「外壁塗装の見積もりを依頼したら、部分補修が必要だと言われたけど、それって本当に必要な作業なの?」

外壁塗装に詳しくない人にとっては、このように部分補修という作業自体が必要なのかさえわからないことが多いものです。

 

しかし、優良業者に適切な費用で外壁塗装を依頼するためには、外壁塗装の工程や作業に関する知識をある程度自分で身につけておいた方が良いでしょう。

今回は、外壁塗装の部分補修とはどんなことをするのか、またその工事内容について詳しく説明していきます。

■外壁塗装では部分補修も行われる

外壁塗装工事において行われる作業は、決して塗装作業だけではありません。

塗装を行う前には、必ず外壁の部分補修などの作業も行われることになります。

 

外壁塗装の知識がない人にとっては一見「不要な工程」と感じてしまう人もいるかもしれません。

しかし部分補修などの塗装の前後の作業を怠ると、短期間で塗装が剥がれるなど、塗装工事自体が失敗となるほど重要な工程となっています。

 

優良な外壁塗装業者に依頼するためにも、見積もりに部分補修が含まれているかどうかを確認することは重要です。

1.部分補修は塗装を成功させるために不可欠

外壁塗装業者の見積もりが適切であるかどうかを判断するためには、まずは外壁塗装の工程をしっかり把握しておくことをおすすめします。

 

基本的な外壁塗装の工程は、以下の通りです。

  1. 足場設置…安全に作業を行うために設置する
  2. 高圧洗浄…外壁の泥やホコリ、カビやコケなどを水圧で落とす
  3. 下地処理…部分補修を行う
  4. 養生…塗装しない箇所をビニールシートで覆う
  5. 塗装…塗料を塗る

 

外壁塗装の部分補修は、この中の「下地処理」の工程で行われることになります。

下地処理は業者によって言い方が変わり、下地調整、下地補修と記載されることもあるでしょう。

 

部分補修の工程が必要になる具体的な理由としては、外壁にひび割れやサビなどが残っていると、塗料を塗っても密着できないためです。

もし下地処理を行わずに新たな塗料を塗ってしまうと、塗料が剥がれやすくなり外壁や屋根を保護する耐久年数が格段に短くなってしまいます。

 

部分補修が必要な箇所というのは、住宅の状態によっても異なりますが外壁・屋根などのあらゆる箇所に存在します。

2.見積もりに部分補修が含まれていることを必ず確認しよう

先ほども説明したように、実際の塗装作業の他にも外壁塗装の工程には実にさまざまな作業が存在します。

その中でも部分補修は、完成後の状態を決める特に重要な工程だといえるでしょう。

 

しかし、外壁塗装業者の中には悪質な業者も存在し、部分補修を省いた手抜き工事を行うところもあります。

一棟でも早く工事を終わらせて件数を稼ごうとするため、工期を早めようとするのです。

 

万が一、このような悪質な業者に外壁塗装を依頼してしまい、部分補修をされずに外壁が塗装されてしまうと、3〜5年以内に塗膜の剥がれや気泡が発生します。

手抜き工事をされた外壁は、剥がれなどの見た目を修復するため、また新たに塗装を他の業者に依頼することになり、お金も時間も多くかかってしまうのです。

部分補修が見積もりに記載されていない業者は悪徳業者の可能性があると判断し、即決で契約するのは避けるようにしてください。

 

また、見積もりに部分補修の工程が記載されているからといって、必ずしも優良業者であるとはいいきれません。

見積もりの中に、適切な部分補修の内容が記載されているかどうかを調べるために、部分補修の工事内容もしっかり把握しておくことをおすすめします。

それでは次項より、部分補修が必要な部分とその名称を学んでいきましょう。

■外壁で行われる部分補修の内容

外壁で行われる部分補修の内容は、その外壁の劣化状態により補修作業の内容が異なります。

それでは実際に、外壁部分で行われる部分補修の基本的な種類を見ていきましょう。

1.ひび割れの部分補修

外壁表面にひび割れが入っていると、そのひびから湿気や雨水が壁に入り込み内部から腐食を起こしてしまう可能性があります。

壁内部が腐食を起こすと、最悪の場合、家が傾いてしまう危険性もあるのです。

そのため外壁表面にひび割れが入っている場合には、部分補修が必要となります。

 

また、外壁の中でもサイディング壁よりモルタル壁の方がひび割れは起きやすいといえるでしょう。

モルタル壁のひび割れには、以下のいずれかの方法で補修作業が行われることになります。

  • 下地材で埋める方法…下地補修の工程では何もせず、下塗りの工程で下地材を塗布して補修する方法
  • シール工法…溝にシーリング材またはエポキシ樹脂を注入して溝を埋める方法
  • Vカット工法…溝を電動工具でカットし、シーリング材またはエポキシ樹脂を注入して溝を埋める方法

 

上記のようにひび割れにはいくつかの補修方法が存在し、下に行くほどひび割れの幅が大きく深い場合に用いられる方法となり、施工費用も高くなっています。

 

