外壁塗装を検討している方の中には「セラミック塗料」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

そもそも「セラミック塗料」というのは厳密には塗料の種類ではなく、成分にセラミックが配合されている塗料のことを指します。

 

この記事では、外壁塗装におけるセラミック塗料の正しい知識や、セラミック塗料の硬化などについて解説します。

■セラミックが配合されていれば「セラミック塗料」になる

セラミックとは陶磁器のことで、広義では無機物を焼き固めたものを指し、セラミックス(ceramics)とも呼ばれています。

セラミックは陶磁器やガラスの器、ほうろう、工業用のセメントや石膏など様々で、私たちが普段使っている茶碗や医療用など様々なものに使われています。

 

セラミック塗料とは塗料の種類ではなく、天然石やセラミックビーズといった何かしらのセラミック成分が配合されている塗料の総称です。

1.セラミックは配合されている成分のこと

セラミックはあくまでも塗料に配合された成分のことで、塗料の耐久性を左右するものではありません。

セラミックは塗料に付加効果を与える存在であって、塗料自体の耐久性は成分の大部分を占めるアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素といった樹脂の種類に由来します。

例えば耐用年数が7~10年のウレタン塗料にセラミックを配合しても耐用年数は伸びず、それは耐用年数が15~20年のフッ素塗料に配合しても同様です。

 

しかし、含まれているセラミックの量が少なくても「セラミック塗料」と謳うことは可能です。

そのためセラミック塗料と呼ばれる商品の品質は、実際は商品によって非常に異なります。

どんなにセラミックが優れた素材でも100%セラミックのみでできた塗料は存在しませんので、「セラミックが含まれている」というだけで塗料を選ぶのは危険です。

 

塗料の質を判断するためにはセラミックが含まれているかどうかではなく、ベースの樹脂が何なのかを確認することが大切です。

2.悪徳業者のセラミック塗料に注意

セラミックは身近な様々なものに使われている丈夫な素材です。

しかし、悪徳業者はそこに目をつけて「丈夫なセラミック塗料ですよ」などと言ってセラミック塗料を勧めてくることがあります。

 

悪徳業者が勧めるセラミック塗料は、見た目を豪華にするために天然石や陶磁器の粒をちりばめただけで耐久性を工夫されていないものがほとんどです。

このようなセラミックを混ぜただけの塗料で塗装しても、建物の耐久性や耐火性、防水性が上がるとは考えない方がよいでしょう。

そのことをきちんと理解せずに「セラミックは耐久性が高いのでおすすめです!」という解説を信じて選んでしまうと、期待する効果が全く得られない塗料を選んでしまう恐れがあります。

 

このように質の悪いセラミック塗料が出回っている一方で、塗装業者が積極的に勧める質のいいセラミック塗料がたくさん存在するのも事実です。

選ぼうとしているセラミック塗料がどのような効果を持つのか、本当に人気があるのかは、ご自身で塗料名などから調べなくてはなりません。

■大手メーカーのセラミック塗料は定評がある

塗料メーカーには大手と呼ばれる三社があり、関西ペイント、日本ペイント、エスケー化研がそう呼ばれています。

セラミック塗料はこれらの大手塗料メーカーも製造しています。

1.有名な大手メーカーのセラミック塗料

大手メーカー製の有名なセラミック塗料には以下のようなものがあります。

・日本ペイントの『ファイン4Fセラミック』

・関西ペイントの『アレスアクアセラフッソ』

・エスケー化研の『水性セラミシリコン』

・山本窯業の『カラーセラミックスシリーズ』

など

2.大手のセラミック塗料はなぜ信頼できるのか

すべてのセラミック塗料が高品質とは限りません。

しかし、大手メーカーが作ったセラミック配合塗料を使えば質の高い塗装を期待することはできます。

 

そもそも天然石や陶器を混ぜただけでは塗料の耐久性は向上しません。

セラミックは、粘土や石などを何千度もの高温の炎で長時間焼き付けることによって、強固な防水性や防火性、耐熱性、紫外線や雨水で色あせしにくい耐候性などを発揮する素材になります。

しかし、そのようなセラミックが配合された塗料を吹き付けただけで、外壁や屋根にセラミックの特性を再現できるわけではありません。

 

大手メーカーのセラミック塗料はどれも、セラミックを配合することによって従来の塗料に付加価値が出るように工夫されています。

大手塗料メーカーが大手と呼ばれる所以は、これまで何年もかけて様々な塗料を改良して高品質なものを製造し続けてきたからです。

そして自身の商品の質を知ってもらうために、ホームページなどで価格や量、使用用途などを一般に公開しています。

 

