サイディングは数々のメリットを持っており、現在最も普及している外壁材です。

ただし定期的にメンテナンスを施さなければそのメリットも失われてしまいますので、メリットだけでなく注意点もしっかり把握しておかなければなりません。

 

この記事では、サイディング外壁の魅力やメリットをご紹介するとともに、メンテナンスの種類などについても解説します。

■サイディング壁とはどんな外壁か

サイディングボードは外壁材の一種で、工場で生産された板状のボードを現場で貼り合わせて使う建材です。

サイディングボードを張り合わせて作られた壁はサイディング壁などと呼ばれます。

これまで戸建て住宅の外壁材といえばモルタルや土壁などの塗り壁が一般的でした。

しかし多くの新築住宅でサイディングが採用されるようになり、今では最も主流な外壁材となっています。

1.サイディングが普及した背景

サイディングによる外壁が増えている理由としては、工場で一括して生産され現場にまとめて納入されるため、現場で作るモルタルに比べて品質が均一で、商品の種類やデザインも豊富な点などが挙げられるでしょう。

その他にも現場で貼り合わせるだけで施工できるため、工期が短く済む点もサイディングが普及した大きな理由と言えるでしょう。

2.サイディング材の種類

現在、サイディングボードとして最も利用されているのが、窯業系サイディングボードとなります。

単に、サイディングボードという場合、ほとんどこの窯業系サイディングボードを指しますが、その他にも金属系サイディングボードや樹脂系サイディングボードなど異なる素材を用いたものもあり、それぞれがその機能などに特徴を持っています。

●窯業系サイディング

セメントを基材として、繊維質、混和剤を混ぜたものを窯で焼き上げて作られるボードです。

繊維質が入っているので石や砂利とセメントを混ぜて作られるコンクリートと比較しても強度的にも強く、混和剤が入ることにより軽量であることが一つの特徴といえます。

 

最大の特徴は、加工のしやすさにより生まれるデザインの多様性といえるでしょう。

タイル風、レンガ風など様々なデザインがありますので、外観のイメージに近いものを選ぶことができます。

●金属系サイディング

アルミやスチールなどの金属を主な材料として作られたものが、金属系サイディングです。

エンボス加工された金属の裏側に断熱材を貼り付けてボードとして使用します(ガルバリウム鋼板など)。

金属板で作られているので、他の材料と比べて軽量であるということが大きな特徴ですが、表面が金属でできているので、表面のサビや塗料の劣化に注意する必要が出てきます。

●木質系サイディング

本物の木材を用いたボードとなります。多様なデザインがある窯業系サイディングにも木材のような模様がありますが、本物の木の風合いに勝るものはありません。

しかしながら、施工費用は他の材料と比べて高額になり、また、メンテナンスも大変なものとなります。

●樹脂系サイディング

塩化ビニールなどの樹脂を使用したものです。

腐食やクラックが発生しづらく、耐火性もあるため、外壁材としては良い性質を持っており、また、ボード自体に着色することができるため、後から塗装をしなくてもいいというメリットがあります。

しかし、耐火性、耐衝撃性が低いために、地震が多く、住宅が密集していることが多い日本ではあまり普及していません。しかし、アメリカやカナダでは長い歴史を持っていて、金属系サイディングボードよりも多く使われていることがようです。

■サイディングのメリット

サイディングのメリットをまとめると以下のようになります。

  • 決まった色や模様を指定できるためデザイン性が高い
  • モルタル塗りよりも重量が軽いので耐震性が高い。
  • モルタルなどの塗り壁と比べて熟練者でなくても施工でき作業性が高い
  • 価格が手ごろで耐久性も高いためコストパフォーマンスが高い

それぞれの理由について詳しく見てみましょう。

1.デザイン性の高さ

 

まるでタイル外壁のようなタイル調、天然の木をあしらったような木目調、重厚感のあるレンガを積み重ねたようなレンガ調など、サイディング材には様々なデザインの商品が登場しています。

 

タイル外壁やレンガ外壁は現場で部材をひとつずつ組み合わせて作りますので、完成後にパーツがずれていたり歪んでいたりすると満足いかない仕上がりになる恐れがあります。

あるいは天然の木を外壁材にすると腐食やカビなどのメンテナンスに非常に手間がかかってしまうでしょう。

 

