何千年もの歴史を持ち、古き良き時代のイメージを伝えるアンティークなレンガ造りの家に強い憧れを持っている人も多いのではないでしょうか。

外装材として現代の主流ではありませんが、今でも外壁をレンガ壁とすることは可能です。

レンガ壁独自のメンテナンス方法をしっかり理解しておきましょう。

■塗装が必要なレンガと必要ないレンガがある

粘土や泥などを焼き固めた焼成レンガで作られた建物はレトロで独特の雰囲気を持っており、現在でもレンガは外壁材として人気を博しています。

レンガ造りの外壁は施工が難しく施工費用もかかってしまうため、レンガ調にデザインされたサイディングというものも流通しています。

 

当然ながらレンガ壁とレンガ調サイディングとではメンテナンス方法が大きく異なります。

サイディングには塗装が不可欠であるのに対し、レンガ壁には塗装は不要ですが、かといってレンガ壁であれば何のメンテナンスもいらない、というわけではありません。

レンガ壁とレンガ調サイディングそれぞれの特徴やメンテナンス方法について調べてみましょう。

1.レンガを積み上げて作った壁は塗装が不要

焼成レンガの歴史は約5千年ほどといわれており、材料は粘土・泥・堆積岩の一種である頁岩(けつがん)などであり、有機物を含まないために紫外線によって劣化することがほとんどなく、保護となる塗装も不要です。

ちなみにその他の屋根・外壁材では、タイルや日本瓦なども塗装を必要としません。(セメント製の瓦は空気や雨で劣化するため塗装が必要)

●レンガ壁でも手入れをしなくて良いわけではない

「塗装不要=メンテナンスフリー」というわけではなく、経年により様々な形で生じる劣化現象は想定しておくことが必要です。

例えばレンガ自体に欠損やひび割れが生じてしまったり、台風や地震などで浮いたり剥がれたりすることがあります。

 

またレンガの目地を埋めているモルタルは空気や雨に長年さらされると徐々に劣化し、劣化した目地から雨が浸入すると、水や湿気によって家全体の強度を支える外壁内部のより重要な部分が腐食してしまう恐れもあるため、レンガ壁であっても適切なメンテナンスが欠かせません。

2.レンガ調のサイディングは塗装が必要

窯業系(ようぎょうけい)といわれるサイディングボードの中にはレンガを模したデザインのものも多くあります。

これらはセメントや木質系の繊維質を主原料としていて、レンガに比べると紫外線や雨風など外部からの影響で劣化しやすく、保護のためには適切に塗装する必要があります。

とはいえ有色の塗料で全体を塗りつぶすとせっかくのデザインが台無しになってしまいますし、レンガ部分と目地部分を色分けして塗装していけば膨大な時間がかかるため、これも現実的ではありません(もちろんそれを得意とする業者も存在します)。

 

そこで、サイディングボード本来のデザイン性を残しつつ塗料で保護したいという場合には、無色透明のクリヤー塗料での塗装が一般的です。

■レンガ壁のメンテナンスの種類と注意点

レンガ壁は主に、レンガの浮きの補修、欠損やひび割れの生じたレンガの交換、目地補修の3種類のメンテナンスが必要になります。

1.レンガ壁のメンテナンスの種類

下から積み上げていく「組積造」という施工方法で作られるレンガ壁は、一般的なサイディングと構造自体が大きく異なるために、メンテナンスも全く別の方法で行われます。

●レンガの浮き補修

日本の建築におけるレンガ壁はモルタルで組積していく「湿式工法」が多く、この工法とは別に壁に専用の金物を設置してレンガを壁に密着させる「乾式工法」のものもあります。

どんな方法にせよ、レンガは一つ一つ下地材に張り付いた構造になっています。

モルタル、下地材、接着のための金具などに劣化があればレンガが浮いたり剥がれたりしてしまう恐れがあるため、目視や打診棒などを使った調査が必要です。

浮きや剥がれなどの不具合が見つかった場合はすぐに補修するようにしましょう。

●欠けたレンガの補修

欠けややひび割れの発生したレンガはその部分だけ新しいものに交換することも可能です。

レンガは年月とともに色合いが変化していくため、交換リフォームする際には新品のレンガだけ浮いて見えないように、周囲のレンガの色に合わせて「調色」が行われます。

真新しいレンガを焼いたりあえて汚したりするなどして、交換した部分がまわりのレンガと調和するような工夫がなされます。

美しいレンガ壁の景観を保つ大切な工程ですので、レンガ交換をお願いする際には調色まで行ってくれる施工業者を選びましょう。

●レンガの目地補修

目地はレンガよりも経年劣化しやすく、地震の揺れで生じる負荷も集中するためひび割れが生じやすい部分です。

補修のためにはモルタル製や樹脂製の専用目地材を補填して行います。

ひび割れを放置すると雨水や湿気によって下地材にまでダメージが及び、より大規模な補修工事が必要になる可能性もあるため、目地だけでも5〜10年間隔で定期点検を行うのが望ましいでしょう。

