現在、木造住宅に住んでいるという人も多いのではないでしょうか。

近年、鉄筋コンクリートなどが主流になってきた住宅の構造も、少し前までは木造住宅が多いものでした。

そのため、現在でも国内で木造住宅に住む人の数は多くなっています。

 

しかし鉄筋コンクリートなどに比べて耐久年数が短い木造住宅は、修繕を加えずに放置してしまうと、すぐに耐久性に支障を来してしまう危険性もあります。

 

木造住宅の塗装を行う目的には見た目の劣化の補修などがありますが、もともと耐久年数が短いとされる木造住宅を長持ちさせる効果があるのです。

 

ここでは木造住宅を長持ちさせるためにも、外壁の塗装などを行う場合に注意すべき点や、木造住宅独自の特徴などについて詳しく説明していきます。

■木造住宅は外壁を長持ちさせることが大切

木造住宅の耐用年数は、鉄骨住宅や鉄筋コンクリート住宅などと比べて一般的に耐用年数が短いと言われています。

 

しかし木造の住宅であっても、築100年以上の建物は現在でも多く存在していますよね。

たとえ木造住宅であっても、手入れ次第では建ててから30年以上の長持ちさせることは十分に可能なのです。

 

木造住宅を長持ちさせるためには、外壁を塗装などでこまめにメンテナンスし、できるだけきれいに保つことが重要になります。

1.木造住宅は外壁次第で長持ちする

木造住宅は、一般的に他の構造の建物よりも耐用年数が短いとされています。

しかし絶対に「木造住宅=長期間持たない」というわけではありません。

その証拠に、手入れが行き届いた木造の社寺などは、数百年におよび残り続けている例も少なくありません。

 

また社寺だけではなく、一般住宅である古民家などでも築100年を越えるものは現在も残っています。

特別な材を利用していないような一般住宅の木造建築であっても、適切なメンテナンスが定期的に行われれば、耐久年数を超えて長持ちさせることは十分に可能なのです。

 

逆にいってしまうとメンテナンスさえしっかり行なっていれば、鉄筋コンクリートや鉄骨の建物よりも長持ちする可能性はあるといえるでしょう。

2.建物の耐用年数の目安

一般的にいわれている木造建築の耐用年数は、他の建築に比べてどれくらいの期間の違いがあるのでしょうか。

 

建物の耐用年数は、たとえ同じ構造材であっても立地状況やメンテナンスの状況によって大きく変化します。

そのため「絶対にこの年数を越えると耐久年数がゼロになり利用不可能になる」という年数は存在しません。

●耐久年数の目安となる法定耐用年数

ただし、いわゆる建物そのものの寿命ではなく、おおよその目安として使われている税務処理上の法定耐用年数というものは存在します。

今回はこの法定耐用年数を参考にしていきましょう。

 

法定耐用年数とは、建物などの固定資産を税務上の減価償却を行うために減価償却費の計算のベースとなる年数のことをいい、財務省によって定められています。

つまり法定耐用年数が短いということは、法定耐用年数が長い資産に比べて資産価値の減りが一般的に早くなるということです。

法定用年数はあくまでも税務処理場の耐用年数ではありますが、一般的にどれくらいの耐用期間があるのかを知る大まかな目安にはなります。

 

では実際に法定耐用年数がどれくらいに設定されているのかを、構造別に見ていきましょう。

  • 木造住宅…22年
  • 鉄骨住宅…19〜34年
  • 鉄筋コンクリート住宅…47年

参考:https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php

 

このように他の構造の住宅に比べて木造住宅は法定耐用年数が短めに定められており、鉄筋コンクリート住宅と比較すると2分の1以下の年数となっています。

 

メンテナンスを行わない純粋な耐久年数だけを考えるのであれば、木造住宅は他の構造材を用いた住宅に比べて耐久年数がかなり短いといえるでしょう。

木造住宅の耐久年数が短くなると考えられる原因には、外から受ける雨風などへの耐久性の低さが考えられます。

■構造材が木材でできているため水分は天敵

木造住宅の法定耐用年数が短くなってしまう理由の1つに、木造住宅は水分に弱いという点があげられます。

木造住宅は名前の通り木材で骨組みを作っている建物なので、水分が構造材に浸水し続ければ、構造材が腐食し、建物の耐久性を大きく低下させる可能性があるのです。

 

