外壁塗装工事で使用する塗料には油性と水性があることを知っていますか?
各々どのような特徴があってどのような場面で利用するのがいいかを知っておいて損をする事はありません!
というわけで、今回は油性塗料と水性塗料の違いについて調べていきたいと思います。
このページの目次
■外壁塗装では現場に合わせて塗料タイプを使い分ける
外壁塗装用の塗料は、
- 油性・水性の違い
- 1液型・2液型の違い
- 機能性の違い
- 樹脂の違い
といった具合にさまざまなカテゴリーに分類できます。
現場や外壁の状況によってどのタイプの塗料が適しているかを考慮し、使い分けられています。
1.塗料のタイプとは
塗料はさまざまな成分で作られており、配合されている成分によって性質や使い方、機能性が異なります。
外壁の種類や劣化症状に適した塗料を選べば効果的に補修を行うことができ、塗料の耐用年数を効果的に延ばすこともできます。
塗料のタイプによる性質の違いを知ることで、外壁塗装工事にあたり業者がすすめる塗料が本当に我が家の外壁に合った塗料なのかを自分で判断できるようになりますので、ぜひ知識として理解しておきましょう。
●油性・水性の違い
今回1番にご紹介したいのがこの油性と水性の違いについてです。
塗料は大きく分けて油性塗料と水性塗料とに分けられます。
- 油性塗料…外壁への密着性が高く機能性にも優れている。外壁塗装において従来は油性塗料が主流だった。
- 水性塗料…塗料メーカー各社の努力のおかげで非常に性能が向上している。有害物質が削減されており、刺激臭もかなり抑えられている。
といった違いがあります。
油性か水性かによる性能の差はほとんど見られなくなっていますので、どちらを使用するかは塗料を使用する場所や目的によって使い分けをするのがよいでしょう。
●1液・2液の違い
油性塗料、水性塗料はさらに1液型、2液型に分けられます。
- 1液型…あらかじめ硬化剤が塗料に混ぜられており、塗料の缶をあければすぐそのまま使える。
- 2液型…主材と硬化剤が2つの缶に分かれており、作業の前に塗料に硬化剤を混ぜる必要がある。
という違いがあります。
2液型では塗装をする直前に塗料に硬化剤を混ぜますが、塗料によって配合比率が決められているのできちんと計量をしながら混ぜ合わせなければなりません。
比率を誤ってしまうと塗膜が固まらなくなったり、塗装している途中に固まってしまったりしますので職人の技量や慎重さが求められます。
また、2液型の方が密着性や耐久性に優れ長持ちもし価格も高いのですが、2液型の方が塗装をする材質を選ばないというメリットがあります。
油性塗料・水性塗料のどちらにも1液型・2液型がありますが、水性塗料の2液型は外壁塗装ではほとんど使用されなくなっていますので(室内用塗料には2液型の塗料も使用されている)、外壁用の水性塗料は実質的には1液型のみであると考えてください。
●機能性の違い
「機能性塗料」とは、通常の塗料に特別な機能を付加させたもので、近年では各メーカーから多くの機能性塗料が販売されています。
- 弾性塗料…ゴムのように伸縮して割れ目(クラック)を塞ぐ。塗装できない外壁材もあるため注意が必要。
- 光触媒塗料…光に反応して汚れを分解し建物を汚れにくくする。
- 遮熱塗料…遮熱のはたらきで屋外の熱を室内に入れにくくするので、暑さ対策になり冷房代の節約にもなる。真夏の日差しが厳しい地域で使用するのが効果的。
- 断熱塗料…断熱のはたらきで室内の温度を屋外に逃がしにくくし、外からの熱も侵入しにくくする働きがあるので、暑さだけでなく寒さ対策にも効果がある。
などは比較的よく知られているでしょう。
他にも、
- 防音性
- 防カビ・防藻性
- 結露防止
- 外壁の模様を活かしたまま塗装できる無色のクリヤータイプ
などさまざまな機能を持った塗料が存在します。
外壁の劣化症状や素材の種類によってそれに適した機能性塗料を使用することで、より快適に過ごすこともできるのですね。
2.タイプごとに主成分の樹脂がある
外壁塗料のベースとなる主成分である樹脂の違いによって塗料のグレードは異なります。
また、外壁塗料の耐久性は、ベースとなる樹脂の耐久性に準じます。
●アクリル樹脂
耐用年数 | 約5年~8年 |
施工費用相場 | 約1,500円~1,800円/㎡ |
特徴 | 価格が低い
