外壁塗装リフォーム工事は総額が100万円を超えることもあるため、なるべく安く済ませたいと思うのが普通かもしれません。

総工費が高すぎるのは問題外ですが、安すぎる見積もりにも様々な危険が隠れています。

高すぎず、安すぎない外壁塗装の「適正価格」はどの程度なのか理解しておきましょう。

■そもそも外壁塗装における「適正価格」とは

外壁塗装の費用には一般的な商品やサービスに設定されている「定価」が存在しないために、施工業者が提示してくる見積もりが適正なものかどうか施主が判断する必要があります。

とはいえ、どれほどの施工金額なら「適正」といえるのかは判断がむずかしいところです。

幾つかの要素を理解しておくなら悪徳業者に法外な金額を請求されるという状況を上手に避けることができます。

「適正価格」を判断するのに必要なポイントを理解しておきましょう。

1.相場価格に収まっていること

工事費用に「定価」がないとはいえ「相場価格」というものがありますので、この金額の範囲から大きく逸脱していなければ適正であると判断することが可能です。

ただし、外壁塗装工事の総工費には様々な工事費用が含まれており、また塗装する家屋のサイズや使用する塗料によっても総工費は大きく異なります。

そのため「適正な相場価格」とは単に総工費だけで説明することはできません。

 

工事ごと、塗料のグレードごとの相場を理解することにより、自分のケースでいくらぐらいが適正価格となるかを把握することができるでしょう。

2.余分な費用を払っていないこと

「適正価格」の範囲内で工事を成功させるために前提となるのは、まず過不足なく適正な工事が行われることです。

たとえば、総工費が安くても塗料を3回塗装すべきところを2回しか塗装していなかったり、逆に不必要に4〜5回塗って高額に請求しようとする悪徳業者も存在します。

 

または「足場代無料」を売り文句にしていても総額では一般的な相場価格よりも高く請求されたという悪質なケースもあります。

つまり適切な工程とは何かを知り、工程ごとにかかる費用相場を把握しておくことが必要です。

■外壁塗装の相場価格とは

適正な相場価格を理解するためには、塗料や工事ごとの相場も把握しておく必要があります。

  • 塗料ごとの適正な相場価格
  • 工程ごとの適正な相場価格
  • 住宅一棟あたりの総工費の適正価格

について具体的に調べてみましょう。

1.塗料の相場価格

塗料ごとにメーカーの希望小売価格が設定されていますが、基本的に価格は1㎡単価で表示されています。

この価格に実際の塗り面積を乗じることにより塗料代、そして各工程の相場価格を算出することができます。

ちなみにそれぞれの金額はメーカーが指定した回数(ほとんどの場合下塗り・中塗り・上塗りの3回塗り)塗装する場合の価格です。

●アクリル塗料

相場価格:約1,500~1,800円/㎡あたり

耐用年数はおよそ5〜8年ほど

 

安価ではあるものの耐用年数は長くなく、新築でまれに使用されることがありますが外壁塗装リフォームではほとんど選ばれることのない塗料です。

●ウレタン塗料

相場価格:約1,800~2,500円/㎡あたり

耐用年数はおよそ8〜10年ほど

 

美しい光沢と弾性(ゴムのように伸縮して破損しにくい性質)を特徴とする塗料です。

この弾性があるゆえに外壁材に負荷がかかったり下地にひび割れが生じる場合にも塗膜は破損せず家屋を雨水や湿気から守ることができます。

●シリコン塗料

相場価格:約2,800~3,200円/㎡あたり

耐用年数はおよそ10〜15年ほど

 

価格はリーズナブルですが耐久性が高いゆえに高いコストパフォーマンスを誇る塗料です。

現在、外壁塗装リフォームの現場で最も選ばれている塗料でもあります。

●フッ素塗料

相場価格:約3,800~4,200円/㎡あたり

耐用年数はおよそ15〜20年ほど

 

紫外線に対する耐久性が非常に高く、耐用年数もトップクラスです。

かなり高額であることから主に商業施設やビルなどに使用されていますが、近年では相場は徐々に下がりつつあります。

一般住宅向けのフッ素塗料を販売している塗料メーカーもあります。

●断熱・遮熱塗料

相場価格:約2,500~3,500円/㎡あたり

耐用年数はおよそ12〜18年ほど

 

