住んでいる地域に災害が発生した時に、自身の家も被災し、外壁や屋根が破損してしまったという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

 

災害はいつ発生するか分からないため、住宅の外壁や屋根がいつ破損してしまうかも分かりませんし、その被災を受けて破損した住宅の修繕工事費用も、いつ、いくら発生するか分からりません。

 

しかし、災害発生前に住宅の火災保険を契約しておき、災害後に保険金を受け取ることができれば、自然災害で住宅が破損したとしても、できるだけ少ない費用負担で住宅の補修を行うことができます。

 

この記事では

  • 火災保険の基礎知識や補償範囲
  • 火災保険の具体的な保険会社名
  • 火災保険の保険金を受け取るまでの流れ
  • 火災保険が適用されるケースと適用されないケース

などについてまとめています。

火災保険の基礎知識

日本の場合は、どの都道府県に住んでいたとしても、大雨、大雪、台風などの災害にあい、住宅の外壁や屋根が破損する可能性があります。

そのような災害後に、住宅の補修にかかる工事費用を補償してくれる保険が火災保険です。

 

住宅の火災保険は、補償の範囲や住宅の規模などで以下のように分類されます。

  • 「住宅火災保険」・・・火災、落雷、爆発、雪災、ひょう災などによる住宅の損害を補償する保険
  • 「住宅総合保険」・・・住宅火災保険の補償内容に加えて水災、盗難、破壊行為、落下物などによる住宅の損害を補償する保険
  • 「オールリスクタイプ火災保険」・・・住宅火災保険や住宅総合保険よりも広範囲の損害を補償範囲としており、家のタイプごとに細かく補償範囲を設定できる保険
  • 「店舗総合保険」・・・火災、落雷、風災、雪災、水災による店舗の損害を補償する事業者向けの保険
  • 「団地保険」・・・分譲マンション、公共団地、アパートなどの住宅の損害を補償する保険

火災保険にはさまざまなプランがある

火災保険のプランには、

  • 免責方式(エクセス方式)・・・自身で自己負担額を定めて、修理費用から自己負担額を引いた保険金を受け取れる
  • フランチャイズ方式・・・災害による損害額が一定額以上の場合に保険金を受け取れる(ほとんどどの場合、一定額が20万円であることから、20万円フランチャイズ方式と呼ばれる)

などの種類があります。

 

災害による損害額が15万円の場合と30万円の場合を例として、それぞれの方式で保険金として受け取れる金額と自己負担額をまとめたものが以下です。

損害額 20万円フランチャイズ方式 免責方式
損害額が
15万円
の場合
保険金受取:0円

自己負担額:15万円

保険金受取:10万円

自己負担額:5万円

損害額が
30万円
の場合
保険金受取:30万円

自己負担額:0円

保険金受取:25万円

自己負担額:5万円

上記の通り、20万円フランチャイズ方式は、住宅の修理費用が20万円以下であった場合は保険金を受け取ることができません。

 

数十年前まで、一般家庭の火災保険では、20万円フランチャイズ方式が主流でしたが、今現在では、免責金額が設定されている免責方式の火災保険が主流です。

 

また、自身で免責金額(自己負担額)を設定できる免責方式の火災保険もあります。

この場合、自己負担額の金額は、契約する保険会社やプランによって異なるため、自身の生活の収支とのバランスを考えた上で、火災保険のプランを選択することが重要ですです。

火災保険の具体的な保険会社名と保険の例

  • ソニー損保 新ネット火災保険
  • 損保ジャパン日本興亜 THE すまいの保険
  • 三井住友海上 GKすまいの保険
  • SBI損保 火災保険
  • AGI損保 ホームプロテクト総合保険
  • 東京海上日動 住まいの保険

