外壁塗装工事をするには最低でも何十万円もの費用がかかります。
確かに高いのですが、では交渉を重ねて大幅に値引きをしてもらうのがよいかといえばそうでもありません。
どうして外壁塗装で値引きに期待してはいけないのか、その理由について解説します。
このページの目次
■外壁塗装で値引きはできるのか?
そもそも外壁塗装工事では値引きは可能なのでしょうか?
また値引きをしてもらうとしたら、どのようなことに気をつければよいでしょうか?
1.良い値引きと悪い値引きが存在する
外壁塗装工事には数十万円から100万円を超える費用が掛かりますから、少しでも安く済ませたいと考える人も多くいるでしょう。
しかし、残念なことに施主の「少しでも塗装工事費用を安くできたら」という気持ちにつけ込もうとする悪徳業者が存在しますので、そうした業者に外壁塗装工事を任せてしまわないように注意しなければなりません。
外壁塗装は一生のうちにそう何度も経験する機会もなく、
- いわゆる「定価」が存在しないため、適正価格が分かりづらい
- 施主が外壁塗装に関して充分な知識を持っていない
などから、値引きに関する知識はおろか元々の価格に関してもその詳細をよく理解していない人が圧倒的に多いと思われます。
もちろん良心的な値引きをしてくれる業者は多くいるのですが、その一方で悪質な値引きをちらつかせて施主の関心をひき契約させようとする業者も確かに存在し、そのような業者に引っ掛かってしまうと金銭的にも物理的にも大きな負担を強いられます。
悪質な業者が提案した工事内容をよく見てみると、本来必要なはずの経費まで値引きされている場合もあるのですが、そうした工事はどうしても質が落ちてしまうため、施工不良を招いてしまう可能性が高いのです。
2.値引き後の価格が相場の範囲内かがポイント
外壁塗装には決まった定価はないですが、相場価格はありますからそれが良い業者を見つける際の判断基準となります。
相場価格は「その工事を行うために最低限かかる費用」といいかえることもできます。つまり、工事の質を担保する相場価格から2割~5割以上も値引きされているような工事では、外壁塗装工事に必要な基本の工程が省かれている可能性があるわけです。
そもそも良心的な業者なら相場を大きく下回るような値引きはしません。
良心的な業者が作成する見積もりは、質の良い工事を行うために最低限必要な金額と自社の利益が含められていますが、その利益も自社が健全な営業を行うために最低限必要な金額に設定されているからです。
ところが、悪徳業者は最低限必要な工事すら省いておきながら利益を上乗せする傾向が見られます。
工事を依頼する側の知識のなさを逆手にとり、自分の会社に都合のいい適当な見積もりを提示してくるのです。
では、外壁塗装工事では一体どのくらいの値引きが可能なのでしょうか?
自社で直接工事を請け負う平均的な業者外壁塗装工事では費用の内訳はだいたい以下の通りです。
自社で直接施工を行わない大手ハウスメーカーや大手工務店などの場合は、施工を下請け業者に委託するため別途中間マージンが発生しますのでこの割合とは多少異なります。
人件費…30%
- 材料代+足場代…40%
- 経費・運営費…10%
- 利益…20%
人件費や材料代・経費はどうしても省くことができないため、値引きをするとすれば塗装業者の利益分を削るしかないのですね。
ただ、一般的な外壁塗装工事なら費用は100万円以内に収まるケースが多いですし、塗装費用のうち利益が占める割合はせいぜい20%程度とそれほど大きいわけでもありません。
となると、そこから何十万円もの値引きをするのは無理だということがある程度想像できるでしょう。
逆に、外壁塗装工事で何十万円もの値引きをしようと思うのなら、
- 最初に提示する見積もり金額を相場費用よりかなり高く設定する
- 初めの見積もりから材料費や人件費を率先して削る(結果的に塗装工事の質が落ちる)
などの方法をとる以外にないことが分かりますね。
■良い値引きと悪い値引きの違い
外壁塗装における良い値引きと悪い値引きの見分け方について解説していきます。
1.良い値引きとは
良い値引きとは、基本的に少額であって工事に影響を及ぼさないものがほとんどだと考えてください。
●端数処理の値引き
端数処理とは
「725,333円」の工事代金を「725,000円」にする
