ガルバリウム鋼板は、外壁材としても屋根材としても使用する家が増えつつある人気の建材です。

 

金属特有のシャープな見た目を持ちながら、金属の弱点である錆びに強いという優れたメリットを持つガルバリウム鋼板ですが、当然デメリットもありますので選ぶ前に知っておく必要があります。

 

この記事ではガルバリウム鋼板の特徴も踏まえながら、メリットとデメリットについて解説します。

■ガルバリウム鋼板とはどのような建材か

ガルバリウム鋼板は表面がめっき加工された金属系の外装材です。

鋼板の表面が

  • アルミニウム55%
  • 亜鉛4%
  • ケイ素6%

の比率でめっき加工されており、亜鉛が犠牲防食作用によって錆びの進行を防ぎます。

 

ガルバリウム鋼板が登場する以前にもブリキやトタンといった金属製の外装材は登場していましたが、すぐに腐食してしまうため耐久性は高くありませんでした。

 

雨水という金属系外装材の弱点を克服するために開発されたのが、今回ご紹介するガルバリウム鋼板です。

■ガルバリウム鋼板のメリット

ガルバリウム鋼板は耐久性が高いだけでなく、他の外装材にはない様々なメリットを持っています。

1.軽量で家に負荷がかからない

ガルバリウム鋼板のメリットは何と言っても軽量ということです。

頭が重い家ほど地震で大きく揺れてしまいますので、屋根の軽量化は新築においてもリフォームをする際にも重要なチェック事項の一つです。

 

ガルバリウム鋼板は瓦の1/8~1/9の重量ですので屋根材に非常に適しています。

また、この軽量さを活かして重ね葺き(カバー工法)をすることも可能です。

重ね葺きとは既存の屋根材を剥がさずに新しい屋根材で覆うことで、解体費用や産廃処分費用がかからず簡単にリフォームすることができます。

ガルバリウム鋼板で重ね葺きしても屋根の重量は2トンほどにしかならず、柱や梁などの構造材には影響しないため耐震性も確保できます。

 

ただし重ね葺きは瓦屋根の家では行えず、屋根下地の状態をチェックできないというデメリットがあります。

2.従来の金属材に比べて耐久性が高い

沿岸部に近い家は海からの潮風で錆びやすいため、トタン材などの金属素材で家を保護することは無謀でしかありませんでした。

しかしガルバリウム鋼板は錆びの進行が非常に遅いため、潮風による塩害を受けやすい地域でも施工が可能です。

 

ただし海岸のすぐ近くや海水がかかる場所など塩害が特にひどい地域では、一部メーカーは保証を発行しないことがあります。

(塩害地域での保証については「デメリット」の項目で解説します)

3.作業性が高く施工しやすい

ガルバリウム鋼板は現場での作業性に優れています。

「作業性」とは扱いやすく手間がかからないという意味ですが、軽量で薄いパネル状のガルバリウム鋼板は、運搬時の傷にだけ注意すれば比較的扱いやすい建材です。

モルタル外壁のようにコテで塗って作っていく壁と違って工期もぐんと短くなります。

 

また、専用の工具で加工も容易にできるため様々な形状の外壁に対応しています。

ただし現場で加工した箇所から錆びが生じた場合は保証の対象外となってしまうため注意が必要です。

 

そのほか、ガルバリウム鋼板は瓦と違って低勾配でも急勾配でも設置でき、さらに瓦風の見た目も選べますので、外観デザインの選択肢が広がります。

4.金属ならではのシャープな外観

ガルバリウム鋼板の最もわかりやすい特徴といえば、金属が持つシャープで光沢のある見た目です。

特に陸屋根の家や片流れ屋根の家などは、おしゃれな直線のフォルムをガルバリウム鋼板の光沢でさらにスタイリッシュにする手法が人気を集めています。

 

ただしガルバリウム鋼板の光沢のある見た目は「倉庫のようで陳腐」「ギラギラしていて落ち着かない」と感じる人もいます。

ガルバリウム鋼板の中にはリシン調模様やレンガ風模様といったやや穏やかな見た目の商品もありますので、シャープさを抑えたい方はそのようなタイプを選ぶとよいでしょう。

■ガルバリウム鋼板のデメリット

メリットがたくさんある人気のガルバリウム鋼板ですが、いくつかのデメリット面も存在します。

 