保険会社によって保証内容は大きく違うため、保険の詳細はそれぞれの保険会社の公式ホームページで確認しておきましょう。

住宅火災保険と住宅総合保険は被災した時の補償範囲が異なる

住宅火災保険と住宅総合保険の補償範囲

住宅火災保険 住宅総合保険
風災
火災
水災 ×
雨漏り ×
地震 × ×
経年劣化、老朽化 × ×
盗難 ×
落雷
破壊行為 ×
落下物 ×
爆発
雪災、ひょう災

住宅火災保険と住宅総合保険は、被災した時に補償される範囲が異なります。

 

住宅火災保険は、火災、落雷、爆発、雪災、ひょう災などによる住宅の損害に対して保険金が支払われます。

そして、住宅総合保険は、住宅火災保険の補償内容に加えて、水災、盗難、破壊行為、落下物などによる住宅の損害にも保険金が支払われます。

自然災害に被災した時に火災保険で外壁の修復費用が保証されるケース

住宅の外壁が自然災害の被害を受けた場合、その自然災害が火災ではないとしても、火災保険の適用条件が満たされていれば、外壁の修復費用が火災保険によって補償されます。

 

ただし、どの保険会社の火災保険であっても、災害の被害に該当しない、経年劣化による外壁の

  • カビ
  • コケ
  • サビ
  • 色あせ

には、保険が適用されることはないため、注意が必要です。

台風などの風災

台風の強風で住宅の外壁が破損するなど、住宅が風災による被害を受けた場合、以下の条件を満たしていれば、火災保険が適用される場合があります。

  • 台風の場合、最大瞬間風速が20m/秒以上

ひょうによるひょう災

ひょうが住宅の窓ガラスに当たって割れてしまったなど、ひょうによる災害は、以下の条件を満たしていれば火災保険が適用される場合があります。

  • ひょう災の場合、ひょうの直系が5mm以上

雪や雪崩による雪災

雪や雪崩によって住宅の屋根や外壁が以下のような被害にあった場合に、火災保険が適用される場合があります。

  • 雪の重みによって、屋根や雨樋が破損してしまった
  • 雪崩によって、住宅が破損してしまった

大雨による洪水や高潮などの水災

大雨による洪水、土砂崩れ、高潮などの自然災害で住宅の外壁が被害にあった場合、以下の条件を満たしていれば、火災保険が適用される場合があります。

  • 大雨の洪水による浸水が住宅の地盤面から45cmを越えた
  • 住宅や家財が、再調達価額(同等のものを再築・再購入するために必要な金額)の30%以上の損害を受けた

落雷などの天災

  • 落雷によって住宅の外壁が破損してしまった
  • 落雷した場所から火災が発生して住宅の外壁が燃えた

などの被害にあった場合は、火災保険が適用される場合があります。

 

また、分電盤や電線に落雷して、屋内にあった家電製品が故障した場合も火災保険が適用される場合があります。

飛来物の落下や衝突

  • ヘリコプターから物が落ちてきた
  • 自動車やトラックが住宅に突っ込んできた

などで、住宅の外壁が被害にあった場合は、火災保険が適用される場合があります。

しかし、飛来物の落下や衝突が、人の手によって行われ、責任の所在がはっきりしている場合は、火災保険ではなく損害賠償で補償を受けるのが一般的です。

災害で住宅が被害を受けてから火災保険で保険金が支払われるまでの流れ

災害で住宅が被害を受けて、保険金が支払われるまでの流れは以下の通りです。

 

火災保険の申請に必要な行動や流れを把握しておき、正しい手順で申請を行いましょう。

1.災害の発生により、住宅が被害を受けた損傷部分を発見した

災害が発生した後、家の周りをできるかぎり見回り、損傷部分がないかを確認しましょう。

ただし、屋根部分などの確認は危険が伴う場合があるので、見える範囲に留めておき、本格的な損傷の確認は外壁塗装業者に依頼することをおすすめします。

 

災害によって住宅が受けた損傷部分を発見したら、火災保険を受け取る準備をはじめましょう。

2.自身が契約している火災保険の種類を確認する

災害で住宅が被害を受けたとしても、自身が契約している火災保険がその災害による被害を補償してくれる保険でなければ、保険金を受け取ることはできません。

 

