家の状態を良好に保ち、できるだけ長く住めるようにするために必要な住宅のメンテナンスの1つが外壁塗装ですが、専門的な施工内容になるイメージが強く、価格の相場などがわかりにくいと感じている人もいるのではないでしょうか。

 

外壁塗装業者は専門性が高く、素人にわかりにくい工事であり、悪質な業者も多く存在しています。

優良な外壁塗装業者に適正価格で施工を依頼するためにも、利用者側も業者をしっかりと見極めて行かなければなりません。

 

ここでは、外壁塗装を成功させるために知っておきたい、見積もりチェック時の3つのポイントについて詳しく説明していきます。

■見積もりの見方を知るだけで外壁塗装は成功しやすくなる

外壁塗装を依頼する前には、依頼を検討している業者から見積もりをとったり、実際に施工に関する打ち合わせを行ったりすることになるでしょう。

 

「外壁塗装の打ち合わせ」と聞くと、専門業者に専門用語ばかりを並べて説明されたり、価格の交渉が難しかったりするイメージがある人もいるかもしれませんが、外壁塗装に関する見積書の見方をある程度覚えてしまえば、業者の質や価格が適正であるかどうかを見抜くことはそれほど難しくありません。

1.見積もりで「価格」がわかる

見積もりで価格が分かるのは当然のことですが、見積もりによって具体的な価格を知るということは外壁塗装業者選びの大きな一歩となるのです。

また、一社だけではなく複数社から見積もりをとって比較してみると、自分の家の外壁塗装の価格相場を知ることができるでしょう。

たとえば、見積もりに記載されている塗料名をインターネットで調べて価格の相場をチェックすることも大手メーカーの塗料であれば可能ですし、見積もりに記載されている工事内容などをネットで調べれば、一般的な価格相場を知ることも可能です。

2.見積もりで業者の「信用性」がわかる

見積もり自体の内容や、見積もりに関する質問を投げかけた時の業者の対応によって、その業者の「信用性」を判断することもできます。

 

外壁塗装に詳しくない人でも分かるような見積もりを作ってくれる業者ほど、施主目線で施工してくれる優良な業者である可能性が高くなり、逆に見積もりの内容に「その他」や「一式」などあいまいな表現が多い業者ほど信用できない恐れがあるのです。

あいまいな表現が記載されているものに関しては、業者側に詳細を必ず尋ねるようにしましょう。

見積もりの分からない箇所を質問することで、しっかり質問に回答してくれる業者かどうかを判断することもできます。

3.見積もりの時点で「手抜き工事」を防げる

外壁塗装には業者を問わず絶対に行うべき基本の工程というものが存在し、基本の工程が省かれた外壁塗装は、ほぼ確実に失敗(数ヶ月や数年で外壁の塗料が浮く、剥がれるなど)するといえるでしょう。

 

また、「基本の工程」を知っておけば、見積もりを見て手抜き工事が行われていないかを自分でチェックすることができます。

■ポイント1:基本の工程が行われることをチェック

1.外壁塗装の基本工程

外壁塗装の基本の工程は以下の通りです。

  1. 足場仮設…高所で安全に作業が行えるように、建物の周りに足場を組む作業
  2. 高圧洗浄…専用の洗浄機から水を噴射して汚れを落とす作業。汚れや、カビ・コケ・旧塗膜などの異物を取り除き、塗料が密着しやすい状態にする。その後、乾燥にも1日確保する。
  3. 下地処理…塗料を長持ちさせるために外壁の状態を良好にする作業。ケレン作業で鉄部の錆びを落とす、目地コーキングの打替えをして防水性を高める、ひび割れを修復して塗装できる状態にする、など外壁の状態によって作業が異なる
  4. 養生…塗装を綺麗に仕上げたり、塗料が他に飛散するのを防ぐ塗装前の作業。塗料がはみ出してはならない箇所をビニールシートやマスキングテープで保護する
  5. 塗装…下地材を使った下塗り、仕上げ用塗料を使った中塗り、上塗りという3回塗りを行う