遮熱塗料は強い日差しを受けても外壁が高温になりにくい性質があります。

それに対して断熱塗料はセラミックを含有し熱が伝わるのを防ぐ性質を有しているので外が高温になる夏場も室内の涼しさを保ち、また冬場には室内の温度を外に逃さないようにします。

断熱塗料を剥がしてしまわない限り、別の塗料を上塗りしても断熱性能は保たれます。

●無機塗料

相場価格:約4,200~5,000円/㎡あたり

耐用年数はおよそ18〜25年ほど

 

最も高額なグレードの塗料で、紫外線で劣化しない無機質を主原料としているため、フッ素塗料以上の耐用年数を誇ります。

ただし、紫外線によって劣化してしまう有機質を全く含まないわけではないので、無機質の含有率が無機塗料のクオリティーを左右します。

●光触媒塗料

相場価格:約4,300~4,800円/㎡あたり

耐用年数はおよそ18〜22年ほど

 

塗装面に付着する汚れが太陽光により分解され、雨で流される「セルフクリーニング機能」により外壁の美観を保ちます。

この機能により、カビや藻の発生も抑えられます。

●弾性塗料

相場価格:約1,800~3,000円/㎡

耐用年数はおよそ8〜12年ほど

 

硬化剤を添加して伸縮性をもたせた塗料です。

ゴムのように伸縮し、下地にクラックが入っても塗膜は破損しにくいというメリットにより、ひび割れしやすいモルタル壁に利用されます。

シリコン系、アクリル系など弾性塗料の中でも様々なグレードが存在します。

2.工程ごとの相場価格

以下の項目で、一般に付帯工事と言われる塗装以外の工事の相場も確認していきましょう。

外壁塗装リフォームには実際に塗料を塗る作業以外にも下記のような工程が不可欠です。

●足場設置

  • くさび式足場 900~1,200円/㎡
  • 単管足場 800~1,000円/㎡

 

この単価相場に「足場架面積[(家屋の外周+8m)×高さ]」を乗じた金額がおよその相場です。

高所作業を安全に行うため、また隣家に塗料が飛散しないようにする飛散防止ネットを設置するために足場を設置します。

 

くさび式足場(「ビケ足場」として有名)が一般的ですが、天候や立地条件などによっては強風に強い単管ブラケット足場、隣家との間隔が狭い場合には場所を取らない単管足場が選ばれることもあります。

●高圧洗浄

  • 高圧洗浄 100~200円/㎡あたり(水を使用)
  • バイオ高圧洗浄 500~800円/㎡あたり(薬剤を使ったバイオ高圧洗浄)

 

通常の汚れであれば水のみの高圧洗浄が行われます。

カビや藻が発生して汚れがひどい場合にはバイオ洗浄剤を使ったバイオ高圧洗浄が行われます。

●下地処理

  • シーリング工事(増し打ち・打ち替え) 800~1,000円/㎡
  • ケレン作業(鉄部のサビや古い塗装など不純物を除去) 700~2,000円/㎡
  • クラック(ひび割れ)補修 700~5,500円/㎡

 

下地調整とも言われ、塗装の美しい仕上がりのためにサビ落としやひび割れの補修が行われます。

シーリング部、下地材の劣化状況により相場に大きな開きの出る工程です。

 

クラックは幅に合わせて補修の仕方も異なり、幅が0.7mm以上の場合にはクラックに沿って外壁材をV字に削り、そこにシーリング材を注入するVカット工法が採られます。

クラックの幅が広いほど、この工費は高額になります。

●養生

300円/㎡あたり

 

窓や玄関、室外機、植え込みなどに塗料が飛散しないようにマスキングテープやビニールシートなどで覆い、保護する作業です。

見積書では足場工事の代金に合算される場合や、単価計算をせずに「養生工事一式」として請求される場合もあります。

3.住宅一棟あたりの塗装価格の相場

ここまで考えてきた相場をもとにして総工費を試算すると、戸建住宅の外壁塗装にかかる施工費用は家屋の延べ床面積別におよそ次のようになります。

  • 20坪の場合…55~58万円
  • 25坪の場合…58~62万円
  • 30坪の場合…60~70万円
  • 35坪の場合…65~85万円
  • 40坪の場合…70~95万円
  • 45坪の場合…80~110万円

