「家の外壁や屋根材の塗装が剥げてきたな」と思っている人はいませんか?
そう感じたら外壁塗装工事のタイミングですが、タイミングとしてはむしろ遅いくらいかもしれません。
外壁塗装にはしかるべきタイミングがあり、タイミングを逃すと塗装がうまくいかなかったり、工期が延長したりなどのリスクも高まります。
そんなことにならないよう、今回は外壁塗装の必要性、タイミングに関する知識を紹介するとともに、タイミング選びの注意点についても解説します。
このページの目次
■外壁塗装のタイミングは2種類
外壁塗装を行なうタイミングですが、「塗料の耐用年数を超える前」と、「外壁塗装を行ないやすい季節」の2種類で選ぶ方法があります。
家の経年劣化は避けられませんが、適切なタイミングで外壁塗装を行なえば、我が家を長持ちさせられるのです。
詳しい情報については、後ほど解説しましょう。
1.塗料の耐用年数が過ぎる前に塗装を
どんな塗料メーカーのどんな塗料にも耐用年数がありますが、耐用年数を過ぎた塗料には外壁や屋根を守る効果がありません。
よって、塗料の耐用年数を超える前に、塗装の塗り替えをしておくといいでしょう。
2.外壁塗装を行いやすい季節がある
外壁塗装は屋外での作業となるため、室内リフォームよりも季節の影響を受けやすい作業です。
できるだけ天気の安定した季節に外壁塗装を行うことで、工期延長や施工不良のリスクを避けることができます。
詳しくは、後ほど説明します。
■塗料の耐用年数が過ぎたタイミング
ここからは、外壁塗装の2つのタイミングについて、徹底解説していきましょう。
まずは、塗料の耐用年数による外壁塗装の塗り直しのタイミングについてです。
どの塗料にも耐用年数がありますが、塗料のグレードによって耐用年数が異なるだけでなく、耐久性能も異なります。
1.塗料の耐用年数とは
外壁塗装は「下塗り→中塗り→上塗り」と3回塗りますが、塗装の耐用年数に大きな影響を与えるのは、中塗りと上塗りに使われる仕上げ用塗料です。
下塗りで使われる塗料は、外壁と仕上げ用塗料の接着をよくするための接着剤のようなもので、屋根材や外壁の素材などによって選びます。
塗料の色ばかりに目が行きがちですが、実際に仕上げ用塗料の選び方で最も重要なのは、塗料のグレードです。
仕上げ用塗料には主に4つのグレードがあり、「アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素」の順にグレードが上がります。
グレードが高いほど塗替えの頻度は少なくなり耐久性も高いのですが、それに比例して見積もり価格も高くなります。
以下では、それぞれのグレードの耐用年数の目安、施工価格(塗料の平米単価)の目安、特徴やデメリットなどを紹介します。
●アクリル樹脂系塗料(アクリル塗料)
耐用年数:約5~8年
施工価格:約1,000~1,800円
アクリル塗料は、4つのグレードの中では最も平米単価が低く、フッ素樹脂系塗料(フッ素塗料)の3分の1~4分の1で済みます。
しかし、耐用年数もフッ素塗料の3分の1程度と短いです。
以下のようなケースにおすすめです。
- 頻繁に塗り替えを実施する
- 直射日光の当たらない場所に塗布する
- 安く済ませたい
●ウレタン樹脂系塗料(ウレタン塗料)
耐用年数:約8~10年
施工価格:約1,800~2,000円
ウレタン塗料は、アクリル塗料より少し施工価格が高くなりますが、耐用年数はアクリル塗料の2倍近いです。
平米単価も、シリコン樹脂系塗料(シリコン塗料)やフッ素塗料よりは安く、密着性も高く光沢があります。
ただし、シンナーはアルコールを含んだものが使用できず、専用のシンナーを使わなければなりません。
また、紫外線により黄変しやすく、湿気がある状況では塗膜劣化が起きやすいデメリットがあります。
以下のようなケースにおすすめです。
- 高級な仕上がりを希望
- あまり高価な塗料はいらないがそれなりの品質がほしい
- 塗膜のはがれが気になる場所がある
●シリコン樹脂系塗料(シリコン塗料)
耐用年数:約10~15年
施工価格:約2,000~3,000円
現在、塗料の主流となっているのがシリコン塗料で、多くのメーカーから様々な商品が販売されています。