塗装を行う面積や外壁自体の状態、近隣の状況などによっても異なりますが、基本工程が完了するまでにはおよそ2週間程度の期間を要します。

全ての工程が完了すると、施主立ち合いのもとに外壁塗装の完了確認を行い、問題なければ足場を撤去して工事が完全に終了となるのです。

2.基本工程が書かれていない見積もりに注意

先ほど説明した5段階の基本工程は、どの塗装業者でも必ず行うべき工程となっているため、もしも、この5段階の基本工程のいずれかが見積もりの内容に含まれていないのであれば、なぜその工程が含まれていないのかを必ず業者に質問すべきです。

 

中には、「足場設置作業を省く分、安い工事ができる」などとアピールしてくる業者が存在しますが、足場はそもそも安全に効率よく外壁塗装を行う上で欠かせない設備です。

足場費用を省いて安く工事をしようと考えている業者の作業は、手の届かない場所は手抜き工事になる危険性が高いといえるでしょう(無足場工法という足場を設置しない業者もいますが、まずは避けておいたほうが無難です)。

 

その他にも「外壁が綺麗だから高圧洗浄はいらない」「劣化していないので、下地処理はいらない」などといってくる業者もいるようですが、作業工程を省いて手抜き工事をしようとしている可能性が非常に高いといえるので、選択肢から外し、他の業者にも見積もりを依頼しましょう。

 

見積もりをチェックする時には、基本工程がしっかり記載されいることと、「なぜその工程を行うのか」について解説されているかどうかにも着目しましょう。

作業を行う理由までを丁寧に記載している(もしくは丁寧に解説してくれる)業者は、仕事も丁寧な優良業者である可能性が高くなります。

■ポイント2:相場価格かどうかをチェック

見積もりに基本工程が含まれていることが分かったら、次は工程や材料費の価格が相場相当かを確認していきましょう。

 

業者や施工地域などによってもある程度の差が出る場合はありますが、桁が違うほど大きく金額が変わることはありませんので、事前に価格相場を知っていれば、見積もりを見たときに異様に高い価格がないかどうかを判断できるようになります。

1.基本工程はそれぞれに相場価格が存在する

●足場仮設

  • くさび式足場(ビケ足場)…900円~1,200円/㎡
  • 単管足場(くさび式足場を組めない狭い現場などで使われる)…700円~800円/㎡

●高圧洗浄

  • 水道水…150円~200円/㎡
  • バイオ洗浄…300円~700円/㎡

●下地処理

  • シーリング打ち替え(既存シーリングを撤去して新しく詰め直す作業)…1,000円/㎡
  • シーリング増し打ち(既存シーリングで使える部分を残して補充する作業)…800/㎡
  • ケレン作業費用…500円~2,000円/㎡
  • ひび割れ補修シーリング材充填(シール工法)…700円~1,000円/㎡
  • ひび割れ補修Vカット工法…2,000円~5,500円/㎡

●養生

  • 300円/㎡

●塗装

  • アクリル塗料
    耐用年数:約5~8年
    施工費用相場:約1,500円~1,800円/㎡
  • ウレタン塗料
    耐用年数:約8~10年
    施工費用相場:約1,800円~2,200円/㎡
  • シリコン塗料
    耐用年数:約10~15年
    施工費用相場:約2,800円~3,100円 /㎡
  • ラジカル塗料
    耐用年数:約14~16年
    施工費用相場:約3,200円~4,000円 /㎡
  • フッ素塗料
    耐用年数:約15~20年
    施工費用相場:約4,200円~5,500円/㎡
  • 遮熱・断熱塗料
    耐用年数:約13~18年
    施工費用相場:約3,800円~4,200円/㎡
  • 光触媒塗料
    耐用年数:約18~20年
    施工費用相場:約4,500円~5,700円/㎡
  • 無機塗料
    耐用年数:約18~23年
    施工費用相場:約4,500円~6,700円/㎡
  • 弾性塗料
    耐用年数:約10~15年
    施工費用相場:約2,000円~4,500円/㎡

上で紹介したように塗料には実にさまざまな種類があり、耐久年数や価格も塗料タイプによって大きく異なります。

 

予算・耐久性ともにバランスの取れた「シリコン塗料」「ラジカル塗料(ラジカル制御型塗料)」が利用されていれば、基本的に問題はありませんが、希望していないのにその他の塗料が使用されているのであれば、「なぜその塗料を使用するのか」をしっかり業者側に質問するようにしましょう。

