗膜のはがれや縮みといった劣化症状が現れます。

塗膜がはがれてしまったら外壁を保護できませんからまた塗装し直さなくてはなりません。

劣化しにくい塗膜が形成されるための気候条件は気温が15°~30°、湿度が75%以下といわれていますから、この条件を満たす時期を選んで外壁塗装を行いましょう。

2.工事を行えない天気がある

外壁塗装はどの季節でも行えますが、天候によっては工事を行えない場合があります。

●雨

雨は塗料の天敵ですので、降水量が多い地域にお住いの方は留意してください。

雨の時は塗料が乾燥しにくいですし、塗り替えた外壁の塗膜がしっかり固まる前に雨が降りかかってしまうと、塗料が流れ落ちたり硬化不良を起こしたりして正常な塗膜を形成できません。

また、雨の中で塗装作業をすると塗料に水分が混入してしまうこともあります。

塗料にはメーカーが定めた「希釈率」があり、この数値を守って薄めなければ質の悪い塗料になってしまいますから、水で薄めて使う水性塗料でもシンナーなどで薄めて使う溶剤塗料でも、雨水が塗料に混入してはいけません。

雨が降りそうなときには塗装作業自体を取りやめるのが普通ですが、「水性塗料なら雨が混ざっても平気」などととんでもないウソをついて雨でも工事を強行しようとする業者もいますから注意しなければなりません。

●気温が低い

気温が低くなると塗料の乾燥に時間がかかり、塗膜が正常に形成されにくくなりますので、気温が5℃を下回るような場合には塗装を避けなければなりません。

また、最高気温が5℃を超えると予想されていても、それが午後のわずかな時間だけだというような状況では塗料が乾燥しにくいですからやはり塗装は避けるべきです。

気温が極端に下がりさえしなければ塗料は使用できますが

  • 伸びが悪くなるためやや扱いにくい
  • 塗料の乾燥が遅い

などのデメリットが増えます。

さらに、気温が低くなると夜間に外壁や屋根に結露が発生しやすくなって、塗料の乾燥に時間がかかります。

塗装面がしっかり乾くまでは次の作業が行えないため、気温の低い時期は工事が延長される可能性があるという点に注意してください。

●積雪

雪は水分という意味では雨と同様に危険ですが、気温がかなり低くなることも注意点として挙げられます。

積雪時の気温の目安は3℃以下だといわれていますから、雪が降っている時には塗装工事を行えません。

また、積雪すると足場が安全に設置できませんし、足場の上に雪が積もって凍結すると転倒のリスクが高まって非常に危険です。

●気温が高い

気温が低いと塗料が乾燥しにくく塗膜にも影響が及ぶことがありますが、気温が高ければ塗料の伸びが良くなるので作業効率が上がりますし、塗料の乾燥も早いですから塗装作業を行うには適しているといえます。

ただ、気温が高いと塗料のコンディションはよくなりますが、施工箇所が非常に高温になることが多く、特に屋根などは日中には触れないほど熱くなってしまい作業が行えなくなる場合もあります。

●強風

気温や湿度ばかりでなく、外壁塗装工事では強風にも気をつけなければなりません。

強風時にあおられると事故や施工ミスにつながってしまうこともありますので、高所での作業は避けるべきです。

また、強風の時に足場まわりの養生シートを張ったままにしていると風であおられて足場が倒壊したり鋼材が外壁にぶつかったりする恐れがあります。

台風接近時や強風時は安全のために必ず養生シートを収納しなければなりません。

■季節別のメリット・デメリット

外壁塗装を行う場合の季節事のメリット・デメリットについて説明します。

1.春のメリット・デメリット

春は外壁塗装業者にとっても施主側にとっても過ごしやすい季節で、塗装工事のベストシーズンであるといえます。

●春のメリット

一年の中で特に気候が安定しているので塗料が乾燥しやすいです。

屋外で作業する職人にとっても、窓を閉め切って生活をしなければならない施主側にとっても負担が最も少なく、梅雨時でなければ湿度の心配もありませんから、外壁塗装をするには非常に適した季節だといえます。

