外壁塗装をしようと業者から見積を取っても、見積書に書かれている内容や価格相場が把握できていないと、その業者に任せてよいかどうか判断できません。
価格の相場や作業内容がわからない状態でなんとなく作業を頼んでしまうと、仕上がりの結果に満足できなかったり施工ミスが起きたりしてトラブルに繋がってしまう可能性もあります。
このようなトラブルを避けるためには、外壁塗装とは何のためにどのような作業を行う工事なのか、そしてそれぞれの作業にかかる相場はどのくらいなのか、ある程度の知識を持っておかなければなりません。
この記事では、外壁塗装の見積価格が何を根拠に計算されているのか解説しながら、外壁塗装にかかる費用の相場についてご紹介します。
このページの目次
■外壁塗装の費用相場は?
まずは平均的な30~40平米の戸建住宅で、一棟あたりの外壁塗装工事費用の相場を見てみましょう。
作業工程 | 費用相場 |
塗装費用 | 45~60万円
※シリコン塗料を使用 |
養生費用 | 3~7万円 |
足場費用 | 15~25万円 |
洗浄費用 | 3~5万円 |
下地処理費用 | 8~15万円 |
合計 | 74~112万円 |
このように外壁塗装には塗装だけでなく足場や養生など様々な費用が発生します。
しかし、何も知らない状態で上記の価格表を見ても、なぜ項目ごとに費用が違うのか、なぜこれらの工事が必要なのかわからないため、記載内容が正しいかどうか判断できないのではないでしょうか。
また、合計価格が74~112万円と言われても、本当にその費用が必要かどうか確信を持てなければ安心して工事に進むことはできないはずです。
そこで以下からは各工程の価格相場について、価格が決まるしくみや作業の意味などについて解説していきます。
■塗装費用の相場と塗料の種類
塗装作業の費用を最も左右するのが、使用する塗料の種類です。
1.塗装には下塗りと仕上げがある
外壁の塗装作業は3度塗りが基本となります。
それぞれ、下塗り、中塗り、上塗りと言う呼び方をされ、3回に分けて塗装が行われます。
下塗りは下地処理を行った外壁と上塗り用塗料を密着させるために行われます。
そのためこの工程では、上塗り塗料とは別の「下塗り用塗料」が使われます。
そして中塗り、上塗りで使われる上塗り塗料には、外壁を保護して家の美観を保つ役割があります。
下塗り塗料は外壁の劣化状態や素材に合わせて塗装業者が適切な種類を選んでくれます。
価格を左右するのは主に、仕上げに使う上塗り塗料になります。
上塗り用塗料の1㎡あたりの費用相場を一覧にすると以下のようになります。
塗料の種類 | 1㎡あたりの価格 |
アクリル樹脂塗料 | 1,000〜1,800円 |
ウレタン樹脂塗料 | 1,800〜2,500円 |
シリコン樹脂塗料 | 2,800〜3,500円 |
フッ素塗料 | 3,500〜4,500円 |
遮熱、断熱塗料 | 3,800〜5,000円 |
光触媒塗料 | 4,800〜5,500円 |
このように上塗り塗料には耐久性別のグレードがあり、グレードが高いものを選んだ方が塗装は長持ちしますが、当然費用相場も高くなります。
予算をかけずに済ませようとして、つい価格が安い塗料を選びたくなってしまいますが、外壁塗装用の塗料を価格だけで選ぶのは危険です。
それぞれの塗料の特徴について詳しく見てみましょう。
2.上塗り用塗料の種類別・特徴
●アクリル樹脂塗料
新築時に多く使われているのがアクリル系塗料です。
低価格の塗料ですが耐久力が低く5~8年で耐用年数を迎えてしまうので、数年で塗替えが必要になり、塗り替えを行う回数が多くなってしまいます。
●ウレタン樹脂塗料
アクリル塗料に比べると光沢に優れていて耐久力が高く、外壁の塗り替え用塗料としては比較的普及しているのがウレタン系塗料です。
耐用年数は8~10年程度です。
●シリコン樹脂塗料
ウレタン塗料よりも耐熱性と耐候性に優れており、耐用年数も10~15年と長いので、現在最も普及している塗料です。
価格的にはウレタン塗料に比べて高価にはなりますが、耐久性が長い分、結果的にはコストを抑えることができます。
