外壁塗装には紫外線や雨などから建物を守るという大切な目的がありますが、それだけでなく、新しい色で建物を塗り替えるという楽しみもあります。
しかし、外壁や屋根の色はカタログで見た好みの色を選べばよいというものではなく、選び方によっては後悔の残る外壁塗装になりかねません。
そこでこの記事では、外壁塗装の色に関するさまざまな知識をお伝えするとともに、業者との打ち合わせで知っておくと便利な色選びのコツをご紹介します。
■外壁塗装の色選びで絶対に知っておくべきこと
外壁の色は多種多様です。
色はマンセル値、色相、明度、彩度などで表されますが、気に入った色を言葉で説明するのは難しいことです。
まずは色に関する基礎的な知識を身につけておきましょう。
これらの知識を知っていると、業者との打ち合わせがスムーズになり、色選びのトラブルも回避できます。
1.「面積効果」が仕上がりに与える影響
色の面積効果のイメージ
同じ色でも、狭い面積で見たときと広い面積で見たときでは、違う印象に見えることがあります。
明るい色は広い面積になると明るくはっきり見え、暗い色は広い面積で見るとより暗く見える傾向があります。
これは面積によって色に変化が起きているのではなく、人間の目がそのように錯覚しているために起こります。
このような錯覚現象は、色の「面積効果」と呼ばれます。
外壁の面積はとても広いので、面積効果が仕上がりに与える影響には十分注意する必要があります。
「カタログで見たときは綺麗な色だったのに、塗ったら全然違う色になってしまった」というトラブルは、主にこの面積効果が原因で起きている可能性があります。
●思っているより少し薄い、又は濃い色合いを選ぶ
アイボリーやホワイト、イエロー、ベージュ、オレンジなどの明るい色を選ぶときは、面積効果を考慮してやや濃い目のものを選ぶと良いでしょう。
一方、ブラックやネイビー、ダークブラウンといった暗い色を選ぶときは、色が濃くなりすぎないように少し薄めの色合いを選ぶと、思っている色合いに近い印象に仕上がります。
ただし、やや薄め・やや濃いなどといった「印象」だけで色選びをするのは最も危険です。
できるだけ実物の塗料を使って作られたカラー見本を見て決めましょう。
●大きなサンプルで確認する
【色見本帳イメージ】出典:エスケー化研
【カラーサンプル例】
大きな外壁に塗装する色を選ぶのであれば、できる限り大きなカラーサンプルで色を確認することが大切です。
塗料には様々な色見本があり、中には数センチの小さな枠に色が印刷されたものもあります。
小さなサンプルだけで即決せず、A4サイズなど大きなサンプルでどのような色か確認しましょう。
2.蛍光灯や白熱灯の下と太陽の下では色の見え方は違う
ご自宅の鏡で身だしなみを確認したにも関わらず、家の外に出てみると、着ている服が違った色に見えた経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
建物の照明に使われている蛍光灯や白熱灯は人工的な光ですので、色を再現する力が太陽光とは異なります。
そのため、屋外と室内では異なった色に見えるのです。
蛍光灯などの照明が色を再現する力は「演色性」と呼ばれ、太陽光に近いものほど「演色性が高い照明」となります。
屋外の外壁や屋根に塗装する塗料ともなれば、太陽光の元で色味を確認しなければならないことは言うまでもありません。
塗料のサンプルを見るときは、外壁にかざすなどして必ず太陽光の下で確認しましょう。
3.カラーシミュレーションは参考程度に
外壁塗装のイメージを膨らませるツールに、CGのカラーシミュレーションがあります。
カラーシミュレーションは塗料メーカーや塗装業者、リフォーム業者が無料で行ってくれますので、ご自宅の塗装後のイメージをパソコンで手軽に確認することができます。
しかしカラーシミュレーションはあくまでイメージを確認するためのツールです。
パソコンの画面や印刷上で見えている色は実際とは異なります。
カラーシミュレーションはあくまでもイメージを掴むための参考程度に考えておきましょう。
カラーシミュレーション・パソコン画面
カラーシミュレーション・印刷物
4.周りの家との調和を守ること
外壁の色合いによる周りの家との調和のイメージ
住宅はお住いの方だけでなく、様々な方が目にします。
個性的な家を目指そうとして、周辺の住宅と大きくイメージが異なる色を選ぶと、周囲の景観に悪影響を及ぼす可能性があります。
極端な例ですが、白やベージュの穏やかな色味の建物が並ぶ住宅街に、突然、金色や赤などの派手な建物が出現すると周囲の人は不安に感じてしまうでしょう。