一方の鉄骨住宅や鉄筋コンクリート住宅の場合、素材の特性からして木造住宅よりも水分に強くなっています。

木造住宅の構造材が水分によって腐食してしまうのを防ぐためには、構造材をできるだけ水分に触れさせないことが大切です。

 

 

もしも外壁にひび割れなど何かしらの水分の侵入口があれば、構造材が水分に触れてしまう可能性が高くなります。

このように構造材まで水分が侵入してこないようにするためには、外壁をしっかり塗装して水分の侵入を防ぐ必要があるのです。

1.水分は木材を劣化させる

上でも説明した通り、水分は材木を腐食させ劣化の原因となります。

住宅の外壁は雨風をダイレクトに受ける部分であり、外壁材や屋根材の隙間あるいは表面から雨水が外壁材の内部に侵入してくる可能性があるのです。

 

構造材が材木でできている木造住宅の場合、雨水が内部に浸水してくると外壁材の内部が徐々に侵食され、やがて構造材である材木部分にまで水分が達する危険性があります。

 

また、雨水だけではなく湿気によって内部の構造材が水分を含んでしまうこともあるのです。

このように季節や天気などの影響により、普段は目に見えないような内部の構造材も浸水してしまう危険性が大いにあります。

●材木の劣化を防ぐ「通気工法」という技術

しかしこのような問題を解決するために、近年建てられた住宅の場合、外壁材と構造材の間に排水するための隙間を設ける「通気工法」という方法が採用されています。

 

通気工法という方法は、外壁と構造材である柱の間に一定の隙間を作り壁内に生じた水分を外に逃しやすくする方法です。

この方法により、ダイレクトに外壁下地に水分が届く恐れがなく、湿気が溜まることもないため、構造材が水分によって腐食するリスクを減らすことができます。

 

しかし古い外壁の場合には、通気工法が施されていない可能性もあります。

そのため現代の住宅に比べて湿気が内部にこもりやすかったり、メンテナンスをしばらくしていないなら既に水分が内部に入って耐久性を低くしている危険性もあるのです。

 

このような木造建築の場合には浸水のリスクが高いため、塗装だけではなく通気工法を利用する外壁のリフォームも一緒に検討する必要があります。

費用は塗装のみの場合に比べて高くなってしまい工期も長くなる可能性がありますが、今後の住宅の耐久年数のことを考えると、通気工法を施しておいた方が住宅自体が長持ちするのです。

2.外壁と屋根の役割は雨水を浸水させないこと

住宅の内部を雨水や湿気で浸水させないためには、外壁と屋根が重要な役割を果たします。

水分が構造材である材木に侵食してくることで、腐食を起こし内部から建物の耐久性を失ってしまう可能性があるのです。

このような自体を防ぐために必要なことは、水分を建物の内部である材木部分に浸水

させないということです。

 

水分を浸水させないために第一に考えなければならないのは、外壁を保護することであり外壁表面の防水性・撥水性を常に維持しておくことが大切です。

さらに外壁の表面の仕上げ方によっても、水分を浸水させないための外壁の保護法は異なります。

 

たとえばサイディングと呼ばれる板状の壁材を貼り合わせて作られた壁の場合には、サイディング間の目地を劣化させないための定期的なコーキング補修が必要です。

 

またモルタルやコンクリートなどの壁であれば、経年劣化などと共に起こりやすいひび割れなどを樹脂などを用いて埋めることにより、適切に補修していく必要があります。

 

さらに外壁だけではなく、屋根に関しても屋根本体の経年劣化による雨漏りが発生したり、屋根と外壁の取り合い部分(接合部分)から水が侵入したりする可能性があります。

 

屋根も外壁同様に、雨水を内部に侵入させないよう定期的な点検や塗り直しなどのメンテナンスが必要です。

■付帯部に木材が使われていることが多い

通常外壁部分のメンテナンスを行う場合、外壁のみではなく雨樋や破風板、軒天といった、外壁や屋根に付属している付帯部分への施工も必要になります。

 