平米単価は、アクリル塗料と比較しても驚くほど高くはない一方で高性能なため、コスパに優れた塗料です。
条件さえ整えば15年ほどの耐用年数を誇り、塗替えの回数も少なくて済みます。
一方で、密着性に少し劣り、顔料が沈殿しやすいため、撹拌をしっかりする必要があります。
以下のようなケースにおすすめです。
- 優良リフォーム業者にお願いする
- 色・付加機能・メーカーなど、塗料の選択肢は多い方がいい
●フッ素樹脂系塗料(フッ素塗料)
耐用年数:約12~18年
施工価格:約3,500~4,000円
最も耐用年数が長いのが、フッ素樹脂系塗料です。
平米単価も最も高いですが、耐用年数が長いため外壁塗装工事の回数も少なくなり、長い目で見ればお得になります。
耐候性や耐熱性、防カビ性や親水性など、付加機能も標準装備というケースも多いです。
ただし、やはり単価の高さがネックです。
以下のようなケースにおすすめです。
- 頻繁に塗り替えをしない
- 足場を掛ける面積が大きい
- 高品質な塗料が良い
2.今使われている塗装の耐用年数を知る方法
ただし、建物に現在使用されている塗料のグレードが分からない場合もあるでしょう。
そんなときは、前回外壁塗装をした際の工事内容を記載した工事仕様書、新築の場合は設計図書などを確認してください。
工事仕様書や設計図書すらない場合には、塗装の専門業者に相談をして、どの塗料が使用されているかを調査してもらうことをおススメします。
使用されている塗料のグレードが分かれば、塗り直しのタイミングも分かります。
3.耐用年数より早く劣化することがある
とはいえ、4つのグレードごとの耐用年数や耐久性は、あくまでも目安です。
建物の立地条件や地域によっては、塗膜劣化などの劣化状況がより悪くなっています。
塗料の寿命が早まれば、外壁や屋根材へダメージが直接伝わるため、建物本体の寿命も短くしてしまいます。
以下のような立地条件に該当する方は、専門家である住宅リフォーム会社に相談をして、メンテナンスや点検を受けておきましょう。
●日当たりが良すぎる
塗料の劣化進行度に最も大きな影響を与えるのが、紫外線です。
真夏に直射日光が当たれば、太陽光パネルを設置している家は発電量が増えるメリットもあるでしょうが、塗膜劣化への悪影響も忘れてはいけません。
外壁を触ると手に白いチョークの粉のようなものが付くことがありますが、これは「チョーキング現象」(白亜化)と呼ばれるもので、紫外線によって塗装が分解され、残った色素が白い粉となったものです。
チョーキング現象が起こると、塗装が正常に働いていない可能性が高いです。
塗料には4つのグレートとは別に、「付加機能」があります。
防水効果のある「防水性塗料」、断熱材のように断熱効果のある「断熱塗料」などがありますが、紫外線や温度変化などに強い塗料を「耐候性塗料」とも呼びます。
日当たりが良すぎる建物には、耐候性の機能が付加された塗料をおススメします。
●日当たりが悪くジメジメしている
日当たりが良すぎるのはいけませんが、日当たりが悪いのもよくありません。
日当たりが良くないと湿気が貯まりやすく、カビや汚れ、コケや藻が発生する原因ともなります。
コケやカビなどは硬い場所にでも根を張ることができます。
大量繁殖状態は見栄えが悪くなるばかりか、外壁や屋材にもダメージを与え、さらには人体にもアレルギー性鼻炎などを引き起こしてしまうのです。
コケやカビを防ぐには、日々のメンテナンスはもちろん、透湿性、防藻性、防カビ性に優れた塗料を選ぶのが効果的です。
●塗装以外の箇所からの劣化
塗装した場所以外のか所から、構造劣化が進行する場合もあります。
サイディングボードの継ぎ目や窓サッシや雨戸の周囲など、目地部分にはシーリング(コーキング)材が充填されています。
ただし、塗料と同じようにシーリング材にも耐用年数があり、平均で5年~10年程度です。
シーリング材は、以下のようなプロセスで劣化していきます。
- クラック(ひび割れ)
- 剥離(外壁とシーリング材の間に隙間が生じる)
- 破断(シーリング材が切れる)
- 欠落(シーリング材が落ちる)
5年~10年という耐用年数はもちろん、①~④の異常がみられる場合には、症状を悪化させないためにも、外壁塗装と一緒にシーリング材も打ち替えしましょう。