極端に派手な色合いではなくても、周囲の建物に配慮しない色選びをすると、お住まいが周囲の建物から浮いて悪目立ちしてしまう恐れがあります。
このようなことを避けるために、建物に使う色や素材を「景観ガイドライン」で規定している自治体もあります。
■外壁塗装を成功させるための色選びの注意点
外壁塗装用の色を選ぶときは、以下の注意点も忘れずに考慮しましょう。
1.まずは他の家を参考にする
インターネットや書籍には様々な外壁塗装の施工事例写真が掲載されていますが、印刷物やモニターで見る色は実物とは異なります。
気に入った色を見つける最もオススメの方法は、他の家を参考にすることです。
近所などを散歩しながら、ご自宅に似ているお宅のカラーコーディネートを参考にしてみましょう。
2.時間帯ごとに色をチェックする
太陽光の照射面と影の面の見え方の違い
太陽の光は朝昼晩で色の見え方を大きく変えてしまいます。
外が明るい時間帯でも、太陽の位置によって建物の印象は変わることがあります。
例えば東側の壁であれば、朝は太陽光が当たるため明るく見えますが、夕方は影になり暗く見えます。
また、天候によっても快晴の日と曇天の日で見え方も色味も異なりますので、晴れ、曇り、雨の日など天候別にも確認しておくことをお勧めします。
3.サンプルは徐々に大きなものに移行する
塗料はできるだけ大きなサンプルで見た方が、実際に塗装した時に近い状態で確認できます。
しかし、最初から大きなサンプルで見ても、その色が好きかどうかピンと来ないかもしれません。
色選びは、以下のステップで徐々に大きなサンプルに移行していきましょう。
- 3㎝程度の色見本帳で大まかなカラーイメージを選ぶ
- 45㎝程度のA4判のサンプルで面積効果等も考慮し、間違いがないかを確認
- 塗料の実物を大きめの板に試し塗りした「見本板」を作成してもらい、外壁にかざして確認する
- 最終的に選んだ色を使って、家の外壁で試し塗りを行う
このように徐々に大きくしていくことにより、色に対するイメージが自然と実際の外壁塗装に近づいていきます。
4.付帯部分も忘れずに考える
家は外壁や屋根以外にも、様々な付帯部材とセットで構成されています。
塗装に深く関わる付帯部としては、サッシ枠、玄関ドア、雨樋、軒天井、破風板などがあります。
代表的な付帯部の位置
付帯部自体の面積は大きくありませんが、外壁や屋根だけを塗装しても、付帯部を塗装しないと完成度が大きく下がってしまいます。
優良業者であれば必ず付帯部も塗装してくれますが、「付帯部塗装は追加料金」としている業者もあるため注意が必要です。
見積書に「破風板」や「雨樋」などの付帯部塗装が含まれていることを、契約前に確認しておきましょう。
5.組み合わせる色は2色まで
「今まで1色で塗っていたので、イメージを変えるために多色塗りにチャレンジしたい」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、外壁と屋根の色を組み合わせるだけでも難しく、まして付帯部まで含めて色のバランスを考えるのはカラーコーディネーターでも難しい作業です。
よって、ツートンカラーなど別の色を組み合わせて作るコーディネートでは、使う色を2色までに留めることがポイントです。
6.家の周りの緑も活かす
緑と外壁の色のコーディネート
家の周りには様々な設備がありますが、その中でも大きな存在感を持っているのが植栽です。
周りに植栽や緑が多い家では、できるだけ緑を活かした色を選んでおくと、建物の色味もまとまります。
建物の色を緑と調和させるのであれば、彩度が低い色を選んでみましょう。
彩度とは色の「鮮やかさ」を示す要素のことです。
同じイエロー系でも彩度が高いと元気でポップな印象に、彩度が低いとナチュラルで穏やかな印象になります。
建物に彩度が低めの色を選んでおくと、植栽の色とケンカせず調和しやすくなります。
7.信頼できる業者にお願いする
これは色選びだけに留まりませんが、確実に満足できる色にするためには、信頼できる業者に依頼することが大前提です。
施主との打ち合わせ内容を無視して施工したり、手抜きをして塗膜の耐久性を落としたりする業者では、色以前に大切なお住まいのメンテナンスを任せられません。
しかし、リフォーム会社や外壁塗装業者は非常に多く、ご自宅の塗装をどこに頼めば良いかわからない方は多いと思います。
安心して任せられる業者を見つける確実な方法は、複数業者で相見積もりを取ることです。
優良業者は顧客の満足度を何よりも重視します。
見積もりの金額だけでなく、こちらの希望をしっかり汲み取ってくれるか、実物の塗料を使ってサンプルを作ってくれるかなどの対応力も、比較の基準にしましょう。