上記の相場価格を理解しておけば、法外な値段を請求されてしまった場合も即座に適正価格ではないと見抜くことができるでしょう。

 

また、延べ床面積が広くなればなるほど適正な相場価格に開きがあることも覚えておくと良いかもしれません。

外壁の劣化の程度や立地条件などによっては塗装の種類や足場の設置方法などが変わり、工費も大きく上下することがありますのであくまで目安とお考えください。

■余分な費用を支払わないためには

総工費を適正価格に収めるためには、各工事の費用を理解するだけでなく不必要な費用をカットすることも含まれます。

抑えておくべきポイントについて考えましょう。

1.自社施工の業者に依頼する

大手ハウスメーカーや一般的なリフォーム業者などと違い、自社施工の塗装業者は外注に頼らずに自社の職人だけで工事を行えるため、余計な中間マージンが発生せず総工費は比較的安くなります。

2.塗り直しを発生させないこと

もちろん、品質が保証されている期間内に施工不良が発覚すれば追加料金無しに塗り替えることが可能ですが、中には保証期間終了後に発覚するような施工不良もあります。

そのような場合、塗料の品質がいかに優れていてもほんの数年で塗り直しの必要が生じる可能性も大です。

 

業者が見積書を提出してきたなら必要な工事が適正な相場価格でしっかり行われるか、また工程に無理はないかなどを十分に確認するようにしましょう。

3.追加工事を発生させないこと

契約の時点では格安であった見積りをもとに工事を始めたのに、工事開始後に業者側から様々な理由をつけては追加工事や工事内容の変更を申し出られ、最終的には相場よりもずっと高い金額を請求されるというトラブルも見受けられます。

 

見積りの作成に際して業者が十分な現地調査を行っているかを確認しておきましょう。

追加工事自体は優良業者でも有り得る話ですが、追加工事や工事内容の変更がある場合には必ず、なぜ当初の計画が変更になったのか、工賃がどれほど加算されるか、追加料金が発生するならどのタイミングで支払うのかなどを十分確認してから承諾するようにしましょう。

また契約の際に、やむを得ず追加工事や工事内容の変更が生じる場合にも業者の独断で行わないようにはっきり取り決めておくこともできます。

■信頼できる業者と適正価格で契約しよう

上記の適正相場を理解しておくことが、なぜ外壁塗装リフォームの成功に欠かせないのか、信頼できる業者選びという観点で考えてみましょう。

1.相場価格、基本の工程を知っておくことは大前提

悪徳業者であれば施主が塗装工事の基本的なことを理解していないと見るとそこに漬け込んで不正な請求や手抜き工事を行おうとするかもしれません。

塗料の種類、工程、付帯工事の内容や各工事の相場などを業者との打ち合わせの前に施主が把握しておくなら、その知識をもとに信頼できる業者かどうかを判断することができるでしょう。

そのような知識は相手が優良業者である場合にも打ち合わせをスムーズに進めるのに役立つはずです。

2.複数業者から見積もりを取って比較する

一般的な適正相場を知っていても「実際に自分の家の場合はいくらが適正価格となるか」を判断するのはなかなか難しいものです。

それをより正確に判断するためには1社だけでなく2〜3社に見積もりを依頼し、それらを比較してみるようにすると良いでしょう。

 

価格だけでなく作業内容や工期なども比較するなら手抜き工事が行われる恐れはないか確認する助けになります。

また工事期間に入っても気がかりな点や意見などを言いやすい会社かどうか、打ち合わせの時点から業者の雰囲気をチェックするのも良いかもしれません。

■おわりに

何が「適正価格」なのかを判断するには外壁塗装に含まれる様々な分野の知識が関係しています。

少し複雑に思えるかもしれませんが、上記のように要点を把握しておくならば無駄も不足もない満足のゆく外壁塗装リフォームを成功させることができるでしょう。