現在、戸建て住宅の外壁素材として主流になっているサイディングですが、その素材や機能は多岐にわたり、メンテナンス方法も異なります。
そのため、「いつ塗り替えたらいいかわからない」、「塗装すべきか交換すべきかわからない」とお困りの方も少なくはないでしょう。
この記事ではサイディングの基本的な知識をご紹介しながら、メンテナンスの方法や長持ちさせるためにできることなどを詳しくご紹介します。
このページの目次
■サイディングとは
サイディングとは「外壁材」に使われる建材です。
左官職人がタイルを張って仕上げるタイル外壁や、モルタルや漆喰をコテで塗って作る塗り壁などの「湿式工法」に対し、様々な素材のボードを張って仕上げる外壁は「乾式工法」と呼ばれます。
1.サイディングの種類
現在主に使われているサイディングは大きく4つに分類されます。
それぞれの概要や特徴を確認しておきましょう。
●窯業系サイディング
窯業系(ようぎょうけい)サイディングは、現在、住宅の外壁に最も使われているパネル材です。
セメントと繊維質に熱を加え、板状に形成して作られます。
耐火性や防音性が高く、レンガ風、タイル風、木目風など凝った柄はもちろん、ブラウン系やグレー系、シルバー系やオレンジ系などカラー展開も豊富で意匠性にも優れています。
施工の際はどうしても外壁材同士に「継ぎ目」ができますので、防水のためにシーリング材(コーキング材)で埋めなければなりません。
さらに樹脂製のシーリング材はデザイン上の欠点になることがあるだけでなく、劣化しやすくメンテナンスが欠かせないなどサイディングの弱点にもなっています。
●金属系サイディング
新築でも改築でも住宅用外装材としてよく見かけるようになったのが、金属系サイディングです。
かつてはスチール製が主流でしたが、近年では「ガルバリウム鋼板」というさらに耐久性が向上したタイプが主流になっています。
ガルバリウム鋼板は軽量で加工しやすく耐久性にも優れ、金属製外壁材にも関わらずサビにも強いうえに、そのクールなデザイン性からもどんどんシェアを伸ばしています。
●樹脂系サイディング
塩化ビニル樹脂を主原料とするサイディングです。
ビニールと聞くと少し頼りなさそうに聞こえますが、樹脂の特徴である撥水性や衝撃吸収力を備えており、30年保証をつけているメーカーもあるほど他の素材と比べて耐久性も劣りません。
ただし国内のシェアは1〜2%と低く、その分取り扱うメーカーや施工業者も少なくデザインの選択肢も限られているというデメリットもあります。
そのほか、樹脂系サイディングは上から塗装することができません。
しかし、樹脂系サイディングは「オープンジョイント工法」というシーリングを使わない方法で施工されるため、サイディング最大のデメリットであるシーリングのメンテナンスが不要という強みがあります。
ただしガス管や水道管などの引き込み口などにはシーリングが必要な場合もありますので、絶対にシーリングがなくなるわけではありません。
●木質系サイディング
天然の木を素材としているサイディングです。
焼き杉や無垢材を使っているものもありまが、最近では天然木の風合いを残しつつ防火性や防腐性が加えられたものも多く販売されています。
都市部などの「防火地域」や「準防火地域」など住宅の耐火構造基準が厳しい地域では、木質系サイディングが建築基準法上使えない場合もあるので注意が必要です。
また、木質系サイディングは特殊な施工方法が求められる場合もあり、総工費が割高になるケースもあります。
2.サイディングは戸建て住宅の定番外壁材
かつて日本の家屋には現在のようなサイディングはほとんど見られず、モルタル外壁が主流でした。
しかし政府主導による住宅の不燃化や、都市計画における防火地域の指定などがなされた結果、モルタル壁よりも耐火性に優れたサイディングが選ばれるようになりました。
さらに性能やデザイン性も徐々に向上したことにより、現在はサイディングが戸建て住宅の外壁の大半を占めています。
●サイディングの全国シェア
現在、新築住宅の外壁におけるサイディングのシェアは70〜80%と言われています。
- ほとんどの建築物に施工できること
- デザインのバリエーションも豊富なうえに耐震性にも優れていること
- 扱いやすく施工性に優れているため工期が早いこと
などが人気の理由です。
また、左官工事のように熟練の技術を必要としないため、家屋ごとに技術的な仕上がりの差が生まれることもほとんどありません。
●販売しているメーカー
ニチハ、ケイミュー(KMEW)、旭トステムなどの大手メーカーは窯業系・金属系のどちらも取り扱っています。
