外壁塗装工事は一度行うと何十万円、場合によっては100万円以上もの費用がかかるのに、その相場費用を知っている人が非常に少ないのが現実です。
例えば、車を買う時なら値段の交渉をしたり試乗をしてみたり、また設備を選択して新たにオプションをつけたりと、購入する側はとても積極的に商談に参加しますね。
それなのに、外壁塗装工事となるとそれなりの費用がかかるにもかかわらず、内容もよく確認せずに業者任せにする人が多いから不思議です。
大切な家の寿命を左右する外壁塗装なのですから、見積書の見方や工事内容をよく知って満足できる工事にしませんか?
このページの目次
■見積書は見方さえわかれば難しい内容ではない
いきなり外壁塗装の見積書を見せられても、専門用語が並んでいて何について書かれているのか分からないという人が大半でしょう。
しかし、
- 専門用語の意味
- 塗料・工程の価格相場
- 作業内容とその目的
などについてある程度知識を得て外壁工事の打ち合わせに臨めば、最初はよく分からなくても工事業者とやり取りをしているうちに徐々に内容が理解できるようになります。
1.専門用語の意味を知っておく
外壁塗装の見積書には普段の生活ではあまり耳にしない専門用語がひんぱんに登場します。
例えば、
- ケレン作業(鉄部のサビを落として塗装面を滑らかにする作業のこと)
- シーラー(塗料と塗装面がしっかり密着するように塗る下塗り塗料のこと)
はその代表例といえるでしょう。
しかし、そうした聞きなれない作業や材料の名称などはインターネットなどで検索すれば簡単に調べられます。
10年~20年に一度の大切な我が家の改修工事ですから、どの専門用語がどの工程で登場するかこれを機会にぜひ知っておいてください。
見積書に記載されている作業がどのような作業であるのか、なぜその作業が必要なのかが分かれば納得して業者に工事を任せられます。
また、作業の工程自体のほか外壁塗装の主役である塗料についてもよく理解しておくべきでしょう。
外壁塗装工事では使用する塗料によって価格も耐久性も大きく異なりますから、塗料メーカーや塗料名とまではいわなくとも、アクリル塗料やウレタン塗料など、塗料の種類やその性質を知っておくと工事の目的に合った効果的な塗料を選ぶことができます。
さらに、使用する塗料によって次回の外壁塗装工事の時期まで予想できますので、長期的な予定が立てやすくなり、無駄な出費を抑えられます。
2.金額の相場を知っておく
外壁塗装をする際には複数の業者に見積もりを依頼するのが基本ですが、見積もりの作成を依頼した業者がおのおの異なる金額を次々に提示してきたら、一体どの価格が適正なのか業者選びに迷ってしまうでしょう。
まずは外壁塗装工事の費用の内訳は大きく、
- 塗料代
- 工事代(人件費)
- 足場代
- その他(運営費など)
の4つに分かれることを知っておきましょう。
そして、外壁塗装には工事の工程の一つ一つに費用相場が存在しますから、それぞれの相場についてあらかじめ情報を仕入れておけば、業者から提示された見積もり額が高いか安いかを判断することができます。
見積書に記載されている金額は通常、
- 工程ごとの1㎡あたりの価格(平米単価といいます)
- 一棟あたりの価格、つまり外壁の塗装面積全体の価格
の両方が記載されています。
平米単価の相場価格、一棟当たりの相場価格、できればどちらの相場価格とも知っておくのが望ましいです。
3.作業の目的を知っておく
外壁塗装工事では足場設置、下地処理など実に様々な作業が順番に行われていきます。それぞれの作業内容を見て「このような作業が行われるのか」と工程をなぞるだけではなく、ひとつひとつの作業が何のために行われるか、どのような「目的」で施されるのかということを知識として備えていれば、見積書や工事工程についての理解がより深まります。
■見積書の記載内容
上記のポイント踏まえつつ、見積書に記載されている工事工程とそのおおよその価格について解説します。
なお、一棟あたりの価格は100~160㎡の範囲で計算しています。
