「外壁塗装はお金もかかるしやめようかな」と思っている人もいるでしょうが、外壁塗装は外観を美しくするためだけでなく、住まいを守るためでもあります。
この記事では、外壁塗装の役割、外壁塗装を怠った場合の劣化症状を解説するとともに、劣化を発券する具体的なポイントも紹介しましょう。
このページの目次
■塗装リフォームが建物を守る
外壁塗装の目的は、外観を美しくするだけではありません。
住宅外壁の最も表面分を守る、いわば「鎧」の役目も果たしています。
塗装がなくなってしまうと、屋根材や外壁材に直接ダメージが及び、建物の経年劣化を速めてしまうため、塗装リフォームは非常に重要です。
1.塗装が防ぐ外壁の劣化症状
塗料の耐久性によって、外壁に生じる以下のような劣化症状を防いでくれます。
●雨水
塗料の塗膜によって、屋根材や外壁材に直接雨水が当たらないよう、保護してくれます。
さらに、塗装リフォームでは塗料を塗るだけでなく、サイディング板の目地に詰めるシーリング材(コーキング材)、ひび割れの補修も行なわれます。
そのため、塗装リフォームを行なえば、家全体を雨水から守ってくれるメリットもあるのです。
●紫外線
塗装には「耐候性」という性能もあります。
耐候性とは、雨水や紫外線、温度変化など屋外で起きるダメージに耐える力のことです。
断熱性に優れた熱断熱塗料などを塗れば、外壁や屋根に紫外線が当たらなくなり、外壁材の色あせや傷みが防がれます。
また、温度変化も緩やかにしてくれますので、家の中の環境も快適になります。
●汚れ
塗料には、汚れが付くのを防ぐ「防汚性」の特徴もあります。
親水性のある機能性塗料を塗れば、雨水によって汚れを浮かして洗い流すことも可能です。
親水性とは、雨に濡れやすい性質のことで、親水性が高いほど、塗膜と汚れの間に雨水が入り込みやすくなり、汚れを洗い流しやすくなります。
また、光触媒塗料という機能性塗料を使えば、太陽の力で汚れを分解して浮かせた上で、雨水で汚れを洗い流せます。
2.塗装は経年劣化する
耐候性や防汚性などの機能に優れ、耐久性に優れた塗料選びをしても、雨水や紫外線、熱や汚れなどで徐々に劣化します。
塗料別の耐久年数と価格帯は、以下の通りです。
塗料の種類 | 耐久年数 | 費用相場(平米単価) |
アクリル塗料
(アクリル樹脂系塗料) |
5~7年 | 1,400円~1,600円 |
ウレタン塗料
(ウレタン樹脂系塗料) |
8~10年 | 1,700円~2,200円 |
シリコン塗料
(シリコン樹脂系塗料) |
10~15年 | 2,300円~3,000円 |
ラジカル塗料 | 12~15年 | 2,500円~3,000円 |
フッ素塗料
(フッ素樹脂系塗料) |
15~20年 | 3,800円~4,800円 |
無機塗料
(セラミック系塗料) |
20~25年 | 4,500円~5,500円 |
耐久性や意匠性に優れた無機塗料でさえ20年、人気の水性塗料であるシリコン塗料に至っては、10年で寿命が訪れます。
基本としては、塗料の耐久性が失われる前に、新たに塗料の塗り直しをする必要があります。
●塗料が劣化すると外装材・構造材も劣化する
塗料の経年劣化を放置しておくと、次に劣化するのは外装材です。
サイディング材も、素材によって「窯業樹脂系サイディング材」「金属系サイディング材」があります。
後者の方が期待耐用年数は高いものの、鉄部のサビなどは避けられません。
また、サイディング材や窓サッシ周囲に詰められているシーリング材の劣化や雨漏りは、塗装リフォームしなければ見つけるのは困難です。
そのため、外装材が劣化すると、今度は建物の構造材にもダメージが及び、建物自体の耐久性も低下してしまいます。
■塗装リフォームを怠るとどうなる?
