外壁塗装工事は費用が分かりにくいといわれます。
そして、そうした分かりにくさにつけこむ悪徳業者や手抜き業者が多くいるのも事実です。
ただ、塗装工事は費用が分かりにくいというよりは、そう何度も経験するものではないためになかなか知る機会に恵まれないというのが本当でしょう。
そこで、業者選びに失敗しないためにも外壁塗装の費用について少し勉強してみるというのはいかがでしょうか?
このページの目次
■外壁塗装にはどのくらいお金がかかるのか
もうそろそろ外壁塗装をしたほうがいいかなと考えてはいても、その外壁塗装にどのくらいの費用がかかるかを把握している人はどのくらいいるでしょう?
外壁塗装工事は生涯に何度も行うものではないこともあり、提示された価格が適正価格であるかすぐに判断できるほど豊富な知識を持っている人はまれでしょう。
外壁塗装工事は工事をする家によって補修の程度や使用する塗料などもそれぞれ全く異なるため定価が存在しません。
しかし「相場費用」は存在しますので、そこから度自分の家の外壁塗装にかかる費用をある程度予測することはできます。
1.家によってかかる費用は異なる
家によって、
- 立地条件
- 外壁や屋根の劣化状態
- 外装材の種類
- 建物の大きさや付帯部(雨戸や雨樋、フェンスなど)の造り
は異なります。
また、外壁や屋根の劣化の程度が異なれば補修する費用も当然違ってきますし、外壁を塗装する塗料の種類によっても外壁塗装にかかる費用は大きく異なります。
このように、外壁塗装をはじめとするリフォームは工事をする家によってどこをどのように補修して、どのような塗料を使用するかもまさにケースバイケースですから定額というものが存在しないのですね。
しかし、このことが多くの人に外壁塗装などのリフォーム踏みとどまらせる大きな原因になっています。
2.相場費用がわかれば予算を立てられる
確かに外壁塗装には定価が存在しませんが、相場費用が存在しますからそれを参考にすれば自分の家の外壁塗装にかかる費用をある程度予測できます。
相場とは実際に行われた外壁塗装工事の平均価格です。
相場価格を知ることで悪徳業者の高額な請求にもだまされにくくなりますし、格安工事の怪しさにも気づいて手抜き工事を防ぐことができますから、外壁塗装工事を考えている人はぜひ相場価格について知っておくべきです。
また、外壁塗装業者に見積もりを依頼するときは、いくつかの業者から見積額を出してもらいましょう。
いくつもの見積もりに目を通すことである程度の相場も見えてきますので、必ず複数の工事業者に見積依頼をしてその金額を比較することをおすすめします。
優良業者ほど詳細な見積書を作ってくれますので、今回この記事で紹介する相場費用と比較をしてみてください。
■外壁塗装の単価相場を知っておこう
外壁塗に装はいくつかの工程がありますが、それぞれの工程ごとに単価相場が存在します。
ですから、業者の見積もりを見るときは工事項目ごとに相場を調べておき、その金額を業者の見積もり価格と比較しなければなりません。
悪質な業者は工事項目がまったくわからない「一式」や「その他」を多用した見積もりを作ったり、「足場0円」といっておきながら0円にした分の金額を他の項目に上乗せしたりすることがあります。
外壁塗装工事に関する知識を持ち合わせていないとそうした見積もりがおかしいということにさえ気づくことができません。
そのような手口を見抜くためにも単価相場を知っておくことは有用です。
例えば、車を買うときに「オプション一式含めて〇〇円」といわれたら、車体価格とオプション一つ一つの値段を確認し、相場よりも安くこれはお買い得だと納得しなければ購入しませんよね。
家の外壁塗装工事でも同じです。
「塗装一式」では工程の詳細が全く分かりませんし、どの工程にどのくらいの費用が掛かるかもまるで見えてきません。
必要な工事はきちんと含まれているのか、逆に不要な工事を加えられていないか確認できなければ工事に大金を払えないですよね?