発色がよく鮮やかで塗料の種類も豊富 紫外線に弱く耐久年数が短いため現在はほとんど使用されていない |
●ウレタン樹脂
耐用年数 | 約8年~10年 |
施工費用相場 | 約1,800円~2,200円/㎡ |
特徴 | 比較的価格が安く、弾性があり密着性に富む
アクリル塗料よりは耐久性があるがシリコン塗料と比べると耐久性に劣り、汚れやすい |
●シリコン樹脂
耐用年数 | 約10年~15年 |
施工費用相場 | 約2,800円~3,100円/㎡ |
特徴 | 紫外線に強く汚れにくく、耐候性が高いコストパフォーマンスにも優れており人気が高い
シリコンの含有率によって性能に大きな違いが出る |
●フッ素樹脂
耐用年数 | 約15年~20年 |
施工費用相場 | 約4,200円~4,500円/㎡ |
特徴 | 紫外線に強く耐久性が非常に高い
施工価格が高く、1棟100万円程になってしまうケースもある |
近年急速に普及してきている「ラジカル塗料」というグレードがあります。
この「ラジカル」とはそのような種類の合成樹脂があるわけではなく、「ラジカルを抑制する塗料」つまり、塗装の劣化の原因となるラジカルという物質を発生しにくくする、という意味で名づけられていますので、他の4種類の塗料と違って主成分が名前になっていない点に注意してください。
塗膜の劣化原因となるラジカルの発生を抑えるので耐久性に非常に優れ、防汚性・防カビ性も高いのにシリコン塗料と比べて価格が低い点がメリットです。
なお、ラジカル塗料は、
- 耐用年数…14年~16年程度
- 施工費用相場…約3,200円~4,000円 /㎡
となっています。
3.なぜタイプの異なる塗料が存在するのか
このようにタイプや値段が異なるさまざまな塗料が存在して使い分けられているのはなぜでしょうか?
●塗装する面との相性
外壁には、
- サイディングボード
- 石
- モルタル
- コンクリート
- 木材
- 金属
など実にさまざまな素材が使用されています。
それゆえに、外壁の材質によっては塗料が密着しやすいものとそうでないものがあります。
例えば想像してみてください。
プラスチックの板に水性絵の具で着色しても、水分が弾かれてしまってうまく絵の具を定着させることができませんよね。
それと同じで、金属やプラスチックといった材質は塗料を弾きやすいため、水性タイプや1液型タイプの塗料では密着できないこともあるのです。
外壁塗装の第一の目的は劣化の再発を防いで塗装で保護することですから、塗装しにくい個所や材質でもしっかりと密着できる塗料を現場の状況に応じて使い分け、しっかり保護しなければなりません。
そのため材質に適した塗料がそれぞれ開発され、結果としてタイプの異なる塗料が多く存在しているのです。
●現場の事情
また、外壁塗装の現場の事情によっては使用する塗料を選ばなくてならない場合があります。
例えば、
- 強い臭いがある油性塗料の使用を避けてほしい
- 塗装に要する時間を極力省くため1液型の塗料を使用する
- 外壁の劣化の症状に合わせた塗料を使用する
などはその代表的な例でしょう。
こうした施主の希望や現場の事情などに配慮した塗料選びは非常に重要だといえます。
施主が満足できるスケジュールと予算をしっかり把握し、品質や作業要領に合わせて適切なタイプの塗料を選び質の良い塗装を行えるのが優良業者です。
■油性塗料と水性塗料の違い
油性塗料と水性塗料どちらを選ぶかで、工事期間中の過ごしやすさや塗装の耐久性が変わってきます。
塗装工事を行う前には、どちらの塗料を選択することでどのような違いがでてくるのをしっかり理解しておくことが大切です。
1.油性塗料とは
外壁塗装の塗料は、液体で溶かしたり薄めたりしなければ使用できません。油性塗料は、シンナーなどの有機溶剤で薄めて使用するので溶剤型塗料とも呼ばれます。
●メリット
- 塗膜が強く耐久性が非常に高いので屋外塗装に向いている
- 密着力がとても強いため、塗料が密着しにくい屋外階段や手すりなど金属部分の塗装にも適している
- 1液型と2液型があり、より強力な耐久性を持つ2液型で施工可能である
- より刺激や臭いを抑えた塗料用シンナーを使用する「弱溶剤塗料」も開発されている
油性塗料のメリットは耐久性や密着性の高さです。
特に2液型を使用することで非常に強い塗膜を形成することができ、仕上がりに非常に期待が持てます。
●デメリット