ガルバリウム鋼板を選ぶうえで必ず覚えておかなければならないのが、ガルバリウム鋼板は「従来の金属製素材に比べて錆びにくく耐久性が高い」というだけで、メンテナンスフリーの建材ではないということです。

1.断熱材とセットでの施工が前提

ガルバリウム鋼板は約0.25~0.5mm厚の非常に薄い素材ですので、断熱性に欠けるという弱点があります。

さらに金属素材のガルバリウム鋼板は熱伝導率も高く、夏場は素材自体の温度が約80℃~90℃まで上がります。

 

そのため、通常は断熱材を同時使用しなければなりません。

断熱の選択肢としては、ガルバリウム鋼板を設置する屋根下地に断熱シートやグラスウールを敷く外断熱(屋根断熱)のほか、断熱材がセットになったタイプのガルバリウム鋼板を選ぶ方法などがあります。

あるいは小屋裏に断熱材を敷き詰める天井断熱なども行えますので、家の形状に応じて工法を見極めてくれる施工業者選びが大切です。

2.錆びを防ぐメンテナンスが必須

これまで金属屋根材に使われていた亜鉛鋼板(いわゆるトタン屋根)などは錆に弱く、長期間のメーカー保証を付けるのが難しい状態でした。

一方防食性が高いガルバリウム鋼板は長期保証が可能ですが、絶対に錆びないわけではありません。

 

錆びにくいのはあくまでも表面のめっき合金部分であり、施工時にカットした断面や表面の傷などから雨水が入り込めば、ガルバリウム鋼板でも錆びが拡がってしまいます。

あるいは他の錆びた金属にガルバリウム鋼板が触れて「もらい錆び」が発生したり、風で舞った鉄粉を取り込んで錆びたりすることもあり、施工時はこれらを防ぐよう十分配慮しなくてはなりません。

 

また、錆びを長期間放置すると穴が開く事もあり、塗装では補修できず部材そのものの交換となりメンテナンスコストが高くなってしまいます。

3.雨音が響きやすい

ガルバリウム鋼板は外壁だけでなく屋根材としても使用できますが、硬い金属に雨が落ちると金属音が室内に響くことになります。

 

雨音のデメリットを理解したうえでガルバリウム鋼板を屋根材に選ぶのと、施工した後に「やけに屋根がうるさい」と感じるのとでは、後者の方が圧倒的に不快に感じるものです。

 

そのためガルバリウム鋼板を使って新築した家では、雨音を吸収する遮音材や断熱材を屋根裏に入れる防音リフォームが行われることがあります。

4.地域によっては施工に注意が必要

ガルバリウム鋼板は施工地域の気候に左右されやすい外装材です。

特に金属系サイディングの天敵である錆びが起きやすい塩害地域では、他の外装材を検討する必要も出てくるでしょう。

●塩害地域では保証が発行されないことがある

ガルバリウム鋼板は塩害地域では保証期間が短くなったり、保証不可になっていたりすることがあります。

例えば、ガルバリウム鋼板の主要メーカーとして知られるアイジー工業株式会社では、「海岸線より5km以内の地域、及び塩害地域」は保証の対象外としています。

 

塩害地域に該当するかどうかは各ガルバリウム鋼板メーカーが出している基準によって異なります。

●雪止め処理が必須

通常、積雪しやすいエリアでは屋根材に雪止め用の金具を取り付けますが、ガルバリウム鋼板の表面はツルツルしているため、屋根に降った雪がさらに滑りやすくなるという性質があります。

 

また、スレート屋根などは経年劣化で徐々に表面に凹凸が生じて雪が滑りにくくなります。

しかしガルバリウム鋼板はツルツルの状態が残り続けるため雪止め金具が必須です。

 

ただし積雪量が特に多い豪雪地域では雪止めをすると屋根に雪が溜まり、躯体に負荷をかけてしまいますので雪止め部材は取り付けません。

■おわりに

ガルバリウム鋼板はこれからますます主流になると考えられる外装材です。

 

デメリットもいくつかありますが、発生原因や対処法があらかじめわかっていれば事前に対策できるものばかりです。

 

見た目のスタイリッシュさや工期の短さといったメリット面だけでなく、金属素材ゆえの熱伝導率の高さや錆びといった欠点も踏まえたうえで選ぶようにしましょう。