外壁塗料は住宅を守る上で大切な役割を担っていますが、時間がたつにつれて劣化していくため、10年に1度は塗り替え工事を行わなくてはなりません。
ただ、外壁塗装の塗り替えをする場合、価格や性能だけでなく、塗料を塗った後の外観がどのような印象になるかも充分に考慮しなければなりません。
そこで、今回は住まいに機能性と豪華さを与えること重要視している高級外壁塗料「アトモス」について解説します。
このページの目次
■外壁塗装用塗料アトモスの製造元株式会社アペティーとは
高級外壁塗料アトモスは、株式会社アペティーという会社が製造している塗料です。
株式会社アペティーは、大阪市中央区に本社を置く平成元年3月16日創業の会社で、中小塗料メーカーとしては古くからある会社であり、塗料製造販売の実績も豊富です。
株式会社アペティーが製造・販売している主要な塗料にはアトモス、ラピス、ヘリオスの3種があり、アトモスは最も高級な塗料とされています。
まずはこの株式会社アペティーが製造している3種類の塗料を簡単に紹介したいと思います。
1.アペティーが製造している外壁塗装用塗料3種
- アトモス
アトモスは、株式会社アペティーが製造する塗料の中で最上位に位置する高級塗料です。
設計価格(業者の施工費用などが含まれた塗料の参考価格)が9,000円〜14,000円/㎡と非常に高額ですが、アトモスが持つ性能と塗装した外壁の美観が評価され、出荷数は年々伸び、2018年では13万缶を突破していています。
一棟あたり平均30缶程度を使用する為、単純計算で一年間で10,105棟の建物にアトモスが使われた計算になります。
- ラピス
ラピスは、株式会社アペティーが製造する塗料の中では中上位モデルとして取り扱われている製品です。
高品質の自然石調セラミックを使用している為、非常に高級感のある仕上がりになる上に耐久性や対候性に優れているのが特徴です。
アトモスほどではないものの、設計価格が7,300円〜12,000円/㎡と高価ですが、その分だけ高品質な外壁を実現することができる塗料となっています。
- ヘリオス
ヘリオスは、株式会社アペティーが提供する塗料の中ではスタンダードなレベルの塗料です。
ヘリオスの設計価格は5,900円〜9,300円/㎡と他のシリーズよりもリーズナブルな価格であり、「高級感を出したいけれども価格は抑えたい」という方向けの塗料です。
アトモスやラピスを同じく高品質な色調のセラミックを使用している為、外壁に高級感をもたせるのに申し分ない塗料といえます。
■外壁塗装用塗料アトモスの特性・メリット
ここからはアトモスについてその特徴とメリットを細かく紹介していきたいと思います。
1.アトモスはエマルション塗料
アトモスはよく塗料で分類されるシリコン樹脂塗料やフッ素樹脂塗料などとは違い、エマルション塗料と呼ばれる塗料に分類されます。
エマルションとは「乳化」という意味で、油性の成分と水性の成分が入り混じった状態のことを指します。
簡単にいうと、
- 水性の塗料はよく伸びて塗装も簡単ですが、水に濡れれば落ちてしまう(つまり耐久性が低い)
- 油性の塗料は塗装が難しいですが、水に塗らしても落ちにくい(つまり耐久性が高い)
という特徴を持っています(実際には塗装用の塗料は水性塗料でも水に濡れてすぐに落ちてしまうということはありません)。
水と油が「乳化」されたエマルション塗料は水性と油性の良いところを取っており、水性塗料のように塗装が簡単で、油性塗料のように水に塗らしても落ちにくいという特徴があるのです。
エマルション塗料の代表格としては、
- 日本ペイントのアカルクス(室内用)
- 関西ペイントのビニデラックス300
- エスケー化研水性エコファイン
などが挙げられます。
2.アトモスにはセラミックも配合されている
アトモスはセラミックが配合されており、セラミックが持つ石材のような雰囲気によって高級感のある外壁に仕上げることができます。
ただし、外壁塗装用の塗料に含まれるセラミックはあくまで外観の高級感を演出することを主眼に配合されるだけであって、セラミック自体が外壁の耐用年数に影響を及ぼすことはほとんどありません。