 

まれに上記の塗料以外で「当店だけのオリジナル塗料を使用しています。」という業者も存在しますが、その外壁塗装業者だけが使っているような塗料は、中身がわからず特徴や価格相場もわかりにくいためできるだけ避けた方が良いでしょう。

2.相場よりも高い業者に注意

作業の基本的な流れや工程ごとの価格相場がわかるようになってくると、見積もりをとった業者の価格が高いのか安いのかが分かってくることでしょう。

 

もしも相場よりもかなり高い見積もりを作ってきた業者であれば、以下のような業者である可能性が高くなります。

  • 元請業者であり中間マージンを多く上乗せしている
  • 施主が外壁塗装の知識がないと思って金額を高く設定している

 

ただし、中には正当な理由により価格が相場を上回っている可能性もあります。

  • 建物の劣化が著しくひどい
  • 建物自体の面積が大きい
  • 狭小地など特別な事情があり作業が増える

上記のような場合には相場以上に価格が高くなる可能性があるので、複数の業者から見積もりをとって価格を比較してみることをおすすめします。

■ポイント3:施主目線でアドバイスしてくれる業者かチェック

業者の良し悪しは、見積もりの他に打ち合わせでも判断することが可能で、打ち合わせの段階で業者と直接コミュニケーションをとることによって、自分との相性もある程度把握することができます。

 

優良業者とは、施主目線で適切なアドバイスを行い、悪い点はしっかりと指摘してくれる「プロ意識の高さ」を持っているため、外壁塗装を依頼するのであれば、このような業者に依頼することが望ましいといえるでしょう。

1.施主の希望に沿ったプランを提案してくれる

住宅の形状や立地がそれぞれ異なるように、外壁塗装は現場によって使用すべき工法や塗料もそれぞれ異なります。

そんな中で、業者の都合や事情を無理に押し付けることなく、施主の希望を最優先してくれる業者かどうかを見極めることが優良業者に依頼するコツです。

工法や塗料の他にも、外壁とセットで屋根も塗装すべきか、塗装だけでなく張替えを行った方が良いのかなど、根拠あるアドバイスをしてくれる業者を選ぶようにしましょう。

 

一方で、施主の希望が実際の施工において現実的ではない場合に的確なアドバイスをくれる業者であるかどうかも重要な判断材料です。

たとえば施主が「雨樋などの付帯部分の塗装は費用節約のために省いてほしい」などと発言したとしましょう。

このような希望は、外壁塗装においては建物の耐久性を下げてしまう他に、完成時の統一感が出ないというような、デメリットが発生します。

 

このような希望に対し、「付帯部分塗装をしないと耐久性が下がり統一感もなくなってしまう。」と、しっかり発言してくれる業者は優良業者である可能性が高くなります。

根拠を元に、施主の希望が現実ではないことをしっかり伝えてくれる業者かどうかも判断していきましょう。

2.現地調査を行ったうえで見積もりを作ってくれる

依頼を検討している外壁塗装業者の良し悪しを見極めるためには、大前提として建物の現地調査を行っているかどうかも重要な要素です。

 

当たり前のことですが、建物を実際に確認して調査をしなければ、その家に相応しい外壁塗装のプランを考えることはできません。

基本的に、現地調査は目視での外壁や屋根の劣化判断を行うことになり、見積もりを作る前に数時間ほど行われるのが一般的です。

さらに丁寧な業者であれば「建物診断報告書」を作成し、劣化具合を施主に共有してくれるというところもあります。

 

万が一、突然訪問してきて現地調査を行わずに作ってきた見積もりを提示してくるような業者であれば、利用は絶対に利用は避けるようにしてください。

■おわりに

外壁塗装を成功させるためには「見積もりの内容」「価格相場」「業者の発言や行動」を見極めていく必要があります。

 

一見難しそうに見える優良業者の見分け方も、基本さえ押さえておけば比較的簡単に自分で行うことが可能ですので、まずは自分が外壁塗装を依頼したいと考える業者2〜3社ほどに見積もりを依頼し、比較してみることからはじめてみましょう。