「自分の家の外観を眺めて、もうそろそろ塗り替えどきかな?」と思うこともあれば、「前回の塗装から何年も経っているけどまだまだ大丈夫!」と思うこともあるかもしれません。

勘や外観だけに頼るのではなく、賢く適切なタイミングで外壁塗装リフォームを行うためには外壁塗装の「耐用年数」に関する幾つかのポイント理解しておく必要があります。

■外壁塗装には耐用年数がある

外壁塗装に使われる塗料には耐用年数が設定されています。

もちろん塗装の劣化は塗料の品質だけでなく、土地ごとの環境や気候によっても異なりますが、塗料に設定されている耐用年数が次の塗替えまでの期間を計る最も重要な目安になります。

大まかに「耐用年数=次の塗装までのおよその期間」と考えることができるでしょう。

1.選んだ塗料のグレードで耐用年数は変わる

外壁塗装で使用される塗料はグレードごとに耐用年数も異なります。

効果的な塗料選びのためにも、代表的な塗料別のおよその耐用年数と相場価格を確認しておきましょう。

●アクリル塗料

  • 耐用年数:5~8年
  • ㎡あたりの価格相場:1,500~1,800円

光沢感・発色が良く鮮やかで、なおかつ安価なのが特徴です。

しかし耐用年数が短いことから、現在は外壁塗装リフォームで選ばれることはほとんどありません。

●ウレタン塗料

  • 耐用年数:8~10年
  • ㎡あたりの価格相場:2,000~2,400円

柔らかくて施工性が良く、塗装に高い技術を必要としないため、業者の技術によって仕上がりに差がほとんど出ません。

塗装後も塗膜には弾力が保たれるので下地が多少ひび割れても塗膜が破損しにくいのも特徴です。

耐用年数はあまり長くありませんが、シリコン系塗料と比べるとリーズナブルなため人気のある塗料です。

中には「防カビ性」や「環境にやさしい」というメリットが追加されたウレタン系塗料もあります

●シリコン塗料

  • 耐用年数:10~15年
  • ㎡あたりの価格相場:2,800~3,200円

耐用年数が約10〜15年とウレタン系塗料よりも十分な耐久性がありながらもさほど高額でないことから、現在もっとも人気のある塗料です。

紫外線に強く光沢も長持ちします。

●ラジカル塗料

  • 耐用年数:14〜18 年
  • ㎡あたりの価格相場:3,000~4,000円

太陽光によって発生し塗膜にダメージを与える「ラジカル」と呼ばれる物質の発生を抑える塗料です。

そのため「ラジカル制御型塗料」、あるいは含有する素材から名付けられた「ハルスハイブリット」、「ハイブリッド塗料」という名称でも知られています。

シリコン塗料よりも少し高額になりますが、耐用年数の長さも計算に入れるならばコストパフォーマンスは決して悪くありません。

●フッ素塗料

  • 耐用年数:15~20年
  • ㎡あたりの価格相場:4,200~4,500円

今回ピックアップした塗料の中でもっともグレードの高い塗料です。

この塗料の主原料であるフッ素樹脂は紫外線でほとんど劣化しない上に高温にも低温にも強く、高額ではあるものの非常に高い耐久性を期待できます。

数年前までは主に高層ビルや商業施設などに使われる高級塗料でしたが、最近では大手塗料メーカーが一般住宅用の塗料も販売するようになりました。

 

フッ素系塗料以上の耐久性で、16〜22年ほど耐用年数を誇る、機能性塗料の一種「光触媒塗料」という塗料もあります。

2.耐用年数が無期限の塗料は存在しない

どんなに高機能な塗料であっても、遅かれ早かれ徐々に劣化していきます。

一般的な外壁リフォーム業者が「メンテナンスフリー」という言葉を使うこともありますが、永久にメンテナンスがいらないという意味ではなく、かなりの長期間メンテナンスが不要である、という意味で使われているに過ぎません。

 

永久に塗り替えなくていい、という意味で「メンテナンスフリー」という言葉を使う悪徳業者の営業もいますが、そんな事はありません。

不当な方法で高額な契約を結ぼうとする訪問販売業者には十分注意しましょう。

 

劣化した塗料は外観が悪くなるだけでなく、家屋自体を様々なダメージから守れなくなっています。

外壁塗装の劣化を放置しておくならダメージは蓄積して下地材にまで及んでしまうことも。

そうなってしまうと補修工事にはより費用がかかってしまいますのでどんなハイグレードな塗料で塗装した場合にもメンテナンスは欠かさないようにしましょう。

■耐用年数を過ぎた塗料はどうなるのか

耐用年数を過ぎた塗料は本来の性能をかなりの程度失っており、それは様々な劣化症状として表れます。

いずれの症状も建物自体のより深刻な問題に繋がりますので、耐用年数に合わせて適切なタイミングで塗り替える必要があります。

1.経年劣化により外壁を守れなくなる

耐用年数を過ぎた塗料は見た目だけではなく機能的にも劣化していきます。

塗料が劣化すると、具体的には下記のような性能の低下が現れます。

●耐候性

紫外線や風雨からくるダメージに対抗する性能のことを耐候性と言います。

家屋のもっとも外側で常に外気に接している外壁塗料には重要な性能ですが、耐用年数が経過した後の塗料はこの耐候性を期待できず、ダメージがサイディングや壁の内部にまで及んでしまう恐れがあります。