●春のデメリット

春は気候が安定していて塗装工事を希望する人も多いので業者側も繁忙期に入ってしまいますから、早めに工事の計画を立てないと塗装工事の予約を取るのが難しくなることもあります。

また、年度初めは業者自身もスタートダッシュをかけるため、あちこちでキャンペーンが行われます。

ただ、塗装工事のキャンペーンがあまりにも多いと、どの業者に工事を依頼すればよいか迷ってしまうというデメリットが生じます。

そのような場合は、気に入った業者、目についた業者にとりあえず電話してみて対応が良かったところなどで決めるのも良いでしょう(判断に迷った場合は、一括見積もりサイトなどに相談しましょう)。

なお梅雨入りしてしまうと雨のために工期が長引きがちですので、梅雨に入る前に塗装工事を終えられるようお住まいの地域の梅雨入りの時期を把握しておくとよいでしょう。

2.夏のメリット・デメリット

夏は春や秋よりも塗料が乾燥しやすいので作業を早く進められますが、暑さ対策が欠かせないなど、メリット・デメリットともに大きいのが特徴です。

暑さに対する対策をしっかり立てられれば冬と違って外壁塗装ができなくなるようなことはありません。

●夏のメリット

夏は日照時間が長いので作業時間を充分に確保できます。

また、塗料がよく伸びるため塗装がしやすく施工ミスも起きにくいですし、塗料の乾燥が早いので作業が順調に進みやすいというメリットがあります。

●夏のデメリット

暑さのために屋根などが高温になって登れなくなってしまうと作業時間が限られてしまうこともありますし、外壁などの塗面の温度が高くなりすぎると塗膜がうまく形成されません。

暑さと闘いながらの作業は職人にとっては負担が大きいですから、熱中症などにならないよう充分な配慮が必要です。

また、養生で窓やベランダが覆われると室内は高温になりますが、大抵の場合、工事中は窓も開閉やエアコンも使用はできないので非常に過ごしにくいです。

3.秋のメリット・デメリット

秋も春と同様に気候が安定しているので塗装工事をするにはとても適した季節です。

ただし、台風が接近しやすい季節でもあるので工事のタイミングに注意しましょう。

●秋のメリット

気候が安定しており空気も乾燥しているので塗装が行いやすいです。

●秋のデメリット

秋は気候が安定していて塗装工事にはとても適した季節なのですが、台風が接近すると工期が延長される可能性が高まります。

また、少しずつ日照時間が短くなってくるので作業時間が限られてくる点にも注意が必要です。

4.冬のメリット・デメリット

夏の場合は対策さえ立てられればどの地域でも塗装工事を行うことができますが、冬の場合、積雪の多い地域などでは春まで塗装工事そのものが行えないこともありますので注意が必要です。

●冬のメリット

一年のうちで最も空気が乾燥しているので、塗料が湿度に影響されず塗膜の質が安定しやすいです。

また、養生で窓が密閉されていても問題なく過ごせる場合が多いのも大きなメリットです。

●冬のデメリット

冬は日照時間が短いので作業時間が限られてしまいます。

塗装は気温と湿度に影響されるので、気温が5℃以下になれば塗料が使用できませんし、夜間に結露が発生するようなことがあればしっかり乾くまで作業をスタートできません。

また、積雪があると足場が設置できなくなったり足場に上れなくなったりして長期間作業を延期せざるを得ないケースも出てきます。

東北や北海道などの豪雪エリアで雪の降る時期には工事の受注自体を受け付けていない業者が多いのもそのためです。

 

そのようなエリアにお住いの場合は、冬を迎える前に外壁塗装工事を終えておくようにしましょう。

■おわりに

外壁塗装工事は、塗料の使用に関するルールさえ守っていれば1年中どの季節でも行うことができますので、自分にとってのベストシーズンに向けて外壁塗装工事の準備を進めていきましょう。

大切なのは、季節や気候が外壁塗装工事に及ぼす影響について施主自身が理解していること、そして、お住いの地域の気候条件を熟知している地元の信頼できる業者に工事を依頼することです。