日本でも古来から建築資材として活用されてきた木材は、現代でも広く愛されています。

この木材を腐食や劣化から長く守るためには、外壁塗装などの適切なメンテナンスが必要です。

■外壁塗装では木材の塗装も必須

住宅の外装リフォームではサイディングに加えて金属や木部などの素材が異なる部分も一度に塗装する必要があります。

木部に使われる材木は呼吸するように常に湿気を吸収したり吐き出したりしているため塗装が難しく、メンテナンスには他の部材とは異なる注意点があるのです。

1.外壁にある木材の種類

通常の日本の住宅は木造が大半を占めていますが、メインの外装材としては木材以外のサイディングやモルタルなどの材料の人気があり、バリエーションも年々豊富になっています。

もちろん木材のバリエーションも昔より増えていますので、現在ではどんな部分にどのように木材が使用されているか、確認しておきましょう。

●天然木材の外壁

家屋の外装材としては下記のような形で天然木材が使用されます。

 

  • 木質系のサイディング材
  • 外壁も木材であしらわれたログハウス

 

サイディング材として最もシェア率が高いのはセメントと繊維質を主原料とした窯業(ようぎょう)系、続いてクールな質感が支持されている金属系、デザイン性の高い樹脂系のサイディングなどが人気がありますが、木質系のサイディングも販売されています。

木質系サイディングには外壁に必要な防火・耐水処理が施されていますが、メンテナンスを怠ればこの機能も徐々に低下し、他にもカビや腐食によって深刻なダメージが発生してしまいかねません。

現在ではログハウス風の注文住宅も人気がありますが、外壁が天然木でできている場合にはメンテナンスのために耐水性や耐候性などの保護力を保つ木部専用塗装が必要となります。

●付帯部

サイディングだけではなく、家の外装には様々な部分で木材が使われています。

 

  • 軒天…軒先の裏側で、下から見える部分です。純和風な家屋では垂木がむき出しになっていることもありますが、多くは軒天材で塞がれています。
  • 鼻隠し…屋根の勾配の下端に取り付けられた板状の部材で、雨樋が設置される部位です。
  • 破風板…切妻屋根で鼻隠しではない側(「妻側」と呼ばれる)に取り付けられた板ですが、「寄棟(よせむね)屋根」や「方形(ほうぎょう)屋根」など、屋根の形状によっては破風板が必要とされない場合もあります。

※1 上記の付帯部分には木材以外にも不燃材料のケイカル板(ケイ酸カルシウム板)が使用されていることもあります。

※2 塗装業者によっては鼻隠しも「破風板」として見積書に記載することも多いようです。

●エクステリア設備

壁面以外のエクステリア設備にも下記のような形で木材が使用されている場合があります。

 

  • 木製のウッドデッキ…木材の木口(年輪の現れている切断面)は水分の吸収と乾燥が激しく特に劣化しやすいため、念入りに塗装する必要があります。
  • 木製の手すり…直接手で触れる部分であるため、有害な溶剤や薬剤を使わないモックル処理という安全性の高い防腐・防蟻処理が施されているものもあります。
  • 木製の玄関ドア…木製の玄関ドアには他にはない高級感がありますが、経年劣化による狂い(反りや歪み)や寸法変化などでドアの開閉自体に問題が生じる可能性もあるため、メンテナンスには注意する必要があります。

 

また上記のような部分には「木質調」(気を模したデザインの樹脂や金属)であって実際には木製ではないものもあるので、メンテナンスは見た目だけで判断せずにどのような材質が使われているのかをよく確認してから計画しましょう。

2.木材はメンテナンスの手間がかかる

外装材としての木材のメンテナンスに手間がかかる理由として、木材が水に弱いために防水処理が必要なこと、木部の塗装は劣化しやすいことが挙げられます。

●木材は水に弱い

木材は水を吸収しやすく乾燥しにくい性質があり、長期間水気にさらされると腐食して強度が完全に失われてしまう恐れがあります。

基本的に屋外には工場で防腐処理が施された木材が使用されますが、その性能も自然環境下では徐々に劣化してしまうため、木部には定期的な塗装メンテナンスが必要です。

●調湿作用で塗膜が剥がれてしまう

「木は呼吸している」といわれることがありますが、これは周囲の湿度や温度の影響で湿気を吸収したり放出したりするのを繰り返す木材の性質を表現したものです。

この特徴は内装材としては室内の快適さを保つために役立ちますが、塗装の必要な外装材としては塗装を難しくする要因となっています。

 

この調湿作用により木材は膨張・収縮を繰り返すため、それによって塗膜が割れてしまうという現象が生じます。

どれほど高機能で耐久年数の長い塗料で塗ったとしてもこの膨張・収縮はコントロールしきれないために、木材の塗装はサイディングやモルタルに比べて劣化が早いという欠点があります。