1. 足場設置
1㎡当たりの価格 | 700円~1,200円 |
建物1棟当たりの価格 | 18万円~20万円 |
職人が高所で安全に効率よく作業を行うため、また近隣に塗料などが飛び散らないよう建物周りに飛散防止ネットを取りつけるために足場を組みます。
足場にもいろいろ種類があり、作業の目的や敷地の形状によって使い分けられます。
一般家庭の外壁塗装の場合には900~1,200円/㎡のくさび式足場が主に使われますが、狭くて足場が組みにくいスペースでは800~1,000円/㎡の単管足場が組まれるケースもあります。
2. 高圧洗浄
1㎡当たりの価格 | 100円~200円 |
建物1棟当たりの価格 | 1万円~3万円 |
外壁表面の汚れや古い塗膜を落とし、下地処理を行いやすくし、また新しい塗装がしっかりと定着しやすい状態にしていきます。
水道水を使った高圧洗浄であれば一棟あたりの費用は約2万円で済みますが、ガンコなカビやコケがある場合やカビやコケの量が多い場合には薬剤を使ったバイオ高圧洗浄が行われることもあります。
バイオ高圧洗浄は通常の高圧洗浄と比べると、
- 洗剤の費用、養生費の費用などが余分にかかる
- 工程自体が増えるのでその分の費用がかかる
などの理由で、㎡あたり500~800円、一棟あたり5万~8万円程度と価格も高くなります。
3.下地処理
1㎡当たりの価格 | 800円~3,000円 |
建物1棟当たりの価格 | 8万円~20万円 |
※下地処理作業では作業面積全体に作業を施すわけではないため、1棟あたりの金額は1工事当たりの平均値です。
- サイディングボードの目地部分のシーリングの補修(㎡あたり800~1,000円)
- 鉄部のサビを落として滑らかにするケレン作業(㎡あたり700~2,000円)
- 大きなひび割れにシーリング材を充てんして補修するVカット工法(㎡あたり700~5,500円)
などを行い、塗装しやすい下地にしておきます。
下地処理は外壁の劣化具合によって行われる作業量が変わるため費用も変動しますが、この作業の項目を「一式」とせず詳細をきちんと見積書に記してくれる業者はシッカリした塗装工事ができる業者だといえるでしょう。
4.養生
1㎡当たりの価格 | 300円 |
建物1棟当たりの価格 | 3万円~5万円 |
塗料が施工部分以外にはみ出て汚してしまわないように、マスキングテープやビニールシートを使って
- 窓サッシ
- ベランダ
- エアコンの室外機
- 玄関ドア
などを保護します。
その他、状況によって庭に置いてある植木や自動車など私物などを保護する場合もあります。
養生費は一式で表示されることもありますし、
- シート代
- テープ代
- ネット代
など、細かな項目別金額が各々表示されるケースもあります。
5.塗装作業
使用する塗料によって塗装価格は異なります。
グレードが高く機能が多い塗料ほど高くはなりますが、耐用年数が長いので結果的に割安である場合も多いのです。
●アクリル塗料
1㎡当たりの価格 | 1,500円~1,800円 |
建物1棟当たりの価格 | 15万円~28万円 |
安価で手頃ですが紫外線に弱く耐用年数が年5~8年と短いため、現在はあまり使用されていません。
外壁の補修はしたいけれどもこの先現在の家に長く住む予定はない、などのケースには適しています。
●ウレタン塗料
1㎡当たりの価格 | 1,800円~2,500円 |
建物1棟当たりの価格 | 18万円~40万円 |
安価ですがアクリル塗料より耐用年数は長く(8年~10年)、防水、耐水性に優れているのが特徴です。
やや弾性があり下地との密着性が高いので、ひび割れや塗料の剥がれが起きやすい外壁に適しています。
●シリコン塗料
1㎡当たりの価格 | 2,800円~3,200円 |
建物1棟当たりの価格 | 28万円~50万円 |
現在最も使用されているのがシリコン塗料です。
耐用年数が10年~15年と長く、耐久性、耐候性にも優れていますし、施工価格も高すぎずコストパフォーマンスに優れた塗料であるといえるでしょう。