また、ひび割れが多い外壁の場合には、弾性塗料というものを用いて塗装が行われるでしょう。

弾性塗料とは伸縮性のある機能性塗料であり、たとえひび割れが起きても塗料自体が伸び縮みして割れ目をカバーする効果があります。

2.シーリングの部分補修

外壁塗装の部分補修には、シーリングという部分に関しての補修が行われる場合もあります。

シーリングとは、窓サッシと壁の隙間や、サイディングボード同士のつなぎ目に充填されているゴムのような樹脂部材で別名コーキング材とも呼ばれるようです。

 

外壁に使用されているシーリングは、紫外線や雨風などのダメージに晒されており、およそ7〜10年ほどで劣化してしまいます。

シーリングが劣化すると、シーリング自体が痩せて縮んでしまったり、裂け目が生じたりする場合があるのです。

 

そしてシーリングが劣化することで外壁に隙間が生じ、そこから雨水や害虫が入り壁内部が腐食を起こす危険性があります。

そのため、外壁塗装と併せて必ずシーリングの部分補修も行われることがあるのです。

 

また、外壁がサイディングボードの場合には、シーリングが使用されている箇所も多いため補修費用がかさむ傾向があります。

3.鉄部の部分補修

外壁や屋根などには金属素材が使用されている部分もあり、その部分を「鉄部」といいます。

雨風などに晒されている鉄部は年数と共に錆びてしまい、そのサビが外壁に筋を作ってしまうのです。

その結果、サビがどんどん広がって鉄部自体の耐久性が低下し、その場所が手すりや鉄筋階段などの場合には腐食して事故に繋がる恐れもあるので、補修が必要になります。

 

鉄部のサビの状態が軽度であれば、サビを落とす「ケレン補修」という作業が行われることになるでしょう。

ケレン補修とは戸建て住宅の場合、ハケや紙やすり、その他の工具を用いてサビを削っていく作業になります。

 

サビを落とすケレン作業が行われた後には、錆び止め材が塗布されます。

しかしサビが拡がって補修不可能となった場合には、部材そのものが交換になることもあるでしょう。

4.コンクリートの爆裂補修

鉄筋コンクリートが使用されている場合、「爆裂」という現象が起きることもあります。

コンクリートの爆裂とは、内部の鉄筋が錆びたことによりコンクリートが内側から押されて裂けたり欠けてしまう現象です。

 

コンクリートの爆裂を放置しておけば、ひび割れ同様に躯体自体の強度低下を招き、最悪の場合は家が傾いてしまう可能性もあります。

 

爆裂箇所の基本的な補修過程は、以下の通りです。

  1. コンクリートをはつり取る(コンクリートを削ったり、穴をあける作業)
  2. 鉄筋を剥き出しにする
  3. 鉄筋にケレン作業を行う
  4. 鉄筋に錆び止め材を塗布する
  5. モルタルで埋める

 

ひび割れの補修と比べると、比較的大掛かりな作業になるのがわかりますね。

5. タイルの部分補修

外壁にタイルが使用されていることもあり、タイルの部分補修が行われる場合もあります。

タイルは基本的に紫外線や雨水などで劣化しにくい丈夫な素材となっていますが、外壁から浮いたり剥がれたりしている場合には効力を発揮しません。

 

外壁に張られているタイルが劣化している場合には、以下のいずれかの方法で補修が行われます。

  • 部分的に浮いたタイルをモルタルで貼り直す
  • 広範囲でタイルが浮いているときは、下地のモルタルからやり直す。
  • タイルが落下して欠けているときは新品のタイルを既存タイルと交換する。(バーナーなどで焼いて他のタイルとの色味を調整する)

 

補修が必要なタイルや、その周りのタイルの劣化状況などに併せて補修が行われます。

■屋根で行われる部分補修の内容

外壁塗装では、必要に応じて屋根部分に関しても補修を行なっていく場合があります。

ここでは、屋根部分で行われる補修作業を見ていきましょう。

1.瓦屋根で行われる部分補修

陶器と同じ要領で、粘土を高温で焼き上げて作られた瓦を使った屋根では、おもに以下の2種類の補修が行われます。

  • 瓦を固定している漆喰の補修
  • 欠けた瓦の交換

現在の瓦の状態を見て、補修作業工程を選ぶことになるでしょう。

2.その他の屋根で行われる部分補修

瓦屋根以外の屋根材には、以下のようなものがあります。

  • スレート
  • ガルバリウム鋼板

など。

上記のような屋根材が使用されておりなおかつ補修が必要な場合には、状況に応じて次項より説明するような補修作業が行われます。

●浮いた屋根材を補修する

経年変化により屋根材が反ってしまったり、固定部材が取れて屋根材が浮いてしまったりしている状態の場合、その屋根材自体を押さえる補修作業が行われます。

屋根の反りや浮きを放置してしまうと、屋根材同士の間に隙間ができ雨水が侵入しやすくなるなど、雨漏りの原因になるのです。

 

