外壁塗装用の塗料には様々な種類やグレードがあり、塗料の品質や耐久性を決定する要素もいくつもあるため、素人だけでなく外壁塗装業者でもどのような塗料が今の外壁や屋根に適切であるかを判断するのが難しい場合があります。

この記事では、塗料についての正しい知識だけでなく、具体的な耐用年数、価格、グレード等を挙げながら、要望に合った塗料を選ぶ方法を説明します。

■外壁塗装用の塗料の成分

外壁塗装用の塗料は、合成樹脂、顔料、添加剤、希釈剤という複数の成分で構成されており、それぞれの成分ごとに役割があります。

外壁塗装用の塗料の選定にあたっては、これら成分の役割を正しく理解し、塗料を選ぶことが重要です。

1.合成樹脂

合成樹脂は、塗料の耐久性を決める成分であり、外壁塗装のグレードは、この合成樹脂に「何が使われているか」によって分類されることが多いです。

代表的な合成樹脂に

  • ウレタン樹脂
  • シリコン樹脂
  • フッ素樹脂

などがあります。

2.顔料

顔料は塗料の色を決める成分であり、簡単にいえば粉末状の顔料を合成樹脂に混合させて着色したものが外壁塗装用塗料です。

3.添加剤

添加剤は、塗料に様々な機能を追加させるための成分です。

外壁塗装用の塗料の添加剤には、

  • 顔料を固まらせる「凝固剤」
  • 保管中の塗料の沈殿を防止する「界面活性剤」
  • 塗料の塗布作業に適した粘度に調整する「たれ防止剤」
  • 塗装の艶を消したり弱めたりすることができる「艶消し剤」

などがあります。

4.希釈液

希釈液とは、ここまでに挙げた1〜3の合成樹脂・顔料・添加剤を溶かして薄める成分のことを指します。

この希釈液が水であれば水性塗料、シンナーなどであれば有機溶剤塗料です。

塗装した後にこの希釈液が蒸発し、塗料の残りの成分が壁に密着するようにできており、希釈液自体は乾燥に伴い無くなります。

参考:外壁塗装用塗料の油性と水性の違いとは?

■外壁塗装用の塗料のグレード

外壁塗装用の塗料は合成樹脂の種類ごとに分類され、耐用年数が長く、価格が高いものほど良いグレードとして扱われます。

ここでは代表的な外壁塗装用の塗料のグレードについて説明します。

ウレタン樹脂塗料 シリコン樹脂塗料
耐用年数※1 5~10年 7~15年
価格※2
(㎡単価)
1,700~2,200円 2,300~3,500円
備考
  • コストは安いが耐用年数も短い
  • 住宅で主流となっている外壁塗装
  • 耐用年数に信頼あり

 

ラジカル制御型塗料 フッ素樹脂塗料
耐用年数※1 14~16年 14~20年
価格※2
(㎡単価)
2,500~4,000円 3,500~4,800円
備考
  • 近年発売された新しい塗料
  • シリコンと同程度のコストでありながら、耐用年数は優れている
  • 耐用年数は優れているがコストが高い

※1表の耐用年数は、後述する1液型・2液型や水性・油性塗料などによっても変わるため、あくまで目安です。

※2建物規模や劣化状況により価格が変わるため、専門業者と綿密に打合せを行う必要があります。

1.シリコン樹脂塗料

 

シリコン樹脂塗料は、住宅の外壁塗装用の塗料として最もよく使われるグレードで、価格帯が安いだけでなく、様々な家で使われているため実績数が多く、耐用年数も信用できる塗料です。

2.ラジカル制御型塗料

シリコン樹脂塗料の次によく使われるグレードがラジカル制御型塗料です。

ラジカル制御型塗料は合成樹脂によって分類された塗料ではありませんが(厳密にはアクリル樹脂塗料)、紫外線劣化の原因となる「ラジカル」と呼ばれる劣化因子の発生を抑制することができるため、ラジカル制御型塗料といわれています。

 

ラジカル制御型塗料は、上位グレード塗料の一つであるシリコン樹脂塗料以上の耐候性をもち、価格もシリコン樹脂塗料に近いため、費用対効果に優れたグレードといえます。

3.フッ素樹脂塗料

フッ素樹脂塗料は、高価格ですが、耐用年数が長く、容易に塗装ができない高層ビルや橋などに使用される最上位グレードの塗料です。

長い間再塗装しなくても良いという理由から、

  • 高品質を求める家
  • 複雑な形状して工事がしにくい家
  • 敷地が狭く足場が掛けにくい家

などに使用されます。

4.その他の特殊塗料

上記のような代表的なグレード以外にも特殊な機能を持った塗料があります。

特殊塗料にはシリコン樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂が含まれているものもあり、含まれる合成樹脂の種類や品質により塗料の寿命が違うため(例えば同じシリコン樹脂塗料でも含まれるシリコンの品質によって塗料の寿命が違います)、業者と相談して塗料を選ぶ必要があります。