「セラミックが入っているので長持ちします」とセラミックが配合されているだけでその塗料が高級だと主張する悪徳業者は信用してはいけません。
アトモスのようにセラミックを使用している高級塗料が多いので、悪徳業者やよく知らない訪問業者の営業マンがそのイメージに便乗して顧客に説明しているだけなのです。
上記のような悪徳業者による風評被害もあり、セラミック配合の外壁塗装用塗料に悪い印象を持っている方もいますが、信頼されている大手メーカーの日本ペイントも、「ファイン4Fセラミック」のようなフッ素塗料にセラミックを添加した高機能塗料(耐用年数15〜20年程度)を開発するなど、セラミックを積極的に活用しています。
セラミックという言葉自体に悪いイメージを持つのではなく、セラミックがどのような効能を及ぼすかを見極めることが大切です。
3.ホタテの貝殻を配合している
アトモスには、多孔質なホタテの貝殻が配合されている為、湿度を吸収・放出して外壁の湿度のコントロールができます。
また、貝殻の主成分である炭酸カルシウムによって、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸着したり抗菌・防カビ性能を発揮したりすることもできます。
4.石材調
天然石やセラミック(陶磁器質)を配合しているため、
- 艶があって光が当たるとキラキラする
- 非常に重厚感がある
など、デザイン性の高い外壁を実現することができます。
外壁に石材を貼ると非常にコストがかかりますが、アトモスなどの石材調の塗料を使用することでコストを抑えながら高級感の出すことができるのです。
5.弾性がある
アトモスは株式会社アペティーの独自の技術により、石材調塗料では困難であった弾性(伸びる機能)の強い塗料であるため、石材調塗料にも関わらずひび割れが生じにくいという特徴があります。
6.塗膜が厚い
アトモスは塗膜が厚いので細かいクラックが生じず、長い間美観を保つことが可能で、クラックが生じないことで建物内部への水の侵入について心配が少ないという特徴もあります。
■外壁塗装用塗料アトモスの施工仕様
ここからはアトモスの施工仕様について細かく紹介していきたいと思います。
1.設計価格
アトモスの設計価格は9,000円〜14,000円/㎡で、先述の通りアペティー社製塗料では最上位モデルです。
外壁塗装用塗料の中では非常に高額で、平均的な一軒家を塗装すると150万円〜200万円の費用がかかります。
高い耐久性をもつとされるアトモスですが、工事費用が高額であるため、アトモスによる塗装が自身の家にあっているかどうかは外壁塗装業者とよく相談して決める必要があります。
2.色
アトモスのカラーバリエーションは20色で、白系、黄色系、ピンク系、グレー系が揃っており、どの塗料も石材調であるため、一般的な住宅のサッシや屋根材の色との親和性は極めて高いといえます。
3.吹付け工法
アトモスは材料の特質から吹き付け工法に限定されていて、刷毛やローラーによる塗装には対応していません。
吹付け工法であるために塗装時に無駄な塗料が出てしまい、それがアトモスの設計価格の高さにつながっています。
4.水性塗料
臭いに関しては全く無いわけではありませんが、水性塗料ということで、強い有機溶剤の臭いなどはありません。
5.防火炎性
主成分が一般の塗料に比べて燃えにくいセラミックを使用しているということで、他の塗料に比べて防火炎性に優れた塗料ということができます。
■外壁塗装用塗料アトモスのデメリット・注意点
ここからはアトモスを使用する上でもデメリットや注意点について触れていきたいと思います。
1.施工できる業者が少ない
残念なことにアトモスは一部の良くない訪問業者や悪徳業者がよく使っている塗料であるため悪評が出回っている塗料です。
しかし、塗料自体に何か不具合があるわけではなく、使用している業者が高級塗料アトモスを利用して不当な利益を得ているだけなので、アトモスを取り扱う全ての業者が悪徳というわけではありません。
