外壁塗装における適正な予算を立て、業者の見積り価格の妥当性を評価するために外壁塗装の費用相場を知り、またその計算方法をあらかじめ理解しておく事には大きなメリットがあります。
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■外壁塗装費用は施工単価から予測できる
複雑に思える外壁塗装工事の見積りも、各工事の施工単価、つまりそれぞれの作業が1平米あたりいくらで施工されるかを理解しておくならばおよその総工費を自分で試算することができます。
1.外壁塗装は複数の作業が組み合わさっている
複雑に思える外壁塗装の総工費も、実際はそれぞれの工事費用を別個に計算した上で合算したものにすぎません。
まずは外壁塗装にどのような作業が含まれているのか確認してみましょう。
- 塗装費用
下塗り・中塗り・上塗りと三回に分けて塗装した際の塗料の価格と施工費用を合計したものです。
どのグレードの塗料を選択するかで塗装費用が大きく増減します。
- 足場設置費用
塗装する家屋の周囲に組み立てる足場工事の費用です。
外壁の面積ではなく「足場架面積[(家屋の外周+8m)×高さ]」の計算式で算出します。
採用する足場形式がこの費用を左右します。
- 高圧洗浄費用
劣化した塗料、発生したカビなどの汚れを高圧洗浄機を使って洗い流します。
汚れがひどい場合には洗浄剤を使用してバイオ洗浄をしなければならず、施工単価が上がります。
- 下地調整費用
下地となる外壁材の欠損やシーリングを補修する作業です。
下地が金属であればケレン(サビや劣化した古い塗膜を落とす作業)とも言われます。
- 養生費用
窓や玄関などの開口部・室外機といった塗装すべきでない部分に塗料が飛散・付着しないように保護する作業です。
2. 施工単価とは作業ごとの単価
各工事の金額は「施工単価×作業面積(㎡)」で算出しますので、まずは上記の各工事にかかる施工単価を理解しておくことは重要です。
簡単に説明すると1㎡に1,000円かかる工事を100㎡の面積に対して作業すると、その工事費用は100,000円となります。
■外壁塗装における作業ごとの施工単価
それでは実際の工事でどの工程にどのような費用がかかってくるのか、各工事の施工単価を確認しておきましょう。
相場費用を頭に入れておけば、予算の計画や節約に大いに役立ちますし、施工金額から優良業者や悪徳業者を見分ける助けにもなります。
1.塗装費用の単価
メインとなる塗装工事は単純に使用する塗料代がそのまま施工単価となります。
代表的な塗料の単価はグレードごとに下記の通りです。
- アクリル塗料
1,000~1,500円/㎡
もっとも安いグレードの塗料ですが、耐用年数が短い上にウレタン塗料との価格差も過去に比べて縮まっていることからほとんど選ばれなくなっている塗料です。
- ウレタン塗料
1,800~2,200円/㎡
安価でありながら耐久性もあり、様々な素材の下地に塗装可能なため選ばれることの多い塗料です。
- シリコン塗料
2,800~3,100円/㎡
ウレタン塗料以上に耐久性に優れていて仕上がりも美しく、比較的安価であることから現在もっとも人気のある塗料です。
- フッ素塗料
4,200~4,500円/㎡
優れた耐候性・撥水性、そして長く持続する美しい光沢を特徴とする塗料です。
高額ゆえに一般住宅ではあまり使用されていませんでしたが、近年では一般住宅用の塗料を販売しているメーカーもあります。
- 遮熱・断熱塗料
4,500~5,500円/㎡
夏場の高い外気温からも室内を涼しく保ち、冬場には室内の温度を外に逃がさない高機能な塗料です。
遮音効果が期待できる塗料もあります。
- 光触媒塗料
4,200~5,000円/㎡
太陽光によって外壁表面の汚れが分解され、雨で洗い流されるセルフクリーニング機能を持つ塗料です。
遮熱効果が加えられているものもあります。
- 無機塗料
約4,500~5,500円/㎡
紫外線で劣化しない無機物を主原料とする塗料で、非常に長い耐用年数を誇ります。
汚れがつきにくいという嬉しい特徴もあります。
2.塗装以外の作業費用の単価
付帯工事とも言われる塗装以外の工事費用は下記のような施工単価で計算されます。
●足場代
- 単管足場の場合
700~800円/㎡
鋼管を組み合わせただけのシンプルな足場です。
足元が滑りやすい足場ですが隣家との間隔が狭く他の足場の設置が難しい場合などに採用されます。
- 単管ブラケット足場の場合
800~1,000円/㎡
鋼管をしっかりとボルトで緊結するために頑丈で強風などにも強い足場です。
一つ一つの部材をボルトで接続していくので時間がかかるというデメリットがあります。
- 枠組足場の場合
1,000~1,500円/㎡
溶接された建枠に筋交(すじかい)、階段、ジャッキベースのついた組み立て式の足場です。
非常に堅牢ですが重すぎて人力では運搬できないというデメリットがあります。
主に高層ビル工事などで使われます。