●フッ素系塗料
航空機や高層ビルの保護塗料としても使用されるほど高い耐久性を持ち、紫外線や雨水に耐える耐候性を持つ優れた塗料です。
ただし高価なためシリコン塗料ほど気軽に選べる塗料ではありません。
フッ素塗料で塗装しておけば15~20年は塗装の耐久性が持たれるため、足場を広範囲に架けて何カ月もかけて作業しなければならないような場所など、頻繁に塗替えができない建物などに有効です。
●遮熱塗料、断熱塗料
太陽光の熱が屋内に入らないように、熱を遮る効果を持つ塗料を遮熱塗料と呼びます。
また、屋内・屋外の熱の移動そのものを防ぐ塗料は断熱塗料と呼ばれます。
遮熱効果と断熱効果を持つ塗料で塗装しておくと室内の温度変化が少なくなり、冷暖房の電気代を抑えられ、結果的に光熱費の削減と省エネルギーに繋がることから、環境に優しい塗料としても注目されています。
●光触媒塗料
光触媒に太陽光(紫外線)が当たることにより発生する分解力と、雨水が汚れに触れやすくなる親水性によって、塗装面のセルフクリーニング効果と空気清浄効果をもたらす機能性塗料です。
■塗装以外の作業内容と相場費用
外壁塗装は塗装作業だけでなく、他にも様々な費用が発生しそれぞれに相場があります。
悪徳業者などは塗装代以外の項目をうやむやにして費用をごまかそうとする傾向がありますので、各項目の費用相場もしっかり押さえておきましょう。
1.足場組み立て、解体作業費
塗装作業を行うためには、家の周りに足場を組んで高所でも作業ができるようにする必要があります。
足場は金属製のパイプなどを家の形状や大きさに合わせて組んでいくのですが、そのレンタル費用や組み立て、解体に費用がかかります。
家の大きさや立地状況によって足場面積は変わりますが、㎡あたり600〜1,000円程度、家一棟あたりだと5~25万円が足場設置費用の相場となっています。
2.養生
塗料や粉塵、水しぶきなどが周囲に飛び散らないよう、足場の周りにシートをかぶせたり窓サッシまわりをビニールで覆ったりする作業を「養生」といいます。
シートの資材費や人件費がかかり、㎡あたり300〜500円程度、家一棟では3万円が相場です。
3.高圧洗浄作業
外壁に付着したホコリやカビ、藻などの汚れを高圧洗浄機で除去し、表面をきれいにします。
外壁や屋根に残った汚れは塗料の品質を低下させ施工不良を招きます。
そのため高圧洗浄作業は単なる清掃ではなく、外壁塗装にとって欠かせない作業です。
通常の水を使った高圧洗浄は㎡あたり150~250 円、薬剤を使ったバイオ洗浄は300~500円が相場です。
4.下地処理
塗装を行う前には、外壁の下地補修が行われます。
モルタル外壁の場合はクラックがあるかどうかを確認します。
クラックが0.3mm以下の細いもの(ヘアクラック)であれば塗料で埋まりますが、それ以上の深いクラックが発生している場合は、シーリング材を注入してクラックを埋めることになります。
また、0.7mm以上のクラックの場合はそのままではシーリング材が奥まで届かないので、表面を削った上でシーリング材を注入するVカット工法が行われます。
ヘアクラックの補修で㎡あたり400円、 シーリング充填で㎡あたり750円程度、Vカットの場合1,500~5,000円の施工費用がかかります。
その他にもサイディング壁であれば割れや浮きの補修、タイル壁であればタイル交換や下地モルタルの補修など、下地補修作業の内容は外壁の種類や状況により大きく変わってきます。
下地調整の費用を増やさないためにも、外壁の劣化が目立ちはじめた段階で早めに塗装に踏み切った方がいいでしょう。
■相場価格で外壁塗装をするためにも業者選びは慎重に
このように外壁塗装を行うには高額な費用がかかります。
そのため相場の範囲内で工事を済ませなければ、より多くの費用を支払うことになってしまいます。
相場の範囲内の価格で工事を行うためには、複数の業者から見積もりを取って適正価格で工事をしてくれるかどうか慎重に比較しなくてはなりません。
1.業者の種類と見積もりの特徴
塗装業者を規模で分類すると次のようなになります。
●大手メーカー
