外壁塗装と聞くと「ペンキを外壁に塗る作業」というイメージをお持ちの方も多いと思います。

実は、外壁塗装に使う「塗料」と「ペンキ」は別物で、基本的にペンキを外壁塗装に使うことはごくまれです。

 

しかしペンキは知名度が高く、外壁塗装を説明する上では「塗料」と表現するよりも「ペンキ」と言った方が理解され易いため、簡便的に「ペンキ」という言葉を使っている業者やウェブサイトも存在します。

そこでこの記事では、こういった誤解を解き正しい用語を解説した上で「塗料」と「ペンキ」の長所と短所についてお伝えします。

外壁塗装を発注する際に、誤った知識のまま業者と話を進めてしまわないための知識としてお役立てください。

■外壁塗装用の塗料とペンキは別物

まずは、外壁塗装用の塗料とペンキの違いについて、それぞれの特徴について解説していきます。

1.ペンキの特徴

ペンキは植物性のボイル油を主成分とした塗装用の材料です。

ホームセンターで安く市販されているため一般の人でも気軽に購入することができ、ご自身でリフォームや日曜大工といったDIY作業を楽しむ方などに広く親しまれています。

 

しかしペンキは耐用年数が短く、外壁に塗装した場合2〜3年で塗り替えが必要になります。

また、耐水性や耐候性も低いため、外壁塗装で使われることはほとんどありません。

2.塗料の特徴

塗料は、近年の外壁塗装で使用する定番の材料となっています。

 

塗料には、アクリル塗料やウレタン塗料、シリコン塗料、ラジカル塗料、フッ素塗料などのグレードがあります。

選んだ塗料のグレードによって、リフォーム費用や塗装の耐用年数は違ってきます。た

例えばシリコン樹脂塗料であれば耐用年数は約10~13年となっており、これはペンキの耐用年数2〜3年に比べて圧倒的に長いです。

●塗料の豊富なメリット

耐候性や耐水性が高い点も塗料の特徴です。

耐候性とは、紫外線のダメージや気温の変化といった、屋外で受けるダメージに対抗する力のことです。

 

そのほか、塗料は様々な成分を持つ素材と混ぜて使用できるので、断熱性の向上や美観を維持する成分を配合した、付加機能を持つ商品なども近年は販売されるようになりました。

断熱機能を持った塗料で外壁や屋根を塗装すれば、屋内と屋外で熱の移動が減るため、冬は暖かく夏は室温が上がりにくい家にすることができます。

美観に関しても、下地の模様を潰さない無色のクリヤー塗料や、石材調の趣のある仕上がりになる天然石配合のセラミック塗料なども選ぶことが可能です。

 

このように、塗装の目的に合わせて効果や特徴を選べる点も、塗料の大きなメリットと言えるでしょう。

●ペンキと比較したときの塗料のデメリット

ペンキと比較したとき、塗料には費用が高額になるというデメリットがあります。

30坪程度の一般的な2階建ての住宅を塗料で塗装すると、60~90万円の費用がかかります。

これはペンキを使用した場合に比べると10〜20万ほど高くなる計算になります。

 

また、市販のペンキであれば、使用の際に、火気への注意といった取り扱いが難しいシンナーで薄める必要はほぼありません。

それに対し、塗料を薄めるときはシンナーを使用しなければならないという点で注意が必要と言えるでしょう。

塗料には真水で薄めて使用する水性塗料とシンナーなどの有機溶剤で薄めて使用する油性塗料(溶剤塗料)という塗料タイプの違いがあります。

水性塗料は塗装作業中の臭いを大幅に軽減し、作業員の身体への負担も少ないという大きな利点があります。

しかし、耐用年数が長いのはシンナーを薄め液として使う油性塗料です。

耐久性が高い水性塗料も登場しつつありますが、耐用年数が長い油性塗料が選ばれる現場も少なくはありません。

■ペンキの種類

ペンキは古くから塗装用の材料として親しまれ、改良が重ねられてきました。

塗料が開発されてからは外壁塗装として使われることは少なくなりましたが、今でも住宅の金属部分などで使われることもあります。

 

ペンキにはいくつか種類がありますが、その中でも有名なオイルペイントと合成樹脂調合ペイントについてご紹介します。

1.オイルペイント

オイルペイントは建築の世界ではOPと略されることが多いペンキです。

安価で塗りやすく密着性や耐衝撃性に優れますが、乾燥が遅く耐久年数も短いことから現在ではほとんど使用されることがなくなりました。

2.合成樹脂調合ペイント

合成樹脂調合ペイントは、植物性油ではなく「調油性アルキド酸樹脂ワニス」が主成分のペンキです。

ホームセンターなどで販売しているペンキは基本的にこちらの合成樹脂調合ペイントですので、DIYをされている方には馴染みの深いペンキと言えるでしょう。

 

