住宅リフォームの中には、実施することによって本来かかるはずの税金が減らせる「減税」の対象になっているものもあります。
外壁塗装も内容次第では減税を受けることが可能です。
外壁塗装をはじめとするリフォームは高額な費用が発生するので、減税などの恩恵を受けることができれば工事後の不安を減らすことができるでしょう。
ただし減税はいつ誰でも受けられるというものではなく、受けるための条件や手続きが決められています。
そこでこの記事では、外壁塗装リフォームを行った際に受けられる住宅ローン減税のしくみや利用時の注意点についてご紹介します。
このページの目次
■「住宅ローン減税」を外壁塗装でも利用しよう
住宅ローン減税とは、住宅ローンを借り入れて住宅を取得した人が、年末のローン残高に応じて所得税を軽減できる制度です。
正式名称は「住宅借入金等特別控除」であり、住宅ローン減税や住宅ローン控除などと呼ばれています。
なお、この場合のローンとは金融機関から借り入れたものに限ります。
両親からの借り入れは対象のローンとはみなされません。
会社からの借り入れは利子を0.3%以上に設定することで利用可能となりますが、0.2%以下や無利子、役員の方が借り入れた場合は対象外です。
1.住宅ローン減税の内容
まずは住宅ローン減税のしくみを詳しく見てみましょう。
※平成30年5月時点
適用期間 | 平成33年12月31日まで |
控除期間 | 10年間 |
控除率 | 年末ローン残高の1% |
控除額 | 住宅ローン等の年末残高-補助金等×1%
補助金…国や地方公共団体から交付される補助金 または交付金、その他これらに準ずるもの |
最大控除額 | 400万円まで
(1年につき40万円まで×10年間) |
なお、住宅ローンの控除額を所得税から控除しきれない場合は、差額を住民税から控除することも可能です。
住民税から控除できる金額は、13.65万円(前年取得×7%)までとなっています。
2. 外壁塗装も「住宅ローン減税」の対象になる
住宅ローン減税は、新築住宅や中古住宅の購入だけでなく、住宅のリフォーム工事や改修工事のためにローンを組んだ人でも利用できます。
外壁塗装工事も住宅の改修工事ですので、条件を満たせば所得税控除を受けることが可能です。
ただし改修工事の場合は、住宅取得時にはない条件が追加されますので区別しておきましょう。
3.減税を受けるためには手続きが必要
減税は条件を満たしていても、何もせずに適用されるわけではありません。
減税を受けるためには、年末調整または確定申告の際に、住宅ローン減税の手続きが必要です。
個人事業主の方であれば確定申告の際に住宅ローン減税も踏まえて申告書を作成する必要があります。
また、会社員の方は年末調整の際に控除を証明する書類の提出が必要ですので、忘れないようにしましょう。
■住宅ローン減税を受けるための条件
住宅ローン減税には基本の条件があります。
※平成30年5月時点
- 工事を行う建物が、自身の居住する住宅であること
- 工事を行う建物の床面積が50㎡以上、かつ床面積の2分の1が居住用のものであること
- 返済期間10年以上のローンを組んでいること
- 年収が3000万円を上回らないこと
- 工事費用が100万円であること(改修工事の場合)
外壁塗装工事などの改修工事の場合は「リフォーム費用が100万円以上であること」が条件に追加される点にご注意ください。
1.住宅ローン減税を受ける前に知っておくこと
注意点として、減税の対象となるのは「自身が居住するための住宅」であることを押さえておきましょう。
さらに、対象の住宅に工事完了から6カ月以内に本人が住み始め、控除が始まる年末の12月31日まで住み続けている必要があります。
賃貸用に購入したアパートやマンション、別荘などは制度の対象外です。
また、条件の中には工事前にしか準備できない内容もあります。
例えば、建物そのものの床面積や耐震性などはカンタンに変更できませんので、工事前に確認しておかなければなりません。
工事を行った後で「減税の対象外だった」とならないように、工事着工前に条件の内容を確認しておきましょう。
2.外壁塗装を住宅ローン減税の対象にするためには
大前提として、工事費用が100万円を上回っていなければ外壁塗装で住宅ローン減税を受けることはできません。
