外壁塗装における足場の役割

屋根塗装には必ず必要な足場外壁や屋根の塗装を行う際に必ずと言っていいほど必要となるものが足場です。塗装作業は、同じ場所を何度も塗り直しながら進めていきますので、足場がないと質のいい作業をすることはできません。塗装作業というとどうしても塗装の色や塗料をどうするかに目が行きがちになりますが、塗装作業の基本となる足場も無視することはできないことです。

ここでは、より質のいい塗装作業と職人さんの安全のためにも必要となる足場について、なぜ、足場を設置しなければならないのか、足場にはどのような種類のものがあるのか、さらには足場の価格の相場はどのくらいなのかなど、足場の設置に関して、最低限知っておくべき内容について考えていきたいと思います。

足場の必要性

ハウスメーカーが建築している様子そもそもなぜ足場が必要になるのでしょうか?脚立を使ったり、上からぶら下がったりしても外壁や屋根の塗装をすることができるのではないだろうかという素朴な疑問を持つ方も多いのではないかと思います。DIYでははしご等を使って行う方も多いですね。

確かに、脚立や上からぶら下がってでも塗装作業をすることは可能かもしれません。しかし、脚立を使って細かく移動しながら作業をすることで、クオリティの高い塗装をすることができるでしょうか?また、ぶら下がっているという不安定な状態で細かな作業をすることができるのでしょうか?やはり、足場を組むことにより、安定した作業環境をつくることで、質の良い塗装作業を行うことができるようになるわけです。

労働安全衛生法では、2m以上の高所で作業する場合には足場の組み立て等の安全対策が義務付けられており、現場での転落事故などが発生しないよう、塗装作業を行う職人さんの安全を確保しなければなりません。

塗装を行う職人にとっては、無理な体勢をとらなくても作業場所に手が届く高さで足場が組まれてあれば、塗り残しやムラなども発生することなく、質の良い仕上がりになってくるはずです。作業環境が悪ければ、それが結果として手抜きになってしまうかもしれません。安定した使いやすい足場を組み、職人さんの作業環境を整えていくことが、最終的には、作業効率(作業性)と作業の質を上げることにつながるわけです。そういう意味でも、足場を設置することは外壁塗装の作業を行うためには大変重要なものとなります。

また、足場には、近隣の方々への配慮という目的もあります。足場を設置することにより、塗料が近隣の建物に飛散しないように、飛散防止ネットを張ることができるようになります。塗装作業では、外壁の洗浄を行うために必要な高圧洗浄機による水しぶきや気を作業中に塗料が周りに飛び散ってしまうことがあります。気をつけていてもこのようなことは必ず起こってしまう問題です。近隣の方々とのトラブルを未然に防ぐためにも、足場を設置した上で、飛散防止ネットにより飛散を防止しておくことが大切になります。

塗装作業の見積もりを見た時に、塗装したいだけなのに何十万も足場台がかかることに納得できない場合も確かにあるかもしれません。しかし、より質の良い塗装作業を行うためにも足場を組むことは必要不可欠なのです。ここをないがしろにしてしまうことで、塗装の耐久性が保てなくなったり、雑な施工をされたりするようなことのないようにしていきたいものです。

足場の種類

塗装作業の基本となる足場にはいくつかの種類があります。以前は、丸太を太い針金のようなもので縛り上げて足場を組んでいましたが、木材ですので、太さにもばらつきがあり、また雨に濡れると滑りやすかったため、大変作業がしづらかったようですし、決して安全とも言えませんでした。

現在使われている足場は、足場の上に材料を置きながら作業をすることもできますし、安全にも配慮がされているものとなっています。

足場によって塗装の質がどれだけ良いものになるかということが、特別あるわけではありませんが、作業を行う職人さんが作業しやすい足場というものは存在します。塗装作業では、同じ場所を行ったり来たりすることがありますので、不安定な足場だったり、高さが届かないような足場では、それぞれの工程において質の高い作業をすることはできません。そういう意味でも、どのような種類の足場があるのかを知っておいた方がいいでしょう。

