建物の塗替え、外装用塗料をどうしようかが悩みどころです。
セラミック塗膜が自慢の「セラミシリコン」という商品が、最近人気です。
汚れにくく耐久性も高いことから人気が高まっているのですが、注意も必要です。
そこでこの記事では、セラミシリコンの特徴を解説するとともに、メリットやデメリットも紹介して、セラミシリコンを選ぶ際の参考にしていただきたいと思います。
このページの目次
■セラミシリコンは塗料の商品名
セラミシリコンは、大手塗料メーカーであるエスケー化研が販売している、塗料の商品名です。
正式名称を「水性セラミシリコン」と呼びます。
セラミシリコンは、「アクリル塗料」「フッ素塗料」など塗料の成分を表したものではなく、「断熱塗料」など機能を表す塗料名でもありません。
●セラミシリコンは仕上げで使う
外壁塗装の塗り工程には、
- 下塗り
- 中塗り
- 上塗り
の3工程で行われるのが一般的です。
このうち、下塗りには下塗り用の塗料を使用します。
下塗り用の塗料には、外壁表面と塗料の密着性を高める役割があります。
そして、セラミシリコンを塗るのは中塗りと上塗りの2回です。
紫外線や熱、汚れなどから外壁を守る役割があります。
●ひび割れの多い外壁には弾性塗料もある
サイディングやモルタルなど、ひび割れしやすい外壁に対しては、「水性弾性セラミシリコン」という商品も、エスケー化研から販売されています。
弾性とは、ゴムのように伸び縮みする性質のことです。
水性弾性セラミシリコンを塗っておけば、外壁がひび割れを起こしても、外壁の上に塗ってある塗料の塗膜が伸縮して、外壁のひび割れ部分を覆い隠してくれます。
これにより、割れ目から雨水が侵入することを防いでくれるのです。
■セラミシリコンの特徴
セラミシリコンの一般名称は「超耐久低汚染型一液水性セラミックシリコン樹脂塗料」と、専門用語が並んでいるだけでよく分かりません。
しかし、各単語を紐解いていくと、機能性塗料であるセラミシリコンの特徴がよく分かります。
そこでここでは、「超耐久低汚染型一液水性セラミックシリコン樹脂塗料」の各単語の意味を解説することで、セラミシリコンの特徴を分かりやすく説明しましょう。
1.超耐久とは
まず「超耐久」ですが、これは塗料の耐用年数が長いことを意味します。
エスケー化研のホームページには、セラミシリコンの期待耐用年数は「12年~15年」と記載されています。
セラミシリコンは紫外線や湿気などに強く(耐候性)、建物を長期間にわたって保護してくれます。
他の成分の塗料の耐用年数は、以下の通りです。
塗料の種類 | 耐久年数 |
アクリル塗料(アクリル系塗料) | 5年~8年 |
ウレタン塗料(ウレタン系塗料) | 8年~10年 |
シリコン塗料(シリコン系塗料) | 10年~15年 |
フッ素塗料(フッ素系塗料) | 15年~20年 |
一般的なシリコン塗料と同等の耐用年数を持っているので、安定した耐久性を発揮できます。
2.低汚染型とは
次に「低汚染型」ですが、これは汚れにくい性質、汚れを寄せ付けない性質を意味します。
まずホームページには、「大気中の粉じんや排気ガスを寄せ付けない」と記載されています。
また、カビや藻なども家の大敵ですが、セラミシリコンの主成分の一つであるセラミック物質は、炭素を含まない無機系です。
炭素はカビや藻のエサとなりますが、セラミック配合量の多い無機塗料であるセラミシリコンの塗膜表面には炭素があまりありません。
よって、カビや藻の繁殖も抑えられるのです。
そして、光触媒塗料には、太陽の光によって汚れを落とす性質がありますが、セラミシリコンを含むシリコン塗料には、「親水性」があります。
親水性とは、水になじみやすい性質のことで、これによって雨水によって汚れが塗膜表面から浮き上がり、洗い流す効果も期待できるのです。
3.一液とは
また、「一液型塗料」とは、1つの缶に入っている塗料だけで塗装できる塗料のことです。
一液型塗料以外には二液型塗料があり、こちらは主材(塗料本体)の缶以外に硬化剤の缶も必要な塗料です。
一液型塗料は混ぜる必要がないため、職人の腕で塗料の品質が左右される心配がありません。
一方の二液型塗料は、一液型塗料よりも耐久性、耐候性が高く、金属など塗装しにくい箇所にも塗れます。
4.水性とは
さらに「水性」とは、水で薄めて使える塗料のことです。
水性塗料とも呼ばれており、他にはシンナーなどの有機溶剤で薄める溶剤塗料(油性塗料)があります。
シリコン塗料にも、溶剤シリコン塗料と水性シリコン塗料があります。
水性塗料には、
- 手間がかからない
- 通気性の心配がいらない
- 価格が安い
などのメリットがあり、一方の溶剤系塗料には、
- 一度塗りが可能
- 塗料自体の密着性が高い
- 耐久性が高い
などのメリットがあります。
溶剤系塗料は中毒症状のリスクがるため、取り扱う際には有資格者が必ず現場にいなければなりません。
