外壁に比べて実際に視界に入る機会が少ない屋根部分ですが、やっぱり外壁と同じようにメンテナンスやリフォームが必要です。
屋根はメンテナンスを怠っていると屋根材の腐食や雨漏りなどにも繋がってしまう重要な部分ですが、屋根塗装にかかる費用や相場についてはイメージしにくいかもしれません。
このページの目次
■屋根塗装に必要な費用とは
まずは多くの人がもっとも気にする基本的な費用について、何にどれほどのお金がかかるのかを調べてみましょう。
1.屋根の塗装費用
屋根塗装にはまとまったお金が必要になります。
予算を前もって積み立てておくのがベストですが、まずは屋根塗装にどの程度の費用が必要か、「屋根面積」と「塗料のグレード」からどのように計算できるかを覚えておきましょう。
●屋根の面積
まずは塗装面積を把握しておくことが必要です。
これを把握しておくことは予算を立てる時だけでなく、依頼した施工業者の見積もりが適正価格かどうかを判断する材料にもなります。
どのように屋根の塗装面積を計算できるでしょうか。
図面があればベストですが(住宅メーカーに保管されている場合もあり)、図面がなくても計算は可能です。
基本的に「屋根投影平面積」に「勾配伸び率」を掛けて算出される「屋根実面積」が「塗装面積」になるのですが、「寄棟(よせむね)」や「切妻(きりつま)」、「入母屋(いりもや)」といった屋根の形状に左右される点も含めてちょっと複雑です。
基本的には大まかな数値を理解しておけばいいので「建坪数×3.3(1坪は3.3㎡)×1.3」という概算でおよその面積を知ることができます。
最後の数値は屋根の勾配によって異なりますが、勾配のゆるい屋根の場合は「1.2」で計算しておくと良いでしょう。
上記の計算式に従えば30坪の住宅の屋根面積は
30×3.3×(1.2〜1.3)で「118.8〜128.7㎡」となります。
※「建坪(建築面積)」と「延べ床面積」を混同している業者やウェブサイトもありますが、「建坪(建築面積)」とは「建物が立っている土地の面積」を指しますので総二階建ての戸建住宅であれば「延べ床面積」は「建坪(建築面積)」のおよそ2倍になります。
この関係を覚えておきましょう。
●塗料の価格
さらに塗料のグレードも施工費用を大きく左右します。
塗料の価格は塗装面積1㎡あたりいくらかで記されます。
価格が高ければ耐久性も上がります。
下記に詳述しますがグレードをワンランクあげるなら1㎡あたりおよそ1,000円値段が上がります。
安いものを選ぶと長い目で見ればメンテナンスコストが逆に高くなりますので適切な塗料を選ぶことは非常に大切です。
値段だけでなく信頼できるメーカーのものかどうかにも注意する必要があります。
2.付帯工事の費用
塗装工事には様々な「付帯工事」が必ず必要になります。
塗装を美しく仕上げ、長持ちさせるため、また他の箇所への塗料の飛散を防ぐために下記の工事が必要になります
●足場設置工事
建設現場などでよく見かける鋼管でできた足場を設置する作業です。
外壁塗装工事を効率的かつ安全に行うために不可欠な作業であり、足場には塗料が飛散しないための飛散防止ネットも設置します。
●高圧洗浄作業
下地が汚れたままでは塗装できません。
高圧洗浄機を使って下地を洗浄します。
汚れの度合いによっては洗浄剤やブラシを用いて作業することもあります。
仕上がりと塗膜の耐久性を左右する重要な作業です。
●下地処理作業(補修&ケレン)
ケレンとは下地のサビや汚れ、また劣化した古い塗膜を落とす作業です。
電動工具を使う場合もあれば手作業で行う場合もあり、下地の状況によって異なります。
また雨漏りなどの原因になるひび割れや欠けがあればそこを補修します。
●養生作業
サッシや雨どい、換気扇など塗料が付着しては困る部分をマスキング(養生テープやポリシートで覆い、保護すること)していきます。
家屋周辺の植え込み、室外機また自動車などもマスキングします。
屋根塗装にはこれらの基本的な付帯作業が必要になります。
■屋根塗装に使われる塗料の価格相場
屋根塗装のリフォーム工事は「安いに越したことはない」ということは決してありません。
「価格」と共に「グレード」、すなわち耐久性や機能もよく比較考量する必要があります