そのため、まずは保険証券や保険会社に聞くなどで、自身が契約している火災保険の種類を確認しましょう。

3.自身が契約している保険会社へ連絡し、必要な書類を提出する

受けた被害への保証が自身が契約している保険の保証範囲内であることを確認したら、契約している保険会社に、災害で住宅が被害を受けたことを伝えましょう。

 

保険会社に連絡をすると、保証金を受け取るために必要な書類や案内が送られてくるので、必要事項を記入して提出します。

4.損害保険登録鑑定人による被害状況の確認・調査

契約している保険会社に連絡後、保険会社が用意した損害保険登録鑑定人によって、住宅が災害でどのような被害を受けたのかを、確認・調査されます。

 

損害保険登録鑑定人は、住宅の損傷が災害によるものなのかなどの調査を行い、公平かつ公正な調査結果を保険会社に報告します。

その報告結果を元に保険会社は保険金を支払うかどうかを決めるため、火災保険が適用されるかどうかは、損害保険登録鑑定人の確認・調査次第といえるでしょう。

5.火災保険が適用されるかどうかの審査

損害保険登録鑑定人の調査後、保険会社は、

  • 顧客が契約している火災保険の保証範囲
  • 損害保険登録鑑定人が行った被害状況の報告

をもとに、火災保険が顧客の住宅の損傷に適用されるかどうかを審査します。

6.審査を通過することができれば保険金が支払われる

保険会社の審査後、顧客の住宅の損傷が火災保険の適用範囲と認められれば、保険会社から加入者に保険金が支払われます。

保険会社からの保険金は、火災保険の手続きが完了した日から原則30日以内に銀行振り込みにて支払われます。

 

住宅が災害によって被害を受けた場合、被害箇所によっては、早急に修繕が必要な場合があります。

しかし、保険金が支払われる日は30日以内が原則であるため、修繕工事を行う前に保険金が振り込まれる場合もあれば、リフォーム業者に工事費用を支払った後に保険金が振り込まれる場合もあるのです。

そのため、修繕費用を保険金が支払われるまで自費で建て替えなければならないのか、保険金が支払われたのちに修繕費用を支払えばよいのかなどを、保険会社や外壁塗装業者確認しておきましょう。

外壁が損傷した場合に火災保険で保険金を受け取るためのポイント

自宅の外壁や屋根が災害で損傷した場合に、火災保険で保険金を受け取るためには、以下のいくつかのポイントがあります。

自身が契約している火災保険の種類を確認しておく

火災保険の種類や自己負担額をいくらに設定しているかによって、保険が適用される範囲や自己負担する金額は異なります。

 

そのため、災害が起きた時に、

  • 保険証
  • 自身が契約している保険会社の公式ウェブサイトのマイページ

などから、自身が契約している保険の適用範囲と被害状況を照らし合わせて、実際の被害が保険の適用範囲に該当するかの確認が必要です。

被災したら自身が契約している保険会社にすぐに連絡する

火災保険が適用される期限は、一般的に「災害が発生してから3年以内」と定められています。

また、3年以内であっても、災害が発生してから長い期間が経過してしまっていると、被害状況の確認・調査が困難となり、結果として保険金が支払われない可能性が高くなってしまうため、災害が発生して住宅が被害を受けた時はすぐに保険会社に連絡をするようにしましょう。

 

また、被災後すぐに保険会社に連絡をすることで、火災保険を受け取るために

  • なにをすればよいのか
  • 何を準備しておけばいいか

などを自身の契約内容に沿って、具体的に教えてもらうこともできます。

住宅の被災状況を撮影し、細かくメモしておく

住宅が被災した場合、片付けや自身による修繕などをはじめる前に、住宅の被災した状況をスマホなどで撮影し、データを保管しておきましょう。

住宅の被災状況を撮影した写真は、保険会社に保険金を請求する時に必要なものであり、片付けや修繕をしてしまうと、保険会社が被災状況を正確に把握できなくなってしまうため、片付け前に撮影する必要があるのです。

