外壁塗装において「塗り方」が間違っていると、塗料本来の効果が発揮されないばかりでなく、施工不良が起こり外壁の内部まで劣化が及んでしまうことがあります。

どのような「塗り方」が正しいのか、施工方法や業者の見分け方などを詳しく解説していくので、しっかりと理解を深めていきましょう。

■塗り方は塗料の種類以上に耐久性に影響する

外壁塗装には、シリコン塗料やフッ素塗料といったグレードの高い種類や、断熱性や防汚性に優れた機能を発揮する種類など、さまざまな塗料があります。

どの塗料にも共通するのは、「正しい塗り方で塗らなければ効果を発揮できない」ということです。

塗装業者の中には、塗り方を誤っているにも関わらず施工上の品質は無視し、お金だけ奪い取ろうとする悪質な場合もあります。

施主側が外壁塗料の塗り方を知っておけば、そういった被害にあうリスクを減らすことができるので、正しい塗装方法をしっかりと理解しておきましょう。

1.塗料は正しく塗ることで効果を発揮する

塗料は職人の技術力で耐久性が左右されるため、どんなに高耐久性でも塗り方を誤れば意味がありません。

外壁塗装には、塗料の効果を最大限発揮させるための正しい塗り方というものがあります。

正しい塗り方とは、以下の2つの点をきちんと守ることを意味します。

  • 正しい「手順」で塗ること
  • 正しい「工法」で塗ること

※手順と工法については後述の「外壁塗装の正しい塗り方」で詳しく解説していきます。

 

正しい塗り方で塗装を行わなければ、塗膜は本来の半分以下の耐久性になってしまい、期待耐用年数よりもずっと早く剥がれなどの劣化現象があらわれるでしょう。

2.塗り方をおろそかにする業者に注意

施工品質を無視してさっさと工事を済ませてしまおうとする悪質な業者は、正しい塗り方を守りません。

例えば、部材代や人件費を省くために手順の一部を省いたり、工法の注意点をおろそかにしたりするため、質の悪い外壁塗装になってしまうのです。

外壁塗装で正しい塗り方が行われるかどうかは、見積もりの時点である程度見抜くことができます。

後述の「外壁塗装の正しい塗り方」では、見積もりの見方も併せて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

■正しい塗り方をしないと塗料はどうなるのか

外壁塗装で正しい塗り方が行われなかった場合、どのような劣化症状が起きるのでしょうか?

経年劣化との違い、見た目の特徴、懸念される建物へのダメージなど、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。

1.塗膜の剥がれ

どんな塗料も、耐用年数を迎えるころには紫外線や雨で徐々に劣化します。

そのため塗膜の剥がれは経年劣化で起こる可能性が高い劣化現象の一つです。

しかし正しい塗り方が行われなった塗料で起きる剥がれは、正しく塗られた外壁が10年などに対し、施工から3~5年以内という非常に短い期間で起きてしまうのが特徴です。

施工不良による剥がれは、正しく下地処理をせずに塗ったことによって起きることが多く、塗膜が剥がれている部分は外壁が保護されないため、雨水の浸水や紫外線のダメージが外壁材そのものに蓄積されていきます。

2.塗りムラがあちこちにできる

塗料は、ムラなく均一に塗ることが外壁の美観にとっても耐久性にとっても重要です。

しかし、仕上げの3回塗りを2回で済ませたり、塗り面のキワのテープ養生を省いて隙間までしっかり塗られていなかったりすると、建物のあちこちに塗りムラができ、まだらで耐久力も低い塗装になってしまいます。

また、吹き付けスプレーやハケの使い方が未熟だったり、道具の手入れがずさんだったりすると誰の目にも明らかなムラができやすいので、そのような技術の低い業者に依頼することのないよう、業者は慎重に選ぶことが大切です。

3.塗膜に気泡ができてしまう

塗膜に気泡ができてしまう原因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 高圧洗浄時に異物をしっかり除去しておらず、塗膜の下に異物と共に空気が残ってしまった
  • 高圧洗浄後に表面を乾燥させておらず水分が残っていた
  • 下地処理のときにひび割れを補修しなかったため、塗膜の下に空気が残った

これらはいずれも正しい手順で塗装されなかった時に起きるもの。

気泡が生じた塗膜はやがて破れてしまい、「剥がれ」と同様に外壁を保護する効果を失ってしまいます。

■外壁塗装の正しい塗り方

外壁塗装の正しい塗り方とは、どのような手順で行われるものでしょうか?