基本的には、反ったり浮いたりした屋根材を押さえて補修する作業になりますが、無理に押さえて割れてしまいそうな場合には、屋根材の交換も必要になるでしょう。

ただし、屋根材は部材の交換ができない種類もあるので、屋根の交換作業は細かく施工業者と打ち合わせることが大切です。

●割れてしまった屋根材を補修する

屋根材の反りや浮きが進んでいくと、結果的に屋根材自体が割れてしまっている場合もあります。

そのような場合、もっとも安全な補修作業の方法となるのは新しい屋根材との交換です。

 

業者の中には、欠けた部材を接着剤で貼り付けるという方法をとるところもあります。

しかし腕の悪い業者が接着剤での貼り付けを行うと、雨漏りの原因になりかねません。

 

接着剤での貼り付けを提案された場合、よほど信用できる業者でなければあまりおすすめはできませんので、費用がかかっても部材の交換をおすすめします。

3.雨漏りの補修

屋根材の劣化に伴いすでに雨漏りが起きているという場合には、雨漏りの補修が必要になってきます。

 

そもそも屋根は、上から順番に「屋根」「ルーフィング(防水シート)」「野地板」が層になって重なっている構造です。

そしてすでに雨漏りが起きてしまっている場合には、ルーフィングまたは野地板が劣化しているという可能性が高くなります。

 

そのため屋根材の補修の他に、原因となっている劣化箇所の補修も必要になってくるのです。

雨漏りが起きてしまっている屋根では、補修作業も屋根内部にまで及ぶ大掛かりな作業になってしまいます。

 

ルーフィングや野地板は約20年で劣化するので、塗装だけでなく屋根下地の点検も20年を目途に行うようにしましょう。

■付帯部の名称と部分補修の内容

外壁や屋根の他にも、その他の付帯部に関しても補修が必要になる場合があります。

外壁塗装における付帯部とは、雨樋や雨戸など外壁や屋根以外のパーツのことです。

 

普段聞き慣れないような名称が多くなっているので、悪質な業者の場合には付帯部の名称を利用して手抜き作業を行うことも多くなっている箇所です。

各部分の場所と役割を理解しておくことで、部分補修の手抜きを見抜けるようになりますよ。

1.外壁にある付帯部

外壁に付いている付帯部分には、以下のような名称のものがあります。

  • 窓サッシ
  • 雨戸
  • 玄関ドア

それでは以下より詳しく見ていきましょう。

●窓サッシ

窓の枠の部分を指す名称です。

劣化によって腐食や斑点、塗膜の剥がれなどが起きる可能性があります。

補修作業では、窓のサッシ交換または塗替え補修が行われます。

●雨戸

窓など建物の開口部に設置される建具の名称で、強風や豪雨から窓などを守る役割があります。

雨風に晒されやすいので錆びや傷、色あせなどが起きるため、外壁とセットで塗装されることが多くなっています。

●玄関ドア

名前の通り、玄関に付いている扉のことです。

色あせや塗膜の剥がれ、ドアノブの腐食などが起こるため、塗替えで補修されることがあります。

2.屋根にある付帯部

屋根にある付帯部には以下のような名称のものがあります。

  • 軒天
  • 棟板
  • 破風板
  • 鼻隠し
  • 雨樋

外壁にある付帯部よりも、聞きなれない名称が多いかもしれません。

それでは以下より、それぞれの付帯部について詳しく見ていきましょう。

●軒天

外壁から突き出した屋根の裏側部分を指します。

軒天は屋根の一番低い位置にあるため、水が流れやすく劣化すると雨漏りの原因となってしまいます。

補修作業としては、塗替え作業が行われるのが一般的です。

●棟板

屋根の頂部にある板のことです。

劣化している場合には、ケレン作業のあと塗替えが行われます。

●破風板

破風板とは屋根の妻側にある山形の板のことを指し、屋根の先端を雨などから保護する役目があります。

軒天同様に劣化すると雨漏りの原因となるため、ケレン作業のあと塗替えが行われることがあります。

●鼻隠し

鼻隠しとは、破風板と直角の部分に位置する屋根の平側(桁側)にある板のことです。

業者によっては鼻隠しのことも破風板と呼ぶこともあるでしょう。

 

屋根の端を雨などから保護する役目を果たしています。

劣化すると破風板同様に雨漏りの原因となるため、ケレン作業のあと塗替え作業が行われます。

●雨樋

鼻隠しに取り付けられる排水部材のことを指します。

長年放置していると枯れ木などのゴミが詰まったり、部材自体のの破損、腐食などが起き、雨水が排水されず外壁に流れてきてしまうトラブルに見舞われます。

 

補修では、ゴミの除去やケレン作業の塗替えが行われることになるでしょう。

■おわりに

今回は外壁塗装における部分補修に関して詳しく説明してきました。

外壁塗装の部分補修は、塗装を行う外壁によっても作業内容が大きく異なります。

また普段はあまり耳にすることのない部分の補修がこのタイミングで行われることも多いでしょう。

 

外壁塗装を優良業者に適切な価格で依頼するためにも、外壁塗装の中の1つの工程である部分補修について一通りの知識を身につけておくことをおすすめします。