なかには足場代を「0円」にする業者がいるといいましたが、外壁塗装工事において足場設置は非常に重要な工程ですから、この費用が0円になること自体がありえません。
足場は職人の安全を確保し作業効率を上げるためには絶対に欠かすことはできませんし、しっかりとした足場が設置されているかどうかはダイレクトに外壁塗装工事の品質に影響するからです。
工程ごとの単価相場を知っていればそうしたウソにだまされることもありません。
1.単価相場とは
単価相場とは1㎡分の作業費用のことで、外壁塗装で発生する工事工程に対し作業面積をかけ合わせ、各々の価格を合計すれば外壁塗装の総費用になります。
単価相場は、一見金額に大きな違いがないように思えても、家全体の作業分で考えると大きな違いが出てきますので注意してください。
例えば、シーリング工事費用が1,000円の業者と1,500円の業者がいた場合、100㎡分を作業したときの価格差は5万円にもなります。
たった一つの工程でもこれだけの違いが出るのですから、「これくらいの単価の違いはたいしたことない」などと考えないようにしましょう。
2.工事項目ごとの単価相場
外壁塗装で発生する工事項目ごとの単価相場を紹介していきます。
●足場
建物の周りに足場を組み高所作業を安定させるとともに、足場の周りに飛散防止ネットを張って建物周りに汚れや塗料が飛散しないよう保護する役割があります。
足場の種類 | 単価相場 |
単管足場 | 700円~800円/㎡ |
枠組み足場 | 1,000円~1,500円/㎡ |
くさび式足場(現在主流の足場) | 900円~1,200円/㎡ |
それぞれの足場の特徴をカンタンに説明します。
- 単管足場…パイプを組み合わせて作る足場。 狭い場所にも設置可能であるが職人の安全性が確保されにくい
- 枠組み足場…高い建物にも対応でき、作業床の幅も広く安全性が高いが、場所を取るため狭い敷地には向かない。
- くさび式足場…外壁塗装工事で一番使われている足場。安全性が高く作業がしやすい上工事期間も短いが、組立時のハンマー音がうるさい。
●高圧洗浄
外壁表面の汚れを取り除き、塗料が密着しやすいようにする目的で行います。
通常は水道水を使いますがコケやカビが大量に繁殖している場合は薬剤を使ったバイオ洗浄が行われます。
洗浄方法 | 単価相場 |
水洗浄 | 150円~200円/㎡ |
バイオ洗浄 | 500円/㎡ |
●下地処理
高圧洗浄後、外壁・屋根のひび割れや傷、割れ、目地シーリングなどを補修しておく作業です。
下地処理の種類 | 単価相場 |
シーリング打ち替え | 1,000円/㎡ |
シーリング増し打ち | 800円/㎡ |
ひび割れ補修
シール工法 |
700円~1,000円/㎡ |
ひび割れ補修
Vカット工法 |
2,000円~5,500円/㎡ |
ケレン作業 | 500円~2,000円/㎡ |
- シーリング打ち替え…劣化したシーリングを全て除去し、新しいシーリングを詰め直す作業です。
- シーリング打ち増し…残せるシーリングは残して上から新しいシーリングを追加する作業です。
- シール工法…ひび割れた部分(クラック)にシール材を充填する作業。再発の恐れのない小さなクラックの補修に使われます。
- Vカット工法…シール工法では対応できない深いひび割れの補修工法。工具でひび割れ部分を削りとりシール材を充填します。
- ケレン作業…鉄部のサビを落とす作業。サビが進行しているほど高額になります。
●養生
窓や玄関ドア、エアコンの室外機など塗装しない箇所に塗料が付着しないようにビニールシートで保護する作業です。
単価相場…300円/㎡、一棟あたり…3~5万円程度
3.塗料の単価相場
外壁塗装のメインとなる塗装作業は使用する塗料のグレードによって価格に違いが出てきます。
同じ種類の塗料でも塗料メーカーによって特徴は少しずつ異なりますし、選んだ塗料次第で完成後の耐久性も大きく異なりますので、安さだけで選ばずしっかりと目的に合った塗料を選びましょう。
塗料の種類 | 耐用年数 | 単価相場 |
アクリル系塗料 | 5年~8年 | 1,500円~1,800円/㎡ |
ウレタン系塗料 | 8年~10年 | 1,800円~2,200円/㎡ |
シリコン系塗料 | 10年~15年 | 2,800円~3,100円/㎡ |
ラジカル塗料 | 14年~16年 | 3,200円~4,000円/㎡ |
フッ素系塗料 | 15年~20年 | 4,200円~4,500円/㎡ |
塗料のグレードは現在5段階あります。
●アクリル塗料
価格は安いというメリットがありますが、紫外線に弱く耐久性に乏しい点が難点です。
現在はほとんど使用されていません。
●ウレタン塗料
アクリル塗料と比べて密着性に優れており、扱いやすいのが特徴です。