●耐水性

耐候性と似た言葉ですが、耐水性は特に塗膜の撥水・防水性能を指す言葉です。

新しい塗膜は雨水を弾き、硬化した塗膜の内部にも水が染み込んでくるのを防ぐことができますが、紫外線や熱によりこの耐水性が失われると表面に湿気を好むカビやコケなどが発生しやすくなってしまいます。

●密着力

塗膜が外部からのダメージから家を守るためには、塗膜と外壁材がしっかりと隙間なく密着していることが必要です。

しかし、経年劣化により密着力が落ちると徐々に塗膜が下地から浮いて剥がれたり、湿気によって膨れ上がったりして外壁を十分に保護できなくなっていきます。

●色味

外壁塗装の劣化が一番わかりやすいのが色味でしょう。

塗り終わった直後にはきれいだった塗料も、紫外線によって当初の艶や鮮やかさが徐々に失われていきます。

2.劣化した塗料の主な症状

塗料が劣化すると下記のような症状があらわれます。

●チョーキング現象

きれいに見える外壁もでも表面に触れるとパウダー状の汚れがつくことがありますが、これがチョーキング現象、もしくは白亜化といいます。

これは塗膜が長時間紫外線にさらされることにより徐々に分解され、顔料が浮き出ている状態です。

塗膜は本来の結合力を失い塗膜の耐久力が大きく低下していることの表れです。

●色あせ

上記のチョーキング現象と同様に、紫外線によるダメージによって顔料が劣化し当初の光沢や鮮やかさが失われている状態です。

どの程度の期間塗面の色鮮やかさや光沢を保てるかを、光沢保持率というグラフでカタログやパッケージに記載している塗料もあります。

光沢保持率が80%を下回ると耐用年数を過ぎたとみなされます。

●剥がれ

経年劣化により塗膜の密着力が低下すると、下地材のごくわずかな伸縮や、細かなひび割れ、またひび割れから侵入する湿気などによって、塗膜が浮き上がったり剥がれたりする症状が現れます。

見た目が悪いだけでなく外壁の内側にダメージが進行しているので対応を急ぎましょう。

●カビやコケの繁殖

耐水性を失った外壁には、湿気を好むカビやコケや藻が発生しやすくなります。

これも美観を損ねるのみならず、建物の腐食や健康への悪影響も懸念されます。

■耐用年数に合わせて塗り替えを計画しよう

耐用年数は外壁塗装リフォームがいつ行うべきかを予測する上での重要な指針になります。

次回の塗替えがいつになるか、そのタイミングを考慮しながら塗装を計画することが重要です。

1.前回使用した塗料の耐用年数が塗替えのタイミング

前回の塗装がいつ、どんな塗料で行われたかを把握しておけばその塗料の耐用年数から次の外壁塗装がいつになるかを計算することができます。

そのタイミングを理解しておけば、費用やスケジュールなどを前もって賢く準備しておくことができるでしょう。

外壁塗装リフォームを行うときは次の塗装までのことも視野に入れて無理のない計画を立てることは、長きに渡り家を美しく快適に保つために大切です。

 

また新築の家であれば最初の塗装に安価で耐用年数の短いアクリル系塗料が使用されている可能性が高いため築5〜7年程度での塗替えを計画しておくと良いかもしれません。

2.劣化が起きる前に塗り替えを

外壁塗装の劣化を軽く見ることはできません。

そのままにしておくならば、保護すべきより重要な部分であるサイディング、柱、屋根材などに雨漏り、腐食、反りなどの深刻なダメージが生じ、家の内側の石膏ボードやクロスなども傷んでしまう可能性があります。

そうなると塗替えにも高額な壁材補修工事費が必要になり、修繕費は非常に高額になってしまいますので、耐用年数が近づいてきたら早めに専門家へ建物診断を依頼するようにしましょう。

■おわりに

外壁塗装は大切なマイホームの寿命を大きく左右します。

塗装のメンテナンスは頻繁に行うものではないために、むしろしっかりと計画して賢く実行する必要があります。

いつ塗り替えを行うか、次はどんな塗料を選ぶかといった非常に重要な選択で失敗しないためにも「耐用年数」という指標をしっかり理解しておきましょう。