2.レンガ壁のメンテナンスで注意すべきこと

レンガ壁を安全で見栄えの良い状態に保つためには定期的なメンテナンスを行い、レンガの浮きや欠けは無いか、目地はひび割れていないかなどを確認する必要があります。

メンテナンスでは下記の点に注意しましょう。

●塗装リフォームは避けた方が良い

レンガ壁には塗装が不要ではあるものの、クリアー塗装によって表面をコーティングするということも可能です。

とはいえ、レンガを塗料で保護したところで目地部分はどうしても先に劣化してしまい、全体としての耐用年数を延長することはできません。

 

またカラーリングを変える目的での塗装も、レンガ表面に焼成時にできた肉眼では見えない無数の孔(あな)が塗料を吸収してしまうため非常に困難です。

加えてレンガ表面の凹凸や、縦横に多数の目地があることなどもあり塗装はかなり難しくなるでしょう。

 

塗料を吸収しない下地を塗り、その上に適切な塗料でムラなく塗る作業は、専門的な高い技術を持つ業者が行うのでなければすぐに色あせや剥がれが発生してしまいかねません。

そのような高いリスクや難易度であるため、レンガ壁の塗装リフォームはおすすめできないのです。

●広範囲のレンガの浮きに注意

レンガの下地となるモルタルの劣化は、レンガの浮きや剥落といった危険な状態に繋がります。

小規模な浮きが数箇所発生しているだけなら通常考えられる劣化の範囲内ですが、壁面全体に大規模な浮きが発生しているような場合は、工事が行われた際にモルタルの調合を間違えた、下地処理に問題があったなどの何らかの施工ミスが考えられます。

施工後数年以内に上記のような広範な浮きが発生した場合にはレンガ工事を施工した業者に連絡を取り、保証内容の相談と早急な対応を依頼しましょう。

■レンガ調サイディングのメンテナンス方法

レンガ調サイディングは、一般的な窯業系サイディングと同様にシーリング部分とサイディング表面のメンテナンスが必要ですが、使われる塗料が他のサイディングと異なっています。

1.レンガ調サイディングのメンテナンス

●クリヤー塗装

レンガ調サイディング本来のデザインを塗りつぶさずに残したい場合、無色透明のクリヤー塗料で塗装を行います。

顔料(色を持つ原料)を含む一般的な外壁用の塗料はシーラー・フィラーによる下塗りに加えて、中塗り・上塗りと3回に分けて塗装を行いますが、クリヤー塗料は下塗り塗料として使えるため2回塗りで仕上げることが可能です。

●シーリングの補修

サイディングボードの継ぎ目やサッシや配管との隙間には雨水や湿気、害虫などの侵入を防ぐシーリング(コーキング)材が充填されています。

この部分はサイディング材よりも耐久性が低く、紫外線による劣化で裂けたり、縮んでサイディング材との間に隙間が空いてしまうため、10年に一度は点検補修をすることが望ましいでしょう。

 

コーキング補修は劣化が軽度であれば、古いシーリングを残したまま上から追加する「増打ち」が行われますが、劣化が進んでいれば古いものを完全に取り除いて目地部分を清掃し、下地材を塗布してから新しいシーリング材を充填する「打ち替え」という工事が必要です。

2.レンガ調サイディングメンテナンスの注意点

レンガ調サイディングの塗装には、殆どの場合に本来の意匠性をそのまま残すクリヤー塗料が用いられます。

クリヤー塗料で外装リフォームを行う際には下記のような注意が必要です。

●クリヤー塗装をすると汚れまで透けて見えてしまう

無色透明のクリヤー塗料はサイディングのデザインを損なわずに外壁材を保護することができますが、下地に汚れや劣化がある場合にはそれもそのまま外観に残ってしまいます。

そのため、サイディング材に汚れやカビがある、本来の色があせてきているといった場合、せっかくクリヤー塗装をしても外観がきれいになったことを実感しにくい仕上がりとなります。

本来のデザイン性を残すためにクリヤー塗装を行うのであれば、下地材が色あせたり汚れが沈着してしまうより前に、竣工後10年以内には塗装すると良いでしょう。

もし長期間ほったらかしてしまい、レンガ調サイディング自体が劣化して色あせてしまった場合は、レンガ調サイディングのレンガ部分と目地部分を塗り分けることを得意とする業者に修繕を依頼しましょう。

●クリヤー塗装をはじく外壁がある

クリヤー塗装と相性が悪い下地材もあるため、今現在塗られている下地についてもよく調べておきましょう。

下地がクリヤー塗料を弾く素材であれば、そのままクリヤー塗装をすることはできません(業者に調査を依頼して確認すれば確実です)。

 

下地がフッ素樹脂塗料や親水性機能、光触媒機能を持つ塗料で塗られている場合にはクリヤー塗料を弾いてしまうためクリヤー塗料は適していませんが、レンガ調サイディングもそのような塗料で仕上げられていることがあります。

そのような場合には古い塗膜を十分に落とすための「高圧洗浄」や「下地調整」といった工程がクリヤー塗装に合わせてしっかり行われるかを前もって確認するようにしましょう。

 

また、クリヤー塗装自体の塗膜が塗料を弾く性質をもっているため、次回の塗替えの際には再度既存の古い塗膜をしっかりと剥がしてしまう必要があります。

■おわりに

レンガは一般的な外壁材とは違い、経年によってある程度劣化はするものの、上手にメンテナンスを行えばその風合いは徐々に深みのあるものとなっていきます。

マイホームを歴史ある建築資材であるレンガで装ってみるのはいかがでしょうか。