この点でも、水性塗料のセラミシリコンは安全性が高いといえます。
5.セラミックシリコン樹脂とは
そして、「セラミックシリコン樹脂」とは、シリコン樹脂にセラミック成分(砂、天然石など)が配合されていることを表します。
塗料の種類には、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素の4種類がありますが、シリコンにセラミック物質をませれば、セラミックシリコン樹脂系塗料となります。
■セラミシリコンのメリット・デメリット
セラミシリコンは、決して万能塗料ではありません。
メリット・デメリットを理解して、塗料選びの参考にしてください。
1.メリット
まずメリットですが、簡潔に言うと「扱いやすい」ことです。
詳しくはこれから説明します。
●艶の有無や強さが選べる
サラミシリコンは、艶有り、半艶、3分艶、艶消しから艶の度合いを選べます。
外壁をピカピカにしたければ艶の度合いを高くして、意匠性の高さを希望ならば艶の度合いを抑えて、仕上がりのイメージに合わせることが可能です。
無機塗料の中には艶消しができないタイプもありますが、セラミシリコンは艶消しも可能です。
また、セラミシリコンはカラーバリエーションも豊富なので、「この色がいいけどセラミシリコンにはない」という可能性も低いです。
●耐久性が高くコストパフォーマンスが高い
セラミシリコンの耐久年数は12年~15年と、アクリル塗料やウレタン塗料などの一般塗料と比較して、耐久性が高いです。
しかも、そのパフォーマンスの高さの割に、塗料単価は比較的安く抑えられています。
1平米あたりの施工価格相場を、他の高機能塗料と比較してみましょう。
塗料の種類 | 施工価格の平米単価 |
セラミシリコン | 2,500円~3,000円 |
断熱塗料 | 3,200円~4,000円 |
フッ素塗料 | 4,000円~5,000円 |
断熱塗料は、セラミシリコンと並んで人気のセラミックシリコン樹脂系塗料である、大手メーカーの日進産業の断熱セラミック塗料「ガイナ」が代表的です。
ガイナのセラミック配合量は全体の6割、しかも乾燥すればセラミックの割合が全体の8割にまでアップします。
その特殊セラミック膜は、中空セラミックビーズにより断熱性や耐熱性が極めて高いです。
セラミシリコンの塗料データでは、メーカー価格の平米単価が「1,900円」となっています。
これはあくまでも塗料自体の価格のみであり、下地調整費用や足場設置費用を含めると、2,500円~3,000円程度となります。
セラミシリコンは、フッ素塗料はもちろん、断熱塗料との価格差が顕著で、その割に効果は遜色ありませんので、極めて費用対効果が高いといえます。
2.デメリット
セラミシリコンのデメリットは、塗料そのもののデメリットではなく、施工ミスに伴って発生するデメリットです。
よって、セラミシリコンを塗る際には、悪徳業者かどうかを見極め、施工実績のある業者にお願いするのが重要です。
●下地材の選定を誤ると施工不良が起きる
まず、下地材(下塗り用塗料)の選定を誤ると、剥がれや縮みなどの施工不良が発生する可能性があります。
下地材とは、セラミシリコンを塗る前に下地との密着性を高める塗料です。
ホームページには、適用下地は以下のように記載されており、比較的幅広いです。
- コンクリート
- セメントモルタル
- ALCパネル
- スレート板
- 各種サイディングボード
- 各種旧塗膜(活膜)など
ただし、全体的に吸い込みが大きい下地、他の面との吸い込み差が激しい下地、改装下地などは、それぞれに適した下地材を選びましょう。
●錆びやシーリング補修を怠ると汚れる
セラミシリコンの塗料そのものには、防汚染性の効果があります。
しかし、鉄部の錆、シーリング周辺の汚染(ブリード現象)は、セラミシリコンでも防げません。
下塗りの前には下地調整(補修、さび止めなど)の工事を行ないます。
シーリングは、建物の気密性や防水性を高めるために、隙間を埋めるペースト状の建築材料です。
しかし、セラミシリコンとの相性が悪いと、シーリング材の成分が塗膜表面にしみ出して粘り気を帯び、汚れが付いてしまう、これがブリード現象です。
ブリード現象の原因物質は可塑剤(ある素材に柔軟性を与えるためシーリングに含まれている材料)のため、可塑剤を含まないノンブリードシーリングを使いましょう。
■おわりに
セラミシリコンは、耐久性に優れ、断熱性機能、防汚染性能、安全性も高い塗料です。
実際に使えば、コストパフォーマンスに優れているため、外装リフォーム費用を抑えることもできます。
また、カラーバリエーションもたくさんあります。
しかし、下塗り用塗料の選定を誤ると施工不良が起き、さび止めやシーリング補修を怠ると汚れが付きやすくなります。
家のリフォームを検討している方は、セラミシリコンを正しく扱え、施工実績も十分なリフォーム会社を選びましょう。