ローンも新築住宅購入と同様に、10年以上で借り入れを組む必要があります。
そのほか、中古住宅の取得や改修工事では、対象となる建物が耐震性能を満たしている必要があります。
新築住宅の場合は建てる際の建築確認申請で最新の耐震基準をクリアしていますが、中古住宅や築年数が経っている住宅ではそれを確認できないためです。
耐震性能を証明するためには、対象となる住宅が
- 築20年以内であること(鉄筋コンクリート造などの耐火建築物は25年)
が条件となりますのでご注意ください。
この条件のほか、耐震診断を受けて「耐震基準適合証明書」を発行してもらったり、既存住宅性能評価で耐震等級1以上と認定されたりしても耐震性能を証明することが可能です。
●外壁塗装で住宅ローン減税を受けるための条件まとめ
- 建物の耐震性能が証明されていること
- 自身が居住する住宅であること
- 床面積が50㎡以上であること、かつ床面積の2分の1が居住用のものであること
- 外壁塗装工事費用が100万円を上回っていること
- 外壁塗装工事のためのローンを10年以上で借り入れていること
- 年収が3000万円を上回っていないこと
3.住宅ローン減税を受けるための必要書類
適用条件を満たしていることが確認できたら、書類を集めていきましょう。
書類 | もらえる場所 |
増改築等工事証明書 | 工事を行った施工業者からもらう |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
(特定増改築等用の書式) |
国税庁ホームページでダウンロード可
書式はこちら(PDFが開きます) |
住民票 | 管轄の役所で発行する |
ローンの残高証明書 | ローンの借り入れ元(金融機関など)からもらう |
源泉徴収票
※給与所得者の場合 |
会社からもらう |
「増改築等工事証明書」とは、施工した工事業者に発行してもらう書類です。
この証明書が、増改築工事を行ったということの証明になります。
塗装業者には工事前に、証明書を発行してほしい旨を必ず伝えておきましょう。
「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は複数種類ありますが、「特定増改築等」と書かれているものを使います。
なお、住宅ローン減税の控除期間は10年間ですが、一度申請を済ませれば、翌年からは何もせずに控除が行われます。
■住宅ローン減税以外にも減税制度はある
外壁塗装で利用できる減税制度は住宅ローン減税だけではありません。
1.特定住宅改修工事の減税制度
増改築工事や模様替え工事などの改修工事のうち、
- 省エネ性能を向上させるもの(省エネリフォーム)
- バリアフリー性能を向上させるもの(バリアフリーリフォーム)
を行った場合は別の控除制度を利用できます。
特に断熱塗料を使った外壁や屋根の塗装は断熱改修工事とみなされ、省エネリフォーム工事として認めてもらえる可能性もあるため覚えておきましょう。
ただし上記2種のリフォームを対象とする減税制度は、住宅ローン減税との併用はできません。
工事費用や年収、ローンの借入額などによっては合計減税額が全く変わってきますので、どちらが有利か施工業者とよく相談して利用しましょう。
2.ローンを利用せずに工事をした場合
ローンを借り入れず自己資金のみで住宅リフォームを行った場合、条件を満たせば「投資型減税」が利用できます。
投資型減税を利用しても、翌年の所得税が減額されます。
ただし対象となるのは
- 長期に渡って使用できる優良な住宅に改修した場合
- 太陽光発電の設置など省エネ性に優れた住宅に改修した場合
となっており、外壁塗装のみでこの制度を利用するのは難しいかもしれません。
もし長期優良住宅にリフォームしたときや太陽光発電などの省エネシステムを導入する際、併せて外壁塗装も行うようであればこちらも検討すると良いでしょう。
■おわりに
住宅ローン減税は新築購入しか使えないように思ってしまいますが、実は外壁塗装でも一定の条件を満たせば利用が可能です。
ご自身の住宅で減税制度が利用できるのか、または省エネリフォームなど別の減税制度を利用した方がいいのか迷ったときは、施工業者に相談してみましょう。
「増改築等工事証明書を発行してもらえますか?」と尋ねて、すぐに把握してくれる業者であれば必要書類の準備もスムーズになります。