●断熱塗料

太陽光による熱を伝えにくくすることで、外壁材の温度の上昇を防ぐ塗料です。

また、外壁内部の断熱材と合わせて使用することで、室内の断熱効果をより高めることができます。

●光触媒塗料

太陽光で外壁材についた汚れを分解し、雨が降った際に分解した汚れを洗い流すことができる「セルフクリーニング機能」がある塗料です。

参考:光触媒塗料とは?知っておくべき欠点と価格や耐用年数について

●セラミック塗料

セラミック物質(砂や天然石を砕いたもの)を配合した塗料です。

デザイン性が良く汚れにくいという効果はありますが、耐用年数については下地に含まれる合成樹脂によって左右されます。

参考:外壁塗装でセラミック塗料を選ぶ前に知っておきたいこと

●クリヤー塗料

顔料(色味)を含まない透明の塗料で、主に外壁塗装用の塗料を保護したり、サイディングボードの模様を残したまま保護する目的で使用します。

クリヤー塗装は顔料を含まない合成樹脂の塗料であり、含まれる合成樹脂によってグレードが変わるため、クリヤー塗料によって塗装する場合は、その塗料に含まれる合成樹脂や耐用年数を確認しましょう。

5.今はあまり使われない塗料

今ではあまり使われなくなった塗料もいくつかあります。

●ウレタン樹脂塗料

ウレタン樹脂塗料は、シリコン樹脂塗料が主流となる前にメインで使用されていた外壁塗装用の塗料です。

ウレタン樹脂塗料は、塗膜に弾性(やわらかく動きに追従しやすい)が良く、密着性が高いという特徴があります。

そのため、現在でも防水塗料として小庇やベランダなど、複雑な形状の部位に使われるケースがあります。

参考:ウレタン塗料とシリコン塗料の特徴を比較

●アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂塗料は、合成樹脂の塗料の中で最もグレードの低い塗料です。

価格は安いですが耐用年数は5~7年程度であり、耐用年数の低く、塗装してもまた数年後にすぐ塗り直さないといけないことから、現在ではリフォームにアクリル樹脂塗料が使われることはほとんどありません。

一方で価格が安く色が豊富にあるというメリットがあり、現在でも「購入後に居住者の好みの色に塗り替えること」や、「数年に一度、外壁の色を替える住宅」など、数年後に塗替えを前提とした物件で使うケースがあります。

6.同じ合成樹脂の塗料でも質や耐用年数が違う場合もある

同じ合成樹脂の塗料でも、塗料メーカーにより質や耐用年数が違う場合があります。

 

例えば、信頼できるとされる大手メーカーのシリコン樹脂塗料だけでも下記があります。

  • 日本ペイント
    オーデフレッシュSi100 Ⅲ(一液型、水性塗料)
    ファインシリコンフレッシュ(二液型、弱溶剤塗料)
  • 関西ペイント
    アクアシリコンACⅡ(一液型、水性塗料)
    セラMシリコンⅢ(二液型、弱溶剤塗料)
  • エスケー化研
    水性セラミシリコン(一液型、水性塗料)セラタイトSi(二液型、溶剤塗料)

中小メーカーの塗料にももちろん良い塗料が多くありますが、中には品質が低く期待する耐用年数が得られないケースもあるため、あえて中小メーカーの塗料を選択する必要はなく、上記の大手塗料メーカーから選んでおけば間違いありません。

7.外壁塗装用塗料の耐用年数とは

外壁塗装用の塗料の耐用年数は、実際にその期間をテストした結果ではなく、そのほとんどが「キセノンランプ式促進対抗性能試験」と呼ばれる試験で試算されたものです。

このキセノンランプ式促進対抗性試験とは、雨や紫外線といった自然環境を再現できる装置を用い、劣化の促進状況から期待耐用年数を出す試験方法です。

塗料メーカーが設定している耐用年数はあくまで想定される自然環境を模擬的に試験した結果から算出したものであるため、実際の耐用年数と異なることもあります。

耐用年数に達していなくても外壁や屋根に塗られている塗装は徐々に劣化が始まっており、定期的な点検を行って劣化状況を都度確認する必要があります。

■水性塗料と油性塗料(溶剤塗料)