しかしサイディング材であればそれぞれの素材の意匠性はそのままに、雨や火、腐食にも強く現場で模様や柄が大きく変わることもありません。

2.耐震性の高さ

サイディング材はセメントやコンクリートに比べると軽量な外壁材です。

特にガルバリウム鋼板などの金属系サイディング材は非常に薄い金属素材ですので、外壁や屋根に施工しても躯体に負荷をかけません。

 

軽い建物は地震が起きても揺れにくく、揺れで家が大きく動いて家財が倒れたり構造材が歪んだりする可能性も低くなります。

3.作業性の高さ

作業のしやすさが高いことを「作業性」または「施工性」と呼びます。

サイディング材は従来のモルタル外壁に比べて非常に作業性が高い外壁材です。

 

これまで住宅の外壁はモルタル塗り壁が主流でした。

しかしながらモルタルを左官業者が現場で練りこんで手塗りする作業は非常に時間がかかり、仕上がりも施工する左官職人の技術力に左右されます。

 

一方サイディングは、工場で生産され加工まで済んだパネルを現場で貼り合わせていくだけで施工できますので、作業の手間はモルタル壁に比べると圧倒的に少なくなります。

また、工場出荷時に品質がチェックされるため現場ごとに仕上がりにムラが出ることもありません。

 

このような理由から、現在ではモルタル外壁に変わってサイディング外壁が住宅の主流の外壁になりました。

4.コストパフォーマンスの高さ

外壁の素材にはサイディングの他にもALC(軽量気泡コンクリート)や磁器タイルなどがあります。

ALCや外壁タイルはサイディングに劣らない耐久性を持ちますが、施工価格はサイディングの2~3倍にもなります。

 

外壁材 ㎡あたりの施工価格
サイディング 2,800~3,200円/㎡
ALC 7,000~8,000円/㎡
タイル 7,500~9,000円/㎡

 

またALCはサイディングと同様に塗装メンテナンスが必要な外壁です。

一方、タイルは塗装の必要がありませんが割れや欠けの補修が発生し、施工業者の腕が悪いと下地のモルタルから大部分のタイルが剥がれると言った施工不良が起きる恐れもあります。

 

以上の理由から、標準以上の耐火性能と耐水性能を兼ね備え施工価格も高すぎないサイディングは、外壁材の中でもコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。

■サイディングにもメンテナンスが必要

ここまでサイディングのメリットをご紹介してきましたが、サイディングも他の外壁材と同様にメンテナンスが必要です。

メンテナンスを怠ると外壁材そのものが劣化してしまい、張り替えという高額な外装リフォームが発生してしまいます。

 

メリットだけでなく、メンテナンス時の注意点も把握しておきましょう。

1.サイディングは定期的な塗装が必要

新築から時間が経つとだんだんサイディングボード塗装のツヤがなくなり色あせてきます。

このように塗装面が色あせて劣化したサイディングボードは塗り替えが必要です。

 

サイディングボードの塗り替えは、新築であれば5~7年、以前塗替えリフォームを済ませた家であれば10~15年が塗り替えの目安のタイミングで行うとよいでしょう。

●サイディング表面の塗装は劣化する

サイディングの中でもシェアが大きい窯業系サイディングボードは、セメントなどの原料を焼き固めて成形したのち、表面をクリヤー塗料という透明の塗装で保護します。

 

この透明な塗膜によってサイディングの表面は保護されていますが、年月が経つにつれ紫外線や雨風によって塗膜は徐々に劣化していきます。

塗装面の厚み自体はごくわずかですが、サイディングにとってその役割は非常に重要です。

●サイディング塗替えのサイン

サイディングの塗装が劣化すると以下のような症状が現れ始めます。

  • チョーキング現象
  • 塗膜の膨れや剥がれ
  • カビや藻、コケの発生

チョーキング現象とは紫外線や雨水で塗装が劣化し、塗料に含まれる顔料が粉として塗装面に浮き出てくる現象のことです。

触れると手に外壁と同じ色のチョークのような粉が付着することからチョーキングと呼ばれています。

 

また塗膜が外壁に密着できなくなると膨れたり剥がれたりするようになり、耐水性が低下してくると水分を好むカビや藻が発生しやすくなってしまいます。

 

これらの症状はいずれも目で見たり触ったりすればわかるものばかりです。

放っておくと外壁材本体が雨水や紫外線で劣化してしまいますので、そうなる前に早めに塗り替えを行いましょう。

●クリヤー塗料による再塗装は早めが肝心

サイディングのメリットといえば多彩なデザインや配色です。

外壁の塗り替えは基本的に単色の塗料で行われますが、単色仕上げのサイディングであれば色がついた塗料を使っても問題はありません。

しかし模様や多彩な色が付いているサイディングの場合、単色の塗料ですべて塗りつぶされてしまいます。

 