商品自体の質が高いことに加えて、情報の信頼性が高いという点が大手メーカー製塗料の大きなメリットと言えるでしょう。

■大手メーカーが作るセラミック塗料の主な特徴

ここからは、大手メーカーが作っているセラミック塗料の特徴を挙げていきます。

 

セラミック塗料は商品によって効果が大きく違うので、塗料のタイプをしっかり区別しておきましょう。

1.石材調のセラミック塗料

画像は山本窯業化工ホームページより引用

セラミック塗料の中には、天然石や陶磁器を配合することによって、まるで石材のような立体感のある仕上げになる石材調タイプと呼ばれるものがあります。

ペンキでベタ塗りされたような外壁よりも天然の石作りのような外壁にしたい方などに選ばれています。

 

見た目を向上させる目的で使われることが多い石材調のセラミック塗料は、ふだんあまり見えない屋根の塗装に使用されるケースはあまりありません。

●石材調セラミック塗料は耐久性に注意

石材調のセラミック塗料は、セラミック成分で塗膜が守られて耐久性が高いと思われがちですがそれは間違いです。

セラミックの粒を含んでいるからと言って塗膜がセラミック製になるわけではないので、この特徴は耐久性向上には直接関係していません。

 

紫外線に強いセラミック成分が散りばめられているため色あせしにくい効果は期待できるかもしれませんが、石材調タイプ塗料のメインの効果は「意匠性の向上」と考えておいた方がよいでしょう。

 

セラミックはあくまで塗料の成分の一部で、塗料の大部分は樹脂でできていますので、石材調のセラミック塗料も当然劣化します。

 

また石材調仕上げの塗料は、塗膜を保護するために透明のクリヤー塗料で仕上げるタイプもあります。

クリヤー仕上げを追加すると施工料金が割り増しになるため、石材調塗料は一般的な3回塗りで作業が済む塗料よりも施工価格が高い傾向にあるので注意しましょう。

2.断熱効果を持つセラミック塗料

中が空洞になっているセラミックの粒を配合することによって、遮熱効果や断熱効果が得られるセラミック塗料もあります。

このタイプのセラミック塗料の中では、日進産業の『ガイナ』が有名です。

 

ガイナのセラミックビーズは特殊な構造になっており、空洞の中が真空になっています。

真空は熱を通しませんので、セラミックビーズが沢山配合されたガイナで外壁や屋根を塗装しておくと、太陽光の熱や屋内の暖かい空気が塗膜で遮られ、断熱・遮熱効果を発揮するようになります。

 

ガイナは硬化すると成分の8割がセラミックビーズになるため、樹脂の割合が多いほかのセラミック塗料に比べると、セラミックの効果が圧倒的にもたらされる塗料として注目されています。

3.建物が汚れにくくなるセラミック塗料

大手メーカーのセラミック塗料の中には、配合されている無機化合物が塗膜の表面に集まって親水性の塗膜を形成し、汚れにくい外壁を作るタイプがあります。

低汚染タイプや親水性タイプと呼ばれるものです。

 

親水性とは雨に濡れやすい性質のことで、この性質が高い塗料で塗装しておくと、排気ガスや換気口まわりの油汚れなどが雨で流れやすくなります。

また、無機化合物が塗膜表面を覆っているので、有機物をエサにして繁殖するカビや藻が発生しづらくなる効果も期待できます。

 

注意していただきたいのは、これらはセラミック本来の効果ではなく、メーカーが配合した無機化合物によって生まれる効果です。

セラミック塗料と呼ばれるものを使えば低汚染性の外壁になるというわけではありませんので、そのような効果を持つ塗料の商品名を知っておきましょう。

4.紫外線に強いセラミック塗料

塗膜を破壊する大きな原因は太陽光に含まれる紫外線です。

有機物は紫外線を多く吸収してしまいますので、樹脂などの有機物で作られている塗料はいずれ紫外線で劣化してしまいます。

 

しかし先ほどの項目でも説明したとおり、大手メーカーが作るセラミック塗料は無機化合物が表面に集まっているので、紫外線を吸収しづらくなりやや色あせしにくい効果も期待できます。

■人気のセラミック塗料をご紹介

セラミック塗料は種類が多く、大手の塗料メーカーが製造しているものから塗装業者が独自で作っているものまであります。

 