このような付帯部分の素材は鋼板やトタンが使われていたりしますが、木造住宅の場合には付帯部の部材にも材木が使われていることが多くなっています。

付帯部の部材が材木の場合には、材木に適した付帯部塗装を行う必要があるのです。

1.   住宅の付帯部とは

住宅の付帯部分とは、外壁や屋根以外の部分のことを言います。

住宅の付帯部分には多くの種類がありますが、おもな住宅の付帯部分には以下のようなものがあります。

  • 雨樋…屋根を流れる雨水を地上に排水するための装置
  • 軒天…屋根の真下部分にある壁
  • 破風板…屋根に山形に取り付けられた板で雨風の吹込みを防止するもの
  • 鼻隠し…軒先に取り付けられる横板で垂木の先端部を隠すために取り付けるもの
  • 笠木…塀や腰壁などの上部に取り付けられる仕上げ材のこと
  • 雨戸…雨風を防ぐためにガラス窓の開口部外側に取り付けられる板戸のこと
  • シャッター…強い雨風や火災の広がりなどを防ぐ目的で取り付けられる建具のこと

 

外壁塗装を行う人にとっては、付帯部分の補修は不要と考える人もいるかもしれません。

しかし、このような付帯部分が劣化することにより、外壁との付帯部分の接続部などから雨水が侵入してきてしまう危険性もあるのです。

 

木造住宅の場合にはこのような付帯部分も木造である場合が多く、金属など他の素材と比較して耐久性が低い可能性も高くなっています。

そのため外壁や屋根以外の付帯部分に関しても、一定期間ごとのメンテナンスは必要になってくるのです。

2.   木部には木部に適した塗料を使う

木造住宅の場合には付帯部分にも材木が使用されていることが多いため、木部には木部に適した「造膜型塗料」や「浸透型塗料」などを使う必要があります。

木部には木部に適した塗料を使わなければならない理由としては、材木という素材の性質が深く関係しています。

 

材木はたとえ建材に加工されたあとでも湿気を吸収・放出して伸縮している調湿作用というものが起こっているのです。

 

たとえば湿気の多い夏と乾燥気味の冬を比較すると、同じ木でも膨張したり収縮したりすることで数センチほどの差が生じることがあります。

これはトタンや鉄筋などの他の素材ではほとんど起こり得ないようなことです。

材木は塗装した後でも素材自体が伸縮する性質があり、木の伸縮が原因で塗膜が割れてしまう可能性があります。

 

さらにシリコンやフッ素などの塗膜が固い塗料ほど、材木の動きに柔軟に変化できず割れるリスクが高くなるのです。

 

また木部自体が塗装が行いにくい素材であり、コンクリートやサイディングに比べると、塗料が劣化しやすい傾向があります。

材木に適した塗料としては、材木に浸透して内部から保護する浸透型塗料や、安価で剥がれてもダメージが少ない合成樹脂調合ペイントと呼ばれるいわゆるペンキのようなものが候補となります。

 

逆に材木に向かない塗料を無理矢理使用してしまうと、塗料が剥がれやすくなってしまいその部分が雨水などの浸水の原因になる可能性があるのです。

■おわりに

今回は木造住宅の塗装で注意することについて詳しく説明してきました。

 

木造住宅は、鉄筋コンクリートの住宅などと比較すると耐久年数が短い傾向がありますが、メンテナンス次第では他の構造住宅よりも長持ちさせることが十分に可能です。

 

また木造住宅を長持ちさせるためのポイントとしては、内部の柱などに当たる材木に水分をできるだけ含ませないことが大切です。

構造材となる材木が水分を含んでしまえば、腐食などの原因となり、住宅内部から耐久性が失われてしまう可能性があるためです。

水分をできるだけ内部に浸水させないためにも、外壁をしっかりと塗装し内部を雨水や湿気から守る必要があります。

 

木造住宅を少しでも長持ちさせるためにも、定期的に外壁や屋根の点検を行い、メンテナンスすることを心がけましょう。