サイディング本体のデザインを残すためには無色のクリヤー塗料による再塗装が効果的です。

しかしサイディング自体の色が変色・退色してしまっている場合、透明な塗料で保護しても変色したまま透けて見えることになってしまいますので、クリヤー塗料の塗り替えはできるだけ早めに行いましょう。

3.コーキングの劣化

サイディングボードとボードのつなぎ目には、コーキング材(シーリング材)と呼ばれる部材が充填されています。

 

モルタル壁であれば壁全面をモルタルで塗って作りますので、隙間がない一枚の壁を作ることができます。

しかしサイディングボードはパネルを一枚一枚貼り合わせて作るため、部材同士の間にどうしても目地ができてしまいます。

この部分を埋めて雨水などの侵入を塞いでいるのがコーキング材です。

また、コーキングは温度上昇でサイディングが変形したときの動きを受け止めるという重要な役割も持っています。

 

コーキングの耐用年数は約7年と言われ、10年を過ぎるとコーキングそのものにひび割れが発生するようになり防水性を失ってしまいます。

そのため外壁塗装工事の前には必ず、下地補修の一環としてコーキングの点検が行われます。

●コーキングの補修

コーキングの補修では、劣化が進んだコーキング材を撤去して新たに打ち替える「打ち替え」が行われます。

 

打ち替えは㎡あたり1,000円の工事となりますが、その他にも耐久性が残っているコーキングを残したまま新しいコーキング材を補充する「増し打ち」という工法もあります。

増し打ちは㎡あたり約800円ですが、古いコーキング材の耐久性を見極められる業者に任せなければなりませんので、防水機能を優先するのであれば打ち替えを選んだ方がよいでしょう。

4.サイディングボード本体のメンテナンス

窯業系サイディングは水分を吸収したり乾燥したりすることでボードそのものが変形してしまうことがあります。

 

コーキング材はこのような変形に配慮して充填されていますが、コーキングでも受け止めきれないような負荷がかかると、ボード自体に負荷が及び、割れや反りなどの劣化症状が起きてしまいます。

 

あるいは施工時に必要な量のクギやビスが打たれなかったためにボードが浮き上がってくることもあります。

●ひび割れ(クラック)補修

クラックが発生しているサイディングボードは、割れ目に沿ってV字に削り、内部を清掃してプライマーと呼ばれる下地材を塗布し、最後にパテを埋め込んで補修します。

●反りや浮きなど変形した箇所の補修

サイディングボードの反りは主に以下の原因で起こります。

  • ボードの周囲の温度変化
  • ボードの内部に入り込んだ水分が温度変化で凍結・解凍を繰り返し、ボード自体が伸縮膨張する(凍害)
  • ボードの経年変化

 

反ったり浮いたりしているサイディングは外壁にぴったり張り付いていませんので、反った部分から雨水が浸水してしまいます。

単純にクギやビスの外れが理由で反ったり浮いたりしている場合は接続部材の補修のみで済みますが、本体が大きく反り返ってしまったサイディングは交換しなければなりませんので、メンテナンスコストは高くなってしまいます。

 

そのほか、外壁が反って外れてしまったコーキングの打ち替えも併せて必要です。

■サイディングを長持ちさせるために

サイディングボードを長持ちさせるためには、適切なメンテナンスと外壁のチェックを実施することです。

 

普段から塗装の剥がれや膨れ、クラックや欠け、コーキングの割れなどに注意し、劣化を早期発見しましょう。

 

ただしご自身でサイディングメンテナンスを行おうとすると、誤ってサイディングを傷つけたり高所から落下したりする恐れがあり非常に危険なだけでなく、劣化を見落として症状を悪化させてしまう可能性があります。

 

メンテナンス方法がわからないときは専門の塗装業者や外壁リフォーム会社に現地調査を依頼し、適切な方法で補修してもらいましょう。

まとめ

外壁材として最も使われているサイディングは耐久性が非常に高く、モルタルと違う様々なメリットがあります。

しかしサイディング材のメリットを活かすためには塗装などの定期的なメンテナンスが不可欠です。

 

メンテナンス方法や補修作業について正しい知識を持ち、大切な家を末永く守っていきましょう。