家の外装工事をお願いする際、4回塗りを提案されるかもしれません。
基本は3回塗りですが、4回塗りをする場合もあります。
素人につけ込む悪徳業者の可能性もありますので、まずは3回塗りの知識を紹介します。
その上で、悪徳業者の営業トーク撃退法のポイントも紹介しましょう。
このページの目次
■塗装は3度塗りが基本
通常、塗装は3度塗りで行ない、4度塗りは非常に特殊な流れです。
これは、自分でスポンジローラーを使って塗替えするにも、プロの専門業者がスプレーガンで塗装するにも変わりありません。
大手塗料メーカー側の公式サイトを見ても、料の期待耐久年数は3度塗りをもとに算出されています。
1.なぜ3度塗りなのか
なぜ3度塗りが基本なのか、そこにはちゃんとした理由があります。
その理由を理解してもらうため、ここでは3度塗りの内容とそれぞれの目的について解説しましょう。
●下塗り
まず行われるのは、「下塗り」です。
下塗りは、「下地調整」の一環として行われる作業工程で、その後に塗る中塗り・上塗り用塗料と塗布面との密着性をよくする接着効果があります。
金属部分に塗る場合には、さび止め塗料としての効果も期待できます。
下塗りの前に行う下地調整には以下のようなものがあり、それぞれにれっきとした意味があります。
作業工程 | 目的 |
養生 | 塗料が塗布面以外につくリスクを避ける |
足場設置 | 外壁や屋根での作業性を上げる |
高圧洗浄 | 建材自体の汚れを落とす |
飛散防止シート | お隣に水や塗料が飛散するリスクを避ける |
シーリング | サイディングボードの継ぎ目を埋めてひび割れを防ぐ |
下地補修 | 塗装面のひび割れなどを修復する |
やすりがけ | 破風などの錆を落とすとともに塗料をのりやすくする |
これらの下地調整が完了して初めて、下塗り用塗料(プライマー、シーラーなどと呼ばれる)を塗っていきます。
●中塗り
下塗り用塗料が塗り終わって乾燥したら、次は中塗りを行ないます。
中塗り用塗料は仕上げ用塗料(溶剤塗料、断熱塗料、色付き弾性塗料、水性シリコン塗料など)とも呼ばれ、下塗り用塗料よりも色、種類、価格帯が豊富です。
下塗り塗料はあくまでも「接着剤」のため、色のバリエーションに乏しく、色選びの楽しさもありませんが、仕上げ用塗料は自分好みの塗料会社の塗料を選ぶ楽しさがあります。
ちなみに、仕上げ用塗料を一度塗っただけでは、下塗り用塗料の色がうっすら透けて見える状態で、塗装面にも気泡やむらがあるため、この時点ではまだ完成ではありません。
●上塗り
一度目の仕上げ塗料を塗り終わって乾燥したら、今度は上塗りです。
中塗りで使ったのと同じ塗料をもう一度塗る作業工程です。
塗料メーカーHPを見ると、仕上げ用塗料を一度に塗る量が決まっています。
中塗りで生じた気泡やむらを、上塗りできれいな仕上がりにするのが役割です。
上塗りが終われば、下地が完全に隠れて上塗り塗料の色がはっきりわかるようになります。
中塗りと上塗りでは基本的に同じ性質の塗料を使いますが、色は同じでなくても構いません。
施工業者の中には「3度塗りする」と言っておきながら中塗りをしない手抜き業者もいますが、中塗りと上塗りで異なる色選びをすれば、手抜き工事は一目瞭然です。
ただしその際、上塗り塗料の色は中塗りよりも濃い色にしてください。
2.2度塗りで済む塗料もある
基本的に塗装は3度塗りですが、中には2度塗りで済む塗料もあります。
それが、模様のある意匠系サイディングボードに使われる無色透明の専用塗料(クリヤー塗料)です。
クリヤー塗料は単体で使用可能で、下塗り用塗料を必要としませんので、工期短縮や費用抑制にもつながります。
クリヤー塗料を使った2回塗りであれば、悪徳な施工業者とも限りませんので、注意しましょう。
●2度塗りで済む以外にもメリットがあるクリヤー塗料
建材自体に模様がついているサイディングボードに塗れば、壁の色や模様を生かしつつしっかりとした塗膜を作れます。
顔料が劣化して塗膜表面に白い粉が付く「チョーキング」も悩みの種ですが、クリヤー塗料には顔料が含まれていませんので、チョーキングも発生しません。
●クリヤー塗料が適さない壁もある
ただし、意匠系サイディングボードならば何でも適しているわけではありません。
まず、透明な塗料のため、傷や汚れが激しい外壁ではそれが透けてしまい、仕上がりが悪くなってしまいます。