■DIYによる木材の塗装は非常に難しい

木材の塗料は一見簡単そうに見えますが、上記の通り一筋縄ではいかず、塗装をできるだけ長持ちさせるには高い技術が求められます。

 

木部をDIYで塗装すると仕上がりたては上手に塗れたように見えても、すぐに塗膜が破れたり剥がれたりしてしまいますので、木部の塗装は木材の特徴をよく理解していて信頼できる技術や経験を持つ専門業者に依頼するようにしましょう。

1.未熟な技術で塗装してもすぐに剥がれてしまう

モルタルやサイディングと違って常にゆっくりと膨張と収縮を繰り返している木材の塗装は専門業者にとっても決してたやすいものではありません。

木材や塗料について熟知した上で下塗りやケレン作業などを行う技術を持たないまま塗装してしまえば、1〜2年で目に見える劣化が始まってしまう可能性もあります。

 

たしかにDIYは手軽で安上がりですが、1〜2年で塗膜が剥がれてしまい材料代や時間が無駄になってしまうというリスクは無視できるものではなく、結果的にはDIYの対費用効果は低く(悪く)なってしまいます。

塗装にかける時間や費用を上手に使うためには、塗装の耐用年数を十分に発揮させる技術を持つプロの手を借りるのがベストです。

2.木材の塗装は塗装の専門業者に任せるべき

木材塗装の優れたノウハウを持つ熟練の塗装業者であれば、

  • 塗装面への日照り
  • どの程度風雨にさらされるか
  • 風土や気候などの立地条件はどうか

など関係する様々な条件から塗装後のリスクまで計算に入れた塗装を行います。

塗装業者が木材塗装に関してどのような施工事例や実績を持っているかをホームページを見たり、店舗を訪問したりするなどして十分に調査し、希望する条件に適した塗装を行ってくれる業者を選ぶようにしましょう。

■木材塗装の方法

調湿作用による塗装の劣化が起きにくくするためには、適切な「塗料」と「工法」の2点を慎重に選んで施工することが重要です。

1.木材に適した塗料とは

●浸透型の塗料

浸透型の木部用塗料はその名の通り木材に表面に染み込むため、調湿作用による割れが生じにくくなります。

また、浸透型塗料は木部表面に塗膜を作らないため、木の魅力の一つである樹種ごとの個性的な木目を残した塗装とすることが可能です。

有効成分により防水だけでなく、防虫・防腐・防カビ機能などが付加されていて耐候性も高いタイプの塗料もあります。

 

浸透タイプの木部塗料の代表的なものには、大阪ガスケミカル社が販売するオイルステイン系に似た仕上がりの『キシラデコール』、日本ペイントのグループ会社であるニッペホームプロダクツの『水性木部保護塗料』などがあります。

●膜を作る塗料

塗膜を形成する造膜タイプ塗料から選ぶのであれば、ウレタン塗料が選択肢の一つとして挙げられます。

伸縮性(弾性)を持つウレタン樹脂塗料であれば、下地である木部に膨張や収縮があってもその弾力のある塗膜は割れることなく、木材を長期間にわたり保護することが可能です。

また顔料を含まない無色透明のクリヤー塗料もウレタン樹脂塗料の一種であり、木の美しい木目を残すことが出来るため木部に適しています。

木部用のクリヤー塗料としては関西ペイントの『セラMレタン弾性クリヤー』や、弾性だけでなく透湿性もある日本ペイントの『ファインウレタンU100木部用クリヤー』などが有名です。

 

造膜塗料によるその他の塗装方法としては、どんなにグレードが高く期待耐用年数の長い塗料であっても木部であればひび割れのリスクは避けられないため、あえて耐用年数が短く安価な塗料を選ぶという選択肢もあります。

耐用年数が短い塗料でもひび割れや剥がれなどで劣化してしまうまでは十分な保護力を期待できます。

ただ、割れや色あせなどのために短いスパンで塗替えの必要が生じることは考慮に入れておきましょう。

2.木材塗装のポイント

木材塗装の付帯工事として「ケレン作業」と呼ばれるものが行われます。

このケレン作業では、材木表面に残っている古い塗膜を十分に除去し、木部以外では鉄部の塗装でもサビや古い既存塗膜などを落とすのに必要な作業です。

 

また、下地表面をあえて荒らして毛羽立たせることにより塗料が下地にしっかりと密着させるという効果もあり(目荒しといいます)、仕上がりと寿命を左右する重要な工程の一つです。

木材塗装の見積もりを出してもらうときにはこの「ケレン作業」または、ケレン作業を含む「下地処理」の項目がしっかり記載されているか確認しましょう。

■おわりに

外装材には様々な選択肢があるものの、やはり木には木にしかない魅力があります。

適切なメンテナンスを行っていれば、時間の流れによって木材は劣化するのではなくむしろ魅力が深まってゆく特別な素材です。

木材に関する注意点を理解して、適切なメンテナンスを実施しましょう。