外壁塗装用の塗料は、合成樹脂によるグレードの他にも、希釈する液体(塗料を薄める液体)によってさらに分類されます。

ここでは希釈する液体で分類して外壁塗装用塗料の特徴を解説しています。

1.水で希釈するのが水性塗料

合成樹脂の塗料を水で希釈して外壁や屋根に塗装するのが水性塗料です。

後述する油性塗料に比べて耐久性は劣りますが、環境や人体への害が少ない塗料です。

●耐久性は低め

水性塗料は、油性塗料と比較して密着性に劣るため、耐久性が低いといわれています。

ただ、近年、各塗料メーカーが水性塗料の開発に力を注いだことで大幅に性能が向上しているため、油性塗料に近い耐久性を持つ水性塗料も存在します。

●臭いや人体への影響が少ない

油性塗料のようにシンナーを使用しないため、臭気や人体への影響が少なく、室内の塗装に使われることもあります。

ただし、水性塗料の中にも微量のVOC(揮発性有機化合物)が含まれており、全くの無害・無臭という訳ではありません。

●手間がかからない

塗装できる状態の水性塗料は主成分が水なので、シンナーを使用する油性塗料のように危険物扱いとする必要が無く、現場での保管や安全管理において手間がかからないというメリットがあります。

●施工価格が安い

シンナー等を使用せず、希釈に水道水を使用するため、油性塗料と比較して施工価格が安くなる傾向があります。

2.強力なシンナーで希釈するのが溶剤塗料(油性塗料)

溶剤塗料(油性塗料)は、合成樹脂の塗料を強力なシンナーで希釈して塗装する塗料で、希釈する液体で塗料を分類した場合、最も耐久性が高い塗料です。

溶剤塗料は、従来は主流の塗料でしたが、近年では臭気や人体への影響が懸念されているため、水性塗料や後述の弱溶剤塗料の方が人気があります。

●耐久性が最も高い

溶剤塗料は、強力なシンナーで溶かした上で塗装する塗料であるため、水で希釈する水性塗料より密着性、耐久性が高く、耐用年数も長い塗料です。

●臭いが強く人体への影響もある

強力なシンナーを使うため、溶剤塗料による塗装工事では、シンナー特有の強い刺激臭が周辺に飛散します。

長く吸い続けると健康への悪影響もあるため、溶剤塗料を取り扱う作業員は、厚生労働省によって特殊健康診断、作業環境測定などが義務付けられています。

●価格が高い

強力なシンナー等の溶剤を塗装するたびに使用するため、水性塗料と比較すると価格が高くなる傾向があります。

3.塗料用シンナーで希釈するのが弱溶剤塗料(油性塗料)

弱溶剤塗料とは、合成樹脂の塗料を専用の塗料用シンナーで希釈した塗料です。

塗料用シンナーは、強力なシンナーではなく、少し弱めのシンナーなので、弱溶剤塗料は、溶剤塗料に比べて環境や人体への影響が少ない塗料です。

●耐久性は水性塗料より高く、溶剤塗料よりは弱い

弱溶剤塗料は、シンナーを薄めた塗料専用のシンナーで希釈した塗料なので、水で希釈する水性塗料より耐久性は高いですが、溶剤塗料と比べると耐久性は低いです。

●溶剤塗料より臭い・人体への影響が少ない

弱溶剤塗料は、溶剤塗料より弱い塗料用のシンナーを用いることで、溶剤塗料のデメリットである臭いや人体への影響を軽減した塗料です。

■一液型と二液型の塗料

外壁塗装用の塗料は、前述の合成樹脂のグレードや希釈液の分類のほかに、一液型・二液型と呼ばれる分類もあります。

この一液型・二液型は、水性、油性という分類と同様に、それぞれの合成樹脂のグレードに存在するため、予算に応じて選ぶ必要があります。

1.一液型

一液型とは、塗料メーカーから一つの缶を仕入れ、そこに水やシンナーなどの希釈液を混ぜることで使える塗料です。

後述の二液型と比較すると、

  • 価格が安く
  • 混ぜ合わせる手間がない
  • 希釈液を混ぜなければ次の日以降も使える

というメリットがありますが、二液型よりも耐久性が低いというデメリットもあります。

2.二液型

二液型は二つの缶(主剤と硬化剤)で一つの塗料であり、塗装する直前に2つの缶の塗料と希釈液を混ぜて、しっかり攪拌してから使う塗料です。

 