1.塗料にはグレードがある
グレードが高ければそれだけ耐久力も高くなりますが、より適切な塗料を選ぶために代表的な塗料の種類と塗料別の耐用年数を理解しておきましょう。
価格は一般的に下塗り、中塗り、上塗りの3回塗りで塗装する場合の価格です。
●アクリル系塗料
耐用年数はおよそ3〜5年ほど、相場は1㎡あたりおよそ1,000〜1,200円ほどです。
最安の塗料ですが、耐久性に劣ります。
現在、屋根塗装に使われることはほとんどありません。
●ウレタン系塗料
耐用年数はおよそ6〜10年ほど、相場は1㎡あたりおよそ1,800〜2,000円ほどです。
比較的紫外線に強く、また下地を選ばない万能さで選ばれることの多い塗料です。
●シリコン系塗料
耐用年数はおよそ10〜15年ほど、相場は1㎡あたりおよそ2,500〜3,500円ほどです。
高品質ながら近年は価格が下がり、現在もっとも人気のある塗料です。
値段や耐用年数に開きがありますが、これはシリコン塗料の中でも様々なクオリティーのものが存在するためです。
信頼できる塗料メーカーのものであれば高額なものほど高品質と考えることができますが、無名メーカーや業者オリジナル塗料などといわれる場合は、価格と品質があっていない可能性もあります。
●ラジカル塗料
耐用年数はおよそ8〜15年ほど、相場は1㎡あたりおよそ2,500〜3,500円ほどです。
2012年ごろから2016年にかけて大手塗料メーカーが新たに発売した塗料です。
太陽光に対する耐久力に主眼を置いた塗料です。
●フッ素系塗料
耐用年数はおよそ15〜20年ほど、相場は1㎡あたりおよそ3,500〜4,500円ほどです。
かなり高額ですが紫外線や悪天候に対する耐久性に優れ、汚れにくいことから長い目で見れば経済的な塗料です。
●立地条件で業者と相談を
上記の耐用年数が塗料選びの参考になりますが、耐用年数は日当たりなどの立地条件、土地の天候などにより左右されます。
あくまで目安とお考え下さい。
2.屋根には耐久性が高い塗料がおすすめ
外壁に比べて屋根は日照からくる紫外線、風雨など塗装の様々なダメージをもろに受けてしまいます。
そのため同じ塗料でも外壁よりも屋根の方が劣化が早く進み、耐用年数は短くなります。
頻繁に塗装していては無駄な費用も多くかかってしまいますので、耐用年数が長く耐久力が高い塗料、具体的に言えば少なくともシリコン塗料以上のものを使用するのがオススメです。
●アクリル塗料は屋根には不向き
外壁塗料としてはまだ新築住宅の外壁塗装などで使われることのあるアクリル塗料ではありますが、安価とはいえ耐候性(塗装を劣化させる主な要因である紫外線や風雨に対する強さ)が低いことから屋根塗装に使われることはまずありません。
ほとんどの主要メーカーも屋根用のアクリル塗料は生産していません。
耐用年数の短い塗料で塗装するならば当然すぐに塗り替えの必要が生じ、結局はメンテナンスに余分なコストがかかることになってしまいます。
■屋根塗装以外の費用相場
費用や手間の無駄を抑えるために、多くの場合に屋根塗装と外壁塗装は同時に行なわれます。
外壁塗装にかかるおよその費用や同時に行うことのメリットを確認しておきましょう。
1.付随工事の費用相場
中には付帯工事の細かな項目で費用を不当に上乗せする業者もあります。
付帯工事それぞれの工程や工事内容およその相場を知っておけば、見積価格の金額が適正かどうかを判断するのに役立ちます。
●足場設置費用
価格帯は1㎡あたりおよそ700〜1,000円程度。
ただし、この単位「1㎡」は延べ床面積や塗装面ではなく「外周(m)×高さ(m)」で算出します。
30坪の2階建住宅(外周約42m×高さ6.5m)であれば、足場面積はおよそ273㎡、費用はおよそ20万〜25万円程度になります。
屋根の形状によっては(勾配が急な場合など)屋根の上にも足場を設置する必要が生じ、足場費用が加算される場合もあります。
足場代の見積金額は、元請け業者が設置するか外注になるかによっても大きく差が出る部分です。
見積もりが出たらこの部分に注意しましょう。
●高圧洗浄費用
価格帯は1㎡あたりおよそ150〜300円程度。
