外壁の洗浄は外壁塗装リフォームに必ず含まれる工程です。
「洗浄くらいなら自分でできる」と思われるかもしれませんが、実は重要な意味がありプロに任せるべき理由もあります。
洗浄に関する基礎知識を把握しておきましょう。
このページの目次
■外壁塗装前の洗浄には重要な意味がある
足場設置工事や養生など、外壁塗装リフォームに含まれる付帯工事にはすべて重要な意味があります。
作業工程の一つである高圧洗浄も、単に洗うというものではなく、これから塗られる塗料のために下地をパーフェクトに保つという重要な意味があり、プロの技術が欠かせません。
1.塗装前に外壁・屋根表面を洗浄して異物を除去する
塗装のための高圧洗浄は、単に目に見える汚れを落とすというものではなく、塗装の美しい仕上がりに邪魔になる外壁表面の汚れ・異物全てを除去するために行われます。
外壁塗装前の洗浄では、特に下記の汚れや異物を取り除くのが目的です。
●チョーキング
チョーキング現象または白亜化とは、外壁が紫外線や熱、風雨に長期間さらされて徐々に塗膜が劣化していき、塗装成分の含量が分解され粉状になって表面に浮き出てくる現象です。
この浮き上がってきた汚れは手で触れるとチョークの粉のような汚れが付着するようになります。
新しく塗装するにあたってこの粉状の汚れが邪魔になりますので丁寧に洗い落とすことが必要です。
●錆び
外壁の金属部分である、雨どいを固定する釘、水切り、金属系のサイディングに発生したサビも丁寧に除去することが必要です。
これを放置しておくと塗料がきれいに仕上がらないだけでなく、塗膜の下でもサビが広がっていき、すぐに塗装が劣化し剥がれてくる可能性があります。
ほとんどのサビは高圧洗浄だけでは落ちないので、手作業でサビをきれいに除去するケレン作業というものも合わせて行われます。
●コケ・カビ・藻
コケやカビは厳密には単なる汚れでなく、塗膜に目に見えない根を張り伸ばし続ける植物・生物です。
これを除去しないまま塗装してしまうと塗膜の下でも繁殖を続け、塗装はすぐに劣化してしまいます。
高圧洗浄では表面の汚れしか落とせないため、コケ・カビ・藻を除去するためには洗浄剤を使った「バイオ洗浄」が選ばれることもあります。
●旧塗膜
耐久性を失い劣化した塗膜も新しい塗装のためには除去すべき不純物です。
新しい塗装が下地にしっかり密着するためには古い塗料も高圧洗浄で洗い流します。
2.高圧洗浄を省くと施工不良の原因になる
塗料が本来の性能を十分に発揮するためには下地を良い状態に保つことが必要です。
上記の汚れ・異物が完全に除去されていない場合は、十分な付着力が出ずすぐに剥がれてしまいます。
さらには、細かな異物が塗膜にとって弱点になる気泡となり、塗膜が膨れ上がり破損や剥がれが生じたり、塗膜の下の目に見えない部分でサビやカビが広がり、塗装の劣化を著しく早まったりしてしまうといった弊害が考えられます。
高圧洗浄は外壁塗装にとって無くてはならないプロセスです。
■外壁塗装で行われる洗浄の種類
洗浄作業にもいくつかの種類があり、その種類ごとに内容、費用が異なります。
外壁塗装における主な洗浄方法を確認しておきましょう。
1.高圧洗浄
施工費用:150~200円/㎡
外壁塗装でしっかりと汚れや異物を除去するためには、洗浄時の水圧が重要です。
高圧洗浄を行う場合15Mpa(メガパスカル)ほどの水圧が必要で、これは1㎠に150kgの圧力がかかるエネルギーを意味し、使い方を誤れば大怪我をするレベルの威力です。
ちなみに家庭用の高圧洗浄機では8〜10Mpaくらいが限度なので、外壁の高圧洗浄には使用することはできません。
業者は必ず大型の業務用高圧洗浄機を使用します。
ほとんどの業務用の高圧洗浄機はかなりの騒音になるので、前もってご近所に挨拶して、騒音の可能性を伝えておくと良いでしょう。
●水道代は施主負担
高圧洗浄には大型の特殊な機械を用いますが、当然ながら水の供給が必要になり、水道代は施主の負担です。
とはいえ、殆どの場合に建物一棟をまるごと洗浄するのに必要な水道代は数千円程度に収まります。
地域ごとに水道代は少し異なりますが、水道代を1リットルあたりおよそ0.25〜0.3円と考えた場合、高圧洗浄に必要な約6,000〜7,000リットル分を負担すると、施主の負担する費用は1,500〜2,100円程度となります。
個人では購入できないレベルの高額な高圧洗浄機を使用することを考えると、決して高額な負担ではないでしょう。