■外壁塗装の色選びテクニックをご紹介
ここからは、実際に色を決めるときに覚えておくと役に立つ5つのテクニックをご紹介します。
1.外壁はクリーム、ブラウンなどが人気
人気の外壁塗装イメージ(日本ペイントのカラーシミュレーションより作成)
外壁や屋根の色は非常に多くの種類と組み合わせがありますが、その中でも人気が高いものは、クリーム系、ブラウン系の色です。
赤や青などの色に比べると主張し過ぎないため、どのような建物にも調和しやすく失敗しにくい色です。
人気が高いということは、多くの人が安心して選んでいる色ということでもあります。
どの色にしたら良いかわからないときは、まずはクリーム系やブラウン系などでカラーシミュレーションをしてみましょう。
2.屋根は濃い色が人気
現在のお宅の屋根に、黒や茶をお使いの方も多いのではないでしょうか。
屋根は外壁よりも濃い色にしておくと、建物全体のバランスが取りやすくなります。
ただし、グレー系などあえて薄い色を選んで、遮熱効果をねらうテクニックもあります。
一般的に白など明るい色のほうが遮熱効果は高くなります。
そのため、常に沢山の太陽光を浴びている屋根は、濃い色よりも明るめの色を選んでも良いでしょう。
ただし、確実な遮熱効果を期待するのであれば、屋根や屋根裏の断熱リフォームをしたり遮熱機能のある塗料で塗装したりすることをおすすめします。
3.家のスタイルも意識しよう
家には、ナチュラル、シンプル、モダン、和風など様々なスタイルが存在します。
これらのスタイルには建材やカラーコーディネートの方法に違いがあります。
どのようなスタイルにするか明確にして色を選ぶことで、選ぶ色の方向性がしぼられ、雰囲気にぴったりの色を見つけやすくなるでしょう。
また、家の外観にいずれかのスタイルを強く反映させているのであれば、各スタイルに合う色を選んでおくと統一感が出ます。
例えば、南欧風スタイル(上記の画像です)の家にする場合は、暖色系の色でまとめると建物の雰囲気を損ねにくく、外壁はベージュやアイボリー、屋根はオレンジ系やピンク系などの組み合わせがおすすめです。
そのほか、モダンなイメージにするのであれば、寒色のブルー系やグレー系でまとめたり、あえて白一色で塗装したりするテクニックが使えます。
4.色以外の要素にも注目
塗料選びでは、色以外の要素も検討しなくてはなりません。
●外壁の模様を残したいときはクリヤー塗装がオススメ
ご自宅の外壁がサイディング壁で、表面にレンガ調やタイル調のデザインがあしらわれている場合、塗装をすると目地まで塗りつぶされて模様が消えてしまいます。
このような意匠系サイディングボードでは、顔料が入っていない無色のクリヤー塗料で塗装をすると、現在の模様を残したまま表面の保護が可能です。
ただし元の外壁の色がそもそも落ちていたり、傷や汚れが蓄積されたりしている状態であればクリヤー塗料はオススメできません。
クリヤー塗料で保護しても、色あせや汚れが透けて見えてしまうためです。
クリヤー塗装をするときは、外壁の劣化が進む前に行いましょう。
●ツヤありの方が耐久性は高い
塗料には艶ありと艶なしの違いがあります。
大半の塗料は、仕上がり後の艶を調整することが可能です。
中には、ピカピカの艶ありの外壁ではなく、マットな色にしたいという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、塗料の艶をなくしたり減らしたりするためには、添加剤を入れなければなりません。
添加剤を入れると塗料の純度が下がるため、耐久性が若干落ちてしまう恐れがあります。
艶の有無を考えるときは、その点も考慮して決めましょう。
5.外壁や屋根に選んではいけない色はある?
外壁塗装の色が違うだけで汚れの見え方も違ってくる
屋外にある外壁や屋根は、ホコリや排気ガス、雨、泥、カビといった汚れや、紫外線のダメージなどに常に晒されています。
そのため、できるだけ汚れや経年劣化を目立たせない色を選んでおく必要があります。
黒や白といった極端な色は汚れが目立ちやすいというデメリットがあります。
また、赤系の色は他の色に比べると紫外線を吸収しやすく、色あせが早い色です。
きれいな外壁を維持するためには、なるべく落ち着いた色柄を選ぶこともポイントです。
■おわりに
外壁塗装は、満足いかなかったからと言ってカンタンに変えられるものではありません。
そのため、多くの人は色選びに非常に多くの時間をかけています。
今回ご紹介した知識を踏まえて、親身に相談に乗ってくれる業者と、ご自宅の外壁に合った最適な色を選びましょう。