二液型は、混ぜるとすぐに固まりはじめるため、塗装をおこなう分だけの量の材料を混ぜ合わせる必要があり、余らせてしまった場合、翌日には完全に固まってしまい、使いまわせないという難易度が高い塗料ですが、適切に攪拌を行って塗装をすることで、一液型より高い耐久性の外壁に仕上げることができます。

3.水性・油性塗料と組み合わせて考えると

水性・油性塗料のそれぞれに一液型・二液型が存在し、その組み合わせによる耐久性の順位は下記になります。

  • 溶剤塗料 二液型・・・最も耐久性が高い
  • 溶剤塗料 一液型、水性塗料 二液型
  • 水性塗料 一液型・・・最も耐久性が低い

これらにさらに合成樹脂のシリコン樹脂、フッ素樹脂などの要素も組み合わされるため、外壁塗装用の塗料は、非常に奥の種類が存在するのです。

■どの塗料を使えば良いか

どの塗料を使えば良いかは、それぞれの家の事情により異なるため一概にどの塗料が良いとはいえません。

例えば、

  • 海が近くにある場合、塩害により劣化が早まる傾向があるため、初期投資が大きくてもフッ素樹脂塗料などの耐久性が高い塗料が望ましい
  • 盆地などの地域の場合、日差しが強く気温が高くなる傾向があるため、紫外線・熱対策として、遮熱塗料がよい
  • 北国などで雪が多い地域の場合、断熱効果を高めるため、断熱塗料がよい

など、状況により様々な塗料が選ばれます(上記もあくまで一例です)。

 

実際にどの度量を選ぶかは、信頼できる地域の優秀な外壁塗装業者に見積りを依頼し、現地調査をしてもらった上で、施主の予算やどのような外壁、屋根にしたいかなどの希望を聞いた上で選ぶ必要があります。

 

全く希望がなく、平均的なコストパフォーマンスが高い塗料を求める場合は、比較的価格が安く、信頼性の高い、大手メーカーが製造するシリコン樹脂塗料やラジカル制御型塗料がおすすめです。

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1.安いウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料にすると損をする

ウレタン樹脂塗料やアクリル樹脂塗料は、一回あたりの工事費用は安いですが、耐用年数は短いため、再塗装までの期間が短く、長期的に考えると損をしてしまう可能性が高いです。

 

例えば、40年間住む建物を毎回、ウレタン樹脂塗料のみで塗装した場合とフッ素樹脂塗料のみで塗装した場合で比べると、全体の塗替え費用はフッ素樹脂塗料で塗装した場合の方が安く済んでいます。

ウレタン樹脂塗料 フッ素樹脂塗料
塗替え費用 975,000円 830,000円
塗替え周期

(平均耐用年数)

7.5年 17年
備考 ※費用の算定条件

  • 外壁面積:100㎡
  • 単価:2,950円/㎡(平均単価)

※塗装の状態が良ければ、塗替え回数が3~4回で済む可能性があります。

※費用の算定条件

  • 外壁面積:100㎡
  • 単価:4,150円/㎡(平均単価)

※塗装の状態が良ければ、塗替え回数が1回で済む可能性があります。

 

一般的に塗料の費用は、外壁塗装工事費用のうち2割ほどしか占めていないため、塗料を低グレードにして節約しようとしても、劇的に工事費が安くなる訳ではありません。

  • どのくらいその家に住み続けるのか
  • 建物の寿命はどのくらいか
  • 今支払える予算はいくらぐらいか

などを業者と相談し、塗装する塗料を決めましょう。

2.外壁塗装用塗料のツヤはあったほうが良い

外壁塗装用の塗料は、「艶あり」が本来の仕様であり、外壁塗装で艶なしにするためには、本来は艶がある塗料に、艶を消したり弱めたりする機能を持つ「艶消し剤」と呼ばれる添加剤を混合させます(ただし、もともと艶がないガイナのような例外の塗料もあります)。

添加剤を加えて艶を消しているため、本来の艶ありの塗料より耐久性が若干落ちる傾向があります。

そのため、見た目や質感に強いこだわりがない限りは、塗料本来の耐久性が期待できる艶ありで塗装することをおすすめします。

■まとめ

外壁塗装用の塗料には、塗料の耐久性や性能を決定付ける様々な要素があり、それらを理解したうえで、要望に合った塗料を選ぶことができれば満足できる工事が可能です。

また、地域で活躍している優良な外壁塗装業者を見つけることができれば、地域の気候や施主の予算などを考慮した適切な塗料を選んでもらえるでしょう。

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