単管足場

以前は丸太を使っていたものを、単管足場用の鋼管を用いて組み立てるようになったものが単管足場です。単管と呼ばれる二本の丸いパイプを抱き合わせることで、足場として組み立てていきます。二本のパイプの上に足が乗るため、注意して塗装作業を行わないと、パイプとパイプの間に足を滑らせてしまい、事故を起こしてしまう可能性があるという問題があります。作業のしやすい足場とは決して言えるものではありませんので、現在では一部の狭い場所などを除いては使われることはありません。

単管ブラケット足場

単管パイプにブラケットという金物をつけ、足場板を敷きその上で塗装作業を行うものです。単管足場が、パイプだけで組まれていたものに対し、単管ブラケット足場では足を乗せる足場板があるので、それだけバランスをとることができ作業をしやすいという特徴があります。しかし、足場を組む時にボルトを締めて組み立てるので、しっかりと組み立てを行わないと揺れやすくなることもあります。また、一つ一つの部品を組み合わせていく必要があるので、足場を設置するのに時間がかかります。

クサビ(ピケ)足場

ハンマーを使って、ブラケットを差し込みながら組み立てていく足場です。単管ブラケット足場と比較して、足を乗せる板が幅広く、さらにハンマーでがっちりと固定させながら組んでいくので、足場上の揺れも少なく安定します。外壁塗装用の足場の中では、最も塗装作業がしやすい足場になります。

また、クサビ(ピケ)足場は、踏板、支柱、布材などを組み合わせて設置していきますので、比較的自由にレイアウトをすることもでき、短期間で設置をすることができることも特徴の一つとなっています。単菅足場と比べても強度が強く信頼性が高く、安全性も優れていますので、住宅用の外壁塗装の足場として最も広く使われています。

足場の設置

足場の組み立ては通常の外壁工事であれば、工事日程の1日目に行います。足場を組み立てる作業は、普通、足場屋さんと呼ばれる専門の業者さんが行いますが、塗装業者の職人さんが自ら行うこともあります。

足場は、塗装作業を効率的に行うために必要なものですが、職人さんの作業中の安全を確保するという目的ももちろん持っています。それ故、足場の組み立てには、「足場組み立て等作業の主任者」と呼ばれる資格を持った責任者を現場に置かないと施工をすることができないことになっています。資格を取るためには、足場の組み立て及び解体について、十分な知識と経験を持っていて、所定の技能講習を修了することが必要になり、高さが5m以上となる構造の足場を組み立てたり、解体、変更作業を行ったりする時には、この資格を持った責任者の監督のもとに作業を行うことが義務とされています。

実際に業者からもらった見積もりを見ると、足場費用として結構高額の費用がかかることがわかります、また、足場の様子を見ているとパイプを組むだけであれば、ちょっと器用な方であればできそうな気がしてきますが、それは大きな間違いです。

足場を設置するための大きな目的の一つに塗装作業を行う職人さんの安全の確保というものがあります。このため、足場を組むためには、基本的な構造力学の知識の元に荷重などを計算しておく必要があります。そのような知識や経験を持っていない人が足場を組んでしまうと、最悪の場合、足場が倒壊してしまい、職人さんの身にも危険を及ぼすことになりかねません。そういう意味でも、資格を持った責任者の監督のもとでの足場の設置作業が必要となるわけです。安全を軽視し、コストだけを優先することの危険性がこのようなところでも現れてくるということです。

また、足場の設置や解体の際には、家の外壁や窓、駐車している車、場合によっては、隣接している建物に傷をつけてしまうことがあります。このような場合に必要なのは、どこが責任を負うのか?ということです。これらのトラブルを未然に防ぐためにもあらかじめトラブル時の対応について確認しておくことが必要となります。どこがどのような保険に入っていて、どのような補償をしてもらえるのかなど、考えられることは事前に業者さんに聞いておくと安心です。通常、足場屋さんは塗装業者からの依頼による下請けになりますので、最悪の場合、両者による責任逃れに巻き込まれた結果、泣き寝入りとなってしまうこともあるようです。また、設置の際に、近隣の建物との距離がない場合、隣の敷地の中に入って足場を組まなければならないこともあります。このような場合に、連絡が後になってしまうことで、トラブルに発展してしまうことも見受けられます。必要に応じて、業者さんと同行した上で、工事を行う前にしっかりとした説明を行っておいたほうがいいでしょう。