- くさび式足場(ビケ足場)の場合
900~1,200円/㎡
現在主流になっている足場です。
枠組足場に似ていますがくさび状のジョイントをハンマーで打ち込むだけで設置可能である事、また各部品が人力で運べる程度のサイズである事から設置も撤去も時間がかからないのが特徴です。
●高圧洗浄費用
- 高圧洗浄費用
150~200円/㎡
専用の高圧洗浄機を使用して外壁全体の汚れを落としていきます。
通常、使用する水道代は施工業者ではなく施主の負担になります。
- バイオ洗浄費用
500~1,000/㎡
カビ・コケなどで外壁がひどく汚れている場合、バイオ洗浄剤を使った高圧洗浄が選択されます。
この場合施工価格は倍以上になります。
●下地調整費用
- シーリング工事費用
打ち替え1,000/㎡
増し打ち800/㎡
サイディング材の隙間を埋めているシーリング材を補修します。
劣化が軽い場合は上からシーリング材を付け足す「増し打ち」、劣化が激しければ古いシーリングを取り除いて新たに補填する「打ち替え」になります。
- ケレン作業費用
500~2,000円/㎡
鉄部のサビや古くなった塗膜、高圧洗浄では落としきれなかった汚れを除去する作業です。
劣化具合により施工単価は大きく異なります。
- 下地補修費用
800~1,200/㎡
主にサイディング材のひび割れや欠けなどを補修します。
業者によっては全体の劣化状況を調査した上で「下地補修一式」として見積もりを出す業者もあります。
●養生費用
300円/㎡
マスカー・養生テープといった消耗品が大量に使用されるため「養生一式」として見積もりを出す業者もあります。
足場に設置する飛散防止シートも養生に含まれるために足場費用に合算されている場合もあります。
一般的に30坪程度の住宅であれば3万円程度となる事が多いようです。
■施工単価から外壁塗装費用を調べる方法
ほとんどの人が自分の家の広さを「建坪(建物が立っている土地の面積)」で把握しているかもしれません。
しかし、外壁塗装の施工面積を簡単に算出するには「延べ床面積」が必要になります。
ただし、あくまで外壁の塗装面積を算出するための「延べ床面積」ですので、2階部分の吹き抜けは面積に含め、バルコニーは含めないようにしましょう。
総二階の戸建て住宅であれば単に「建坪×2」で計算できます。
1.坪を㎡に換算する
施工単価は常にメートル基準で算出されるので、まずは坪を㎡に変換しましょう。
1坪は3.3平米なので、「坪数×3.3」で延べ床面積を算出します。
30坪の家を参考に計算すると延床面積は約99㎡となります。
2.係数を使って塗装面積を求める
上記の要領で住宅の延べ床面積を算出できたならば、そこに「係数1.1〜1.4」を乗じることで複雑な測定をせずに外壁の塗り面積を概算することができます。
もちろん、この係数を用いて算出した数字には窓や玄関部分といった塗装しない面積は含まれていません。
係数には1.1〜1.4と開きがありますが、建物が大型になればなるほど小さな係数を使った方が実測値に近くなるとされています。
もし迷うようであれば「1.2」で計算するとよいでしょう。
建坪15坪で総二階の一戸建て住宅を例に試算してみると延べ床面積は
15×2×3.3=99㎡となり、
そこに係数1.2をかけて
99×1.2=118.8
118.8㎡がその家屋のおよその塗装面積と理解できるでしょう。
ただし、この計算方法はあくまで概算用です。
建物の形状や意匠によって大きく差が生じる場合もありますので、正確な数値を出す場合は業者に現地調査を依頼するようにしましょう。
3.塗装面積に対し施工単価を乗じる
上記の各施工単価に塗装面積118.8(足場のみ足場架面積)を乗じてすべてを合算すればおよその総工費を計算する事ができます。
- 塗装工事(ウレタン塗料)
2,000×118.8=237,600円
- 足場代(くさび式足場)
1,000×247=247,000円(足場面積は外周38m×高さ6.5m)
- 高圧洗浄費用
200×118.8=23,760円
- シーリング工事費用(増し打ち)
800×118.8=95,040円
- 下地補修費用
1,000×118.8=118,800円
- 養生費用
300×118.8=35,640円
今回の試算では合計は757,840円となります。
これらはあくまで目安であり、実際の工費は様々な状況によって前後します。
具体的に例を挙げると、前回の塗装からかなりの時間が経っていて塗装だけでなく下地の劣化も激しいという場合は高圧洗浄費や下地処理に余計にお金がかかりますし、家屋の形状により足場を屋根の上に追加設置する必要がある場合には追加費用が加算される可能性もあります。
■おわりに
外壁塗装の見積りの計算は複雑そうに見えるかもしれませんが、紐解いてみれば基本的な相場単価と足し算・掛け算で簡単に試算してみる事ができます。
この情報をもとに実際に計算してみるならば適正な価格で外壁塗装リフォームを成功させる助けになるでしょう。