都市部などでは広い住宅地を確保するのが非常に困難なこと、また住宅の建築技術が向上したことなども手伝って、近年では3階建て住宅が大きな人気を呼んでいます。

土地が狭くても空間をシステマチックに利用できるのが3階建て住宅の魅力ですが、 いざ外壁塗装の工事をしようと考えたとき、平屋住宅や2階建て住宅と比べて費用面ではどのくらいの違いが生じるのでしょうか?

■3階建ての塗装費用はどれくらいか

このところ3階建て住宅が増えているとはいいますが、そうはいってもやはり住宅の主流は2階建てであり、見かけるリフォームなどの相場価格も2階建て住宅向けのものがほとんどです。

そのため、3階建て住宅の外壁塗装の費用を分かりやすく解説している情報は確かに見つけるのが難しいです。

しかし、塗装費用は塗装面積に比例しますから、塗装面積さえ分かれば塗装費用を割り出すのはそれほど難しいことではありません。

そこで、3階建て住宅の塗装費用の相場はどれくらいなのだろうとお悩みの方に向けて建物の面積から塗装費用を求める方法をご紹介したいと思います。

1.3階建ては2階建てよりも塗装費用が高くなりやすい

3階建て住宅は、平屋建てや2階建て住宅と比べて1~2フロア増えて外壁面積も広くなるわけですから、単純にその分塗装費用も高くなると考えるのが一般的です。

外壁面積が広くなれば塗料代が増えるのはもちろんですが、塗料だけではなく下地補修費用や高圧洗浄代など塗装工事の各項目の費用も増えるものだと考えてください。

また、建物の高さが高くなりますから、補修に使用する足場費用も余分にかかると思われます。

しかし、価格相場は建物の面積によって変わるので、こじんまりとした3階建て住宅の場合には広い平屋建てや2階建ての家よりもかえって塗装価格が安く済むということももちろんあるわけです。

つまり、建物が何階建てかということによって費用が変わるわけではなく、あくまで建物の面積によって塗装費用が決まるのだということをまずよく理解しておきましょう。

2.外壁塗装費用は面積から調べることができる

建物の坪数が分かっていればおおよその塗装費用を計算できるのは先に説明したとおりです。

3階建ての住宅の場合だとまだ施工例自体がそれほど多くないため、参考にできるような施工例を見つけ出すのはなかなか大変ですが、計算で求めることができるならわざわざ苦労して似たような施工例を探し回る必要もありません。

なぜ建物の坪数から塗装費用を予測できるのかといえば、 建物の坪数からおよその外壁の面積を計算できるからなのです。

そして、外壁塗装工事においては「施工単価」というものがあり、 平米あたりにかかる大体の費用が分かるので、外壁面積に施工単価をかければおおよその塗装費用を割り出すことができるのですね。

ただし、坪数から計算する外壁面積はあくまで概算値ですのでその点は覚えておいてください。

■3階建ての建物の平均的な大きさ

では、平均的な3階建て住宅の大きさとはいったいどのくらいなのでしょうか?

1.3階建ての平均的な坪数

住宅を3階建てにする理由は

  • 豪雨や台風などの水害対策のため
  • 2階建て住宅とは異なる眺望や開放感を手に入れるため
  • 店舗や趣味など居住スペース以外の空間を作り出すため

などいろいろありますが、その平均的な面積はおよそ40坪程度だといわれます。

ただ、最近は限られた敷地を有効活用するために3階建て住宅を建設するケースが増えてきており、その場合は30坪前後と通常の2階建て住宅の面積と変わりありません。

ただし、この場合の坪数とは建築面積(1階の床面積がほぼ建築面積)をさす建坪ではなく、建物の各階の床面積の合計をさす延坪であることに注意してください。

 

3階建て住宅の延坪が分かれば後は簡単です。

一坪はおよそ3.3 ㎡なので、延坪に3.3をかければ延床面積を求めることができますし、延床面積が分かればその値から塗装面積を計算することもできます。

2.3階建ての平均的な塗装面積

それでは試しに延床面積から計算式を利用して外壁の塗装面積を割り出してみましょう。

延床面積から塗装面積を算出するには、次の計算式を使用します。

延床面積(㎡)×1.1~1.4(係数)

係数は建物の規模によって1.1~1.4の数字を代入しますが、塗装面積が大きい場合には係数は小さい数値を当てはめた方が実測値に近くなりますので、3階建て住宅の場合はできるだけ小さい数値を使用してください。

この計算式を使用すれば2階建て、3階建てに関わらず建物の塗装面積を求めることができます。

ですが、これはあくまでもおおよその塗装面積を求めるための計算式ですので参考程度にとどめておいてください。

実際に塗装業者が塗装面積を出す場合は、

  • 外壁部分をきちんと計測して塗装面積を計算する
  • 図面を見て計算から塗装面積を導き出す

のいずれかの方法を利用して正確に塗装面積を測ります。

 

ただ、自分である程度の塗装面積を計算することができれば、見積書に記載された塗装面積が適正であるかどうかを判断することもできます。

業者の中には塗装面積を大きく見積もって過大な塗装工事代金を請求するような悪徳業者もいますので、依頼する側もある程度の知識は身につけておくために塗装面積を求める計算式をご紹介しました。

●3階建ての塗装面積の求め方

では、実際に計算式を利用して3階建て住宅の塗装面積を計算してみましょう。

平均的な3階建て住宅の坪数を40坪程度とした場合、まず坪数から延床面積を計算します。

一坪はおよそ3.3㎡ですから、

40(坪)×3.3(㎡)=132㎡

これが40坪の住宅の延床面積です。

3階建て住宅の場合は塗装面積が大きくなりますので、この数字にかける係数は小さめの数値を使用します。

132(㎡)×1.2(係数)=158.4㎡

 

以上の計算から、平均的な3階建て住宅の塗装面積はおよそ158㎡であるといえます。

また、もう一例、狭い土地を活用して建てられた坪数30坪の3階建て住宅の塗装面積ではどうでしょうか?

