かつては戸建て住宅にはほとんど使われていなかったフッ素塗料ですが、最近では大手塗料メーカーも一般住宅向けのフッ素塗料を販売するようになりました。
「高級塗料」というイメージが先行しているかもしれませんが、大いに選択するメリットのある塗料ですので、今回はこの今後の主流にもなりうるフッ素塗料について調べてみましょう。
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■フッ素塗料は最もグレードが高い塗料
現在、一般住宅における外壁塗装の現場では下記の5つのグレードの塗料が主に使用されており、
- アクリル塗料
- ウレタン塗料
- シリコン塗料
- ラジカル塗料
- フッ素塗料
の5種のグレードの中で最上位に位置しているのがフッ素塗料です。
外壁塗装において「グレードが高い」とは、単に価格が高いだけでなく耐久性が高く耐用年数の長い塗料であることを意味します。
1.価格が高い
塗料の相場費用は容量や重さではなく「施工単価」と呼ばれる塗装面1㎡あたりの塗装にかかる単価で計算されますが、フッ素塗料の施工単価相場は1㎡あたり3,800〜4,800円で、これはもっとも低いグレードであるアクリル塗料の一般的な施工単価1,000〜1,800円に比べれば3〜5倍にあたる価格です。
この施工単価を基にして外壁塗装リフォームをフッ素塗料で行う場合の費用を計算すると、一般的な広さの戸建住宅の場合で費用相場は110万〜150万円ほどとなり、同時に屋根もフッ素塗料で塗装する場合には更に数十万単位の工事価格がかかることを考えれば、かなり高額な工事になることがわかります。
2.耐久性が高い
ただ、外壁塗装工事のコストパフォーマンスを検討する際には、工事価格だけでなく耐用年数も併せて計算に入れなければなりません。
フッ素塗料の場合、耐用年数は15〜20年程度で、現在もっとも人気のあるシリコン塗料の耐用年数が10〜15年であることと比較すると、フッ素塗料はさらに5〜10年長持ちすることになります。
この塗料の主原料となっているフッ素は「耐候性」といわれる、塗料を劣化させる主な原因となる紫外線や雨に対する対抗力が極めて高く、これにより塗料の鮮やかさや光沢も劣化しにくく、塗りたてのようなツヤのある美観を長期間保つことが可能です。
また、フッ素樹脂加工(テフロン加工)のフライパンをイメージするとわかりやすいかもしれませんが、フッ素塗料は美観を損ない塗膜を劣化させる要因にもなりうる様々な汚れや藻が付着しにくく、メンテナンスしやすいという、外壁にとって嬉しい効果も持っています。
■フッ素塗料のメリット・デメリット
非常に高い耐久性を誇るフッ素塗料ですが、施工価格は高額となるため、施工ミスが発生した場合の損害も大きくなってしまいます。
フッ素塗装にすべきかどうか適切に判断するために、メリットとデメリットについて考えてみましょう。
1.フッ素塗料のメリット
●塗替えの回数が少なくなる
高額なフッ素塗料も、長い目で見れば高いコストパフォーマンスを期待できます。
例えば、今後30年間の外壁塗装に必要な予算を考えてみると、
- シリコン塗料の場合、耐用年数が10〜15年なので2〜3回塗装する必要がある。
- フッ素塗料の場合、耐用年数が15〜20年なので塗装は2回、もしくは1回で済む。
どんな塗料を使うにしても塗装のたびに足場代が15〜20万かかることも踏まえれば、耐久性の高いフッ素塗料を使用し、外壁塗装のリフォーム回数を減らすことは長期的な観点からは節約になります。
●汚れにくく清掃の頻度が少ない外壁になる
フッ素塗料は「親水性」という水によく馴染む性質、「非粘着性」という汚れを弾く性質、「低摩擦性」という汚れが滑り落ちやすい性質などのために汚れが付着したり蓄積したりしにくいという特徴があります。
一般的な外壁塗装に使われる塗料の多くは紫外線によって塗料が徐々に分解され発色が悪くなり光沢も奪われていきますが、フッ素塗料は「耐候性」という紫外線によって劣化しにくいという特性を持っているため、色鮮やかさ、美しい光沢が長持ちするのもフッ素塗料の魅力の一つです。
2.フッ素塗料のデメリット
