外壁塗装リフォームで使われる塗料に断熱塗料という種類の塗料があります。

外壁に塗るだけで断熱効果があるといわれている塗料ですが、その効果については根拠が曖昧なものが多く、すべての建物で断熱効果が発揮されるわけではありません。

この記事では、断熱塗料の効果や実際に使う際の注意点について説明します。

■断熱塗料の効果を誇張する業者に注意

最近よく外壁塗装リフォームで使われる塗料に断熱塗料があります。

外壁塗装業者もガイナなどの断熱塗料を推してくることが多く、勧められるがまま外壁リフォーム工事で採用してしまう方が多いようです。

 

断熱塗料は太陽光による熱を室内に「伝わりにくくする」塗料ですが、建物が建つ場所の日射量の多さや外の気温などの立地条件により断熱効果が異なります。

そのため、断熱塗料で塗装したからといって劇的に室内環境が快適になるわけではありませんし、すべての建物に対して一律的に断熱効果が発揮されるものでもありません。

断熱塗料の効果は、室内の温度がもしかしたら1~2度さがる「かもしれない」という程度であり、体感的に涼しく「感じる」くらいの断熱効果であると認識しておきましょう。

 

断熱塗料によるリフォームを検討する場合は、工事費用が高額でため勧められるままに契約するのではなく、複数の外壁塗装業者から見積りを取り、業者の担当者の様々な意見を聞きながら、断熱塗装が本当に自身の家に必要なのかを慎重に考えるようにしましょう。

外壁塗装業者によっては、顧客の家の立地条件や断熱塗料を塗った場合にどれくらいの断熱効果がでるかをきちんと考慮せず、断熱塗料の効果だけを誇張して断熱塗料によるリフォームを勧めてくる業者もあるため、不安に感じる場合は、外壁塗装駆け込み寺などの一括見積もりサイトに相談して真偽を確認しましょう。

1.ネット上にある断熱塗料の実験は一般住宅の環境から程遠いものばかり

断熱塗料の効果をわかりやすく伝える方法で、実際に断熱塗料を塗布した試験体表面の温度を測り、断熱塗料による塗装前後の温度を比較した実験データが用いられることがあります。

ネット上では「もともと60度以上あったのに、断熱塗料を塗ったら10度以上下がった!」など、実験の測定結果が非常に効果的であると誇張して書かれていることがあります。

しかし、「10度以上下がった」というのはあくまで試験体「表面」の温度が変わったに過ぎず、「室内の気温」が10度下がったわけではありません。

実際には断熱効果を持っていない塗料であっても、熱を反射しやすい白色系の「白っぽい塗料」を使うことだけでも「表面温度が下がった」という測定結果がでるため、断熱塗料の実験は信用に値しません。

2.大手塗料メーカーの実験結果でも効果は未知数

大手塗料メーカーの日本ペイントが行った「サーモアイ」と呼ばれる遮熱塗料の効果を確認した実験結果も一般的な家庭の条件からは程遠いといえます。

日本ペイントの実験では室内の温度が「最高3℃削減」という結果ですが、これはあくまで断熱材が使われていないプレハブ小屋での実験結果です。

通常の一般家庭の住宅であれば、もっと壁が厚く断熱材も使われており、ここまで直接的に外の気温の影響を受けることはないため、実験結果でいわれている3℃の室内気温低下ほどの効果は得られません。

さらに通常の一般家庭の住宅は、プレハブ小屋より空間が広く、壁や天井から直接伝わる「輻射熱」の影響も受けにくいため、体感的にもこれほどの効果が得られるとは考え難いです。

 

本来であれば、実際の一般家庭の外壁や屋根の環境下での実験結果が一番分かりやすく信頼性が高いはずですが、そうした実験結果がないことを踏まえると、断熱塗料や遮熱塗料といわれる塗料では劇的に室内気温が下がるなどの期待されている効果を示せない可能性があります。

3.外壁塗装業者が自らの家で実験するも結果は曖昧なものばかり

その他にも「実際に断熱塗料を我が家に塗ってみました」という外壁塗装業者の記事を見ることがあります。

自身の家を実験台にした信頼できる情報に見えますが、

  • 表面温度のみを測定した効果
  • 「クーラーの温度設定が何度上がった」という体感温度に基づく行動の報告
  • 「涼しくなったような気がする」や「クーラーの効きがよい気がする」といった個人の体感的な感想