また、親水性機能や光触媒機能がある外壁にクリヤー塗料を塗ると、塗料をはじいてしまうため向いていません。
さらに、本来塗装の必要がない本物のタイルやレンガにクリヤー塗料を塗ると、先にクリヤー塗料が劣化するため、あまり意味がありません。
■4度塗りはどのような時に行われるのか
意匠系サイディングボードならばクリヤー塗料で2度塗りもOKですが、基本的には3度塗りです。
しかし、4度塗りを行なうケースもあります。
4度塗りは原則として、
- 下塗り×2
- 中塗り×1
- 上塗り×1
という流れで行ないます。
4度塗りが必要なケースは、以下の場合です。
1.塗装面が非常に弱っているとき
まず、塗装面が非常に弱っている場合です。
地域によっては、紫外線や雨が強く、建物の傷みが激しいこともあります。
塗料会社が設定している耐用年数より早く、以前に塗った塗料の劣化が進行して、塗装面にダメージが直接及ぶ可能性も否定できません。
弱った塗装面に下塗り用塗料を一度塗っただけでは、その接着効果が十分ではないため、下塗りをもう1回追加します。
屋根や南西方向の壁などは、紫外線のダメージが特に激しいため、4回塗りに仕上げを1回加えて、合計5回塗りが行なわれることもまれにあります。
2.塗装面が下地材を吸収してしまうとき
また、モルタル壁の場合も、4回塗りが行なわれることがあります。
劣化したモルタル壁や凹凸の激しいスタッコ壁などは、下塗り用塗料を激しく吸収してしまうため、1度塗っただけでは接着効果が生まれません。
そこで、下塗りを2回行い、密着性を高めるのです。
■4度塗りで依頼するときの注意点
何度も説明しているように、基本的には3回塗りであり、4度塗りが必要なケースはあまりありません。
業者側で4度塗りを基本としている場合もありますが、4度塗りの施工プランで依頼をする際には、複数業者の無料一括見積もりサービスなどで相談をして、慎重に比較検討しましょう。
1.ただ回数を増やせば丈夫な塗料になるとは限らない
3度塗りは非常にバランスの取れた施工プランであり、塗装作業の回数を増やしても丈夫な塗膜になるとは限りません。
「お客様、当店は仕上げ3回の4度塗りですので耐久年数も抜群です」
などと言ってくる訪問販売の専門店もあるかもしれません。
4回塗りでできるだけ利益を多くしようと、仕上げ塗料を非常に薄くする業者があります。
塗料メーカーでは塗料の希釈も推奨割合があり、必要以上に薄くすると、塗料の本来の実力を発揮できません。
他の作業で余った塗料を使いきりたい、業者側の都合の可能性もあります。
そもそも、4回塗りの場合の下塗りは2回が基本ですので、3回仕上げ塗料を塗ってもその効果は高まりません。
見積りを見て、下塗りが1回なのに合計4回塗りという内訳になっている場合、他の業者から一括見積もりをとるなどして、業者選定の参考にしてください。
2.施工費用は塗装の回数分高くなる
3回塗りから4回塗りに増えれば、使う塗料は多くなり工期も伸びるので、施工費用は高くなります。
基本的には3度塗りで抑えておくべきですが、塗装面の劣化が激しい場合、下地材の吸収が激しいモルタル壁などの場合は、4度塗りをしてメンテナンスをしましょう。
「当店はオリジナル塗料を使っているので4度塗りです」と言ってくる業者もいますが、塗料グレードによって塗装回数が変わることはありません。
単純に利益を多く出したいがために、4回塗りを提案する悪徳業者もいますが、その場合には、以下のような質問をして理由をしっかり確認しましょう。
- 「なんで4回塗りしなきゃいけないんですか?」
- 「重ね塗りする塗料はどんな塗料ですか?」
- 「どの部分に4回塗りするんですか?」
- 「4回塗りした工事完了後の写真や画像を見せてくれませんか?」
これらの質問に明確に回答できない業者は、おススメできません。
■おわりに
外壁塗装は3回塗りが基本です。
3回の作業工程にはそれぞれ意味があり、ベストな工事案と言えましょう。
それでも、クリヤー塗料は2回で済みますし、塗装面の劣化が激しいケースや下塗り塗料の吸収が激しい壁などは、4回塗りも行なわれます。
これらの理由もないのに4回塗りを提案してくるのは優良業者ではないので、工事終了後の現場画像を見せてもらう、無料の一括見積りを取るなどして、優良業者に住宅の外壁塗装をしてもらえるようにしましょう。