などのように金額のキリをよくするために行われるもので、見積書には
- 端数処理
- 端数調整
- 値引き
などと記載されています。
外塗装の相場価格は屋根工事抜きなら80~100万円程度ですから、通常なら10万円を超えるような値引きが行われるようなことはなく、せいぜい数万円から数千円程度にとどまるケースがほとんどです。
こうした値引きはあくまでも業者の善意によるサービスですから、端数処理の金額を増やすようしつこく迫るのは失礼にあたります。
●サービス施工
純粋な値引きとは少し異なりますがが、ちょっとした作業をサービスで処理してくれることがあります。
例えば、
- 余った塗料で小さな箇所を塗装する
- 高圧洗浄を施工箇所以外にも実施する
- 雨樋の詰まりを清掃する
などです。
もちろんこちらも業者が善意で行ってくれるサービスですから、これをしてくれと強要するのはご法度ですし、こうしたサービスを行わなかったからといってその業者が悪質業者であるということにはなりませんので誤解のないようにしたいです。
2.悪い値引きとは
一方、悪い値引きとは単に契約を取る目的で行われるものであり、業者を信用して契約してしまうといい加減な外壁塗装を施されてしまうばかりでなく、建物に重大なダメージを与えてしまう恐れさえあると知っておかなければなりません。
●相場価格の半分以下など大幅な値引き
前章で説明したとおり、相場価格とは「工事を行うために必要な経費」を合計した金額ですから、それが半額にまで値引きされるということは本来必要な人件費や塗料代さえ過剰に節約している可能性が高いです。
こうした大幅な値引きをうたった外壁塗装工事は、手抜き工事であると考えてまず差し支えないでしょう。
外壁塗装工事は作業日数がかかるほど人件費が増え、重ね塗りをするほど塗料代がかさむのが当然ですが、悪質な業者は作業日数が増えたり作業に時間を費やしたりすることを嫌い、塗料を薄めてさっさと塗装を終わらせてしまうことがあります。
塗料は、メーカーが指定した希釈率に従って使用する場合にはかなりの粘性があり塗装作業には結構な労力を要するのですが、塗料を指定された希釈率よりもっと薄くしてしまえば使用する塗料が少なく済むうえ、粘性も薄いので塗装作業自体も早く進められるという考えなのでしょう。
また、外壁塗装では下塗り材を使った下塗りを1回、仕上げ材を使った中塗り・上塗りがそれぞれ1回の合計3回塗りが基本とされており、これを怠ると塗膜に強度が足りず外壁を守ることができません。
悪質な業者だとこの3回塗りを2回や1回に減らしてしまうこともあるのですが、素人がパッと見ただけでは塗装直後の外壁にきちんと3回の塗装が施されているかどうかを判断することは非常に難しいです。
こうした手抜きの塗装をした場合、早い段階で塗膜がめくれてしまったり塗料の持っている機能が失われてしまったりして初めて気づきますが、そのころには施工をした塗装業者とは連絡すら取れないことがほとんどです。
●基本の工程を省いて行われる値引き
「足場なし施工で足場代無料!」などと宣伝している業者もいますが、
- 足場
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 養生
という基本の工程を省いて値引きをする業者は非常に危険だということをしっかり認識しておきましょう。
工程 | 必要な理由 |
足場 | 飛散防止ネットを張るために欠かせない設備
職人の安全と質の高い作業の確保のためにも絶対に必要 |
高圧洗浄 | 外壁の異物を除去することで塗膜が外壁に密着しやすくなる |
下地処理 | ひび割れや劣化した目地シーリング、鉄部の錆びを補修する工程 |
養生 | 塗装が周囲にはみ出さないように、また隙間まで塗り残しをしないために必要な工程 |
どれも外壁塗装を成功させるためには欠かせない工程ですから、省いて無料にするような業者は絶対に信用してはいけません。
特に値引きの手口に使われやすいのが、一棟あたり15~20万円かかる高額な足場代です。
足場の必要性について知識がないと足場代の値引きに心が動いてしまいそうですが、足場なしで行う作業では塗装の質を確保できませんし、何より職人の安全が担保されません。
確かに、仮設足場を作らない外壁塗装工事がないわけではありませんが、そうした工事ができるのはごく限られた一部の塗装業者だけです。