YKKAPやアイジー工業など、金属系のみ取り扱っているメーカーも存在しています。
ただし木質系は取扱メーカーが限られ、樹脂系を取り扱うメーカーはさらに少なくなります。
3.サイディング本体の耐用年数
各外装材メーカーはサイディング材の耐用年数を明示していますが、その期間内であれば何もせずに済むわけではありません。
一般的な窯業系サイディングは耐久年数が約30〜40年、ガルバリウム鋼板であれば約20〜30年と言われています。
しかし塗装やシーリングの補修といったメンテナンスを怠れば、劣化はより早くなり期待耐用年数を迎える前に交換が必要になってしまいます。
外壁塗装はサイディングの寿命を大きく左右しますので、正しく理解し、適切なメンテナンス周期で塗装リフォームを行う必要があります。
●サイディングが耐用年数を迎える前に塗装を
- 触ると手に粉がつくようになるチョーキング現象
- 目視で確認できる塗装の剥がれや色あせ
- 何度清掃しても汚れが落ちにくくカビやコケが生えてしまう
といったが現象が起こっている場合は、サイディングそのものが劣化して使えなくなる前に塗装リフォームを実施しましょう。
■サイディングのメンテナンス方法
サイディング材は決してメンテナンスフリーの外壁材ではありません。
大切な家をより長く守るためには、サイディング外壁の劣化の対処法ともいえる「メンテナンス」について知っておくことが必要不可欠です。
サイディング外壁のメンテナンスは主に「サイディング本体のメンテナンス」と「シーリングの点検」の二つです。
また、サイディング本体のメンテナンスは、サイディングの劣化状況に応じて行われる内容が異なります。
サイディング本体のメンテナンスは、「塗装」「張り替え」「重ね張り」のいずれかになります。
ただし「張り替え」と「重ね張り」は塗装では修復しきれないほどサイディングの劣化が進行している場合に行う外壁工事で、塗装よりも高額のリフォーム費用が発生します。
よって、サイディングは「塗装」と「シーリングの点検」をできるだけ早めに行うことが大切です。
1.サイディング外壁の塗装
外壁塗装をしっかり実施していれば、外装材の張り替えといった大規模なサイディングのリフォームは基本的に発生しません。
サイディングの塗装は主にウレタン塗料、シリコン塗料、ラジカル塗料、フッ素塗料の4種類が主流です。
なおアクリル塗料は耐久性が最も低いため現在は使用されなくなっています。
上記4種類のほかにも、家屋の状況や環境などに応じて機能性塗料を使うという選択肢もあります。
※塗料の劣化速度は日照条件や方角といった立地に大きく影響されますので、下記の耐用年数はあくまで目安とお考え下さい。
※施工価格は㎡あたりの施工単価相場です。
●ウレタン塗料
耐用年数:8~10年
施工価格:1,800~2,200円/㎡
ウレタン塗料は現在のようにシリコン塗料の相場が下がる前は、かつて最も選ばれていた塗料です。
価格の安さだけでなく、金属や木部などの様々な下地に塗装可能であること、防水性が高いことなどから現在でも選ばれています。
サイディングへの塗装という観点でもポピュラーな選択肢といえるでしょう。
●シリコン塗料
耐用年数:10~15年
施工価格:2,800~3,100円/㎡
外壁塗装において最大のシェアを誇る塗料です。
ウレタン塗料よりもやや割高であるものの耐久性・耐候性(塗装を劣化させる風雨や紫外線に対する強さ)に優れているため、結果として年間あたりのコストは抑えられる点が人気の理由となっています。
コンクリート、金属、窯業系サイディングなど幅広く塗装できますが、ほとんどのシリコン塗料は木部に使用できないため注意が必要です。
●ラジカル塗料
耐用年数:14~16年
施工価格:3,200~4,000円/㎡
紫外線で塗料が劣化したときに発生する「ラジカル」を抑制する力を持つ塗料です。
サイディングボードだけでなく屋根にも使用でき、価格もシリコン塗料よりやや高い程度で済むことから、開発されたばかりの塗料にも関わらず徐々に注目され始めています。
●フッ素塗料
耐用年数:15~20年
施工価格:4,200~4,500円/㎡
シリコン塗料より高額ですが、紫外線や酸性雨などのダメージに対する耐久力が非常に高く汚れも付着しにくい高機能な塗料です。
簡単に塗り替えや清掃ができないスカイツリーやレインボーブリッジ、六本木ヒルズなど大型建造物に使われていることからも、その信頼度の高さが伺えます。
一般的なフッ素塗料は硬い塗膜を形成するため下地がひび割れると塗膜もひび割れてしまいますが、ひび割れの起きにくいサイディングとフッ素塗料は相性が良いといえるでしょう。
●機能性塗料
