外壁塗装には結構な金額がかかるというイメージがあります。
初めて外壁塗装を行う場合だとどうしても塗装工事の金額に目が向きがちですが、料金の安さだけで決めてしまうのは非常に危険です。
今回は外壁塗装の適正な価格について、また格安な料金に潜む危険について考えてみたいと思います。
このページの目次
■外壁塗装には相場価格が存在する
外壁塗装の見積もりを見たときに、「なるほど」とすぐに納得できる人はあまりいないでしょう。
見積書を見せてもらってもそれが適正な料金なのかどうかよく分からないというのが正直なところではないでしょうか?
提示された外壁塗装の費用が安いか高いかを判断するには、相場価格と比較してみる必要があります。
1.外壁塗装の相場価格
外壁塗装工事の各項目には相場価格というものがあり、単価は1平方メートルあたりで計算される平米単価で表されます。
外壁塗装に関する費用については素人には分かりにくい部分が多いのですが、相場価格をある程度把握していれば、大幅に逸脱した価格で契約してしまうことを防げます。
例えば、外壁塗装の相場価格は約30坪の戸建住宅で70~90万円程度、屋根の塗装も行う場合なら外壁塗装の価格に20~40万円程度がプラスされます。
ところが、
- 外壁塗装の各工程の内容
- 各工程や項目のおおよその相場価格
- 塗装面積の求め方
などを知らないままだと、価格を提示されてもそれが高いのか安いのかを判断できません。
外壁塗装に必要な工程や費用の内訳についてある程度の知識を得て、提示された見積もりが適正かどうか確認するためにもぜひ内訳や相場価格を把握しておきましょう。
●外壁塗装費用の内訳
以下に挙げるは外壁塗装工事でどうしても必要な工程です。
各工程や一つの工程を終えるまでにかかる時間などは、素人から見ると「ここを省けばもっと費用が安く済むのに」と思えるものもあるかもしれませんが、各々の工程や工程に必要な時間を削ってしまうと、外壁塗装の仕上がりに必ず影響が出てきます。
これらはひとつでも省くと仕上がりの品質が低下するため、決して省略することはできないと考えてください。
単価 | 30坪
(118.8㎡) |
40坪
(158.4㎡) |
50坪
(198㎡) |
|
足場架設費用 | 600~900円 | 71,280~106,920円 | 95,040~142,560円 | 118,800~178,200円 |
高圧洗浄費用 | 200~250円 | 23,760~29,700円 | 31,680~39,600円 | 39,600~49,500円 |
下地処理費用 | 600~1,000円 | 71,280~118,800円 | 95,040~158,400円 | 118,800~198,000円 |
養生費用 | 300~500円 | 35,640~59,400円 | 47,520~79,200円 | 59,400~99,000円 |
外壁塗装費用 | 1,000~4,500円 | 118,800~534,600円 | 158,400~712,800円 | 198,000~891,000円 |
※カッコ内の㎡はその坪数のおおよその外壁塗装面積
2.相場価格とは必要最低限の工事費用である
先にも少し説明しましたが、外壁塗装には必ず行うべき工程がいくつもあります。
外壁塗装の価格はそれらの工程の作業費用を合計したものですので、必要な工事をすべて正しく行えば、かかる費用は自然に相場価格の範囲内に落ち着きます。
ですから、相場価格よりも極端に安い工事費用が提示された場合には、何か必要な工程を省略しているのではないか、また人件費などを浮かすために本来費やさなければならない時間を短縮していないかといった点をもう一度しっかり確認してみた方がいいかもしれません。
また逆に、外壁工事の見積もりが一般の人には分かりにくいという点を悪用して、極端に高い工事費用を提示する悪徳業者も存在することも覚えておきましょう。
■相場より安い費用はなぜ危険なのか
外壁塗装の費用は決して安くはありませんから、少しでも工事の費用を低く抑えられるのならその方が良いと考えるのは当然でしょう。
ただ、費用を安く抑えることを優先させてしまうと必要な部分の補修がおざなりになってしまいかねません。
適切な時期に外壁の劣化部分を完全に補修して住宅の寿命を延ばすこと、それが外壁塗装工事を行う一番の目的ですが、相場価格よりも大幅に値引きすることをセールスポイントとして契約させようとする業者もいるため、注意する必要があります。
しかし、なぜ相場より安い費用を提示されたら注意しなくてはならないのでしょうか?