ですから、もし「足場がなくなれば工事費用が安くなりますよ」といわれても安易に信じないようにしましょう。
また、「足場代をサービスしておきます」などといって契約をせまる業者にも気をつけてください。
足場は設置するのにも多くの労力を必要としますので、火災保険を利用するなど特殊な事情がない限り足場費用が無料になるようなことはありません。
足場代を無料にすると見せかけてその分の費用をほかの工程に上乗せしてしまう手法だと思われますので充分に注意すべきです。
3.元々の設定価格が高すぎる値引き
大幅な値引きを提示しているように見えるけれども、値引き後の金額がそもそも相場価格というケースも非常に多いです。
「結果的に相場価格で工事ができるならいいのでは」と思ってしまうかもしれませんが、はじめに偽りの見積額を提示して施主をだまし、大幅な値引きがあるように見せかけて契約を取ろうとしているのですから到底良心的な業者とはいえません。
こうした業者は、
- 契約後に業者の方から追加工事が必要になったと持ちかけてくる
- 工事中に担当者が一度も現場に来ない
など、契約しても不快な思いをする恐れがあります。
ひどいケースでは、値引き後の金額が相場より高いままのこともあるので、大幅な値引きには基本的に何かカラクリがあると考えた方が良いでしょう。
■高額な値引きにだまされないために
大幅な値引きを提示されると当然ですが誰でも迷ってしまいます。
そこで、もしそのような見積もりを提示されても冷静に判断するためのポイントについて解説していきます。
1.相場価格を知って値引きに振り回されない
外壁塗装の相場価格さえ知っていれば、高額な値引きなのか相場の範囲内の値引きなのは充分に判断できます。
ウレタン塗料 | シリコン塗料 | フッ素塗料 | |
30坪 | 70万円~80万円 | 80万円~100万円 | 100万円~130万円 |
40坪 | 90万円~110万円 | 120万円~140万円 | 140万円~160万円 |
50坪 | 120万円から140万円 | 140万円~160万円 | 160万円から180万円 |
もっとも一般的な30~40坪の住宅であれば外壁塗装工事の相場価格は80~100万円、屋根塗装も行う場合だと工事の相場価格は100~130万円程度です。
外壁塗装工事を30万円、40万円といった格安な価格で行えることはまずありえませんから、このような金額にまで値引きされた時は充分に警戒しなければなりません。
また逆に、工事金額が200~300万円など高額になることもないので、「200万円から半額の100万円に値引きさせていただきました!」などの業者側のセールストークにはだまされないようにしてください。
2.相場価格で施工してくれる業者を見つけること
きちんと相場価格で施工してくれる業者であれば施工不良やトラブルに巻き込まれる確率はかなり低いです。
業者が出す見積もりには、家の劣化状況を把握したうえで最善と思われる工事やそれに必要な材料代、そして適正な利益が含まれていますので、見積を提示されたら価格が相場価格の範囲内であることをしっかり確認しましょう。
そして、優良業者は必要な工事にお金をかけることの大切さを知っていますから過剰な値引きには応じないことを覚えておいてください。
たとえ値引き交渉に応じてくれる業者に依頼できたとしても、万が一施工不良が起きてしまったときに「施主が値引きしろと言ったので工程を減らした」と言い訳をされてしまう恐れがありますから、そのような業者を利用することはおすすめしません。
ただ、どうしても少しでもお得な塗装費用で工事をしたいのなら塗装する時期にこだわらないというのも一つの方法です。
- 1月から2月ごろまで
- 梅雨時
などの外壁塗装工事があまり行われない閑散期には、通常よりも安い価格で工事を行ってもらえる可能性があります。
特に、地元業者なら土地の気候も熟知していますから天候に合わせてうまく施工スケジュールを組んでもらえるはずです。
■おわりに
いかがでしょうか?
外壁塗装の料金は人件費と材料代の割合が高く、大幅に値引きをする余地がないことが分かったと思います。
値引きに過度な期待を寄せるよりも、適正な費用をかけて間違いのない工事を行ってもらう方が結果として大きく得をする、それが外壁塗装工事の大きな特徴だといえるでしょう。