カバー工法などで屋根や窓枠などのリフォームを実施する際も、シーリング材の打ち替えをするチャンスです。
■季節のタイミング
外壁塗装を行なうにも、作業を行ないやすいシーズンが存在します。
日本は「春夏秋冬」の四季があり、季節によって異なる表情を見せてくれますが、業者側から言えば、気候条件や気温、湿度が異なるため、タイミングが悪ければ工事期間延長の可能性もあります。
ユーザー側がベストシーズンを知っておき、タイミングよく依頼をすることで、施工不良や工期延長のリスクも避けられる可能性が高まるのです。
1.外壁塗装のベストシーズンとは
最近では、塗料メーカーによる開発が進み、塗料自体の性能も向上していますので、内装工事と同様に、外壁工事も一年中行うことができます。
仮に、梅雨の時期に外壁塗装を実施したとしても、雨の日は工事が実施できないため多少の工期延長さえ覚悟できれば、梅雨の時期でも外壁塗装は可能です。
●ベストシーズンは春と秋
しかし、天気や塗料の乾燥スピード、気温による作業のしやすさなどを考慮に入れた上で、季節ごとに外壁塗装のシーズンを考えてみると、春と秋が外壁塗装向けのシーズンです。
中でも、春は天候が最も安定しており、湿気も少ないため、優良業者でなくても塗装の失敗や工事の延長のリスクは高くありません。
とはいえ、ベストシーズンゆえ繁忙期となり、工事費用も高くなることを覚悟しましょう。
秋も悪くはありませんが、一部地域では台風が接近する可能性があるため、ベストシーズンとはなりません。
●夏と冬は作業する人も依頼主も大変
一方、夏と冬については、作業をする施工会社の人の労働環境が過酷です。
夏は確かに塗料の乾燥スピードが早いのですが、夏の炎天下で屋根に上っての作業は灼熱地獄です。
冬は塗料の乾燥スピードが遅くなりますし、地域によっては極寒の作業となりますので、これもまた過酷です。
夏と冬は、作業スタッフだけではなく依頼主も大変です。
外壁塗装工事中は窓を閉め切る必要がありますが、換気が不十分になるため、エアコンの設置していない部屋は室内の気温が高くなってしまいます。
冬は窓を閉め切っていても特に支障がありませんが、年末までに外壁塗装工事を行ないたい人が多く、希望の日程で作業してもらえない可能性があります。
2.季節が原因で外壁塗装が行いにくくなる地域がある
溶剤塗料メーカーによる塗料自体の進歩によって、季節が外壁塗装に及ぼす影響はかつてほど大きくはありません。
しかし、地域によっては外壁塗装が不可能なほどに深刻な影響を与える場合があるのです。
●冬に積雪しやすい地域
まずは、北海道や北陸(新潟、福井など)、東北地方の日本海側(山形、秋田など)エリアは、冬の積雪地域のため、外壁塗装が容易ではありません。
積雪によって足場が設置できない、設置できたとしても足場の凍結で転倒するなど、作業上のリスクも高まります。
また、積雪による工事中断、塗料の硬化不良など、工期延長の原因にもなりやすいです。
●台風が接近しやすい地域
雪だけでなく、台風が接近しやすい季節、地域でも、外壁塗装は行いにくいです。
日本の台風には夏台風と秋台風とがあり、夏台風は主に九州(沖縄、鹿児島など)、中国地方(岡山、広島など)、四国(愛媛、高知など)に接近します。
台風自体の速度が遅いため、長期間にわたって雨風共に強まります。
秋は外壁塗装には都合のよい季節と説明しましたが、秋台風が訪れるエリアはそうともいえません。
秋台風は関西(兵庫、大阪、奈良、京都など)、東海(愛知、岐阜、静岡など)、関東(埼玉、神奈川、東京、千葉)に接近して、秋雨前線を刺激するため、大雨や長雨のリスクが高まります。
■おわりに
外壁の塗替えタイミングは、塗料の耐用年数、塗り直ししやすい季節の2つのタイミングが基本ですが、ひび割れ、粉ふき、サビ、汚れ、カビなどのサインも見逃さないでください
塗料の耐用年数はグレードによって異なりますので、以前にどの塗料を使ったかを確認しておきましょう。
季節については、ベストシーズンが「春」、次いで「秋」ですが、塗料の進歩によって一年中工事は可能です。
ただし、工事ができないほどの天候条件となる場合は、外壁塗装に向きません。
タイミングが分かれば、施工管理を行なう施工業者選びも、逆算して丁寧に行うことができ、より良い工事内容となるでしょう。