塗装リフォームには、施工工事に伴うコストがかかるため、塗装リフォームを避ける人もいるでしょう。
しかし、塗装リフォームをしないと、塗装リフォームのコスト以上のデメリットが発生する可能性があるのです。
1.塗装の経年劣化で起きる症状
中塗り・上塗り塗装に建物の耐久年数を長くする効果があることは説明しましたが、塗装リフォームを怠って塗装が劣化すると、建物に以下のような症状が発生する可能性があります。
●雨漏り
塗装だけで雨漏りが防げるわけではありませんが、塗装リフォームを行なう前に実施する雨漏り点検が、塗装と同じくらい重要です。
雨漏り点検を行なわずに雨漏りを放置しておく、または雨漏り点検や補修が手抜き工事だと、以下のような症状が発生する可能性があります。
- 室内のシミ
- 壁・天井・構造材のカビ
- 雨水や湿気による断熱材など構造材の腐食
- シロアリなど湿気を好む害虫の誘引
- 建物そのものの耐久性低下
雨漏りの兆候は、サイディング材の目地、外壁材のひび割れ、屋根下地の腐食などが原因で起こります。
そのため、塗装リフォーム前の調査では、雨漏りの兆候を見つけ出して補修しておかなければなりません。
●外装材の傷み
塗装には外装材を保護する効果がありますが、塗装の耐久年数が経過して効果が低減すると、外装材を十分に保護できません。
塗料が劣化すると、特に防水性が著しく低下するため、湿気を好むカビやコケが外装材表面に繁殖しやすくなります。
そのような状態が続けば、建物の耐久性はさらに低下してしまいます。
●建物の色あせ
そして、塗装の劣化は見た目も悪くしてしまいます。
外壁に塗った塗料が紫外線に当たり続けると、外壁表面に白い粉が現れる状態となります。
これを「チョーキング現象」と呼び、白い粉の正体は塗料に含まれる顔料が粉となって表面に現れたものです。
チョーキング現象が発生している外壁は顔料がなくなっていくので、外観が色あせた状態となります。
2.大掛かりなリフォームが必要になってしまう
塗装を怠って塗料が色あせるくらいならば再塗装で何とかなりますが、外装材や構造材にまでダメージが及ぶと、再塗装だけではもはや解決できません。
そうなると、外装材そのものを張り替える必要が出てきます。
施工業者(ハウスメーカー、工務店など)によって異なりますが、外装材の張替は、外壁塗装と比べて費用相場が高額です。
外壁塗装が、戸建住宅一棟当たり90万円~110万円程度(屋根足場代も含む)なのに対して、外装材の張り替えリフォーム工事(カバー工法)では、180万円~240万円にも及びます。
しかも、本来、外壁塗装業者選びの候補となるべき塗装専門業者では、外装材の張り替えリフォーム工事が難しいため、候補から外れます。
さらに、外装材の張り替えの際に下地に腐食がみられると、シーリング工事などの下地補修工事の作業工程も追加されるため、費用はさらにかさみます。
高額なリフォーム費用を発生させないためには、比較的安く済む塗装リフォームで外装材を守ることが重要なのです。
■塗装リフォームは10年に1度が目安
高額なメンテナンス費用を避け、住まいを末永く長持ちさせるには、10年に1度のメンテナンス周期で、塗料の塗り替えをすることをおすすめします。
1.塗装リフォームで初期症状を補修する
外装材の重ね張り(カバー工法)や建て替えは、塗料の塗り直しと比較して倍以上の価格相場になってしまいます。
そのため、塗装リフォームの際に初期症状の段階で発見して補修するのがいいでしょう。
劣化の初期症状を発見する最も有効な方法は、塗装リフォーム前に工事業者が実施する現地調査です。
優良業者の担当者に無料見積もりを依頼すれば、30分~1時間程度の時間をかけて建物全体を目視で調査してくれます。
わずかな劣化でも早めに補修をしておくと、家の寿命を長くすることにつながります。
一方の訪問販売業者や悪徳業者は、「お客様限定の価格です」などと言って契約をとることを重視しているため、現地調査にはほとんど時間を掛けません。
見積もり内容も事前に作成したもので、いい加減です。
2.劣化のサインが見つかったらリフォームを
劣化のサインを発見するベストな方法は、施工会社による現地調査を受けることですが、現地調査を依頼しなくても、自分で劣化のサインを見つけることができます。
●チョーキング
外壁の劣化を知る最も簡単な方法は、外壁のチョーキング現象です。
普通のチョーキング現象は、塗料の顔料が粉になって表面に現れる程度ですが、重症になると、外壁がまだら模様になっていることがあります。
チョーキング現象が発生している外壁は、塗装の効果がほとんどなくなっているため、早めに塗装リフォームを計画する必要があります。
ちなみに、無色のクリヤー塗料には顔料が含まれておらず、チョーキング現象が発生しないため、チョーキングから塗装の劣化を知ることはできません。
●塗膜の剥がれ
次は、塗膜の剥がれです。
塗膜が外壁に対して密着力を失うと、塗膜が布のように剥がれます。
経年劣化で起こることもありますが、目安よりかなり短い3年~5年程度で塗膜が剥がれる場合は、格安業者や手抜き業者による施工ミスの可能性があります。
どちらか分からない場合は、現地調査を受けてしっかり判断してもらうのがいいでしょう。
●ひび割れ
そして、外壁のひび割れも劣化のサインです。
地震や建物の歪みによって塗膜表面にひびが入ることがありますが、ひびが深いとそこから雨水が入り込みます。
塗膜表面だけのひびなのか、モルタルなど外壁材そのもののひびなのか、素人では分からない場合もあります。
その際も、専門知識や施工実績の豊富な専門家に現地調査を依頼して、状況を把握してもらってください。
■おわりに
外壁塗装は、雨水・紫外線・汚れから外壁を守る効果があります。
しかし、塗装の経年劣化は避けられず、再塗装を怠っていると、雨漏りや外装材・構造材の傷み、建物の色あせにつながります。
自分でも劣化のサインは見つけられますが、10年に1度を目安に、施工事例豊富な施工業者に現地調査をしてもらい、外壁塗装リフォームをお願いしましょう。