●一回の施工費用が非常に高額
フッ素塗料で外壁塗装リフォームを行う場合、40坪の一戸建て住宅であれば外壁のみの塗装で110〜160万ほどになりますが、その大きさの建物をシリコン塗料で塗った場合には80〜100万程度に収めることが可能です。
その点を考えるとフッ素塗装のための予算を前もって立てるのも簡単ではありませんし、車の購入や子供の入学など人生の様々なイベントで出費がかさんだりする場合にもフッ素塗料での塗装は大きな負担になる可能性があります。
とはいえ、グレードの低い安価な塗料でその場しのぎの塗装をしてしまうより、高耐久なフッ素塗料で塗装すれば長期的なメンテナンスコストを節約することもできます。
●品質が施工する職人の技術に左右される
フッ素塗料であれ他の機能性塗料であれ、本来の性能をしっかりと発揮するためには知識と経験を有する職人が適切に施工する必要があります。
下記のような施工ミスがあった場合、フッ素塗料もその真価を発揮する事ができません。
- 下塗りを行なわず、塗料の密着性が落ちる
- ひび割れやすいモルタル壁に弾性タイプでないフッ素塗料を選ぶといった下地とのミスマッチ
- ひび割れや凹凸の補修、異物・旧塗膜の除去などの適切な下地処理を行っていない
- 希釈率を誤って薄める
高額な塗装工事になるため、ひとたび施工ミスが起きてしまうと大変な事後処理が求められることになるかもしれません。
単に人的ミスで施工不良が起こることもありますが、経験も技術も持たない悪徳業者に施工させるならば当然仕上がりも耐久性も劣ったものになってしまいます。
フッ素塗料の施行業者選びの際は、高額な工事を依頼するに値する技術と実績を持つ優良業者を慎重に選ぶようにしましょう。
■外壁塗装にフッ素塗料が選ばれるケース
上記のようなデメリットがありながらも「高耐久性」という最大の特徴のために様々なシーンでフッ素塗料が選ばれています。
「長期的な塗装回数が少なくて済む」というメリットにより、紫外線や酸性雨などの影響を壁面よりも受けやすい屋根の塗装に最適です。
では、どのようなケースでフッ素塗料が活躍しているかを考えてみましょう。
1.公共の建築物
フッ素塗料は六本木ヒルズやレインボーブリッジ、最近では東京スカイツリーなどの塗装に採用されています。
高層ビルや商業施設、橋梁や鉄塔といった大型の建造物の塗り替えは、塗装に必要となる架設工事や人件費なども考慮すると、かなりの費用や工期を要する大規模なプロジェクトになるため、塗替えは最小限に抑えなければなりません。
そのため、耐久性が高く頻繁に塗り替える必要のないフッ素塗料が選ばれています。
この考え方は大規模建築だけでなく一般住宅でも適用できます。
毎回かかる高額な足場費用を可能な限り節約したいならば、フッ素塗料を使用する場合にどれほど長期的なメンテナンス費用の節約になるかを試算してみると良いでしょう。
2.屋根の塗装
外壁と屋根の塗装リフォームを同時に行う際には、多くの場合別々のグレードの塗料が選ばれます。
屋根は外壁よりも強い日差しが長期間当たるため、同じ塗料で塗装すると外壁に比べて3〜5年ほど早く傷んでしまうためです。
それで、屋根と外壁双方の塗装のタイミングを合わせるために、外壁塗装にはシリコン塗料、屋根塗装にはフッ素塗料といった具合に、外壁よりも高いグレードの塗料を屋根用に選ぶのが一般的です。
仮に外壁も屋根もフッ素塗料で塗装してしまうと、高耐久とはいえ屋根の塗装のほうが先に傷んでしまい、結局屋根の塗装だけ先にやりかえる必要が生じて無駄な足場代が必要になってしまいます。
そのような状況を避けるには、屋根をフッ素で塗装するのであれば外壁にはシリコン塗料やラジカル塗料などの少しグレードを下げるという方法があります。
そのようにするなら塗り替えのタイミングが揃い、屋根塗装だけのために無駄な出費がかかってしまうのを避けることが可能です。
■おわりに
高額でなかなか手が出せないように思えるフッ素塗料も、耐用年数の長さを考えれば高いコストパフォーマンスを期待できます。
大切なマイホームを長く美しく保つために、フッ素塗料による塗装リフォームを選択肢に入れておくのはいかがでしょうか。