●外壁・屋根以外を洗浄してくれる業者もいる
大型の機械を用いるものの、作業自体は時間や手間のかかる種類のものではないため、親切な業者であれば外回りで外壁以外の気になる部分の洗浄を行ってくれることもあります。
置きっぱなしの金属からサビが付着したタイルや外壁以外の場所のカビ、ベランダやテラスなどの通常の掃除では落とせない汚れがまだっている場合には、工事の前に業者に相談してみると良いかもしれません。
2.バイオ洗浄
施工費用:300~700円/㎡
市販のものよりも非常に強力な殺菌消毒作用を持つ洗浄剤により、高圧洗浄では落ちないカビ・コケ・藻などを効果的に除去します。
水圧ではなく主に洗浄剤の作用によって洗い落とすので建物への負担も少なくてすみます。
ただし、最終的には洗浄剤も洗い落とさなければ塗装に悪影響があるため、より丁寧な作業が求められます。
基本的には環境に配慮した植物性の洗浄剤が用いられますが、いずれにせよ薬品であるために、植栽や周辺環境への配慮も必要です。
金額も単価が倍以上と高額になるため、バイオ洗浄が必要かどうかは業者と十分に話し合って決定しましょう。
よほど根深いカビやコケが広がっているという場合でない限り、水道水だけの高圧洗浄で十分です。
3.酸洗浄
施工費用:3,000円/㎡ ※戸建て住宅で行われることはない
鉄部のサビ・腐食が最もひどい場合に行われるケレン作業(金属部分の下地処理)の一部として酸洗浄(酸洗処理・酸洗いともいわれる)が行われることがあります。
酸洗浄では硫酸や塩酸といった危険をともなう薬品を使用することや、ほとんどの場合に腐食が進んだ金属部分をまるごと交換してしまうほうが安く済むという理由から、一般家庭で行われることはまずありません。
一般的な戸建て住宅のケレン作業の場合、サビがひどい場合には電動工具か紙ヤスリ、ナイロンたわしなどを使って手作業で行われます。
■塗装業者の見積もりを見るときの注意点
優良業者は全ての作業工程の重要性、そして作業ごとの適切な費用と要する時間を理解しているはずです。
つまり、高圧洗浄という一つの工程をとってみても、見積書や工程表から優良業者と手抜き業者を見分けることが可能です。
1.高圧洗浄が工程に含まれていることを必ず確認
手抜き業者には高圧洗浄を省こうとする傾向が見られます。
決まり文句として「塗装はしなくても大丈夫」とか「雨で汚れが落ちている」などと説明するかもしれませんが、すでに見たとおり15Mpaの圧力を必要とする洗浄作業が雨による汚れの落ちぐらいで不要になることはありえません。
このようなことを言ってくる業者には十分警戒し、他の業者にも見積もりを取るなどして他の選択肢を選ぶようにしましょう。
ただし、高圧洗浄機メーカーが日本に登場してからまだ30年ほどであり、過去には外壁塗装リフォームの際も高圧洗浄を行っていなかったという事実もあります。
昔気質な職人であれば悪徳業者でなくても高圧洗浄は必要ない、と主張する可能性もありますが、この工程の重要性に変わりはありませんので他の業者を探すのが良いでしょう。
2.高圧洗浄のスケジュールが適切に組まれているか確認
洗浄作業にはおよそ半日ほどの時間を要し、合わせて他の作業を行うことは難しいためスケジュール的には丸一日取り分けられます。
加えて、屋根や外壁に水分が残ったまま塗装すれば施工不良が生じてしまうため、乾燥のためにさらに24〜48時間ほどそのまま置いておきます。
手抜き業者はとにかく早く作業を終わらせようとしてこの乾燥期間を省略してしまう恐れもあります。
業者選びの際は見積書だけでなく工事工程表のスケジュールが適切かどうかもしっかり確認するようにしましょう。
3.価格が相場以内かチェック
上に取り上げた相場単価をもとにして計算すると、一般的な戸建て住宅の高圧洗浄は2〜4万で、10万円を超えることはまずありません。
見積もり金額が10万を超えているような場合は要注意です。
他の項目でも不当に高額な料金設定がなされている可能性があるため、慎重にチェックしてそのような業者と契約してしまうことがないように注意しましょう。
■おわりに
美しい外壁塗装リフォームを成功させるためには、洗浄を適切に行うことがとても重要になります。
この工程にどう取り組むかが、業者が優良かどうかを判断するポイントにもなります。
この知識をもとに、外壁塗装リフォームは信頼できる業者に依頼するようにしましょう。