1.相場より安い=経費が削られている
相場価格よりも大幅に値引きされているということは、適切な外壁塗装工事を行うための経費が充分に計上されていないことを意味します。
補修すべき箇所に対して経費が計上されていなければ、あてられている予算内で工事を済ませなければなりません。
そのような状況では、せっかくよい技術を持った職人がいたとしても施工で手抜きを行わざるを得なくなってしまうでしょう。
●手抜き=質の悪い工事になってしまう
手抜きが行われるということは、必要な作業が省かれるということです。
しかし、
- 目に見えない工程、塗装後に確認しにくい工程を省略してしまう
- 劣化箇所をしっかりと補修できないまま工事を進めてしまう
- 人件費を減らすために工程に必要な時間を短縮してしまう
詳しくは後述しますが、こういったことが行われれば当然施工の質にも影響が出るはずです。
劣化の状態が比較的軽い時期に必要に応じた適切な処置を行うことが外壁塗装の目的ですが、補修が必要な劣化部分に対して適切な補修が施されないまま放置されてしまえば、工事後その劣化はさらに進行してしまいます。
それではせっかくお金をかけて工事をしても何の意味もありませんよね。
外壁塗装には数十万円~100万円以上もの費用がかかります。
決して安い費用ではありませんが、節約しようと考えて支出を惜しんだために必要な補修がしっかり行われなければ、後々もっと大きな損害が発生してより大きな出費が発生するうえ、住宅自体が深刻なダメージを受けることにもなるのだと理解してください。
2.契約を取るためだけに安くしていることがある
相場よりも安い見積もりを作れば客と契約できると考えている悪徳業者は、他店よりも大幅な値引きでアピールすることがあります。
しかし、そのような業者はとにかく契約さえ取れればいいという考えなので、成約した後に顧客の満足のいくようなサービスを提供したり、しっかりとしたアフターフォローを行ったりせず、トラブルが起こることも珍しくありません。
ですから、このように安さを全面に押し出してアピールする業者には特に気をつける必要があるでしょう。
- 前金で工事代を全額支払わせておいて、工事開始直前に連絡が取れなくなった業者
- 契約後に高額な追加費用を請求してくる業者
- 「一式」「その他」などあいまいな見積もりを作って工事内容の悪質さをごまかす業者
- 今ならキャンペーン中だといって契約を急がせる業者
など、格安を売りにする悪質業者の例は枚挙にいとまがありません。
こうした業者に引っ掛からないためには、これまでの施工実績を充分に考慮したうえで、信頼できる業者を慎重に選ぶことが重要なのです。
■安い見積もりに隠れている落とし穴
悪徳業者が安い見積もりを作るとき、その裏では一体どういったことが行われているのでしょうか?
どのような方法で安い見積もりを作り出しているのでしょうか?
1.手抜き工事で施工費用を安くしている
前章でも少し触れましたが、外壁塗装工事で必要な工程を省いて手抜き工事をすれば施工費用はどのようにでも安くすることができます。
手抜き工事にもいくつかの種類がありますが、ここでは施工費用を安くするためによく行われる手抜きの例を紹介します。
●塗装の3回塗りを省く
外壁塗装では原則として、下塗り・中塗り・上塗りの合計3回の重ね塗りが基本とされています。
大手メーカーが販売している塗料の多くは、3度塗りをすることによってその耐久性の効果が発揮されるように調整されているからです。
ただし、3度も塗るには充分な量の塗料や、下塗り、中塗りをした後の乾燥時間も必要であり、きちんと確実に塗装を仕上げるには多くの塗料と手間を費やさなければなりません。
悪質な業者だと、このうち下塗りまたは中塗りを省き、上塗りだけ施してきれいに塗装したように見せかけて塗料と手間の両方を削ってしまうこともあります。
もちろん、必要な塗料や手間を省いてしまえば塗装後早い時期に外壁塗膜に異常が見られたり、耐久年数に影響が出たりする可能性は高まるでしょう。
重ね塗りを省くという手口は手抜きの中でも特に多く、
- 重ね塗り回数を減らしても塗装直後はそれほど見た目に違いがないため、重ね塗りされているかどうかの判別がつきにくい