オイルペイントに比べ乾燥時間が早くなるように改良されており、ペンキの中でも比較的新しい種類になります。

■なぜペンキは外壁塗装で使われないのか

外壁塗装はペンキではなく塗料を使用することが一般的とお伝えしました。

これは外壁塗装にはカラーチェンジとしての意味だけでなく、建物の耐久性を高める目的があり、そのためには安価なペンキではなく塗料を使用する方が望ましいからです。

 

塗料を使って外壁塗装を行うと、平均して70〜90万円の費用をかけることになります。

ペンキであれば、この塗装費用を約半額に抑えることも可能です。

しかし、たとえ安価でもペンキは耐久性の高い合成樹脂塗料の代用にはなりません。

 

耐久性以外にもペンキが外壁塗装に使われない理由は3つありますので、以下から詳しくご紹介します。

1.幅広い外壁材の種類に対応できない

ペンキはアルカリ成分に弱く、コンクリートなどのアルカリ成分が強い素材に塗るとヒビ割れや剥離を起こしてしまいます。

塗装してもすぐに劣化してしまうようであれば、建物を保護するという塗装の役割を果たすことはできません。

 

一方で塗料はアルカリ性にも強く、施工方法を誤らない限りは数年で塗料自体にひび割れが生じることはほぼありません

そのほか、コンクリートのひび割れを防ぐ効果を持つ「弾性塗料」や、やや柔らかいウレタン樹脂塗料といった様々な種類の塗料を選び分けてより耐久性の高いコンクリート壁にすることも可能です。

またウレタン系塗料や弾性塗料はひび割れが多いモルタル壁の補修工事にも適しています。

 

このように、塗料は基本的な耐久性と抱負な種類によって、幅広い種類の外壁材に使用できるようにラインナップされているのです。

2.乾燥時間が長いため工事に手間取る

ペンキが外壁塗装に使用されない理由の2つ目としては、ペンキには塗料に比べて乾燥時間が2倍程度長いというデメリットがあるためです。

 

塗料は塗装して1~3時間ほど経つと指で触れるくらいまで固まり、8~20時間後にはほぼ塗膜が固まった状態になります。

一方ペンキは内部まで完全に乾燥するまでに24時間は置かなければなりません。

 

外壁塗装では下塗り、中塗り、上塗りという3回の重ね塗りが行われます。

これは下塗り用塗料で外壁の状態を整え、その上から仕上げ用塗料を2回塗ることで塗膜の耐久性を確固たるものにするためです。

そして1回の塗装につき1日の乾燥時間を設けなくてはなりませんので、最低でも塗装だけで6日かかることになります。

もし乾燥時間が短いペンキで塗装すれば、塗装作業が大幅に延びることは言うまでもありません。

 

最近はオイルペイントよりも乾燥時間が短い「合成樹脂調合ペイント」も登場していますが、塗料に比べれば圧倒的に乾燥まで時間がかかってしまいます。

 

また、ペンキは耐水性能が低い材料です。

そのため、長い乾燥時間のあいだに雨などが降って水がかかると、簡単に流れてしまう性質があります。

もし外壁塗装にペンキを使用する場合は、長期間に渡って雨が降らないと予想されている時期に行わなければなりません。

3.塗装用塗料の品質が向上した

外壁塗装にペンキをお勧めできない3つ目の理由としては、「塗料」の品質が向上し「ペンキ」を使用するメリットが相対的に低下したことが挙げられます。

 

一昔前は塗料の値段が非常に高く一般家庭の外壁塗装にはペンキを使わざるを得ない状況でした。

しかし日本ペイントやエスケー化研などの大手塗料メーカーが耐久性の高い塗料を次々に開発したことで塗料の値段が徐々に下がり、新商品の登場に伴って対候性や断熱性などの機能面もより向上し、ペンキよりも利用するメリットが多くなりました。

 

外壁塗装では塗装に使用する材料費以外にも、足場代や下地処理といった諸経費の費用がかかります。

しかし、塗料の価格といった材料費が占める割合は全体の2~3割程度です。

そのため、「せっかく塗装するのであれば材料費が少し高くなっても耐久性の高い塗料を使う」という考え方が一般的になってきました。

■おわりに

現在、外壁塗装には「ペンキ」ではなく「塗料」が一般的に使用されています。

これは、ペンキの「安い」というメリットを、塗料の「耐久性」や豊富な「機能性」といったメリットが大きく上回っているためです。

 

ペンキと塗料の違いを知って、目的に合った間違いのない外壁塗装にしましょう。