●フッ素塗料
1㎡当たりの価格 | 3,800円~4,200円 |
建物1棟当たりの価格 | 38万円~67万円 |
- 耐候性(紫外線に強い)
- 低摩擦性(汚れが落ちやすい)
- 非粘着性(汚れをはじきやすい)
など耐久性に非常に優れているのが特徴です。
また、耐用年数も15年~20年と非常に長いのですが、価格が高いため40坪程度の住宅では費用が一棟あたり100万円程度になることもあります。
●断熱塗料
1㎡当たりの価格 | 2,500円~3,500円 |
建物1棟当たりの価格 | 25万円~56万円 |
省エネやエコロジーに関心を寄せる人に注目されているのが断熱塗料です。
断熱塗料は大きく
- 遮熱塗料
- 断熱塗料
の2種類に分けられます
熱の反射作用を持つ遮熱塗料は外からの熱を室内に伝えませんので、夏に効果を発揮する塗料だといえます。
一方、断熱塗料には熱の伝導を抑制する作用がありますので、室内の熱を逃がしません。
ただ、断熱塗料は遮熱塗料よりやや効果が薄いとはいえ遮熱機能も兼ね備えていますので一年を通して快適に過ごしたいのなら断熱塗料を選ぶ方がよいかもしれません。
断熱・遮熱機能を併せ持った機能的な塗料には日進産業の『ガイナ』などがあります。
●光触媒塗料
1㎡当たりの価格 | 4,100円~4,500円 |
建物1棟当たりの価格 | 41万円~72万円 |
光触媒塗料には太陽光に反応して外壁表面の汚れを分解し、浮き上がった汚れを雨水で流れ落とすセルフクリーニング機能が備わっています。
耐用年数は18年~22年程度と非常に長いのですが、施工価格が高く塗装代だけで70万円を超えてしまうケースもあります。
■優良業者の見積書の特徴
見積書の記載内容についてある程度理解が進んだら、次は優良な業者が作る見積書の特徴について説明します。
1.専門用語もわかりやすく説明してくれる
優良業者は説明不足が原因でトラブルにならないよう、素人にも分かりやすいよう専門用語もしっかり説明してくれます。
施主に納得して契約してもらうために、初歩的な質問にもこころよく調査・回答してくれるはずです。
反対に、施主が質問しても不機嫌そうに回答したり調べてくれなかったりする業者は、工事中にトラブルが発生して相談しても真摯に対応してくれず不快な思いをする可能性が高いです。
そのような業者は避けるべきでしょう。
2.一式見積もりなどおおざっぱな内容にしない
優良業者ほど、工事の工程ごとに使用する道具と金額を個別に記載してくれるケースが多いです。
後になって説明不足が原因のトラブルが発生するのを防ぐためという理由もありますし、作業内容や使用する材料などに偽りがないことを証明するためでもあるでしょう。
逆に、作業内容をごまかそうとしたり金額を多めに見積もって相場以上の契約金額にしたりする業者では工事品質に信頼を置くことはできません。
そうした業者ほど、本来は詳細に記載するべき部分を
- 諸費用
- その他
- 一式
など曖昧な表記にしてしまう傾向がありますので注意してください。
3.現場調査の内容が反映されている
外壁塗装工事の見積もりを出すには、事前に綿密な現場調査を行うのが当たり前です。
調査と実測の結果が反映されている見積書であることを必ず確認しましょう。
電話だけの見積もりや、飛び入りの訪問営業マンが持ってきてその場で作成した見積もりには建物の詳しい作業面積や劣化状況が反映されていないので全く信用できません。
実測もせず図面だけを見て見積もりを出すような業者は論外ですから絶対に契約しないようにしてください。
■おわりに
いかがでしょうか?
外壁塗装のことなんて全然分からないし、業者は専門家なんだから任せておけば大丈夫、という姿勢では、満足のいく外壁塗装工事はできません。
外壁塗装工事の設計書ともいえる見積書の見方を知れば、優良業者を選ぶ力もつきます。より満足できる工事のためにも見積もりは複数社からとり、しっかり比較してください。