大手ハウスメーカーやリフォーム会社の場合、何かトラブルが起きてもメーカーが保証してくれるため安心感は高くなります。
しかしその反面、 工事は下請け業者が行うことが多く中間マージンが発生するため、見積もりの相場は高く設定されています。
●地元業者
地元の工務店やリフォーム業者、塗装業者などです。
自社に工事を行えるスタッフが在籍しているので下請け業者を経由する必要がなく、見積もりの価格は大手メーカーよりも低くなります。
もし地元の業者に依頼する場合は、施工実績や近所からの評判といった情報を集め、信頼できる優良業者かどうか確認しておきましょう。
また最近ではインターネットを使って一度に多くの業者から見積もりを入手できる、無料一括見積もりサイトなどのサービスもあります。
一回の依頼で多くの業者から見積もりを入手することができるためとても便利なサービスですが、送られてきた見積もりを鵜呑みにせず、業者の信頼性や施工実績は別途ご自身で調べることを忘れないようにしましょう。
2.見積もりのチェックポイント
外壁塗装では見積書の内容を精査していくことが非常に重要ですが、見積もりの内容が妥当かどうかを金額だけで判断するのはなかなか難しいものです。
見積書をもらった時には、まずは以下の点を確認しましょう。
●曖昧な箇所は明確にしてもらう
大抵の見積もりは、「平米単価が○○円だから、延べ床面積□□の建物であれば塗り面積が何平米なので、合計何円になる」などのように計算の根拠が明らかにされています。
しかし「工事一式△△円」と書かれているような、洗浄作業や足場代といった工事項目別の価格が記載されていない見積書が出てくることもまれにあります。
このような曖昧な見積もりを渡されたら、工事の内訳と計算方法をしっかり出してもらうようにしましょう。
曖昧な箇所には何かしらの仕掛けが隠れている可能性があります。
「一式」や「その他」などの曖昧な書き方ではなく、作業項目に対して単価と合計金額を出してもらうようにしてもらいましょう。
不明点や曖昧な個所を担当者にどんどん質問をすることで、相手の誠実さや塗装の専門性も見えてきます。
業者に不明点を質問することは決して恥ずかしいことではなく、信頼できる業者かどうか見極めるためにも大切ですのでぜひ積極的に質問しましょう。
●3社から見積もりを取れば相場はわかる
外壁塗装を行うときは複数の業者に見積もり依頼をした方が望ましいですが、4社以上に見積もりを依頼すると、どの業者に何と説明されたかわからなくなってしまいます。
ご自宅の塗装にだいたいいくらかかるかは、3社から見積もりを取ればわかるようになります。
ただしその際は、すべての業者に「同じ条件」で見積もりを取ることが大切です。
どんな塗料を使いたいのか、補修してほしい箇所はどこなのか、外壁や屋根以外にも塗装したい箇所はあるかなどの要望を業者ごとにバラバラに伝えてしまうと、見積金額に大きく差が生じて費用を比較できなくなってしまいます。
2~3社から見積もりを取ってみて飛びぬけて高い業者やあまりにも安すぎるがなければ、ご自宅の外壁塗装の費用相場が見えてくるでしょう。
3.業者について下調べしておく
塗装作業を行う業者にも大小様々な業者があり、同じ条件で見積もりを依頼したとしても異なる価格が提示されます。
塗装業者は会社の規模によって特徴も違い、施工実績や技術にも違いがあるので、どの業者を選べばいいか簡単に示すことはできません。
しかし選べる業者の種類を知っておくことは、相場内で工事をするためには欠かせない作業です。
インターネットで業者のホームページを調べたり、地元の業者であれば近所の人や実際に工事を依頼した人に評判を聞いたりして、見積もりを取る前にある程度下調べを済ませておいたほうがいいでしょう。
■おわりに
生活の基盤となる家を美しく快適に長持ちさせるためにも、定期的な外壁塗装は家の欠かせないメンテナンスです。
後悔が無い外壁塗装にするためには、
- 外壁塗装とはどのようなことを行う工事なのか
- それぞれの作業にかかる価格の相場はどのくらいなのか
- 相場価格で工事を行うためにはどのように業者選びを進めればよいのか
の3点を重視しましょう。