効果や価格がよくわからないセラミック塗料を選んでしまわないように、塗装業者が太鼓判を押す人気の塗料を知っておきましょう。

1.GAINA(ガイナ)

セラミック塗料の中でも非常に有名で人気なのが、先ほども少しご紹介した日進産業の『GAINA(ガイナ)』です。

ガイナ塗料の効果は断熱や遮熱以外にも、遮音、防音、消臭、空気清浄効果などがあり、非常に多機能な塗料として知られています。

 

ガイナに含まれている特殊セラミックビーズは紫外線に強く劣化しにくいため、一般的な塗料に比べるとやや耐久性が優れています。

また、ガイナは水性塗料ですので、シンナーなどで薄めて使う溶剤系塗料(油性塗料)に比べると刺激臭が少なく、内壁・外壁問わず使用が可能です。

 

ガイナの価格相場は3,800円/㎡ですが、塗装箇所によって必要な作業量が変わりますので、実際の価格は塗装業者に見積もりを取って確認しましょう。

なお、ガイナの施工は塗料メーカーが認めた施工認定店しか行えません。

2.ファイン4Fセラミック

画像は日本ペイントホームページより引用(PDFが開きます)

日本ペイントの『ファイン4Fセラミック』もセラミック塗料の中では人気の商品です。

 

ファイン4Fセラミックのベースは、最もグレードが高いフッ素樹脂塗料です。

フッ素塗料は紫外線に非常に強く、耐用年数が10~15年とも言われる高性能の塗料です。

また、焦げつかないフライパンによくフッ素が使われているように、フッ素には汚れが付着しにくい性質があります。

ファイン4Fセラミックはフッ素塗料にさらにセラミックが配合されていますので、フッ素樹脂の耐久性はそのままに、光沢保持率や汚れにくさも備えています。

 

強い紫外線を与える実験では、通常のフッ素樹脂塗料と比較して光沢保持率が約15%も高く、様々な気候に対応する高い耐久性が証明されました。

また、ファイン4Fセラミックは親水性も高く、フッ素樹脂本来の汚れにくさと相まって、雨で汚れが落ちやすい塗料となっています。

その他にも防藻・防かび性といった効果も備わっていますので、汚れにくい外壁にしたい方にはおすすめの塗料です。

 

ファイン4Fセラミックの価格相場は3,500円~5,500円/㎡で、フッ素系塗料の相場価格とほぼ同じです。

2.山本窯業の石材調塗料

画像は山本窯業化工ホームページより引用

石材調のセラミック塗料では、山本窯業化工の商品が有名です。

山本窯業の石調塗料の中には『グッセラシリーズ』や『ハイシーシリーズ』『ネオフレッシュシリーズ』などがあります。

天然石に発色が良いカラーセラミックが配合されているため、意匠性の高い外観やデザイン性を優先する方に人気が高く、公共施設などでも採用されています。

特にグッセラシリーズは「有色陶磁器質骨材」が使われているため変色や耐食が少なく、塗装したての色を長期間保つことが可能です。

 

また、有機溶剤が不要な水性塗料で作られている商品が多いため、施工中の臭いが少なく引火の危険性も無いなど環境面でも配慮されています。

そのほか、防かび・防藻性、透湿性、耐水性、耐退色性などを備えたものが多く、塗料としての性能面も安心です。

 

価格相場に関しては、アクリル樹脂塗料タイプやシリコン樹脂塗料タイプなどベースの樹脂が色々あるので商品によって異なりますが、約4,000~6,500円/㎡とやや高めです。

■おわりに

セラミック塗料についてまとめると以下のようになります。

  • セラミック塗料であればなんでも優れているわけではない
  • 効果がよくわからない点を利用して、相場以上の料金を請求する悪徳業者が多数存在する
  • 大手メーカー製のセラミック塗料から選んだ方が安全性は高い
  • セラミック塗料には様々なメリットがあるが、塗料の種類によって効果は違う
  • セラミック塗料は陶磁器や天然石を混ぜているため価格が高い傾向がある

 

これまで書いたように、セラミック塗料の質は商品によってまちまちです。

特に、塗装業者オリジナルのセラミック塗料は品質が不明なものが多いので、万が一勧められても選ぶのは避けておいた方がよいでしょう。

 

石材調や断熱、汚れにくさなどを求めてセラミック塗料を選ぶのであれば、まずは大手塗料メーカーの塗料から商品の情報を調べていくことをおすすめします。