足場の価格相場

足場の価格は、業者によってばらつきはありますが、それほど差はないと言えます。1平米あたり700円から1000円が相場となっているようです。これには足場の組み立て及び撤去作業、飛散防止ネットの設置など足場に関わる費用を全て含めた金額になり、一般的な二階建て住宅の場合であれば、だいたい15~20万円となります。

足場費用の計算は次のような計算式を用いて行います。

①足場をかけるための面積(足場架面積)を家の外周と高さから求めていきます。

足場架面積=(建物外周+8m)X家の高さ (二階建てであれば、大体6m)

②この面積に平米単価をかけて足場費用を算出します。

足場費用=足場架面積x平米単価(700円から1000円)

業者からの見積書の足場費用のところで、平米単価が1000円ぐらいまでであれば、相場の範囲内と言えますが、それよりも超えているようであれば、平均よりも高い見積もりということになります。もし、そのような見積もりであれば、営業担当者に確認をしてみたり、他者の見積もりとも比較してみてはいかがでしょうか?その際には、どのくらいの面積で見積もりをしているかもしっかり自分で把握しておきましょう。見積もりによっては、実際の面積よりも多く計算をしている場合も見受けられることがあります。家の外周がわかれば、ご紹介した計算式で簡単に足場を設置するのに必要な面積を計算することができますので、自分自身で計算しておくことも大切です。

外壁の塗装を行う場合、工事代金全体の約20%が足場にかかる費用となります。ですので、外壁塗装を行おうとする人は、同時に屋根の塗装を行ってしまうことが多いようです。屋根塗装だけを別にやろうとすると、そのためにまた足場を組まなければならなくなるわけですから、同時に行ってしまった方がその分だけコストを抑えることができるというわけです。ただし、屋根の勾配が急な場合、安全性と品質を保つために屋根の上にも足場を組まなければならないこともあり、内容に応じて足場台が追加になることもあります。

また、見積もりの際に足場が無料になるということをうたう業者がいることがありますが、これまでご紹介してきたように、足場の設置は外壁塗装を行うためには必ず行わなければならないことであり、その費用が無料ということは考えられないことになります。例えば、近所で外壁塗装の作業を行っているから運搬費がかかりません、といった営業担当者からの売り込みがあるかもしれませんが、足場の設置にかかる労力の大部分は組み立てと解体になりますから、距離が近かったとしても、かかるコストはそれほど変わらないと言えます。見積もりの際には様々なやり方で仕事を取ろうとしてくるわけですが、結果的には別の部分で足場台を取っていることになり、最終的な工事費用の総額としては変わらないのがほとんどです。

足場を設置する際は、塗装業者が足場屋に頼んで設置してもらうことがほとんどですが、場合によっては、塗装業者が自社で足場を持っていて、自社で足場から塗装まで行うケースもあります。そのような業者であれば、全体のコストを安く抑えることができると言えますが、実際にはそのような業者は少なく、一般的には、足場業者に依頼をかけるということになります。

まとめ

住宅の外壁塗装を行う上で、足場というものは一見ないがしろにされそうなものですが、外壁塗装の品質を確保するという意味ではその必要性は無視することはできません。また、実際に塗装作業を行う職人さんの安全のためにも、また近隣の方々とのトラブルを防ぐためにも必要なものです。外壁を塗装する際、色や塗料にどうしても目が行きがちですが、実際に作業を行うために必要となる足場に対しても基本的なことを理解した上で業者を選定していくことがあとで後悔をしない外壁塗装を行うための条件と言えるでしょう。