- 揮発性有機化合物(VOC)を含むため使用中は強い臭いがあり、近年は使用を避ける傾向にある
- 油性塗料を取り扱うためには、現場に最低一人は「有機溶剤作業主任者」がいなければならない
- 作業にあたる場合はマスクや手袋を着用し、濃度の測定や健康診断などを実施する必要がある
- 基本的に室内の塗装には使用せず屋外部材への塗装のみとなる
油性塗料においては、人体や環境への影響が心配される点が大きなデメリットだといえます。
今後はさらにVOC削減に配慮した塗料が開発されていくでしょう。
2.水性塗料とは
油性塗料が溶剤(シンナーなど)で溶かしたり薄めたりするのに対し、水性塗料は文字通り水で薄めて使用する塗料を指します。
揮発性有機化合物(VOC)をできる限り削減していこうという背景を受け、最近では油性塗料に劣らない密着力・耐久性を持つ水性塗料の開発が進んでいます。
●メリット
- シンナーをほとんど使用しないため、作業中の刺激臭は油性塗料と比べてかなり抑えられる(ただしVOCを多少含むため、完全に無臭ではない)
- 室内の塗装にも使用可能
人体や環境への影響が少なく、2液型油性塗料と比べて価格も安いのがメリットです。
●デメリット
- かなり性能がよくなったとはいえ、やはり密着力と耐久性では2液型油性塗料に比べるとやや劣る
- 1液型のみなので密着性に乏しく、金属など塗装できない下地も多い
- 外壁や屋根には金属部材(鉄製手すり、屋根の棟板金、破風板など)が多いため、油性塗料の併用は避けられない
塗装できる下地が限定されること、また油性塗料と比べて耐久面で劣ることがデメリットとして挙げられます。
■油性と水性はどちらがおすすめなのか
油性塗料と水性塗料にはどちらにもそれぞれメリット・デメリットがあります。
また、施工現場の状況によってそれらの塗料を適切に使用できる場合と使用できない場合がありますので、どちらの塗料を使用するかは施工する業者に希望を伝え、よく相談して決定してください。
1.屋外など耐久性を要する箇所は2液型油性塗料
2液型油性塗料は耐久性も高く金属などが点在していてもしっかり塗装できますので、外壁塗装を長持ちさせることが一番の目的だという場合には2液型油性塗料を選択することをおすすめします。
また、2液型油性塗料は混ぜ合わせる作業と塗料の取り扱いに関して高い技術が必要です。
最近では、未熟な業者ではなかなか取り扱いが難しいという理由で1液型塗料しか使用しない業者も多いので、手抜き工事を防ぐという意味でも2液油性塗料を取り扱う業者を選ぶのは有効でしょう。
- ホームページで施工事例と使用塗料を見る
- 業者に過去の施工経験について質問する
などすれば、使用する業者の技術を判断できます。
2.家族の健康に配慮するのであれば水性塗料
シンナーなどの有機溶剤は中毒症や健康被害を引き起こす恐れがあります。
空気中の有機溶剤の濃度測定を誤ったため、実際に塗装現場で作業員が溶剤中毒症になった事例もあります。
ですから、家族に
- 呼吸器系の疾患を抱えている方
- 小さなお子様
- 高齢者
がいる場合は、塗装工事期間中だけでも仮住まいに避難してもらうとよいでしょう。
昔と比べて塗料に含まれるVOCはかなり削減されているとはいえ、健康被害が出てしまう可能性がないとはいいきれません。
もしそうした措置が難しい場合には水性塗料を選ぶという選択もあります。
ただし水性塗料も全く無臭というわけではなく、また、水性塗料をメインで使用したとしても金属塗装のために油性塗料が一時的に使われることは避けるのは困難だと思われます。
塗料の影響を受けたくないのであれば、やはり塗装工事が終了して落ち着くまでは健康に不安のある人や幼児、高齢者の方は別の場所に避難している方がよいでしょう。
■おわりに
いかがでしたか?
塗料の種類は非常に多くいので、何も知らなければ業者がすすめる塗料をそのまま受け入れるのが当たり前だと思ってしまうでしょう。
しかし、油性塗料と水性塗料、どちらを選ぶかだけでもこれだけの違いがあります。
塗料の種類が塗装の目的や効果だけでなく、健康にまで影響を与えることがあるのですからしっかりと理解を深めることは非常に有益ですね。
もし、塗料や塗装工事のことで分からないことがあれば積極的に業者に質問してみましょう。
きちんとした業者ならきっと満足のいく回答をしてくれるはずです。