30(坪)×3.3(㎡)=99㎡

99(㎡)×1.2(係数)=118.8㎡

およそ119㎡と計算されました。

なお、計算式で延床面積に掛け合わせた係数ですが、これは玄関ドアや窓といった塗装を施さない部分を差し引いた引くための数値です。

ですからこの158㎡、119㎡という面積は、ドアや窓の面積を除いた純粋な塗装面積であることも覚えておくとよいでしょう。

■選んだ塗料次第で塗装費用は異なる

外壁の面積によって塗装の工事費用が大きく変わってくることが分かりましたが、その他、塗装工事に使用する塗料によっても塗装代金は大きく異なります。

そこで、塗料のグレード別の施工単価やその他の作業費用の施工単価についても少し理解を深めておきたいと思います。

1.外壁塗装に使用する塗料は主に5種類

塗料の種類はいろいろありますが、主に以下の5種類がよく使用されています。

  • アクリル塗料
  • ウレタン塗料
  • シリコン塗料
  • ラジカル塗料
  • フッ素塗料

それぞれの塗料の特徴について簡単に説明していきます。

●【アクリル塗料】

耐用年数:5年~8年程度、価格:1,000~1,500円/㎡

メリット

  • 低価格である
  • 発色が良く変色しにくい

デメリット

  • 耐用年数が短く、劣化しやすい
  • 水分を通しやすいので外壁にあまり向いていない

●【ウレタン塗料】

耐用年数: 7年~10年程度、価格:1,800~2,200円/㎡

メリット

  • 比較的低価格である
  • アクリル塗料よりもツヤがあり、仕上がりが良い

デメリット

  • 変色しやすい
  • 他の塗料に比べ紫外線に弱い

●【シリコン塗料】

耐用年数:10年~15年程度、価格:2,500~3,200円/㎡

メリット

  • アクリル塗料やウレタン塗料よりも耐用年数が長く、価格と耐久性とのバランスが良い
  • ツヤのある仕上がりで光沢がある程度持続する

デメリット

  • シリコンの含有率によって性能が大きく異なる

●【ラジカル塗料】

耐用年数:10年~15年、価格:3,500~4,200円/㎡

メリット

  • チョーキングや色あせに強い
  • シリコン系塗料と比べ高い耐候性がある

デメリット

  • 比較的新しい塗料なので、想定されている耐久性が実際にあるかどうかの実績に乏しい

●【フッ素塗料】

耐用年数:15年~20年、価格:4,000~5,000円/㎡

メリット

  • 耐用年数が非常に長い
  • 高級感のある仕上がりが期待できる

デメリット

  • 価格が高い

ただ一口に塗料と言っても様々な種類があり、塗料のグレードによって価格帯も随分異なることがわかります。

2.同じ塗装面積でも塗料が違えば費用は変わる

グレードによって塗料の価格は異なりますから、同じ塗装面積であっても選ぶ塗料によって塗装工事金額は大きく違ってきます。

また同じ塗料でもその中でさらにグレードの違いがあったり、塗料メーカーによる成分の相違があったりすれば価格は異なりますし、水性塗料か油性塗料かによってもやはり価格は異なります。

例えば、塗装面積が同じ150㎡の住宅の外壁塗装をする場合でも、

  • シリコン塗料で塗装した場合…150(㎡)× 2,500~3,200(円)=375,000~480,000(円)
  • フッ素塗料で塗装をした場合…150(㎡)× 4,000~5,000(円)=600,000~750,000(円)

と、これだけ価格に違いが出てきます。

施工単価が異なるだけでざっと30万円近い費用差が生じます。

塗装工事を検討する際にはこの施工単価の違いにも注意を払わなければなりません。

●足場代などの諸費用も忘れずに予測する

また外壁塗装工事では塗装の他にも足場の設置や高圧洗浄、そして細かな下地の処理など実に様々な費用が発生しますので、塗装の施工単価だけではなくこれらの作業の施工単価についてもよく理解しておくことが大切です。

主な作業項目の施工単価は以下の通りです。

  • 足場設置費用:700~1,500円/㎡
  • 高圧洗浄費用:150~200円/㎡
  • 養生費用:300円/㎡
  • 下地調整費用:1,000~3,000円/㎡
  • 下塗り費用 :600~900円/㎡

塗装工事にかかる価格の概算を出す場合には、これら各作業工程の施工単価も考慮して計算していけばより実際の見積もり金額に近づいていくはずです。

それぞれの作業項目の施工単価を知っておくことは、単にどれくらいの費用が外壁塗装工事にかかるか予想を立てるためだけでなく、専門的な知識を持たない消費者を騙そうとしている悪徳業者から身を守るためにも非常に有用だといえます。

■おわりに

3階建て住宅は最近でこそ随分増えてきていますが、メンテナンスについて考える場合のサンプルが豊富ではありません。

しかし、簡単な知識が備わっていればある程度自分で見積もりを立てることも難しくはないのだということがお分かりいただけたと思います。

3階建て住宅は平屋や2階建てと比べてメンテナンス費用やリフォーム費用も大きくなりがちだからこそ業者にすべてを任せてしまうのではなく、ある程度自分でコスト管理することが重要だといえるのではないでしょうか?