弾性があるので、ひび割れしやすい建物に適していて、比較的安価であることがメリットです。
●シリコン塗料
現在主流の塗料で耐用年数が長く非常に人気があります。
耐久性や耐候性とコストとのバランスが非常に良い点が大きなメリットです。
●ラジカル塗料
劣化現象であるチョーキングを起こしにくいという大きな特徴があります。
高性能でコストパフォーマンスに非常に優れているため、急速に使用実績が増えています。
●フッ素塗料
耐用年数が非常に長いという特徴を持つ塗料です。
光沢感があり仕上がりも良いのですが価格が高いのが難点。
商業施設や大型ビルでよく使用されていますが、近年では一般住宅の外壁用としても使用されています。
以下は特殊な機能を持つ機能性塗料の単価相場です。
塗料の種類 | 耐用年数 | 単価 |
断熱・遮熱塗料 | 13年~18年 | 3,800円~4,200円/㎡ |
光触媒塗料 | 18年~20年 | 4,200円~5,000円/㎡ |
無機塗料 | 18年~23年 | 4,500円~5,500円/㎡ |
●断熱・遮熱塗料
どちらも熱を伝わりにくくして熱の発生を抑える塗料であるという点は共通していますが、根本的なしくみは異なります。
- 断熱塗料…熱の伝導を抑える機能を持った塗料。
太陽熱の伝導を抑えるため夏は室内の温度を下げ、冬は室内の熱を外へ逃がさないため夏涼しく冬は暖か
1年中快適な空間にしたいのなら遮熱塗料より断熱塗料がおすすめ
- 遮熱塗料…熱を反射する機能を持った塗料。
太陽熱を反射し室内の温度を下げる働きがある。 夏を快適に過ごせるため暑い地方の住宅におすすめ
●光触媒塗料
太陽光で汚れを分解し、その汚れを雨で洗い流すセルフクリーニング機能を持つ塗料です。
カビやコケの繁殖を防ぐ働きにも優れています。
●無機塗料
セラミック成分など無機物を含む塗料で、紫外線を浴びても劣化せず非常に高い耐久性があります。
変色しにくく防汚性にも優れていますが、価格が高いのがデメリットです。
塗装工事にかかる費用は決して小さな額ではありませんから、できるだけ価格の低い塗料を使用して塗料代を抑えたいと希望する人は結構います。
価格の安い塗料を使用すれば塗装工事代金は安く抑えられますが、耐用年数が短いので塗装工事を何度も行わなければなりません。
塗装工事を何度も行えば、その都度足場代や補修工事も必要になりますから、結局は高くつくことになるでしょう。
グレードの高い塗料は確かに価格も高いのですが、その分耐用年数も長いですから塗装工事を頻繁に行わずに済みます。
長期的に見ればそうした塗料を選ぶほうが外壁塗装にかかる費用を節約できるといえるでしょう。
■建物の大きさ別・外壁塗装の費用相場
以下は施工する建物の大きさ別の外壁塗装費用の例です。
もしこの価格の半額、または倍以上の金額を請求されるような場合にはその施工業者は避けた方がよいでしょう。
建物の坪数 | 塗装工事価格 |
10坪 | 45万円~60万円 |
20坪 | 60万円~75万円 |
30坪 | 75万円~85万円 |
40坪 | 80万円~95万円 |
50坪 | 90万円~110万円 |
※外壁塗装のみ(屋根塗装は含まない)・足場設置費用など諸費用含む価格です
同じ建坪でも住宅の形状によって塗装面積が変わりますので
- 外壁の劣化の程度によって必要な補修工事が増えれば外壁塗装の価格は異なる
- 住宅の立地条件によっては足場が組みにくい場合もあり、そうなると足場代も異なる
という点に注意してください。
また、屋根塗装もセットで行うのであればこの価格に15~30万円程度プラスした金額となります。
屋根塗装を追加しても外壁塗装だけの場合と大きく金額が変わらないのは、一度の足場設置で外壁と屋根の両方の作業を行うことができるからです。
外壁の塗装をする場合でも屋根の塗装をする場合でも、足場の設置や養生シートの設置は必要ですから、その分の費用を節約できます。
通常、一度の塗装工事を行うと足場代は最低でも10万円程度はかかります。
たとえば、足場代が10万円かかるとすれば、外壁と屋根の塗装を別々に行えば足場工事もその都度行わなければなりませんから20万円が必要ですが、外壁と屋根の塗装を同時に行えば足場設置は一度だけで済み足場代も10万円で済みます。
また、塗装工事中は窓の開閉やエアコンの使用など気を遣うことも多いですから、外壁と屋根の塗装を同時に行えばそうした面倒が少なく済むというメリットも見過ごせませんね。
■おわりに
相場費用や単価相場を知れば、見積もり価格が適正か、手抜き工事が行われようとしていないかを判断できますから、悪徳業者にだまされる可能性はうんと低くなるでしょう。
また、塗料の価格の違いやその性質を知れば目的に合った外壁塗装をしやすくなります。
そう何度も訪れない大切な我が家の大切な工事ですから、ぜひ知識を増やしてよい工事をしてください。