大手の塗料メーカーに比べて中小塗料メーカーアペティーの塗料を施工できる業者は少ないですが、「日本eリモデル」や「みらい住宅開発紀行」などは、全国展開している外壁塗装業者としてアトモスの取り扱いを行っています。
2.塗料に関する情報が非常に少ない
アトモスに限ったことではありませんが、アペティーは会社の規模が大きくないこともあり、塗料に関する情報発信が少ないことがデメリットといえます。
日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研などの大手塗料メーカーは、各塗料に関する詳細な資料をホームページ上で公開しており、高耐候性を証明するための実験結果なども公開しています。
しかし、アペティーはアトモスに関して、実験結果(キセノンランプ式試験の結果など)などは公開しておらず、ウェブページ上に掲載されている抗菌除菌作用や、ホルムアルデヒドの吸収に関するグラフ画像には「イメージ」と書かれており、耐用年数に関しても、公式ホームページには「長期間にわたり」としか書いていないことから塗料の機能面に関しての信頼性はやや劣ると考えられます。
もちろん、ウェブページに公開されていないからといって塗料の品質が低いということではありませんが、一般人が確認できるウェブページにはあまり情報がないので、施工する外壁塗装業者に、施工した事例をよく確認するようにしましょう。
3.施工価格が非常に高い
先述していますが、設計価格が9,000円〜14,000円/㎡と非常に高額な部類に入ることはデメリットといえます。
この設計価格に関してですが、
- 塗料中に何が含まれているのか
- 耐用年数は何年なのか
などの記載がホームページにないため、設計価格単体では他メーカーとの価格比較できません。
しかし、価格が公開されているので、外壁塗装業者が作成した見積書に記載されているアトモスの価格がこの範囲内にきちんと収まっているか(高すぎるだけでなく、安すぎないか)を確認することは可能です。
ちなみに、同じエマルション塗料のエスケー化研の「水性エコファイン」は、耐用年数6〜8年と非常に短期ですが、設計価格は1,350円/m2と安価ですし、日本ペイントの「ファイン4Fセラミック」は高級塗料であるフッ素樹脂塗料ですが、設計価格が2,830円〜5,230円/㎡と半分以下の値段です。
アトモスと性能が全く違う為、単純比較はできませんが、エマルション塗料にも安価なものから高価なものまで様々なものがあるということを知っておく必要があります。
それぞれの家や予算に合った塗料を選ぶことができれば他の塗料との優劣にこだわる必要はないので、自身の家にアトモスが合っているのかを施工する外壁塗装業者に確認することをお勧めします。
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アトモスの設計価格が高額な理由としては、先述の通り、
- 吹き付け塗装による工事しかできないので無駄にしてしまう塗料が多い
- 厚みをつけるため必要な塗料量が多い
などがも考えられます。
アトモスを使いたい場合は、施工してくれる外壁塗装業者にアトモスを使った他の家の事例や価格の妥当性についても聞いてみることが大切です。
アトモスはコストパフォーマンスを求める方向けの塗料ではないのでコストを度外視しても住宅に高級感をを持たせたいという方にお勧めです。
ちなみにコストパフォーマンス重視である場合は、シリコン樹脂塗料やラジカル制御型塗料のほうが向いていると言えるでしょう。
4.色が少ない
色は先述の通り20色の中から選べますが、20色といっても同じような色が多いため、実際はかなり少ない色の選択肢から選ぶ必要があります。
ウェブ上にも「選べる色がとにかく少ない」という口コミが多い為、自分の家や近隣の雰囲気など合う色があるかどうかも施工する外壁塗装業者に確かめましょう。
■まとめ
アトモスは、住まいに高級感を与えることができる塗料です。
しかし、アトモスは設計価格が非常に高価で、見た目の高級感以外の性能についてはその根拠がホームページにも記載されていない為、金額の妥当性や自身の家にあっているかについてはアトモスを施工できる外壁塗装業者よく相談するようにしましょう。