特別な機能が付与されている塗料を総称して機能性塗料と言います。
- 光触媒塗料
耐用年数:18~20年
施工価格:4,200~5,000円/㎡
紫外線に反応して外壁表面の汚れを分解し、雨水で浮いた汚れを落とすことによって外壁表面を美しく保つことのできる塗料です。
サイディングボードなどの外壁には使用できますが屋根には使用できませんので注意が必要です。
- 断熱・遮熱塗料
耐用年数:13~18年
施工価格:3,800~4,200円/㎡
太陽光を反射して表面温度の上昇を防ぐ遮熱機能や、室内の暖かい空気が屋外に逃げるのを抑制する断熱機能を持つ塗料です。
両方の機能を持つ『ガイナ』や片方の機能しか持たないタイプなどがありますが、ほとんどサイディングに塗装できます。
ただし機能性塗料のうち「弾性塗料」に類するものはサイディングの塗装には向いていません。
蓄熱しやすいサイディングに柔らかい弾性塗料を塗ると、熱で塗膜に気泡ができ塗料が浮いた状態になり、外観を損ね耐久性も落ちてしまいます。
●サイディングの塗装はどの塗料が良いのか
塗料が劣化する前に正しく塗り替えていれば、外壁全体の外観も機能もより長持ちさせることができます。
しかし一回の総工費が70~90万円にもなる高額な塗装リフォームは何度も頻繁に行うわけにいきません。
ハイグレードな塗料を選べばそれだけ耐久性が高く長持ちし、塗装の回数も減りますが、その分低グレードの塗料よりも施工価格が10~20万円アップします。
いつごろ塗装リフォームが必要になるかは塗料の耐用年数で前もって予測できますので、十分余裕を持って現実的な予算を立てておくことも外壁メンテナンスの大切なポイントです。
2.シーリングのメンテナンス
シーリング材はサイディングボードの目地というごく細かい部分ですが、内部の柱や梁、土台などに雨水が浸水しないようブロックするという防水機能を司っています。
さらにシーリング材はサイディングボード本体や表面の塗装よりも早く劣化します。
シーリングの耐用年数は約5〜10年と非常に短いため、できるだけこまめに状態をチェックしておかなければなりません。
シーリング材のクラック(ひび割れ)や部材の縮みといった劣化が見られる場合は、「打ち替え」か「増し打ち(打ち増し、とも言われる)」いずれかのシーリング補修が行われます。
●シーリングの打ち替え
・㎡あたり1,000円
古いシーリングを完全に取り除き、新しいシーリング材をサイディングの継ぎ目に充填する工事です。
十分な耐久性を確保するため、古いシーリング材を取り除いた部分の清掃やプライマー処理なども必要になります。
●シーリングの増し打ち
・㎡あたり800円
古いシーリング材を取り除かず、上からシーリング材を追加充填する作業です。
打ち替え工事に比べて費用は2~3割ほど安くなるものの、元のシーリングにある程度の耐久性が残っていなければ実施はできません。
シーリングの劣化が激しい場合は必然的に「打ち替え工事」を選ぶことになります。
3.サイディングの「張り替え」と「重ね張り」
サイディングボードが塗装や部分補修でも手に負えないほど劣化している場合は、塗装メンテナンスではなく「張り替え」または「重ね張り」のいずれかの外装リフォームを行わなければなりません。
●サイディングの張り替え
・一棟あたり約180~240万円
既存のサイディング材を剥がして新しいサイディング材を張り直す工事です。
かなり大規模で費用もかさみますが、既存のサイディングを全て撤去する際に、ふだん隠れている建物の土台や柱・間柱といった、構造上重要な部分の劣化状態をチェックできるというメリットもあります。
●サイディングの重ね張り
・一棟あたり約120~130万円
既存のサイディングを撤去せず、そのまま上に新しいサイディング材を貼り付ける工事です。
張り替えより費用も工期も抑えられますが、選んだサイディング材の重さによっては家屋に強い負荷がかかってしまうこと、土台や柱の状況が確認できないといったデメリットもあります。
そのためサイディング材のメンテナンスを長期間放置して激しく劣化していたときや建物のサイディング全体に歪みが生じているときなどは、重ね張り工法はお勧めできません。
■おわりに
サイディングの種類とその特徴、そしてメンテナンス方法をしっかり理解できていれば、大切な家屋をずっと長持ちさせることができるでしょう。
サイディングと外壁塗装は家屋の「顔」になるという非常に重要な役割を果たしています。
末長く快適なマイホームにするためにも、張り替えなどの外壁リフォームが必要なほど劣化する前に、定期的な塗装でお住まいの耐久性を維持しておきましょう。