外壁塗装ってなんだかわかりにくい、と思ってしまう理由の一つは、ちょっと難しい言葉がたくさんでてくることではないでしょうか。
たとえば「ポリマー」という言葉も、外壁塗装に関連付けてイメージするのが難しいかもしれません。
こちらでは、外壁塗装におけるポリマーに関してわかりやすく解説します。
このページの目次
■ポリマーとは
「ポリマー」という言葉自体は時々耳にすることがあるでしょう。
建築塗装の専門用語というわけではありませんが、基本的な意味がわかれば外壁塗装におけるポリマーの役割も理解しやすくなります。
1.ポリマーはモノマーが重合してできた有機化合物
ポリマーとは一言で言うと「モノマーが重合したもの」と説明されますが、これだとちょっとわかりにくいかもしれません。
「モノマー」というのは「単量体」とも呼ばれる分子の集まりで、簡単に言うとポリマーの原料です。
モノマーがたくさん集まって鎖や網のように結合していく化学反応を「重合」といい、その結果できあがる物質の構造のことをポリマーと呼びます。
そのためポリマーは「重合体」とも呼ばれ、この化学反応は熱・光・添加剤などによって
引き起こされます。
この二つの名称の由来となっているのはギリシャ語の「モノ(数字の“1”の意)」と「ポリ(“たくさん”の意)」で、単体か結合しているかを表しているだけだと考えると理解しやすいでしょう。
さらに、この「モノ」と「ポリ」の関係性はわたしたちのまわりに非常にたくさん存在しています。
たとえば、ポリ袋はモノマーである「エチレン」が重合してできた「ポリエチレン」というポリマーから作られていますし、化学繊維の「ポリエステル」も「エステル」というモノマーが重合したポリマーです。
わたしたちの身体を作っている「タンパク質」も「アミノ酸」が重合してできたポリマーです。
ポリマーとは物質自体の名前ではないため、「ウレタン塗料」や「アクリル塗料」、「シリコン塗料」のような形で「ポリマー塗料」という種類のグレードが存在するわけではありません。
とはいえ、「ウレタン」というモノマーが結合して「ポリウレタン」というポリマー素材になるため、「ポリウレタン樹脂塗料はポリマー塗料である」という説明がされることもあります。
さらに、大手塗料メーカーのラインナップによく見られる「合成樹脂塗料」もポリマー塗料の一種です。
2.ポリマーは外壁塗装以外にも使われている
このポリマーはわたしたちの生活の様々な面で応用されています。
たとえば車の「ポリマーコーティング」は車体をフッ素やシリコンを含んだ高分子ポリマー(分子量の多いポリマー)が作りだす塗膜によって耐熱性や断熱性・光沢をアップさせます。
建築工事の分野でもエマルション樹脂とセメント系パウダーを調合してできた「ポリマーセメント」という素材が用いられています。
この素材はポリマー構造により樹脂とセメント両方の機能を併せ持っているため強度・防水機能が高く、建物の屋上防水やベランダなどの塗膜防水工事、水掛かり部分のひび割れ補修などで広く活用されています。
■ポリマーの力を応用した外壁塗装とは
では、一般塗料とくらべて、ポリマーの特徴をもつ塗料を使用するとどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
1.防水性が高い
ポリマーは肉眼では見えない微細な分子がきれいに整列して鎖や網のような状態に結合して塗膜を生み出すので、水分が入り込む隙間が生じません。
そのため、雨水を通さない高い防水性を誇り、耐候性(天候からくるダメージへの強さ)も期待できます。
2.弾力性がある
分子が小さく伸縮性が高いのもポリマーを含む塗料の特徴です。
塗料に伸縮性がなければ下地がひび割れると塗膜にも亀裂が入ってしまいますが、弾力性・弾性ともいわれるゴムのような柔軟性により、クラックを抑える効果を期待できます。
このような特徴があるので、ひび割れが生じやすいコンクリートやモルタル壁の塗装に最適です。
3.透湿性が高い
ポリマーは水を透さない反面、内側の水蒸気を外側に逃がすことができます。
透湿性と呼ばれるこの性質により、建築物を劣化させる最大要因の一つである湿気から壁の内側を保護します。
高温多湿である日本の住宅事情に適した塗装となります。
4.艶消し効果が得られる
外壁塗装の場合は、ポリマーを含む塗料で仕上げると乾燥した後の塗膜表面には非常に細かな凹凸があらわれます。
この凹凸によって光は分散して反射するため、艶消し効果が得られます。
建築用塗料は一般的に艶あり(高光沢)なものが好まれる傾向にありますが、ピカピカした仕上がりは条件次第ではやや安っぽく見える場合もあるため、ポリマーの艶消し効果は落ち着きや高級感を求める人には適した塗料であると言えます。
■ポリマー塗装=高耐久とは限らないので注意
ポリマーを含む塗料には多くのメリットがあるものの、他の塗料に比べて長持ちするというわけではありません。
また、木造建築の下塗り用塗料として使用する場合、塗膜は地震に弱くひび割れが生じてしまう可能性があるというデメリットもあります。
中には「自社オリジナルのポリマー塗料なら耐久性が高く30年は持つ」などとアピールする悪徳業者もありますが、どんな塗料も下塗り・中塗り・上塗りの工程を丁寧に行わなければすぐに劣化してしまいますし、ポリマー自体は昔からあるもので新開発の高性能素材というようなものでもありません。
ポリマーの性能への過大評価は要注意です。
塗料の耐久性を左右するのは、シリコン樹脂やウレタン樹脂といったベースとなる樹脂の耐久性です。
また先述のように、素地調整や高圧洗浄など適切な事前作業、そして正しい施工方法が求められます。
外壁塗装リフォーム業者を選ぶなら「ポリマー=高耐久」というような安易な売り文句に惑わされず、複数業者に見積もりを依頼し、信頼に値する経験と技術を持った優良業者を選ぶようにしましょう。
■おわりに
実はわたしたちの身近なところに様々な形で存在しているポリマーは、外壁塗装に関しても、とても有用な素材です。
ポリマーの基本的な知識を身に着けておけば、きっと外壁塗装リフォームを成功させるのに役立つでしょう。