施工の手順が守られているか、道具の正しい使い方が守られているかなどのチェックポイントや、業者が提出する見積もりから手抜き工事かどうかを見抜く方法も併せて解説していきます。

1.「流れ」としての塗り方

「正しい塗り方」とは、「外壁塗装の施工手順を守ること」とも言えます。

外壁塗装の基本的な流れを知って、それぞれの項目が見積もりで算出されているか必ず確認することが大切です。

項目を記載しないアバウトな「一式見積もり」は、何の作業が行われるか調べられず危険なため、必ず下記の項目が記載されているか確認しましょう。

●足場設置

ムラなく安全に塗装を行うためには、足場の設置は欠かせません。

安定した足場があることによって手ブレが起きにくくなり、足元のバランスも取りやすく均一な塗装を行うことができます。

また、不注意で物を落とすリスクや、落下など危険な事故も防げるため、安全面においても足場設置は塗装工事に必要な項目です。

●高圧洗浄

高圧洗浄は塗装前に外壁や屋根表面の異物を除去し、後の塗装後に気泡や剥がれが起きないようにする作業です。

高圧洗浄後は水分を乾燥させるために、最低でも24時間は放置する必要があります。

高圧洗浄のあといきなり塗装に入ると施工不良につながるため、見積もりの段階で工事の工程表をもらい、乾燥させる期間があるかどうか、工期を確認しておくことが大切です。

●下地調整

塗料を塗る前に、外壁や屋根の下地調整を行う必要があります。

下地調整には以下のようなものがあります。

  • ケレン作業…鉄部の錆びを落とす
  • ひび割れ補修…エポキシ樹脂などで割れ目を埋める
  • シーリング補修…サイディングボードの目地や窓サッシ周囲に充填されているコーキング材を新しいものと交換する(シーリングが劣化してすぐにでも隙間から水が入ってしまうような場合は、高圧洗浄前にシーリング補修のみ行う業者もいる)

これらを済ませておくことによって、凹凸が少なく異物がない外壁や屋根にすることができ、後の塗装が安全に行えるようになります。

●養生

ビニールシートやマスキングテープなどで塗装しない部分を保護することにより、細かい隙間も安全に塗れます。

養生をしておくと、塗料の付着や飛散を防ぐことができ、作業の手間が減って塗装に集中できるので、塗装工事では必要な項目です。

●塗装

塗装は「3回塗り」が鉄則で、詳しい工程は以下のとおりです。

  • 下塗り…下地材を塗布し、仕上げ用塗料が外壁や屋根にしっかりくっ付くようにする重要な作業。下塗りを行わなければシリコンやフッ素などの高耐久塗料もすぐに剥がれてしまう。
  • 中塗り…仕上げ用塗料の一回目を塗布する作業。この時点ではうっすらとムラなどができていることがある。
  • 上塗り…仕上げ用塗料の二回目を塗布する作業。

 

それぞれの塗装後には24時間以上乾燥時間が設けられるため、外壁の塗装だけで合計6日、屋根も加えると12日はかかる計算になります。

2.「工法」としての塗り方

道具を正しく使うことも塗装の耐久性を守るうえでは大切なこと。

塗装に使う道具には、ローラー、ハケ、吹き付けスプレーという3種類があります。

それぞれのメリット・デメリットを解説していくので、工法による違いを把握しておきましょう。

●ローラー

ローラーはムラなく均一に塗装しやすく、少ない動きで塗料を一度にたっぷり塗装できるので、現在最も主流で使われている道具です。

ローラーのタイプを変えれば凹凸も埋めることができます。

●ハケ

ハケは広範囲を塗ろうとすると時間がかかるため、主に細かい箇所の修正などで使用されます。

ハケでの塗装は技術力が必要で、未熟な場合はムラになりやすく、施工品質を守るためにも広範囲の塗装はローラーを使った工法が多くなっています。

●吹付けスプレー

広範囲に機械で吹き付けすることが可能。

ただし吹付けの角度や空気の圧縮調整を誤ると塗膜にムラができることがあるため、取り扱いには技術が必要な工法です。

また塗料のムダが増えて塗料の量がかさむ、周囲に塗料が飛散しやすく機械の音も響くなどの理由から、住宅街で行われるケースは少なくなってきています。

■おわりに

正しい手順と正しい工法で施工されていれば、外壁塗装の施工不良や仕上がりに問題がでることは少ないでしょう。

正しい塗り方をきちんと知っている業者に依頼するためにも、見積もり段階で塗装工事に必要な作業工程が入っているか、工程表で工事の日程を説明してくれるかなども、あわせて確認しておくことが大切です。