 

また、写真を撮るだけでなく、どのように被災したのかなどの状況や日付を含めて、細かくメモしておきましょう。

 

ちなみに、住宅が大雨などで浸水してしまった場合は、浸水した深さを記録するため、メジャーなどを使用してどの程度浸水してしまったのかを測定した写真も撮影しておくとよいでしょう。

火災保険を利用して外壁を修復する時の注意点

火災保険を利用して外壁を修復する時には、以下の注意点があります。

火災保険で損害額の全額が保証されるわけではない

火災保険で被災した時に支払われる保険金は、損害を受けた全額を保証してもらえるわけではなく、損害保険登録鑑定人が被害状況の確認・調査を行い、その結果や保険会社との契約によって保証される金額が決定されます。

 

契約している火災保険のプランにもよりますが、保証されるためには

  • 住宅の修理費用が保険会社の契約の自己負担額の金額を越えている(免責方式の場合)
  • 住宅の修理費用が20万円以上である(20万円フランチャイズ方式の場合)

などの条件があります。

火災保険では保証されず、保険金が支払われないケースを知っておく

火災保険に加入していたからといって、全ての住宅の破損に対して保証金が支払われるわけではありません。

 

以下で火災保険による保証がされないケースを確認しておきましょう。

火災が原因ではなく、業者の施工不良だった場合

塗装業者による施工不良が原因の場合は、火災保険による保証はされず、保険金を受け取ることはできません。

 

その場合は、保険会社ではなく、施工した業者に修繕を依頼するようにしましょう。

外壁の修繕を必要としない外壁の塗装リフォームのみの場合

経年劣化によって塗膜の剥がれが発生した外壁を塗装リフォームしたい場合は、災害による被害ではないため、火災保険による保証はされず、保険金を受け取ることができません。

 

火災保険で保険を受け取るためには、経年劣化による住宅の破損ではなく、災害による住宅の破損である必要があるのです。

災害とみなされない威力の弱い自然現象で破損した場合

火災保険で保険金を受け取るためには、「災害によって住宅が破損してしまった」と損害保険登録鑑定人に判断されるほど建物が損害を受ける必要があります。

災害とみなされないほどの威力の弱い自然現象による住宅の破損は、火災保険の対象にならない場合があります。

火災保険を悪用して詐欺をする悪徳業者に注意

昨今、火災保険を悪用し、人を騙してお金を取ろうとする悪徳リフォーム業者が存在します。

悪徳業者は、

  • 「火災保険の保険金を受け取れるようにサポートするので、屋根のリフォームをしませんか?」
  • 「経年劣化による破損だけど、保険会社に災害による破損と申請して、保険金を受け取りましょう」

などと消費者を勧誘して修理工事の契約を結ばせます。

 

契約後、悪徳業者は、消費者に保険金の請求を行わせ、

  • 消費者が保険金を受け取れた場合、その保険金で必要のない修繕を行って修繕費を得る
  • 消費者が保険金を受け取れなかったとしても、修繕費消費者に請求する

などの手口でお金を得るのです。

 

悪徳業者に依頼してしまった場合、必要のない修繕をされたり、保険会社に虚偽申告をさせられたりする可能性があるため、依頼する前に

  • その業者の過去の火災保険の申請実績を確認する
  • 第三者機関に相談する

などで、その業者が信用できるかどうかを確認しましょう。

さいごに

火災保険は、契約しているプランと補償範囲によって、

  • 受け取れるかどうか
  • 受け取れる保険金の額

が異なります。

 

そのため、自身が契約している火災保険の種類と補償範囲を確認しておき、災害が発生して住宅が破損してしまった時に、自身が負担する補修工事費用を少なくできるように備えておきましょう。

 

また、被災を受けて住宅が被害を受けた時は、すぐに保険会社に連絡を行うだけでなく、住宅の被災状況を撮影するなどして、客観的に確認できる記録として残しておくことが大切です。