- そもそも重ね塗りが必要であること自体を知識として持ち合わせている顧客が少ない
- 見積もりに使用する塗料の平米単価や塗装面積などを明記せず「一式」と書いてしまえば塗装回数までは確認できない
など、専門知識を持ち合わせていないとごまかされても気が付きにくいといった点につけこむケースが多いです。
●塗料を薄めて使用する
外壁塗装の塗料は、水性塗料なら水、油性塗料ならシンナーなどの有機溶剤で希釈して使用できる状態にします。
塗料によって適切な希釈率が定められていますので、溶剤が多すぎたり少なすぎたりすれば当然、塗料の品質を維持することができません。
ところが、塗料代を節約してより大きな利益を得るために塗料を適正な希釈率以上に薄め、少ない塗料で塗装を済ませてしまう悪質な業者もあります。
塗料を規定以上に薄めると塗料の量は増えますが、粘性が弱くなるので耐久年数も短くなってしまいます。
しかし残念ながら、塗装業者が塗料の希釈率をきちんと守っているかどうかを確認する方法はありません。
しかし、しっかりした業者なら、塗装面積に対してどのくらいの塗料が使用されるのか、そしてその塗料の単価がいくらなのかといった点も見積もりにはっきりと記載してくれるはずです。
詳細な内訳まで見積書に示してくれる業者を選ぶべきだというのは、こうした手抜き工事を防ぐ意味でも重要なことなのですね。
2.足場工事費用をカットしている
見積書の中でも価格が高い項目はよく目立ちます。
その価格の高い項目を大幅に値引きしたように見せかけて、一見安い見積もりを作成するといったことが行われる場合もあります。
例えば、足場設置は平均すると20万円~30万円もの費用がかかり、外壁塗装費用に占める割合が大変高い工事項目です。
外壁塗装を高額にする要因でもあるため、悪質な業者になると「足場工事をなくして脚立で工事を行います」などと値引きをアピールすることもあるといいます。
しかし、足場は職人が安全に塗装作業を行うために絶対に欠かせない設備であり、足場なしに高所で繊細な作業を行うのはかなり無理があるといえます。
どんなに熟練した業者でも脚立上での作業には限界がありますし、施工品質や安全性の面でもマイナスにしかなりません。
実際には、足場代をカットしたように見せかけておいて、他の項目で料金を上乗せしているケースが大部分を占めていると思われます。
3.人件費をカットしている
塗装工事では現場で作業をした職人1人ずつに人件費が発生します。
悪質業者は人件費すら悪質なコストカットの対象にしてしまいますし、必要以上の人件費のカットは工事の品質低下に直結することも知っておいてください。
●下請け業者に破格で発注
小規模のリフォームショップなどでは自社に塗装職人や工事スタッフが在籍していないことも多いです。
そのような場合は下請け業者に工事を依頼するのが一般的ですが、格安工事を前面に打ち出しているような業者だと中間マージンを差し引いてしまい、ありえないような格安の契約金で下請け業者に工事を行わせるケースもあります。
しかし、安い契約金しかもらえない下請け業者が果たして質の高い施工を行えるでしょうか?
乏しい資金状況の下で行われる施工はどうしても質が悪くなってしまう傾向が見られます。
●熟練スタッフや現場監督を呼ばずに施工
熟練スタッフや有資格者の現場監督などを置くと高い人件費が発生します。
そのため、そうしたベテランスタッフを使わず人件費の安い新米スタッフばかりを集めて施工を強行する格安業者もあることを知っておきましょう。
確かに工事代は安く抑えることはできるかもしれませんが、施工品質が低下することはいうまでもありません。
■おわりに
支払われた金額に見合わない適当な施工を行う悪質な業者というのは確かに存在します。
そうした業者は、依頼する側が外壁塗装に関する知識を持たないのをいいことに、安い工事代金を提示して契約を取り付けようとしますが、外壁塗装は料金の安さだけで判断できるものではありません。
大切な家の寿命をできるだけお金をかけずに延ばしたいと考えているのなら、依頼する側もすべてを業者に丸投げするのではなく、ぜひ外壁塗装の工事や見積もりに関する知識も身に着けておきましょう。