など、結果の多くは客観的ものではありません。

 

また、外壁塗装業者によっては、内壁に断熱塗料を塗布した状況で検証しているものありますが、通常想定している外壁のみの断熱塗料とはまったく異なる環境であり、比較対象となりません。

一般家庭の住宅で全ての部屋の内壁に断熱塗料を塗れば相当の工事費用となるため、断熱の方法として費用対効果が低いため、その他の断熱方法を検討したほうがよいでしょう。

■断熱と遮熱の違い

ネット上によく出てくる特殊塗料には遮熱塗料と断熱塗料があり、これらは名称が似ているため、混同して紹介されることがありますが、それぞれ効果が異なる塗料です。

 

遮熱塗料とは、おもに夏場の太陽熱を反射することにより、室内に伝わる熱を遮断する効果があります。

一方、断熱塗料は、夏の暑さや冬の寒さに対し、外の気温を室内に伝えにくくする効果があります。

 

ネット上で「断熱塗料の効果を試してみた」という記事を見ることがありますが、そのほとんどは夏の暑さに対する効果であり、断熱塗料が持つ遮熱効果のみに関する情報がほとんどです。

実際、「冬の室内の気温が下がりにくく快適」という断熱塗料の効果を表した実験結果はほとんどなく、年間を通した断熱効果を確認できる情報もありません。

■断熱塗料のデメリット

1.施工価格が非常に高い

断熱塗料の価格は約3,800~4,000円/平米であり、シリコン樹脂塗料の一般的な価格の約2,500円/平米と比較すると価格が高いです。

価格が高い割には確実な断熱効果が期待できないため、費用対効果を重視するのであれば、断熱塗料以外の方法を検討しましょう。

2.費用分の効果があるかわからない

先述の通り、断熱塗料は費用分の効果があるのかが確実ではなく、実際に施工する場合は契約前に費用対効果を十分に検証する必要があります。

検証の方法としては、外壁塗装業者3社以上から見積りを取り、実際に断熱塗料で施工した家を見せてもらい(可能であれば家主に意見を聞き)、自分の家の立地条件や地域性において実際に効果でるかを複数の業者に相談しましょう。

 

3.暗い色では効果を発揮しづらい

断熱塗料は白っぽい薄い色が多く、塗料メーカーでも暗い色(黒っぽい色など)を用意していないことがほとんどです。

色による断熱効果の違いは、大手塗料メーカーが作成している遮熱塗料の日射反射率が参考になります。

上記は日本ペイントのサーモアイ屋根塗料用のカラーバリエーションです。

色ごとに日射反射率が異なり、白は日射反射率91.0%に対し、暗い色のクールネオサファイアブルーは半分以下の43.0%しかありません。

さらに「濃い色の遮熱塗料よりも淡い色の従来塗料のほうが遮熱効果が高いことがあります」という注釈まであります。

 

断熱塗料でも上記の遮熱塗料のカラーバリエーションと同様のことがいえるため、断熱効果を出したいなら、必ず薄い色(できれば白)を選ぶようにしましょう。

4.施工が難しい「とされている」

一部の断熱塗料では、認定を受けないとその断熱塗料を塗ることができないという「認定施工店制度」があります。

ネット上では、認定施工店制度がある理由が「施工が難しい塗料であるため」と説明されることが多いですが、前述の日本ペイントのサーモアイは特に認定施工店制度ではなく、外壁塗装業者であればどこでも仕入れや施工ができる塗料なので、本当に断熱塗料が認定施工店精度が必要なほど難しい塗料であるかは疑わしいです。

また、たとえ認定工務店による施工であっても、工事が適切に行われるかどうかはその塗装業者で働く職人によるため、断熱塗料による塗装品質が確実に保障されるわけではありません。

そのため施工が難しいとされるのでれば、そもそも断熱塗料の使用を避け、実績がある大手塗料メーカーの塗料を使用した方が良い可能性もあります。

■断熱塗料以外で断熱する方法

住宅を断熱する方法は断熱塗料だけでなく、ペアガラス、外壁内の断熱補強、窓部のカーテンなど別の方法もあります。

断熱塗料にかける予算を他の方法にかけることで、より高い断熱効果が望める可能性もあるため、予算内であれば他のリフォームも選択肢に入れてみましょう。(リフォーム業者であるなら、他の断熱方法についても見積りを依頼して費用対効果を確認しましょう)