下地の汚れ具合によっては洗浄剤(バイオ洗浄ともいう)を使うこともあり、使わない場合に比べて1㎡あたり50円ほど高くなります。
●下地処理費用
もともとの状態が良ければ価格帯は1㎡あたりおよそ200〜500円程度、劣化がひどい場合には1㎡あたり1,000円を超えることもあります。
見積書ではシーリング工事などと合わせて「クラック処理一式」と記載される場合もあります。
●養生費用
1㎡あたりおよそ300〜500円程度。
たくさんの養生テープやマスカーと言われる養生テープとポリシートが一体になったものなどが使用され、細かい費用を総合して「養生一式」と記載されることもあります。
「足場設置費用」に含まれている場合もあります。
●見積もりから業者の信頼度を判断できる
上記の費用は必ず必要になるものです。
中には見積もりを省略して細かく記載すべき部分も「〇〇一式」と書く業者もあります。
「一式」という記載が悪いわけではありませんが、特に工事価格が大きくなる項目は内容まで細かく記載してもらうようにしましょう。
また「足場代無料」をうたう塗装業者もありますが、高額になり時間と労力がかかる足場工事を無料で行えるはずがありません。
費用を他の項目に転嫁し総額では相場より高く請求する悪徳業者の可能性が高いので注意が必要です。
2.外壁塗装の費用相場
建坪30坪の一般的な総二階の戸建住宅をシリコン系塗料で塗る場合、施工金額の相場はおよそ100万円程度と考えられます。
延べ床面積が240㎡程度とすると工事費用の内訳は
・塗料費用およそ600,000円(2,500円/㎡×240㎡)
・付帯工事およそ400,000円
となります。
上記の計算方法に沿えば、塗料のグレードを塗料単価200円落とす毎に塗料代を50,000円程度安くすることができます。
■屋根塗装リフォームの総費用
それではここまでの情報を元に、実際の塗装工事でおよそどのくらいの費用がかかるのか、「屋根塗装のみ行う場合」と「屋根塗装と外壁塗装を同時に行う場合」の二つの例から見てみましょう
30坪(延べ床面積198㎡)で一般的な総二階の住宅を例に
- 屋根の面積:およそ130㎡
- 外壁の面積:およそ240㎡(「延べ床面積×係数2で算出しています)
- 足場の面積:およそ270㎡
- 使用する塗料:シリコン塗料3回塗りで外壁およそ2,500円/㎡、屋根3,000円の塗料を使用
上記の条件で計算してみましょう。
1.屋根塗装を単独で行ったときの費用
屋根塗装:3,000円×130㎡=390,000円
付帯工事:(下地処理200円+高圧洗浄200円+養生300円)×130㎡+(足場費用800円×130㎡)=307,000円
=合計価格697,000円となります。
2.屋根塗装と外壁塗装を同時に行ったときの費用
屋根塗装:3,000円×130㎡=390,000円
外壁塗装:2,500円×240㎡=600,000円
付帯工事:(下地処理200円+高圧洗浄200円+養生300円)×(屋根130㎡+外壁270㎡)+(足場費用800円×130㎡)=371,000円
=合計価格1,361,000円
上記のような計算式になります。
もちろん、都道府県によって相場に前後10万円以上の差が出ることもありますし、同じ建坪でも建物の形状により、また破風板や雨どいなどの付帯部も塗るかどうかによって費用の差が大きく出ることもあります。
●外壁と屋根はセットで塗装すると付帯工事も1回で済む
先述の通り塗装工事には付帯工事にかかる費用が高くなりますので、屋根塗装と外壁塗装を同時に行うなら足場の架設や塗装などを一度に済ませられるので無駄な出費を抑えることができます。
屋根塗装と外壁塗装、それぞれに使う塗料の耐用年数を揃えるなら、次回以降も同じタイミングで一度に塗装を行えるでしょう。
ただし、屋根の方が劣化は早いので屋根に使う塗装を外壁のものより耐候性が高いものとし、屋根と外壁の塗り替えタイミングを合わせる必要があります。
■おわりに
屋根塗装ってなんだかわかりにくいと思ってしまうかもしれませんが、上記の基本的な情報を理解しておくだけで無駄な出費を抑えられ、優良業者を選ぶ上でも助けになるでしょう。
満足のいく塗装リフォームのために、この情報をぜひお役立てください。