 

塗装リフォームしかできない外壁塗装専門業者の場合、「革命的な塗料、劇的な効果」などの謳い文句で断熱塗料を推してくる可能性がありますが、厚さ1mm以下の膜である断熱塗料では断熱効果に限界があることを認識しておく必要があります。

1.外の気温が入りにくいように窓ガラスを二重にする

開口部のガラスサッシは断熱性が低く、外部から暑い空気や冷たい空気が入りこみやすい部位です。

そのため、窓ガラスを二重(ペアガラス)に変更するなどで、開口部の断熱性を高めて空気の流れをシャットダウンすることで、高い断熱効果を期待できます。

2.外壁内の断熱材を補強する工事を行う

外壁の内側に断熱材を入れて、家全体を断熱材で包み込む方法です。

外壁全体に断熱材を入れるため予算はかかります(断熱リフォームで約5,000~10,000円/平米)が、非常に高い断熱効果が得られる方法です。

 

リフォームで行う場合、壁のクロスやボード材をいったん剥がす必要があるため、新築時に行うほうが工事費用が高くなりにくいでしょう。

3.断熱の分厚いカーテンを設置し、閉めておく

手軽にできる断熱方法として、断熱カーテンを設置するという方法があります。

一つの開口部(窓)あたり数千円で設置できるため、あまりお金がかからず専門業者の施工も不要です。

 

現状のカーテンが1枚で生地が薄い場合は、厚めの断熱カーテンと遮光カーテンの2枚組に変えるだけで、エアコンの効き具合が良くなる可能性があります。

4.屋根裏や天井裏の排気工事

屋根裏や天井裏は非常に熱気がこもりやすく、こもった熱気が部屋に伝わってしまうことがあります。

屋根裏に熱気をこもらせないためには、屋根裏に排気用の換気扇を設けて、強制的に熱気を排気する方法が効果的です。

5.白い色の塗料で塗装する

先述の通り、暗い色の遮熱塗料より、白い普通の塗料のほうが遮熱効果が高い傾向がありあます。

冬の寒さには効果はあまりないですが(そもそも断熱塗料の冬の効果がわからない)、夏の暑さを抑えたいのであれば、一般的なシリコン樹脂塗料の白い色で塗装すれば、「それなり」に効果があります。

■断熱塗料の効果をきちんと出すには

効果が未知数の断熱塗料ですが、それでも施工したい場合は断熱塗料の効果が最大限に発揮できる方法で施工することをおすすめします。

1.優良な施工業者に依頼する

断熱塗料を選ぶ場合でも、白っぽい一般塗料を選ぶ場合でも、より効果的に遮熱効果を出したい場合は、地域での実績が豊富な優良外壁塗装業者に依頼する必要があります。

 

どんなにホームページがきれいでも、事務所が豪華でも、良い業者であることの証明にはなりません。

そのため、最低3社以上の外壁塗装業者から見積もりを取り、金額だけでなく見積もり内容についても説明を聞いたりした上で総合的に依頼する外壁塗装業者を決定することが重要です。

2.大手塗料メーカーの遮熱塗料で代用する

もし、断熱塗料の遮熱効果(夏の暑さ対策)を重要視する場合は、大手メーカーの遮熱塗料を使えば、少なくとも中小塗料メーカーの塗料を使う場合よりも信頼性は高いといえます。

ここでいう信頼できる大手塗料メーカーとは、

  • 日本ペイント
  • 関西ペイント
  • エスケー化研

の3つのことを指します。

■まとめ

断熱塗料は、ネット上で書かれているような劇的な効果はなく、すべての建物で同じ効果を発揮できるわけでもありません。

また、断熱塗料のほかにも断熱方法はいくつもあり、必ずしも断熱塗料による断熱リフォームが最適とは限らないため、予算内で要望にあった断熱方法を見極めることが重要です。

 

これらの注意点を十分に理解したうえでそれでも塗料による断熱リフォームを考えるのであれば、断熱効果を最大限に発揮させるため、信頼のおける優良な外壁塗装業者に依頼し、大手塗料メーカーの遮熱塗料を使用してリフォームするようにしましょう。